ハロウィンの吸血鬼

甘塩ます☆

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 次に目を覚ますと辺は真っ暗である。
 どうやら結局寝てしまったらしい。
 紫雨様が怒ってないと良いが……
 自分の体に何が触れている事に気づいた。
 サワサワと優しく撫でられている。
 体の向きを変えて確かめる事にした。

「ああ、ルビー、ごめんね起こした?」
「紫雨様?」

 紫雨様と目合う。
 ここはまだ紫雨様のベッドなのか。
 私のベッドは籠になっている。
 いつもの窓際とかに置いてくれて良いのだが。 
 まだ心配してくれているのだろうか。

「お腹空いてる? お粥持ってこようか?」
「いえ、今、要りません」

 今度はちゃんと聞いてくれたので、要らないと答えられた。

「解った。じゃあ朝食にたべよう」
「はい」

 そう頷いた。
 食事の気分では無いが、よく寝たので体力は回復した様子である。
 今なら飛び回れそうだし、何なら人間の姿にも戻れそうだ。
 そして目が冴えてもう一度寝る気がしない。
 紫雨様も、何だか私を見つめて目を離さないし、困った。
 気まずい。
 寝たふりをしようかなぁ……
 何で紫雨様は私を見つめているんだろうか。

「お粥は安心して、僕が食べておいたよ」
「そうですか」

 お粥の事は気にしていなかったのだが。

「僕の側だと警戒して眠れないかなぁ? ごめんね」
「あの、いつもの窓際に戻して欲しいです」
「駄目だよ。ルビーはずっと眠って僕を心配させたんだから、僕の側に居るべきだよ」
「やっぱり正気じゃ無さそう……」

 腹黒そうな笑みを見せる紫雨様に心の声が漏れてしまった。

「僕は至って正気だよ。ルビーが大好きなだけ」
「駄目だ。噛ませて貰ってもいいですか?」
「別に構わないよ。ルビーにはもう僕に対しての抗体が出来ているだろうし、好きに噛めば良い」
「はぁ?」

 コウモリに対して好きに噛めば良いだなんて、プライドの高い吸血鬼には有るまじき発言である。
 いよいよ本気でおかしくなってしまわれたのでは無いかと、私は心配になってしまう。

「ルビーには僕のパートナーになって欲しいと思っているんだ。だから、君は僕を噛んで、僕は君を噛む事にするよ」
「もはや何を言っているのかサッパリ分かりません。疲れているんですね。寝てください」

 吸血鬼がコウモリに噛めと言うのもおかしいと言うのに、吸血鬼がコウモリを餌どころかパートナーにしたいだなんて。
 吸血鬼のプライドから考えて気が狂ったとしか思えない発言である。
 本気で気が狂ってしまったのだろうか。
 私がもう少しちゃんと噛んで血を吸えば何とか出来きるのだろうか。
 噛めば良いと言うのだし、だったら容赦なくやってしまおうか。
 正気に戻った紫雨様に捨てられるかもしれないが、仕方ない。
 私は意を決して人間の姿に戻る事にした。 
 小さなコウモリよりはちゃんと人間に成った方が深く嚙み付けるだろう。

「えっ、ちょっとルビー!?」

 イキナリ人間の姿に戻ってくすぐさま紫雨様に馬乗りになった私。
 
「紫雨様が噛めと言うので、それでは失礼して」
「お前は、病み上がりなんだから大人しくしていなさい!」

 すぐに形勢を逆転させられ押し倒される形になってしまった。

「コウモリに戻りなさい! また倒れたらどうする」

 真剣に怒る紫雨様。
 
「では、先にに紫雨様が私を噛んで下さい。吸血鬼の唾液には治癒力があるでしょう」
「僕の治癒力はそこまで強く作用しないみたいだから……」
「私を噛むか、私に貴方が噛まれるか選んで下さい!」
「落ち着いてルビー、こういうことは君の調子が戻ってからにしよう」
「私はもう元気です! 元はと言えば貴方のせいです!」

 そもそも無理やり人間にさせて私を疲れさせたのは紫雨様だ。

「解ってる。僕が悪かったね。解ってるよ」
「じゃあ噛みますね!」
「君は本当に頑固者だよ」

 話しが堂々巡りだと頭に手をやる紫雨様。
 私に折れる気はない。
 強い意思の視線を紫雨様に向けた。
 紫雨様はヤレヤレといった調子で私から降りると肩を抱き起こし、向い合せに座らせる。
 自分のナイトガウンを徐に脱ぎ捨てた。
 何故急に全裸になったのか意味がわからない。
 下着はつけているが、どういうつもりなのだろう。

「まぁ、これでも羽織りなさい」

 そう、紫雨様にガウンを羽織らせてもらいハッとなる。
 私は下着もつけてない状態の真っ裸であった。
 粗末なものを見せてしまった。
 急に恥ずかしくなる。

「ほら、君の気が済むまで僕を噛めば良いよ。でも、君の気が済んだら僕が噛むからね」

 紫雨様が首筋を私に噛ませやすいようにと抱き寄せてくれる。
 私は何だかドキドキしつつ紫雨様の首筋に噛み付いた。
 紫雨様の血は普通にサビ臭くて不味く感じる。
 でも、これで紫雨さまが昔の優しい紫雨様に戻ってくれたら嬉しいと、ひたすら噛み続ける私だ。
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