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2話

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 でも、自分の様な裏社会の人間が毎日の様に通っていては、いつか迷惑がかかってしまう。
 翠は、やめなければと思っていた。

 自分を恨んでいる人間は沢山居る。
 詐欺に加担したり、直接手を掛けるなんて事は無いが、借金の取り立てで追い込んでしまった事は有るだろうし、裏社会の派閥等で俺を恨んだり妬んだりしている奴はいる。
 そんな奴からから命を狙われる事だって有る。
 現にこの路地裏に迷い込んだのだってそれが原因だ。
 いつこの場所が敵の奴らにバレて、この人を人質に取られたらと思うと、翠はヒヤヒヤする。 

 今夜で最後にしよう。

 翠はそう決めていた。


「あの、店主さん俺……」

 店主を見つめると、優しく微笑んでいる。
 声を掛けて何て言うつもりだったのだろう。
『いつも俺に笑顔をくれて有難う』
 とか?
 気持ち悪いよな。
 店主さんは誰にでもこの笑顔で笑いかけているんだろうし。
 別に俺にだけ特別じゃない。
 それにそんな事を言ったら涙が溢れそうだ。
 店主さんは俺の天使でした。
 

「やっと見つけたぞ!!」

 徐にドアが開く。

 敵に見つかった!

 翠は瞬時に刃物を手にした。
 鉄砲なんて良いものは持たせて貰えてない。
 俺は捨て駒だ。

「こんな所まで追いかけて来て何なんだ! いい加減にしろ!」
 
 そう相手に向かって怒鳴ったのは俺じゃない。

 え??
 店主さん??

「お前には戻って貰わないと困るんだ」
「貴方が消えろと言ったんですよ」

 痴話喧嘩だろうか。 
 どうしよう。
 店主さんが変な格好の男に手を掴まれている。
 何だこのコスプレ野郎は。 
 中世の騎士の様な格好をしている。
 金髪で、緑の瞳の綺麗な人では有るが、店主さんの方が美人だ。

 じゃなくて。

「おい、止めろよ。店主さんが嫌がってんだろ!」

 痴話喧嘩だろうと何だろうと、店主さんは嫌がっているのだから助けなければ!

 翠はコスプレ男と店主の間に割って入った。
 コスプレ野郎を睨み付ける。
 ビビって漏らせば良いんだ。 
 いや、ここは店主さんの店。漏らすのは止めろ。

「魔王の眷属か。お前も来い」
「止めろ、翠さんは関係ない!」

 慌てた様に言う店主さん。

 魔王って何だ? 眷属って??

 そんな事より、名前で呼んでくれた。

 混乱する翠を眩しい光が包んだ。
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