サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

文字の大きさ
157 / 165
最終章 半端でも仙人

第156話 新たな経路

しおりを挟む

 俺の聞き間違いだろうか?

「地上のゾンビを倒してくれるのか。やるじゃないか」
「いいえ、地下ですよ?」

 治療されてた兵士を見ると、そいつも驚愕していた。
 そうだよな!?

「地下からどのくらい来てる!」
「えっとどのくらい来てるかな? ……すでに大量に狩っていてわからないそうです」
「伝令兵! デーンレイヘーイ!」

 すぐさま兵士を呼んで事情を話し、使いに走らせた。

「こういうことが分かったら、早くナイトに伝えてやれ」
「そうですね。ついさっきわかったんですけど、治療を優先してました」
「お、おう。そうだったか。すまん」

 治療されてた奴の視線も痛い。
 悪いと思ってるからそんな目で見るなよ。
 負傷者は海野さんに任せ、カオルとその地下を確認しに行く。



 小さな蜘蛛の先導で、ギリギリ人が入れる程度の入り口に到着する。中に侵入すると、大きな熊が立ち上がり、さらに寝返り出来そうな広さまである。これはもう、地下道と言って良いだろう。
 その地下道には、ところどころに蜘蛛の巣が張られている。

「全部にはやらないんだな」
「それは侵入者の確認用みたいです。今のマザーが親から危機管理として教えてもらったみたいですよ」
「ゾンビよりこっちの方が危険じゃないか?」
「実さん! この子たちは私の友達になったんです!」
「そうだったな。すまん」

 なんか謝ってばかりだな。
 遠くに広場が見える。ドーム状になっていて、中心部に大きな蜘蛛の巣と卵たち。あまり良い思い出じゃないな。

「こいつら人には手を出さないのか?」
「出してないようですよ。それも教えてもらったみたいです」

 近づくと、天井からデカイ蜘蛛が降りて来た。小さな家程もある大きさで、物音一つ起こさずにやってきた。さらに俺が感じただけでも、魔力と気の両方を使っている。これはイカンな。相手するならドラちゃんかダンピールの将軍連れてこないとな。

「ん? 手をあげでどうしたんです?」
「参りましたのポーズだよ。俺じゃ相手にならん」
「……そうですね。ちょっと勝てそうなイメージが湧きません」
「それで、ゾンビとかどうするんだ?」

 カオルが肩の蜘蛛を通して会話すると、微妙な返事が返って来た。

「気が使えない奴は来させるなと言ってます」
「ほとんど気が使えない奴ばっかりだぞ?」
「……基本的にゾンビどもは倒してくれるみたいですね」
「もう任せてしまおう。出口で数人見張らせておけば良いだろ?」
「私もそんな気が……え?」

 ん? 蜘蛛に何か言われたか?

「かなり遠くですけど、敵側から生きてる人型がやってきているようです」

 相手さんも面倒臭い場所に送り込んでくれたな。
 鼻頭に皺が増えてしまう。

「洗脳は解かないといけないだろ。すぐに戻ってナイトと相談だな」
「はい」



 ちょうど地下道から出たところにナイトが来ていた。

「拠点は良いのか?」
「まさかの地下だぞ? 確認しないわけにはいかないからな」
「その当たりを引いたみたいだ」
「その顔だと、あまりよろしくないみたいだな?」

 そんなに表情に出てたか?
 ここからは、直接蜘蛛と話したカオルに交代する。

「中の大蜘蛛は、気を使える人しか入れたく無いようです」
「気か……兵士だと数人しかいないな。あとは傭兵頼みになる」
「相手には洗脳兵がいるみたいなので、解除もしたいです」
「うーむ。致し方ないか」

 ナイトは悩んだ末に指揮権を部下に渡すという選択をとった。

「軍規に基づき次官に指揮権を渡す。伝えてくれ」
「了解しました!」
「ついでにゴーリッツ3兄弟をここに呼んで欲しい」
「はっ!」

 出来る男感が強く、決断と指示が早い。ハイスペックなイケメンで王弟様の肝煎りだろ?
 さらにジゴロだからな。取り合いになって、血みどろの戦争になる未来しか見えないぞ。地獄だな。

「南無三」
「なんだそれ?」
「未来のパートナーにエールを送ったんだ」
「余計わからん」

 わからなくて良い。

「それよりも気を使える奴だよ」
「それだ。私とゴーリッツたちだけ使えるが、他の兵士は到底使えるとは言えないな。良くて感じる程度だろう」
「仕方ないな。あとは傭兵だが」

 話している途中で、勢いよく何かが飛んできた。
 それが目の前の地面にぶち当たり、土埃が舞っている。

「うにゃにゃー。くらげの分際でー!」
 ブルブルブル!

