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第一章 討伐騎士団宿舎滞在編
36 甘夏はセンチメンタルジャーニー
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トマトケチャップという調味料が出来ました。
またこの世界に新たな調味料を生み出した私だよ。
そして今少し……いや、かなり後悔しています。
トマトケチャップ……それはマヨネーズと対にされるがマヨネーズの影になってる、あってもなくても困らないけどあるとめちゃくちゃ使えるし便利だなって思うけどなんだかんだ最後まで使い切れないよねっていう調味料ナンバーワンだと個人的に思う。
そう、私的にはそんな位置にあるのです。
「トマトケチャップ……トマトケチャップ……ふふ、美味しい……」
「あわわわわわ……」
ルーがご乱心です。
トマトケチャップを使ったごはん作るってことでみんなにもさらっとケチャップのレシピ教えたあと味見させたら、ルーのいけない扉を開けたみたいで現在トリップしている。
もともとルーは野菜が好きで、野菜を美味しく食べられるマヨネーズも好きらしかった。
しかしここにきて、大好きな野菜を使った調味料を私が気まぐれに作ったものだから好きが大爆発。
一心不乱に、ヘラを舐めてます。
「……ルーはほっといてごはん作ろっか……」
「「「はい……」」」
三人組もドン引きしてます。
「気を取り直して!今日のご飯はオムレツでーす!各自、卵とバター、牛乳か生クリームを持ってくること!ちなみに生クリームはこってり、牛乳はあっさり、裏技でマヨネーズなんてのもあります!ではとってこーい!」
雑に指示すると三人組は貯蔵室へ消え去っていく。今日は闇の日だから騎士達の分は要らないからね。各々の好みを選ばせてみた。
騎士達のも、となると好みを聞いて作るなんて面倒臭くて絶対やらない!
そして私は私でミンチ肉と玉ねぎを用意。
「俺は牛乳にする」
「僕は生クリームです」
「ボクはマヨネーズぅ!」
両手に材料を持ってきた三人組。
うん、実に個性というか好みが分かれるね!
玉ねぎをみじん切りにし終わった所で調理開始。オムレツの前に中に入れる具材をさっと作る為だ。今回は玉ねぎとひき肉を炒めたものにした。
その頃になったらルーも復活してきて、好みの材料を持ってきた。
「オムレツってのは卵料理の基本であり、料理の基本でもあるんだ」
そう、オムレツは簡単のようで難しい。
調理学校での最初の試験がオムレツ、なんて言う所は多いだろう。私もそのひとりだ。
ポイントはいくつかあって、オムレツは白身と黄身をよく混ぜること。特に白身はこれでもか!と言うくらい混ぜた方がいい。
味付けはシンプルに塩のみ。
ふるふるにしたいから牛乳や、生クリーム、そしてマヨネーズをお好みで容れ溶かしておく。
そして火加減。
よく弱火で、なんて言うが本当は強火で一気に作るものなのだ。
家庭で作る時はテフロン加工の効いたフライパンを使って弱火でじっくり作る方がいい。
でもここは鉄のフライパンしかないので、それ用に強火の方法でつくる。
「まず、フライパンは煙が出るまで空焼きする。空焼きってのは何も無い状態でフライパンを温める事ね?それが終わったら油返しをして、フライパンの準備は完了」
油返しとは、フライパンに油を馴染ませる行為のこと。たっぷりの油をフライパンに入れてフチまで馴染ませてから油を別皿に移す。これを油返しという。これをすると焦げ付かないから鉄のフライパンでは必須の技法なのだ。
見本をしている私を真剣に見つめる四人。
見守られながらフライパンにたっぷりのバターと、少しの油。バターは焦げ付きやすいから少し油を入れることで焦げ付きやすさ緩和する、ちょっとした裏技だ。
「ルー、お皿にさっき作ったミンチ盛っててくれる?」
「はいっ、分かりました!」
手が離せないのでルーに頼んでお皿をスタンバイ。
ある程度バターが溶けたら卵液を流し込む……と同時にここからは一気に仕上げる。
強火のままフライパンを揺すりながら箸を使って半熟にする。そしたら火から下ろして木べらを使いフライパン奥へと卵の塊を寄せる。この時、本当に固まるの?くらいの半熟さが丁度いい。
寄せ終わったら、遠火で当てつつ卵の固まり具合を見ながら火からおろしつつ、フライパンの付け根をトントンと叩き、卵をひっくり返す……のだけど、これはコツがあるので木べらを使いながらでも大丈夫。ある程度形が整ったらミンチの上にコロン、とおく。
「これが基本のプレーンオムレツです。そして……このオムレツをナイフで切ると……」
「「「「おおおお!」」」」
「じゃーん!たんぽぽオムレツー!」
出来たばかりのふるふるオムレツの真ん中に一文字で切込みを入れれば、重力に耐えきれず観音開きに決壊したオムレツの中から半熟トロトロの卵がとろーっと流れ出る。その様に四人は歓喜の声を出した。
わかる、わかるよ!その気持ち!これがオムレツの醍醐味だよねー!
バターのいい匂いがふわっと香る。焦げもなくいい出来栄えなのが見てわかった。
本当なら包むタイプを披露したかったけれど、基本のオムレツを教えたかったので私の分だけこうした。
四人には包む方法も口頭で説明して、どちらの包み方がいいか選ばせた。
今日のメニューは、牛ミンチ入りのオムレツ、サラダ、パン、そして作りたてほやほやのジャム!
……朝ごはんみたいなメニューになったけど気にしない!
食堂に移動してみんなで食卓を囲む。これも日常風景になったなあ、と思いつついただきます!
まずは熱いものから、ということでオムレツから。トマトケチャップをかけて……ぱくっ!
「んんん!トマトケチャップ、甘くて濃厚で、おいっしー!」
自画自賛してしまった。
けど、本当にトマトケチャップは美味しい。元々トマト自体が甘くて濃厚だったのだ。しかもこっちではトマトは果物カテゴリーだって言うからね。最初食べた時からずっとトマトケチャップが作りたかったんだー。
酸味は少なく、トマトの甘さと濃厚さだけを凝縮したような味に玉ねぎの甘さも加わったものだから尚更美味しい。それにニンニクの風味も感じてそれが食欲を刺激させる。
……うん、ルーが舐め回すのがちょっと分かったわ。
「僕、トマトケチャップ量産します」
ルーが大量にトマトケチャップをオムレツにかけて食べながら宣言した。
目が本気だ。業者にでもなるんか?
ちなみにルーは私と同じ、たんぽぽ風。
三人組に至っては性格が出て、ダンは包むタイプで所々穴ぼこが空いてるし、ヤックは基本を忠実抑えつつ綺麗に中身を包めてるし、ポールに至ってはプレーンオムレツと中身を分けて別々にしている。しかも中身のミンチをパンにのせ、その上からトマトケチャップをかけるという食べ方をしているので流石としか言い様がない。
食べることには何処までも貪欲、それがポールという人物なのだ!
「うめー!ジャムってパンに合うな!」
「バターとビックベリーのジャムの組み合わせが……!そしてオムレツ……止まらないです!」
「甘夏はちょっとほろにがいけどそれがまたいい感じだよぅ!」
三人組はジャムから食べております。
ちなみに甘夏はジャムいうよりシロップ漬けみたいな出来栄えだ。
コトコト丁寧に煮込んで皮を潰せばジャムになるのだろうけど、わたしは皮が透き通る位が好み。これは母がよく作ってた作り方だったりするので、甘夏のジャムといったら私の中では皮が主役のこのタイプなのだ。
母は身を入れずに皮だけで作ることが多かったけどね。身、食べちゃうから。
私も甘夏のジャムをバターが染み込んだパンにのせて食べる。
パンに染み込んだバターとシロップのあまじょっぱさが口の中に痛いほど広がる。そして噛み締める度に皮のほろ苦さが甘さを中和させ、鼻から息を吸い込めば柑橘のなんとも言えない爽やかな香りが食欲を掻き立てる。
これだ。これが母の味だ。
「久しぶりに、日本を思い出しちゃった」
「これがケイ様の故郷の味なのですね」
「……うん、故郷というか……母の味」
ケチャップに夢中だったルーが、甘夏ジャムに手を伸ばし、一口食べる。
「お母様のあじ、とっても美味しいです」
笑顔でルーが言うものだから、私は何故かむずがゆくなって、照れてしまった。
「ありがとう、ルー」
「こちらこそ、ありがとうございます、ケイ様」
二人で笑い合うと、三人組も私達を見て笑う。
誰かと食卓を囲む。笑い合う。
それはとても幸せなことだな、とじんわり思った。どこにいても、どの世界でもそれは変わりがないんだ。
捨てられた時は一人で生きていく!なんて思ったけど。
そんな私を見捨てず、探して保護してくれたのが団長さんで、居場所を作ってくれたルーがいて、なんやかんや慕ってくれる三人組や、美味しいといっぱいご飯を食べてくれる騎士達がいて。
初めて、ここに……皆に出会えてよかった、と心の底から思った。
またこの世界に新たな調味料を生み出した私だよ。
そして今少し……いや、かなり後悔しています。
トマトケチャップ……それはマヨネーズと対にされるがマヨネーズの影になってる、あってもなくても困らないけどあるとめちゃくちゃ使えるし便利だなって思うけどなんだかんだ最後まで使い切れないよねっていう調味料ナンバーワンだと個人的に思う。
