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6話

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 春岳は、まだ暗い内に城外へと出た。
 上手く人の目をかいくぐり、村へ足を走らせる。
 流行病の正体を突き止めなければ。
 城での感染も一見、おさまっているが、まだ隔離されている患者はいる様子である。
 またいつ流行してもおかしくは無かった。 
 村人達が苦しんでいるというのも、曲がりなりにも地域を納める城主になったのだから救える者は救いたい。
 春岳は使命感を感じ、足を走らせていた。


 山を降り、里に出る。

 何処に患者が居るか解らない為、一軒一軒忍び込んで屋根裏からこっそり様子を伺った。
 直ぐに体調の悪そうな村人を見つける。
 酷く魘されていた。
 そっと部屋に降り立った。

「だ、だれ?」

 物音に気づいて此方を見るが、頭巾で顔を隠している為に誰だと認識される事は無いだろう。

「流行病ですか?」
「はい……」
「症状は?」
「酷い頭痛に、吐き気、貧血です」
「ふむ……」

 訝しげに質問に答えてくれる患者。
 夢現であるのだろう。
 夢だ思ってくれたら幸いだ。

 咳き込んではいない。
 感染症てしては少しおかしいなと、感じた。

「下痢や嘔吐は?」
「食べると吐いてしまいます」

 胃で広がり、嘔吐物等から広まっているのか?

「解りました。夜分に失礼しました」

 春岳はその場を離れると、村の井戸を念の為に確かめる事にした。

 もしかしたら……

 そう思い、井戸水を一口含み、直ぐに吐き出した。
 毒が混ぜられている。
 すごい少量であるが、毎日口にすれば症状が出てくるだろう。
 城主は亡くなったが、流行病だと思わせる為に村の井戸にはまだ薬をを投げ続けているのか……

 近隣の城にでも目をつけられたらしいな。
 戦でも企てているのだろう。
 定期的に城の井戸に毒を投げ込むよりは、村の井戸に投げ込む方が危険は少ないくて済む。
 村人による兵力を削ぎ落とす事も出来るだろう。
 春岳はその場で紙に『井戸水は危険、流水を飲むように』と走り書き、貼り付ける。
 流水ならば安全だ。
 井戸水採取し、その足で忍びの里に足を走らせたのだった。
 毒物の判定をお願いし、解毒剤を用立てなければならない。
 
 春岳は忍びの里に着くと、直ぐに井戸水の判定を押し付け、解ったら知らせろとだけ言い残して再び城に向けて足を走らせた。
 直ぐに戻る予定であったが、無理そうだ。
 大騒ぎになってしまう。

 
 そして城に着くと、やはり大騒ぎになってしまっているのであった。


「殿ー殿ー!」

 と、声が沢山聞こえる。
 どうしよう。
 気づかれない様こっそり戻って、さもずっと居ましたよみたいな顔ですっとボケるしかないか。
 等と考えつつ、ソッと塀を飛び越えたのだが、伊吹は目が良いらしい。
 目敏く見つけられてしまう春岳であった。
 
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