10 / 21
音路町シアター
5
しおりを挟む
俺達が駆け込んだのは、音路町ヒルズの近くにある昔ながらの鉄板焼き居酒屋だ。夜湾はそこに早く来るように俺に言った。店の引き戸の前にはうんざりしたような夜湾が店の入り口を指差して待っていた。
「アマさん!待ってたで!」
「あれ?天峰は?」
「話はあとや!中に!」
俺は店の引き戸を開けた。奥に続く階段の上にいるらしい。駆け上がるように俺達捜し屋は突入した。
「あ!」
座敷席にはばったりと倒れている金城がいた。俺は金城に声をかける。
「大丈夫か?」
「もっ…もう勘弁してくらはれ……」
「オイッ!話は終わってねぇぞこら!」
襖の向こうから焼酎のグラスを持った倭同が現れた。目は完全にいってしまっている。真っ赤な顔。明らかに泥酔している。中を見ると……
「っざけんじゃねっての!オイッ!倭同!そこの脚本家連れてこい!」
俺は頭痛を感じた。この男、針生天峰は酒を飲むと完全に人が変わるのだった。倭同も同じなのだろう。いや、二人揃ってタチが悪い。
「ハ……ハリさん」
「ミイラとりがミイラってのは、本当ですね。アマさん、僕に任せて。皆は金城さんを連れ出してあげてください」
「あれっ?充さんは?」
「こういった酔っ払いの相手は慣れていますから」
ウインクをした充。俺は金城をおぶって店をあとにした。もうやめて、もうわかったからとうわごとのように呟く金城。
全く、どっちが被害者なんだよ……
†
「ここは……」
目を開けた金城は俺達捜し屋を見て目を白黒させている。泥酔していたせいか頭はガンガンするらしい。
「あんた、倭同和弥を拉致したのか?」
「ら、拉致なんてしてない!」
「じゃあ何故、倭同は行方不明になったんだ?」
「お、俺は説得しようと、あいつを目いっぱい接待してたんだ!」
「千石に、連れ戻せと?」
「せっ、千石さんは関係ない!俺がいる限り、あの人は劇団から離れられない!」
「ふぅん、やっぱり弱味握ってたんだ」
金城はくっ、と苦々しげに吐き捨てた。
「千石さんも、俺が接待した。あの人の痴態をカメラに納め、ばら撒かれたくなかったら俺達の劇団に来いと言った。あの人は根っからの役者だ。その代わり名ばかりでいいから俺を団長にしろと言った。そのくらいは、お安い御用だったが……」
「なら、今回は倭同の痴態をカメラに納めて、劇団に留め置くつもりだったんだな?」
「しょうもない奴やな……」
「おっ、俺の夢だったんだ!劇団は……俺の脚本で、舞台を作り上げるのが……」
金城はさめざめ泣き出した。
「よく分かった。やり方がまずかったな。もっとお前もよく他の舞台を観て勉強すれば、もっともっとよくなると思うぜ」
「……今川焼き屋さん……」
「そういう事っ、だから倭同さんを解放してあげてね」
「……そんなに、俺の脚本って……」
「はっきり言って、最悪」
そんなぁと言って突っ伏した金城を帰宅させ、この事件は終了した。それからは、倭同は新しく劇団を立ち上げ、脚本家として【ラブ・バラードを聴かせて】の脚本家である先生の弟子を紹介された。劇団員はネットで集め、まだ5人しかいないが、頑張っている。
「アマさん、よかったら舞台に……」
「すまねぇな。俺は今川焼きを焼くのが仕事なんだよ。興味ある奴なら……」
俺は傍らで今川焼きを頬張る【甘納豆】の二人を指差した。
「悪くはないんすけど、コントになりそうで」
「おいおいおいおい!」
「誰が漫才やっちゅうねん!」
「漫才じゃなくて、コントだって言ってますよ」
「一緒や!」
時計をチラリと見て、新しい劇団の主宰は音路町に消えていった。彼等の劇団の初公演には、是非ともVIP席で観覧させる事を約束させ、俺はその姿を見送った。
