【完結】忍びである城主は乳兄弟にゾッコン

甘塩ます☆

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52話

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 春岳は顔や髪に飛び散った血を綺麗に洗い流す。

 湯船には居たたまれなさそうな伊吹と千代と有理。
 手伝いを申し出れる様な雰囲気でも無く、ただ無言でお風呂に浸かるだけだ。
 綺麗になった春岳もまた無言で湯船に浸かる。
 物凄く気まずい。

「それで? 伊吹と千代はいつからそう言う関係になったんですか?」

 口を開いたのは春岳だ。
 もう怒った様子は無い。
 伊吹はブンブン顔を振って否定している。
 確かに閨に誘ったりしたら春岳は気付くだう。
 
「お風呂ではいつも千代にこんな世話をさせていたんですか?」

 まぁ、お風呂で世話させるぐらいは普通の事だ。
 いや、色小姓を閨に呼ぶのも普通の事なのだが……
 清廉潔白とした伊吹だから、本当にそういう事は全部断っていると思っていたのだ。
 だから千代に尺八させているのを見て、春岳も気が動転してしまった。

「違います。いつもは一人で入るんですが……」
「嘘をつけ! 俺はこの目で見たぞ。千代に尺八させて気持ちよさそうな顔をしてたただろうが!」

 別に怒らないのに変に誤魔化そうとする伊吹に、またイライラしてくる春岳。

 伊吹は俺を怒らせたいのか!

「あの、殿、誤解です。今井様に命令された訳では無く、私が勝手に今井様の魔羅に尺八しました」

 見かねた千代がおずおずと発言する。

「あ?」

 春岳は思わず、敵意剥き出しの『あ?』が出てしまう。
 千代は、「ヒッ」と悲鳴を上げて縮こまった。

「殿、ご自分の家臣を怖がらせないで下さい」

 千代を庇う様に言う伊吹に、更に春岳はイラついた表情になる。
 伊吹には春岳が何を考え、何に怒っているのか解らず、対応に困っていた。
 そこに助け舟を出したのは有理だ。

「殿はご存知無いのも仕方ないのですが、魔羅を洗う時に勃起して頂きたいので、そうする事はまま有る事です。なんならお風呂で盛るなんて事も日常茶飯事なんですよ」

 そう説明する。

 伊吹は千代の尺八に思わず殿に助けを求めた事を思い出し、恥ずかしさが蘇る。
 千代は良く手法を使っただけだと言うのに、情けなく怯えてしまい、申し訳ない気持ちである。

「伊吹と千代はいつも湯殿で逢い引きし、盛る事が日常茶飯事と言う事か?」

 イライラしている春岳は、どう言う思考回路になっているのか解らない。
 有理は自分の言った事を聞いてましたか?
 と、言う表情になった。
 
「伊吹様は真面目な方でいらっしゃいます。殿が世継ぎも作らず色小姓ともお遊びにならないのを心配しておいででした」
「だから何だ」

 有理は説明を続ける。
 春岳は、話が飛んだ様に感じ、有理を睨む。
 今、それが関係あるか?
 と、言う表情だが、すごく関係しているのだ。

「ですから、私は先ず、伊吹様が経験なされてはと提案しまし。ゆえに、伊吹様はお風呂のお世話も経験しようとしたのでしょう」

 そう、説明を続けた有理。
 ここまで説明すれば、殿も誤解せずに聞き取ってくださるだろう。
 怒るなら私を怒れと言う表情だ。

「待て。と、言う事は、伊吹は俺に隠れて妻を娶ったり、色小姓で遊んでみたりしようとしていたと言う事か?」

 頭をおさえ、嘘だろうと言う表情をする春岳。
 怒ると言うよりは、気が動転している表情だ。

「有理がそう提案致しましたのは今日の事です。そして今夜、私と千代様で伊吹様の夜伽をする事になっていました」

 更に律儀にも説明する有理。
 怖いもの知らずである。
 伊吹と千代も話を聞いてはいるが、間に何か挟めて言う事も無く、何だか聞き流していた。
 有理が上手に説明してくれて有り難い。

「なんだと!!」

 春岳は声荒らげ、思わず立ち上がる。
 伊吹を見ると、困惑した表情をしていた。 

 自分の知らない所でそんな話になっていたとは。
 信じられない。

 クソ真面目にも程が有るだろう。

 話が飛躍し過ぎだ。
 何で初めての夜から乱交なんだ!

 春岳の頭の中に色んな感情が湧いてくる。

 そうして最後に残った言葉は『俺の伊吹はやっぱり健気で可愛いなぁ』であった。

 たが、本当に危機感も何も無ければ、何故そんなに従順なんだ。
 もし、上手に猪の解体が出来ていたら、自分は大浴場に等来なかった。
 そうなると、伊吹は知らぬ間に千代と有理と乱交していた事になる。
 冷や汗が流れた。

 いや、まぁ、知らなくても伊吹の部屋で乱交していたら嫌な気配を感じて俺なら気付くんだろうが……

 尺八でもこの有様である。
 伊吹の部屋に飛び込んで乱交なんて目撃してしまったら、自分はどうなってしまうか解らない。
 千代や有理に斬りかかっていたかも知れないと思うと、そちら方が怖くなる。


「あの、申し訳ありません殿」

 千代は湯船から出る、土下座する。

「殿、私が悪いのです。千代様は何も……」

 千代の土下座を見て、有理も湯船から出て土下座する。

「殿、二人は悪く無いんです。私が浅はかでした」

 伊吹も湯船を出て土下座しようとしたが、それは春岳に止められた。

「土下座は止めて下さい。私の事を考えて下さったのですよね? でしたら有り難い事です。私も怒ってしまって申し訳ない。では四人でしましょうか」
「え!?」「え!?」「え!?」

 春岳の言葉に三人共間抜けなに声が出てしまう。

「えっと、するとは?」

 伊吹がやっと声を出した。

「何って? そう言う話でしたでしょ? 三人で私の閨に来なさいと言っているんですよ。三人でするなんて仲間外れは嫌なんですけど」

 何で解らないの? と、言う顔をする春岳に、伊吹は顔を真っ赤にしてしまうし、千代と有理は真っ青にしてしまうのだった。
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