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70話
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春岳に有理の話を聞いてから、千代はボーッとしてしまう事が増えた。
急に泣き出してしまう事も有る。
精神的に不安定になってしまった様で、春岳は漢方を調合してあげていた。
だが時期が悪すぎる。
この頃、毎日雪続きで、太陽も出ない。
ただでさえ気が落ち込むのだ。
そこに追い打ちをかけるように有理が消えてしまった。
千代が精神的に不安定になるのは仕方なかった。
この時期は人手が手薄になるので、有理も抜け出すチャンスだった。
有理が抜けるなら今だろうと、春岳も思っていたのだ。
もう少しちゃんと見ておけば良かった。
伊吹に現を抜かし過ぎてしまった様だ。
それに詳しく話しすぎてしまった。
千代には重すぎる話だった。
伊吹も最近元気が無い。
心配だ。
「春岳様、有理は無事でしょうか」
「きっと大丈夫だ」
「凍えてはいないでしょうか」
「大丈夫だよ」
伊吹も外を見ては有理を心配する様な事を言う。
千代は部屋で寝込む日も増えたが、伊吹はちゃんと仕事をしているし、ボーッとする事も無く、泣いたりもしないが、時々こうなる。
「有理を助けられないですか?」
仕方ない、黙っていられないな。
「有理に暗示をかけている者が居なくなれば暗示は解ける筈。丸武城は雪溶けを待って花田城に攻め込む算段だ。我々は加勢して丸武城主の首を取る」
春岳は小声で伊吹に話す。
「なぜ攻め込む時期が解るのですか?」
「仲間に情報を頼んだ。有理の様子も見て貰っている。だから大丈夫だ」
「本当ですか! 千代にも伝えて来なければ!」
「シー、此方の動きがバレる。これは私と伊吹だけの話しです」
「……はい」
密偵が入り込んでいれば気づくはずなので、大丈夫だとは思うが、念には念を入れた方が良いだろう。
あと、安心させる為に有理は大丈夫だと伝えたが、あまり大丈夫な様子では無さそうだ。
有理は色小姓としては既に薹が立っている。
使い物にはならないと判断されたのか、いつ死んでもでおかしくないような酷い扱いを受けている様だ。
雪解けまで保ってくれれば良いのだが。
ただ、武田城は素行が悪すぎて辺りからの不評が酷く、忍びの里も手を貸してくれると言う事だ。
上手く助ける事が出来れば、武田城の忍びを忍びの里で引き受けてくれるだろう。
あそこなら安心できる。
それにお金がかからなくて良かった。
借金も致し方ない。糸目は付けないとは思っていたが、ここまで大きい仕事を頼むとなると、本気で体を売るしか無くなりそうな気がしていたが、本当に良かった。
不幸中の幸いとはこう言う事を言うのだろうな。
「春岳様、有難うございます」
フフっと伊吹は安心した様に微笑むと、春岳の肩に寄り添う。
安心するにはまだ早いが。
伊吹が安心するならそれで良い。
急に泣き出してしまう事も有る。
精神的に不安定になってしまった様で、春岳は漢方を調合してあげていた。
だが時期が悪すぎる。
この頃、毎日雪続きで、太陽も出ない。
ただでさえ気が落ち込むのだ。
そこに追い打ちをかけるように有理が消えてしまった。
千代が精神的に不安定になるのは仕方なかった。
この時期は人手が手薄になるので、有理も抜け出すチャンスだった。
有理が抜けるなら今だろうと、春岳も思っていたのだ。
もう少しちゃんと見ておけば良かった。
伊吹に現を抜かし過ぎてしまった様だ。
それに詳しく話しすぎてしまった。
千代には重すぎる話だった。
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心配だ。
「春岳様、有理は無事でしょうか」
「きっと大丈夫だ」
「凍えてはいないでしょうか」
「大丈夫だよ」
伊吹も外を見ては有理を心配する様な事を言う。
千代は部屋で寝込む日も増えたが、伊吹はちゃんと仕事をしているし、ボーッとする事も無く、泣いたりもしないが、時々こうなる。
「有理を助けられないですか?」
仕方ない、黙っていられないな。
「有理に暗示をかけている者が居なくなれば暗示は解ける筈。丸武城は雪溶けを待って花田城に攻め込む算段だ。我々は加勢して丸武城主の首を取る」
春岳は小声で伊吹に話す。
「なぜ攻め込む時期が解るのですか?」
「仲間に情報を頼んだ。有理の様子も見て貰っている。だから大丈夫だ」
「本当ですか! 千代にも伝えて来なければ!」
「シー、此方の動きがバレる。これは私と伊吹だけの話しです」
「……はい」
密偵が入り込んでいれば気づくはずなので、大丈夫だとは思うが、念には念を入れた方が良いだろう。
あと、安心させる為に有理は大丈夫だと伝えたが、あまり大丈夫な様子では無さそうだ。
有理は色小姓としては既に薹が立っている。
使い物にはならないと判断されたのか、いつ死んでもでおかしくないような酷い扱いを受けている様だ。
雪解けまで保ってくれれば良いのだが。
ただ、武田城は素行が悪すぎて辺りからの不評が酷く、忍びの里も手を貸してくれると言う事だ。
上手く助ける事が出来れば、武田城の忍びを忍びの里で引き受けてくれるだろう。
あそこなら安心できる。
それにお金がかからなくて良かった。
借金も致し方ない。糸目は付けないとは思っていたが、ここまで大きい仕事を頼むとなると、本気で体を売るしか無くなりそうな気がしていたが、本当に良かった。
不幸中の幸いとはこう言う事を言うのだろうな。
「春岳様、有難うございます」
フフっと伊吹は安心した様に微笑むと、春岳の肩に寄り添う。
安心するにはまだ早いが。
伊吹が安心するならそれで良い。
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