「アマさん!待ってたで!」
「あれ?天峰は?」
「話はあとや!中に!」
俺は店の引き戸を開けた。奥に続く階段の上にいるらしい。駆け上がるように俺達捜し屋は突入した。
「あ!」
座敷席にはばったりと倒れている金城がいた。俺は金城に声をかける。
「大丈夫か?」
「もっ…もう勘弁してくらはれ……」
「オイッ!話は終わってねぇぞこら!」
襖の向こうから焼酎のグラスを持った倭同が現れた。目は完全にいってしまっている。真っ赤な顔。明らかに泥酔している。中を見ると……
「っざけんじゃねっての!オイッ!倭同!そこの脚本家連れてこい!」
俺は頭痛を感じた。この男、針生天峰は酒を飲むと完全に人が変わるのだった。倭同も同じなのだろう。いや、二人揃ってタチが悪い。
「ハ……ハリさん」
「ミイラとりがミイラってのは、本当ですね。アマさん、僕に任せて。皆は金城さんを連れ出してあげてください」
「あれっ?充さんは?」
「こういった酔っ払いの相手は慣れていますから」
ウインクをした充。俺は金城をおぶって店をあとにした。もうやめて、もうわかったからとうわごとのように呟く金城。
全く、どっちが被害者なんだよ……
†
「ここは……」
目を開けた金城は俺達捜し屋を見て目を白黒させている。泥酔していたせいか頭はガンガンするらしい。
「あんた、倭同和弥を拉致したのか?」
「ら、拉致なんてしてない!」
「じゃあ何故、倭同は行方不明になったんだ?」
「お、俺は説得しようと、あいつを目いっぱい接待してたんだ!」
「千石に、連れ戻せと?」
「せっ、千石さんは関係ない!俺がいる限り、あの人は劇団から離れられない!」
「ふぅん、やっぱり弱味握ってたんだ」
金城はくっ、と苦々しげに吐き捨てた。
「千石さんも、俺が接待した。あの人の痴態をカメラに納め、ばら撒かれたくなかったら俺達の劇団に来いと言った。あの人は根っからの役者だ。その代わり名ばかりでいいから俺を団長にしろと言った。そのくらいは、お安い御用だったが……」
「なら、今回は倭同の痴態をカメラに納めて、劇団に留め置くつもりだったんだな?」
「しょうもない奴やな……」
「おっ、俺の夢だったんだ!劇団は……俺の脚本で、舞台を作り上げるのが……」
金城はさめざめ泣き出した。
「よく分かった。やり方がまずかったな。もっとお前もよく他の舞台を観て勉強すれば、もっともっとよくなると思うぜ」
「……今川焼き屋さん……」
「そういう事っ、だから倭同さんを解放してあげてね」
「……そんなに、俺の脚本って……」
「はっきり言って、最悪」
そんなぁと言って突っ伏した金城を帰宅させ、この事件は終了した。それからは、倭同は新しく劇団を立ち上げ、脚本家として【ラブ・バラードを聴かせて】の脚本家である先生の弟子を紹介された。劇団員はネットで集め、まだ5人しかいないが、頑張っている。
「アマさん、よかったら舞台に……」
「すまねぇな。俺は今川焼きを焼くのが仕事なんだよ。興味ある奴なら……」
俺は傍らで今川焼きを頬張る【甘納豆】の二人を指差した。
「悪くはないんすけど、コントになりそうで」
「おいおいおいおい!」
「誰が漫才やっちゅうねん!」
「漫才じゃなくて、コントだって言ってますよ」
「一緒や!」
時計をチラリと見て、新しい劇団の主宰は音路町に消えていった。彼等の劇団の初公演には、是非ともVIP席で観覧させる事を約束させ、俺はその姿を見送った。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる