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10話

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 朝からすごい豪華な食事で翠は驚いてしまう。
 食パンにハムと目玉焼きが乗っているし、サラダにスープまで有る。
 凄い。こんなに食べて良いだろうか。

「デザートにバナナとヨーグルトもどうぞ」

 翠が目を輝かせていると、デザートまで出された。
 ビックリしてしまう。
 翠の朝食と言えば食パンの耳をかじるぐらいのものだ。
 
「頂きます」

 翠は手を合わせてハムと目玉焼きの乗ったトーストをほうばる。 
 凄い美味しい。
 こんな美味しい物初めて食べたと思う。
 美味しい朝御飯に目の前には美人の笑顔。
 こんなに幸せな事って有って良いのだろうか。
 もしかしてここは天国?
 俺、死んだのかも知れない。

 笑美も翠から飛んでくる幸福感をおかずにして朝食が進む。
 朝から彼の幸福感を味わいながら食事が出来るなんて本当に幸せだ。
 こんな幸せな事が有るのだろうか。
 もしかしてここは天国?
 私、死んだのかも知れない。

 二人とも幸せに満ち溢れていた。

 翠は鱈腹食べ、食後の珈琲まで飲めて本当に幸せであった。

 そして、その後は二人で食器を洗って片付ける。
 本当は魔法でチョチョイと出来る笑美であったが、翠が手伝ってくれると言うので敢えて手作業にした。
 人と一緒に何かするなんて事は無かった笑美は新鮮であった。
 純粋に楽しかった。
 ああ、やっぱり私は人間が好きだなぁと思う。
 その中でも翠はとびっきり好きだ。
 何故だろう。
 この感情は何だろう。
 何だか不思議だ。
 心が温かくなる。
 この感情が何なのか、笑美には解らなかった。
 ただ心地よい。 
 翠が側に居てくれるのが嬉しかった。
 ずっと一人で寂しかったが、翠が居てくれるならもう寂しくない。


 皿洗いを終えた二人はリビングのソファーに座ってゆったりとしていた。
 休憩が終わったら翠はシャワーを浴びたい様だから教えて、城の中の事を説明したりしようと思っていた。
 ただ今は少しのんびりしたい気分なのだ。
 翠もそうだろう。
 笑美は本棚から薬草の本を出して眺めていた。
 翠も適当に本を取って開いている。
 何を読んでいるのかと思ったら童話である。
 王子様とお姫様が苦難を乗り越えて一緒になる話だったか。
 何処の世界にも有る良く聞く陳腐な童話だ。
 だが翠は真剣に見ている。
 そしてポロポロ泣き出した。

「感動しました。二人が幸せになって良かった」

 そう言って。
 本当に純粋な子だなぁ。 
 笑美は思わず翠を抱きしめる。
 愛おしいと思った。

 だが、そんな二人の幸せな空気感はあっさりと終わり告げる事になる。

「よぉ! 何だ、ペットと抱き合って気持ち悪いなぁ」

 そう言って突如姿を現したのはあのストーカー野郎である。
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