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5章 獣王国
第95話 報告
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ドリーは村に戻ると、すぐに辿り着いたことを伝えた。
村人達もまさかと疑っているが、他の同行者の話を聞くと、徐々に理解し始めていく。その日は英雄を祝うように皆んなでお祭り状態。
バート達からドリーには、情報の統制をかけて少しずつ開示していく。そう事前に伝えてあった。村人には、壊れた電子端末をいくつも見せ、今度は国を巻き込んで調査する形で伝える。
「サグはどうする? 休んでく?」
「すぐ出る。ここの王に、会ってくる」
それだけ言うと、バート達を連れて、また黒モヤに消えてった。俺の知ってる長命種はほとんど忙しい人ばかりだ。色々背負って、大変な仕事して、でも楽しそうにしている。
そんな後ろ姿を見ると笑顔が溢れてしまう。
「何をニヤニヤしてるんだね? 私たちも戻って研究だよ! さぁ来たまえ!」
「ノール君! 私達だけじゃ荷車押せないよ! 頼む」
もうちょっと休ませてくれても良いのに……。
仕方ないか。オスクに残ったパンでもあげよう。あいつもこれなら食べれるはず。
「メサ、行くよ。オスクに帰った報告だ」
_______________
「本当に、私も行って良いんですか?」
「最初から、いたの。君、だけだ。来い」
サグはバート達を連れて王城に来ている。
ゲイルも来たことはあるが、呼ばれても無いのに来れる程の身分は無い。それを心配しているが、サグは気にした様子も無くついて来させている。
「俺も行くがぁ。ほとんど答えられんからなぁ。ゲイルじゃないとダメだろぉ。メルロは何も話すなぁ」
「なぜですか! 大発見ですよ!?」
「ゲイルより見てるのかぁ? 言わなくて良いこともあるんだぁ」
メルロは、少しむくれた様子だが、納得はしている。
その後も広めの通路を進むと前に大きな扉。両側に兵士と侍女が控えている。
「ラス・トゥー国。サ・グ侯爵御一行の御来城!」
扉をくぐると遠くに玉座が見え、バート達は半分程の距離で跪く。
サ・グだけがさらに進み、階段下で立ち止まった。
「良く来てくれた。なかなか都合がつかなくてな」
背後から出てきた男の冠から、ヤギ角が飛び出している。
「かまいませぬ。あなた方は、必ず会う」
「他国の者は言え! 王の御前で立ったままとはいかがなものか!」
横で囀るのは歳をとった宰相。
彼にとっては侯爵程度が跪かないのは許せないのだろう。
「立派に仕事してくれるのはありがたいが、今はこれが宰相だ」
「私は別に跪いても良い」
その言葉に被せるように宰相が返す。
「ならば早く!」
「宰相よ」
「何でございましょう」
「お前は出ておれ。この男はこのままで良いのだ。それに、話が進まぬ。」
「ですが!」
「団長聞いてたな? しばし、出させておけ」
引きずられながらも騒ぎ声を上げ、徐々にその声が小さくなっていった。
王がため息をつくと、疲れたように話し出した。
「議会の奴も、もっとマシなのを選ばないものかと思う。で? これで良かったんだろう?」
するとサ・グが跪いた。
「ありがたく。ゲイル。横に来い」
「え。はい」
王がゲイルを見ると、面白そうに口角を上げた。
「何かあったな?」
「獣王国、創設前の記録が見つかった」
「その男が見つけたと……。教えろ」
「は、はい」
ゲイルが地下で見聞きしたことを伝えていく。洞窟には興味を示さなかったが、遺物の話になると、だんだん前のめりになっていく。
だが、ゲイルが意図的に話してない内容があるとわかったのか、眉を寄せる。
「ゲイル。王には、言って良い」
「え? しかし……はい」
言わなかった話を伝えていくと、再び笑顔になり、時折何かを考える様子も見える。
「たまたま、知り合いに会いにいったら、それに居合わせた」
「余も見たかったぞ。龍人様か。それで、獣族が多かったか? そうだろ?」
その言葉には奥に控える兵士も身じろぎをし出した。
「なぜそれをご存知で?」
「代々王には伝えられている。わざわざ言わないだけだ。面白いことを教えてやろう」
獣王国が作られた時、初代王が龍人様から言われたことがある。それは、いつまで王をやるのかと、誰に国を託すのか。国が落ち着いてから、議会を作って政治を任せたり、後継になる者を探したりしている。王から王へとそれを伝えられているが、いつまで経っても託せるほど国がまとまっていない。
