占い師さんは名探偵

回転焼き。

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 そうして、発見から6時間経過した午前11時、僕は単身、また六車慶勝の豪邸を訪れた。パトカーは勿論もうハケており、マスコミ関係の記者も今はいない。僕はまたインターホンを押す。

【はぁい】
「すみません、ちょっと確認したい事と、忘れた物がありまして…」

 警察手帳を見せると、また門扉が開く。さっきと違うのは、僕は今、TV電話を繋いだ状態だという事、僕のスマホのカメラから向こうの状況は、優歌さんのスマホで丸見えなのである。

【あっつくるしい庭やなぁ。熱帯のジャングルちゃうん?】
「しっ…声でかいですよ…」
【食べれもせんバナナぶら下げて、ホンマええ趣味やわ】
「…それ、関係ありますか?」

 玄関をお手伝いさんが開けてくれた。僕は胸ポケットにスマホを差した。カメラは正面。お手伝いさんは少し猿っぽい痩せた女性だ。おばちゃんと言うが…

「ちょっと確認したい事がありまして、中によろしいですか?」
「えぇ、構いませんよ」
「そうですか。あっ、ちょっとお手伝いさんは外してもらっても?」
「えぇ、どっちみち今あがりですから」

 ビジネスライクな会話の後、玄関から中に入る。一応形式上ではあるが、お手伝いさんは玄関で待っている。リビングまでの廊下を進む。その画は優歌さんにも見えている。

【さすがやな。スケールがちゃう】
「アーティストですか?」
【それもやけど、絵もやな。なんちゅうか、一貫性が全然あらへん】
「まぁ…」
【金持ちか何かよう知らんけど、あたしはこの人あんま好きやないねんけどな】
「なんで?結構ハンサムですよ?」
【ええ?あの手のオトコはだいたいタラシやねん。せやったやろ?】

 リビングから中に入る、さすがに遺体はなくなっていたが、殆ど現場は保存されている。転がったスツールも、シーリングファンに付いた電気コードも

【白木の床やな】
「ですね。フローリングとはまた少し違う」
【白木なのに、あんま床に傷あらへんねやな。あのお手伝いさん、丁寧やねんな】
「はぁ…」
【?ちょっと橘川くん?】

 優歌さんが言った。ちょっと振り向いてくれと、そこには水槽がある。出目金と和金。

【餌あげて?】
「え?」
【ええから】

 僕は金魚の餌を手にすると、蓋を開いて餌を水面にパラパラと落とした。

【あんま、食べよくないねんな】
「そうですか?そうは見えませんが…」
【お手伝いさん、餌あげてはんの?】
「お手伝いさんは、金魚は管轄外だそうでして」
【おばはん、ちゃっかりしてはるな。って、ちょっと橘川くん。ポンプつけたってや】

 よく見ると、エアポンプが付いていない。僕はオンオフスイッチのついたタップに刺さったエアポンプのスイッチを入れた。駆動音とともにポンプからエアーが吐き出される。

【おかしない?】
「何がです?」
【六車はん、自殺しはったんやろ?】
「えぇ、まぁ、みたいですが…」
【エアポンプ止めて?】
「まぁ…でも、そんな所まで気にする心理状態ですかね?パチパチは足下でしたし」
【なのに、金魚に餌はあげたんやろうな】
「え?ちゃんと食べてたから、お腹は空いてたんでしょ。だってあれから」
【半日近く経つやろ?金魚って餌、あんま食べよくないねん。一日2回くらいや。半日食べんくても、あのくらいしか食べへん。ってことは、六車はん、自殺する前に金魚に餌あげてんねんて。】
「ん~、それは…」
【もっと前に餌あげんとったら、もっとガツガツ食べに来るはずやで?それに、餌あげてんのに、ポンプ止めてはんねやで?おかしない?】
「…!」

 なるほど!自殺という話を出された時に感じた違和感はこれだったのか…!

【これ、アレなんちゃう?】
「そんな気がしますね」
【自殺やあらへん。殺人や】
「…何でそんな、嬉しそうなんですか?」
【わかる?一度言ってみたかったんや。ふふっ】

 あの三日月のように瞳を曲げて笑う優歌さんの顔が浮かんだ。
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