ハロウィンの吸血鬼

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「ルビー、ちゃんと反省できたかな?」

 いつの間にか気を失っていたらしい。
 紫雨様の声に目を開ける。
 私を忘れずにちゃんと迎えに来てくれたんですね。
 嬉しくて微笑む私に紫雨様は戸惑った表情を見せた。

「まぁ、疲れて逃げられないだろうし、休ませてあげようかな」

 首輪をカチャリと外してくれた音がする。
 直ぐにコウモリに姿を戻せた。
 紫雨様が私を両手で包んでくれる。
 昔、助けて貰った時を思い出した。
 噛むなら今しかない!
 私は意を決して、紫雨様の指に嚙み付く。

「ルビー!!」

 紫雨様は私が噛んだ手を咄嗟に振って私を振り払った。
 少ししか血は吸えなかったが、これで多少は正気に戻ってくれたら良いのだが……

 私はまた意識を手放すのだった。


   




 次に目を開けた時は、フカフカのベッドであった。 

 紫雨様が私の為に作ってくれた特別なベッドである。
 ぶら下がって寝る事になれていたので、初めはベッドで寝るのに苦労したが、今ではこのフカフカなベッドで寝る事が好きだ。
 コウモリの姿でも人間扱いしてくれるのは紫雨様だけであった。
 こんな私を不気味がらずに側に置いて下さる事が嬉しくて、救いであった。


「ルビー、目が覚めたのか!?」

 声をかけられ、ビックリする。
 ここは紫雨様のベッドの上だったらしい。

「申し訳ありません紫雨様」

 噛んでしまって。
 怒っているだろう。

「謝るのは僕の方だ。いや、君も良くないけど、いや、悪いのは全部僕だよ。でも君も悪いと思うんだ。そうじゃなくて……」

 紫雨様は涙目で私を見つめおどおどしている。
 手を出したり引っ込めたりだ。

「君は咄嗟に自己防衛しようと僕を噛んだのかもしれないが、お陰で正気に戻れた。ただ、吸血鬼の血はコウモリ族には毒になるからして…… 君は3日も寝込んでいたんだよ」

 困った様に言う紫雨様。
 正気に戻ってくれたらしい。
 本人の正気に戻ったをどの程度信じたら良いのか解らないが。
 それに3日寝込んだのは変な首輪で疲れさせられた事も原因だと思う。
 思わず紫雨様を睨んでしまった。

「体調はどうだい? 医者からは寝ていれば大丈夫だと言われたんだけど…… 本当に大丈夫か心配だよ」
「平気そうです」

 まだ飛べなさそうだが、体を起こして歩くぐらいは出来そうだ。
 体を起こして羽をパタパタして見せる。

「良かった。ちゃんと動ける様になるまでまだ寝ていて。食事は出来そうかな? お粥を持ってくるね」

 紫雨様はニコリとし、お粥を取りに行ってしまった。
 本当に正気に戻ってくれたなら良かったが、あまりの高低差に風邪を引きそうな気分になる。
 そもそも私はコウモリの属性が強いので寝ているぶんには食べずにいても平気であるし、なんならこの時期になると眠気が強くなる。
 流石に冬眠することは無いのだが、やっぱりまだ本調子ではないのでウトウトしてきてしまった。
 でも、せっかく紫雨様がお粥を取りに行かれてしまったし、持ってきて私が寝ていたらお粥が勿体ない事になってしまう。
 もう少し起きていよう。
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