それを聞いてた者達も驚いたが、王にしか伝えられないそれを。
「なぜ言ったか気になるんだろう? 龍人様の声を聞いたんだろ? お前らもこっち側に来い。任せてダメなら動くしかないだろ」
そう言って1人1人見ていく。
控えの兵士を含めて全員。
「俺は、やらん」
「当たり前だ。他国に頼んだら恥だろ。それで? 他にもあるんだろ。お前が来る時は大体厄介ごとだ」
「……ふぅ。大陸中央の情勢は?」
「きな臭いというだけは聞いた」
「どこの国か、わからないが、召喚の形跡がある」
「それは! 良く無いな」
王が周りを見ると、誰もが全くわかってないように見える。
「召喚は簡単に言うと、特定の何かを呼び出す魔法だ。それだけ聞くと大したことないが、以前召喚した国は消滅した。その後に残ったのは凶悪な魔物と荒れた土地だけだ」
「我が国の北方だ」
「ラス・トゥー国は他の大陸だから、そこまで心配いらんが、この大陸ならマズイな」
「とにかく、伝えたぞ。あとはそちらで、やることだ。では帰る」
それだけ言うと、サグは1人で出ていってしまった。
「各騎士団長を呼べ。議会も開く。それと、バート。お前達は近場の国で調査だ。金は必要分国庫から持ってけ。俺の命令だと言えば良い」
王から言われるがまま全員が動き出す。
「未だに状況がわからない」
「俺もだぁ。メルロは家に戻って親父に報告してくれぃ。ファングが集まったらすぐぐ行くぞぉ」
「戻ったばっかりなのにもう出発か。報酬は弾んでくれよ?」
_______________
「教授。こっちの資料はどうです?」
「む。それもあったか! ダメだ。全然まとまりきらないぞ」
1ヶ月もこれだよ。
最初の1週間は手伝ってたけど、最近じゃ声もかけられなくなった。
かえって邪魔になるから、今は外でゆっくりしている。
ピピィ?
「そうだな。久しぶりに瞑想でもするか」
プルプル。
「山の中なら好きにして良いよ。じゃあ、今回は上の方でやってみようか」
「ノールどっか行くの?」
「ホー。暇になったから瞑想しようと思ってね。ちょっくら山に行ってくるよ」
「そっか。じゃあ教授達の飯だけは用意してあげたほうが良いね」
「頼む。よーし! 今回は気合い入れちゃうかな」
ピピピィ!
「ははは。そんな何年も経つ訳ないじゃん。オスクも自由にしてて良いからな?」
村人達もまさかと疑っているが、他の同行者の話を聞くと、徐々に理解し始めていく。その日は英雄を祝うように皆んなでお祭り状態。
バート達からドリーには、情報の統制をかけて少しずつ開示していく。そう事前に伝えてあった。村人には、壊れた電子端末をいくつも見せ、今度は国を巻き込んで調査する形で伝える。
「サグはどうする? 休んでく?」
「すぐ出る。ここの王に、会ってくる」
それだけ言うと、バート達を連れて、また黒モヤに消えてった。俺の知ってる長命種はほとんど忙しい人ばかりだ。色々背負って、大変な仕事して、でも楽しそうにしている。
そんな後ろ姿を見ると笑顔が溢れてしまう。
「何をニヤニヤしてるんだね? 私たちも戻って研究だよ! さぁ来たまえ!」
「ノール君! 私達だけじゃ荷車押せないよ! 頼む」
もうちょっと休ませてくれても良いのに……。
仕方ないか。オスクに残ったパンでもあげよう。あいつもこれなら食べれるはず。
「メサ、行くよ。オスクに帰った報告だ」
_______________
「本当に、私も行って良いんですか?」
「最初から、いたの。君、だけだ。来い」
サグはバート達を連れて王城に来ている。
ゲイルも来たことはあるが、呼ばれても無いのに来れる程の身分は無い。それを心配しているが、サグは気にした様子も無くついて来させている。
「俺も行くがぁ。ほとんど答えられんからなぁ。ゲイルじゃないとダメだろぉ。メルロは何も話すなぁ」
「なぜですか! 大発見ですよ!?」
「ゲイルより見てるのかぁ? 言わなくて良いこともあるんだぁ」
メルロは、少しむくれた様子だが、納得はしている。
その後も広めの通路を進むと前に大きな扉。両側に兵士と侍女が控えている。
「ラス・トゥー国。サ・グ侯爵御一行の御来城!」
扉をくぐると遠くに玉座が見え、バート達は半分程の距離で跪く。
サ・グだけがさらに進み、階段下で立ち止まった。
「良く来てくれた。なかなか都合がつかなくてな」