そう、私的にはそんな位置にあるのです。
「トマトケチャップ……トマトケチャップ……ふふ、美味しい……」
「あわわわわわ……」
ルーがご乱心です。
トマトケチャップを使ったごはん作るってことでみんなにもさらっとケチャップのレシピ教えたあと味見させたら、ルーのいけない扉を開けたみたいで現在トリップしている。
もともとルーは野菜が好きで、野菜を美味しく食べられるマヨネーズも好きらしかった。
しかしここにきて、大好きな野菜を使った調味料を私が気まぐれに作ったものだから好きが大爆発。
一心不乱に、ヘラを舐めてます。
「……ルーはほっといてごはん作ろっか……」
「「「はい……」」」
三人組もドン引きしてます。
「気を取り直して!今日のご飯はオムレツでーす!各自、卵とバター、牛乳か生クリームを持ってくること!ちなみに生クリームはこってり、牛乳はあっさり、裏技でマヨネーズなんてのもあります!ではとってこーい!」
雑に指示すると三人組は貯蔵室へ消え去っていく。今日は闇の日だから騎士達の分は要らないからね。各々の好みを選ばせてみた。
騎士達のも、となると好みを聞いて作るなんて面倒臭くて絶対やらない!
そして私は私でミンチ肉と玉ねぎを用意。
「俺は牛乳にする」
「僕は生クリームです」
「ボクはマヨネーズぅ!」
両手に材料を持ってきた三人組。
うん、実に個性というか好みが分かれるね!
玉ねぎをみじん切りにし終わった所で調理開始。オムレツの前に中に入れる具材をさっと作る為だ。今回は玉ねぎとひき肉を炒めたものにした。
その頃になったらルーも復活してきて、好みの材料を持ってきた。
「オムレツってのは卵料理の基本であり、料理の基本でもあるんだ」
そう、オムレツは簡単のようで難しい。
調理学校での最初の試験がオムレツ、なんて言う所は多いだろう。私もそのひとりだ。
ポイントはいくつかあって、オムレツは白身と黄身をよく混ぜること。特に白身はこれでもか!と言うくらい混ぜた方がいい。
味付けはシンプルに塩のみ。
ふるふるにしたいから牛乳や、生クリーム、そしてマヨネーズをお好みで容れ溶かしておく。
そして火加減。
よく弱火で、なんて言うが本当は強火で一気に作るものなのだ。
家庭で作る時はテフロン加工の効いたフライパンを使って弱火でじっくり作る方がいい。
でもここは鉄のフライパンしかないので、それ用に強火の方法でつくる。
「まず、フライパンは煙が出るまで空焼きする。空焼きってのは何も無い状態でフライパンを温める事ね?それが終わったら油返しをして、フライパンの準備は完了」
油返しとは、フライパンに油を馴染ませる行為のこと。たっぷりの油をフライパンに入れてフチまで馴染ませてから油を別皿に移す。これを油返しという。これをすると焦げ付かないから鉄のフライパンでは必須の技法なのだ。
見本をしている私を真剣に見つめる四人。
見守られながらフライパンにたっぷりのバターと、少しの油。バターは焦げ付きやすいから少し油を入れることで焦げ付きやすさ緩和する、ちょっとした裏技だ。
「ルー、お皿にさっき作ったミンチ盛っててくれる?」
「はいっ、分かりました!」
手が離せないのでルーに頼んでお皿をスタンバイ。
ある程度バターが溶けたら卵液を流し込む……と同時にここからは一気に仕上げる。
強火のままフライパンを揺すりながら箸を使って半熟にする。そしたら火から下ろして木べらを使いフライパン奥へと卵の塊を寄せる。この時、本当に固まるの?くらいの半熟さが丁度いい。
寄せ終わったら、遠火で当てつつ卵の固まり具合を見ながら火からおろしつつ、フライパンの付け根をトントンと叩き、卵をひっくり返す……のだけど、これはコツがあるので木べらを使いながらでも大丈夫。ある程度形が整ったらミンチの上にコロン、とおく。
「これが基本のプレーンオムレツです。そして……このオムレツをナイフで切ると……」
「「「「おおおお!」」」」
「じゃーん!たんぽぽオムレツー!」
出来たばかりのふるふるオムレツの真ん中に一文字で切込みを入れれば、重力に耐えきれず観音開きに決壊したオムレツの中から半熟トロトロの卵がとろーっと流れ出る。その様に四人は歓喜の声を出した。
わかる、わかるよ!その気持ち!これがオムレツの醍醐味だよねー!
