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4章 国の波乱
第68話 隣村との会議
しおりを挟むあの後、フォッコ達も村長に頼んで、魔道具の水出し機能も作ってもらっていた。
ケープ村長って本当に優秀だね。
ただ、蛇口じゃなくて、花から水が出てくるようになった。
スズランの形をした花で、葉っぱに魔力を流すと、流した分だけ水が出るようになっている。
新しくなった屋台にオスクもご満悦だ。
これに保護しておく。
一応、縮小化もやってみたが問題なし。
ここ3日程は、森の中の散策がほとんどだ。
屋台を引っ張って色々回ってきた。
北山に行ったらコッコ達も元気にしてたぞ。
サイズも大きくなって、オスクより一回り小さい程度。
150cmくらいかな。
何気に立ちあがったオスクの頭は高いんだよ?
村人達もよく世話にきているようで仲が良い。
持ってきた野菜の代わりに卵をもらっている。
「ここ最近になってやっと出来るようになったんじゃが、コッコ達に畑の虫取りを頼んでるんじゃ」
そう言って、ヤギさんが畑の様子を見せてくれた。
確かにコッコ達が世話をしている。
その中で一匹異彩を放つ者がいた。
通常のコッコは丸々としてて、キャラクター性があるんだ。
目もつぶらで優しい。
そいつは目がキリっとしてるんだ。
いや、鋭いと言って良い。
なぜか眉毛もあって、海苔を貼り付けたような濃さがある。
一瞬ハードボイルドな殺し屋を思い出したが、気のせいだろう。
特徴的なのは、尻尾にヘビを飼ってるんだ。
尾羽じゃないぞ?
「ヤギさん。あいつは何ですか?」
「ん? あぁ。変わってるだろう? 山の主やってた奴だよ。仲間思いの良い奴さ」
ふうん。
睨んだだけで、相手を殺せそうだけどな。
触らぬ神に祟りなしだ。
コッコ達も村人にうまく馴染んでいるようだ。
……
…………
翌日、村が騒がしかったので行ってみる。
「賑やかそうだったから寄ってみたんだけど」
門でベアジュニアに話しかける。
「薬人か。今はちょっと面倒かもしれない」
そう言いつつ村に向き直ると、中に居た奴がこっちを指差してきた。
「なんで人族がいるんだよ!!」
あんまり良く無い雰囲気だな。
「本当だ! どういうことだ!? この村は裏切ったのか?」
仲間だろう人達が次々と声をあげる。
「あっらー。ちょっと来なきゃ良かったかな?」
「もう遅いし。それに、どっちにしろ話すことだよ。」
ベアジュニアは想定内なのか落ち着いていた。
「ターさん帰ってたか!」
ベアさんが駆け寄ってくる。
「やぁ。つい先日戻ってきたんだけど、あの人達は?」
「隣村のやつらだよ。たまに交流するんだけど、ターさんは……会わないようにタイミングずらしてたからな」
「へぇ。俺いないほうが良い?」
「いや。一緒に会議に出てくれ。引っ越しの話があったんだろ?そこらにいるのは付き添いだから気にしないで良いさ」
そう言って、会議室に案内される。
……
…………
中に入ると、長机の片側にケープ村の住人。
その反対側に、たぶん隣村の住人だろう。
ベアが席に座ったところで、俺の席が無いことに気づく。
ベアの後ろでSPポジションか?
ベアの後ろに行こうとすると呼ばれる。
「ターさんこっちだよ」
いや、そこって村長の横じゃん。
「ははっ! そんな嫌そうな顔してもダメだよ。今回は君の話もあるんだからね」
そう言われて渋々村長の隣に座る。
「さて、会議を始めようか!みんなも隣村からよく来てくれたね」
村長が声をかけると、一斉に立ち上がり綺麗にお辞儀する。
「いつも外部と隣接する森の管理をありがとう」
でっかい猫族? 虎族か。
その人が代表して挨拶すると息を合わせて着席する。
「だが、その人族はいただけない。我らは人族から迫害を受けて逃げてきたのだ」
周りを見回しながら話を続ける。
「とは言え、何も聞かずに決めつけるのも良く無いだろう。弁明があれば聞くが」
人族めっちゃ嫌われてるな。
全く何やったんだよ?