 埃の中から出て来たのはミコ。
 それを投げたのはメサのようだ。
 さらに後ろからノーリとくらげがやってきた。

「なんだぁ? ノールもおるのか?」

 くらげたちを見ると、シンクロしてブルブル震えている。こいつらの通信もかなり便利だな。

「メサたちが呼んでくれたんだろう。ちょうど話したいことがあったんだ」




「なるほどのぅ。それなら儂は地上に残った方が良かろう」
「次官もまだ慣れてないだろうから、私もそのほうが助かる。」
「任せとけ! 兵士も全部面倒みちゃるわい!」
「よろしく頼む」

 俺が話しかけたつもりなんだが、ナイトとノーリで話し合って解決してしまった。まぁ、俺の兵士でも無いし、口を挟むのもおかしいんだけどね。

「実さんも地下で待ち伏せしますか?」
「うーん。そうしたいところなんだけど、本部に大蜘蛛のことも伝えておきたいし」
「私も行った方が良いでしょうか?」
「カオルは残ってくれ。といかあの蜘蛛止められそうなの、カオルしかいないだろ?」

 周りを見ても、あれに対峙出来そうなのは……ギリギリでナイトいけるか? そのくらいでしょ。
 大蜘蛛が気を使える奴限定にしたのも、弱いからという話でもなさそう。何か仕掛けがあるのかもしれないな。

「とりあえず、行ってくるよ。何かあったら本部に連絡ちょうだい」
「わかりました」

 ずっと大人しくしているペロと違って、肩の蜘蛛はちょこちょこと体を動かしている。念話なのか? カオルに向かって伝えているとしても、俺には変な踊りに見える。可愛いという意味がわかった気がする。
 ただし! 1匹だけだったらな!



 ドラちゃんのいる本部も、忙しなく動き回り、方々からの情報をまとめて連絡し合っている。そこに俺の入る隙は無く、どこか手の空いてそうな奴を探してみたんだが……。

「お前は!」
「ん? あんたは」

 軍議の時に抗議してた将軍の1人だっけ?

「ちょうど良かった。新しい情報が入ったんだが、情報部は忙しそうでね」
「なんで俺に言うんだ! 他にも軍人多いだろ!」
「話しかけてくる余裕ある奴いないんだよ。ほんのちょっとだからさぁ! 頼む! 一生のお願いだ!」
「一生とか言う奴は信じられん!」

 半端とは言え仙人の一生だぞ! まぁ、99%冗談なんだけどね。

「まぁまぁ、情報は大事な内容なんだ」
「うるせぇ!」
「東部の海辺なんだが、地下からゾンビが攻めて来てな」
「何を言って……。待て。地下だと!?」

 その急に慌て出し、近くの兵士と話し始めた。話しかけられた兵士も驚愕し、波紋のように情報が広がっていく。

「おい。こいつが情報部だ。手早く話せ!」
「おぉ! ありがてぇありがてぇ!」
「ふざけてる場合じゃねーんだ!」

 情報部に全容を話すと、聞き取りと同時に書いた紙に、親指の端を噛み切って血で線を引いている。
 鳥肌を擦りながら様子を見ていると、情報員の動きが止まり、そのメモ書きに視線が集まる。数秒だけ止まった時が動き出すと、情報員が虚空《こくう》に向かって話し始めた。

「ああやって念話で戦地と連絡を取っている」
「なるほどねー」
「他の場所でも、不思議な穴がいくつか見つかっているんだ」
「あー。不味いな」

 その将軍もすぐに動き出さないといけないのだろう。かなりソワソワしている。「気にせず行って良い」と言おうとしたが、周囲がザワめき始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...