バターのいい匂いがふわっと香る。焦げもなくいい出来栄えなのが見てわかった。
本当なら包むタイプを披露したかったけれど、基本のオムレツを教えたかったので私の分だけこうした。
四人には包む方法も口頭で説明して、どちらの包み方がいいか選ばせた。
今日のメニューは、牛ミンチ入りのオムレツ、サラダ、パン、そして作りたてほやほやのジャム!
……朝ごはんみたいなメニューになったけど気にしない!
食堂に移動してみんなで食卓を囲む。これも日常風景になったなあ、と思いつついただきます!
まずは熱いものから、ということでオムレツから。トマトケチャップをかけて……ぱくっ!
「んんん!トマトケチャップ、甘くて濃厚で、おいっしー!」
自画自賛してしまった。
けど、本当にトマトケチャップは美味しい。元々トマト自体が甘くて濃厚だったのだ。しかもこっちではトマトは果物カテゴリーだって言うからね。最初食べた時からずっとトマトケチャップが作りたかったんだー。
酸味は少なく、トマトの甘さと濃厚さだけを凝縮したような味に玉ねぎの甘さも加わったものだから尚更美味しい。それにニンニクの風味も感じてそれが食欲を刺激させる。
……うん、ルーが舐め回すのがちょっと分かったわ。
「僕、トマトケチャップ量産します」
ルーが大量にトマトケチャップをオムレツにかけて食べながら宣言した。
目が本気だ。業者にでもなるんか?
ちなみにルーは私と同じ、たんぽぽ風。
三人組に至っては性格が出て、ダンは包むタイプで所々穴ぼこが空いてるし、ヤックは基本を忠実抑えつつ綺麗に中身を包めてるし、ポールに至ってはプレーンオムレツと中身を分けて別々にしている。しかも中身のミンチをパンにのせ、その上からトマトケチャップをかけるという食べ方をしているので流石としか言い様がない。
食べることには何処までも貪欲、それがポールという人物なのだ!
「うめー!ジャムってパンに合うな!」
「バターとビックベリーのジャムの組み合わせが……!そしてオムレツ……止まらないです!」
「甘夏はちょっとほろにがいけどそれがまたいい感じだよぅ!」
三人組はジャムから食べております。
ちなみに甘夏はジャムいうよりシロップ漬けみたいな出来栄えだ。
コトコト丁寧に煮込んで皮を潰せばジャムになるのだろうけど、わたしは皮が透き通る位が好み。これは母がよく作ってた作り方だったりするので、甘夏のジャムといったら私の中では皮が主役のこのタイプなのだ。
母は身を入れずに皮だけで作ることが多かったけどね。身、食べちゃうから。
私も甘夏のジャムをバターが染み込んだパンにのせて食べる。
パンに染み込んだバターとシロップのあまじょっぱさが口の中に痛いほど広がる。そして噛み締める度に皮のほろ苦さが甘さを中和させ、鼻から息を吸い込めば柑橘のなんとも言えない爽やかな香りが食欲を掻き立てる。
これだ。これが母の味だ。
「久しぶりに、日本を思い出しちゃった」
「これがケイ様の故郷の味なのですね」
「……うん、故郷というか……母の味」
ケチャップに夢中だったルーが、甘夏ジャムに手を伸ばし、一口食べる。
「お母様のあじ、とっても美味しいです」
笑顔でルーが言うものだから、私は何故かむずがゆくなって、照れてしまった。
「ありがとう、ルー」
「こちらこそ、ありがとうございます、ケイ様」
二人で笑い合うと、三人組も私達を見て笑う。
誰かと食卓を囲む。笑い合う。
それはとても幸せなことだな、とじんわり思った。どこにいても、どの世界でもそれは変わりがないんだ。
捨てられた時は一人で生きていく!なんて思ったけど。
そんな私を見捨てず、探して保護してくれたのが団長さんで、居場所を作ってくれたルーがいて、なんやかんや慕ってくれる三人組や、美味しいといっぱいご飯を食べてくれる騎士達がいて。
初めて、ここに……皆に出会えてよかった、と心の底から思った。
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