「その事情は良く知っている。この者はその人族達とは別だ。と言っても素直に聞けないだろうな。だから、そちらに配慮して、今まで余計な話をしなかった」
「我らには別に見えませんがね?」
「そうじゃ! 我らの憎き敵と同じにしか見えぬ!」
「今から俺が喉元に食らいついてやろう!」
いきなり犬族の一人が飛びかかってきた。
すると村長がテーブルを叩き、音に反応するように蔦が犬族に巻きつく。
「何をなさる!? こやつを食いちぎってくれる!」
「まだ、話の途中だよ。そちらの子なんだから、ドーラ君に管理して欲しいんだけどな」
村長が虎族を見つめる。
「急だったので反応出来なかった」
いやいや、めっちゃ気づいてたし反応してたよ。
「まぁ、君達がどう思おうと自由だ。だけど、私たちは彼を友人として接しているんだ。傷つけたら少し許せないな」
「以後気をつけよう」
無言長いな。だれか喋ってよ。
「さて、彼なんだが、森の奥で見つけてね。何らかの理由で転移してきた可能性が高い。罠か飛ばされたか」
「え? そうなの?」
「ターさんには言ってなかったっけ? 言葉も通じないし、そうじゃないかってみんなと話あったんだ」
「初耳だね。まぁ、問題無いんだけど」
「みんな今の会話を聞いたね?」
「それがどうした!」
「ただの会話だったぞ!」
「そうだ。ただの会話だ。グルマン語でのな」
「だいぶ上手くなったな」
「違和感なしじゃ」
隣村がそれを聞くと呆けてしまう。
「彼は何も話せなかったんだよ。唯一少しわかったのは精霊語だけだ。それだけでもエルフの友足りえる。これからは彼をエルフの友とし話を進めるよ? 良いね?」
それを聞くと隣村は口を噤んでしまった。
「さて、彼のことは良いとして、ケープ村は引っ越しを検討している」
「引っ越し? 川向こうに来るのか?」
「いや。引っ越すならこの森を出て他に行く」
「なぜだ!! 君らも逃げてきたのだろう!? もしや、外を乗っ取るのか?」
「そんなことはしないよ。この国の南山側に良い場所があるらしいんだ。そこに行くかどうかを話し合ってるところかな」
「そんなにあっさりとココを捨てられるのか」
それにヤギさんが答える。
「あっさりでは無いぞ。前々から話合っていた。それこそ儂が若い時からじゃ。外が怖かったのは大きいが、一番はきっかけが無かったからじゃ」
「君らは外と全く関わってないけど、ここは森の入り口だから交易もしている。その差だろう。ベアから聞いているだろうが、ついに王国が潰えるとわかった」
「おぉ」
「我らの怨敵が」
「長かった」
中には泣く者もいた。
「外の情勢もかなり変わった」
ボンゴさんが話し出し、ケープ村住民が少しずつ話して行く。
「この地域はニールセン独立国の一部になったが、その周りは帝国と聖教国だ。今まで通りにはいかないだろう」
「ここに残っても変わらなければならないのは同じだ」
「私は新天地を探しても良いと思っている」
みんな乗り気なのか。
行きたく無いのかと思ってた。
「ここを離れても良いのか!? 世界樹があるのだろう!」
「そうだ。世界樹があるなら守られるだろう」
「見捨てて行くのか!」
「おそらく、ここの世界樹はハイエルフが昔に植えたんだろうな。もう寿命だよ」
ハイエルフか。
何か忘れてるような気がするんだよね。
「何と言うことだ」
「世界樹があったから守られていたのが」
「では、この森も安全では無いんじゃ?」
隣村の人たちが心配してるな。
「我々もその話は聞いておりませんが」
「そうじゃな。そういう大事なことはもっと早く言って欲しかったですじゃ。」
「村長も結構抜けてるからなぁ」
ケープ村の人も聞いてなった!
「ごめんごめん。分かったのはつい最近のことなんだよ。私とターさんは、世界樹の枝を託されていてね。新しい場所に植えてやらないと可哀想だろう? 数年で枯れるということは無いだろうが、ドーラ君達もずっとあると思わない方が良いよ」
「だとしても、捨てられぬ者もいる」
「そうだ。何代も住み続けてきたのだ」
「しかも、今日聞いたばかりではな」
結局、今回だけでは決められないということで、一度村に持ち帰ることになった。
そうだろうな。
この村が乗り気なのことが特別なんだろう。
会議も終わって、ケープ村の参加者達は、ちょっと落ち着いてる。
「ターさんはさっきから何で変な顔してるんだ?」
ベアさん言い方ひどいな。
「いや。何か頼まれたことを忘れてるような気がするんだけど、思い出せないんだよね」
「前から思ってたけど、物忘れ多いから、メモ書きちゃんとしないと」
「メモか。ちょっと見てみよう」
手帳を取り出すと、その中から羊皮紙がこぼれ落ちた。
「なんだこれ?」
『エリンからケープへ』
「村長当てだ。はい」
村長に手渡す。
「私に?イアちゃん以外の知り合いなんて……どれどれ」
手紙を読み始めると、食い入るように読み進める。
どんどん顔が手紙に近づいてるけど大丈夫か?
「村長どうした?」
「な、なんかすごい格好してるよ」
「大事な手紙じゃろうか?」
読み終わると、椅子に座ったまま天を仰ぐ。
「みんなごめん。家から呼び出しがかかっちゃった。ちょっと故郷に帰ってくるね」
「え? どのくらいで戻ってくるんだ?」
「早くて10年くらい?」
「結構早いね」
俺がそう言うと一斉にこっちを見てくる。
ちょっと怖いよ。
「ぜんぜん早く無いよ!」
「そうじゃな。せめて引っ越してからはどうじゃ?」
「無理そうかな。緊急呼び出しだから、数日以内に出発だなぁ。あ! だれか隣村の人に言ってきて!」
近くにいた若い子に伝言を頼む。
「ターさん、悪いんだけど……引っ越し手伝ってあげて?」
えぇぇぇ!?
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