背後から出てきた男の冠から、ヤギ角が飛び出している。
「かまいませぬ。あなた方は、必ず会う」
「他国の者は言え! 王の御前で立ったままとはいかがなものか!」
横で囀るのは歳をとった宰相。
彼にとっては侯爵程度が跪かないのは許せないのだろう。
「立派に仕事してくれるのはありがたいが、今はこれが宰相だ」
「私は別に跪いても良い」
その言葉に被せるように宰相が返す。
「ならば早く!」
「宰相よ」
「何でございましょう」
「お前は出ておれ。この男はこのままで良いのだ。それに、話が進まぬ。」
「ですが!」
「団長聞いてたな? しばし、出させておけ」
引きずられながらも騒ぎ声を上げ、徐々にその声が小さくなっていった。
王がため息をつくと、疲れたように話し出した。
「議会の奴も、もっとマシなのを選ばないものかと思う。で? これで良かったんだろう?」
するとサ・グが跪いた。
「ありがたく。ゲイル。横に来い」
「え。はい」
王がゲイルを見ると、面白そうに口角を上げた。
「何かあったな?」
「獣王国、創設前の記録が見つかった」
「その男が見つけたと……。教えろ」
「は、はい」
ゲイルが地下で見聞きしたことを伝えていく。洞窟には興味を示さなかったが、遺物の話になると、だんだん前のめりになっていく。
だが、ゲイルが意図的に話してない内容があるとわかったのか、眉を寄せる。
「ゲイル。王には、言って良い」
「え? しかし……はい」
言わなかった話を伝えていくと、再び笑顔になり、時折何かを考える様子も見える。
「たまたま、知り合いに会いにいったら、それに居合わせた」
「余も見たかったぞ。龍人様か。それで、獣族が多かったか? そうだろ?」
その言葉には奥に控える兵士も身じろぎをし出した。
「なぜそれをご存知で?」
「代々王には伝えられている。わざわざ言わないだけだ。面白いことを教えてやろう」
獣王国が作られた時、初代王が龍人様から言われたことがある。それは、いつまで王をやるのかと、誰に国を託すのか。国が落ち着いてから、議会を作って政治を任せたり、後継になる者を探したりしている。王から王へとそれを伝えられているが、いつまで経っても託せるほど国がまとまっていない。
それを聞いてた者達も驚いたが、王にしか伝えられないそれを。
「なぜ言ったか気になるんだろう? 龍人様の声を聞いたんだろ? お前らもこっち側に来い。任せてダメなら動くしかないだろ」
そう言って1人1人見ていく。
控えの兵士を含めて全員。
「俺は、やらん」
「当たり前だ。他国に頼んだら恥だろ。それで? 他にもあるんだろ。お前が来る時は大体厄介ごとだ」
「……ふぅ。大陸中央の情勢は?」
「きな臭いというだけは聞いた」
「どこの国か、わからないが、召喚の形跡がある」
「それは! 良く無いな」
王が周りを見ると、誰もが全くわかってないように見える。
「召喚は簡単に言うと、特定の何かを呼び出す魔法だ。それだけ聞くと大したことないが、以前召喚した国は消滅した。その後に残ったのは凶悪な魔物と荒れた土地だけだ」
「我が国の北方だ」
「ラス・トゥー国は他の大陸だから、そこまで心配いらんが、この大陸ならマズイな」
「とにかく、伝えたぞ。あとはそちらで、やることだ。では帰る」
それだけ言うと、サグは1人で出ていってしまった。
「各騎士団長を呼べ。議会も開く。それと、バート。お前達は近場の国で調査だ。金は必要分国庫から持ってけ。俺の命令だと言えば良い」
王から言われるがまま全員が動き出す。
「未だに状況がわからない」
「俺もだぁ。メルロは家に戻って親父に報告してくれぃ。ファングが集まったらすぐぐ行くぞぉ」
「戻ったばっかりなのにもう出発か。報酬は弾んでくれよ?」
_______________
「教授。こっちの資料はどうです?」
「む。それもあったか! ダメだ。全然まとまりきらないぞ」
1ヶ月もこれだよ。
最初の1週間は手伝ってたけど、最近じゃ声もかけられなくなった。
かえって邪魔になるから、今は外でゆっくりしている。
ピピィ?
「そうだな。久しぶりに瞑想でもするか」
プルプル。
「山の中なら好きにして良いよ。じゃあ、今回は上の方でやってみようか」
「ノールどっか行くの?」
「ホー。暇になったから瞑想しようと思ってね。ちょっくら山に行ってくるよ」
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