占い師さんは名探偵

回転焼き。

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――捜査会議なんて、かったりぃっスねぇ
などと、中坊がそのまんま大きくなりましたみたいなナリで小杉が言いながら、昼下がりの通りをかったるそうに歩いている。これから昼を食べようかなと思っているが…
――なぜか知らないが、非常に冷やし中華のクチだ。
それを知ってか知らずか、小杉が言う。

「あ、そういやこのへん、美味い冷や中の店があるんスよね」
「うそ?僕も知らなかった」
「なんからしいっスよ。こないだの合コンで知り合ったコが言ってました。兎に角、映えるって」

――そっちかよ。食べてはみたいけど

「ただ、店の名前忘れたんスよ」
「じゃ言うなって……」

 しょうがない。あんまりそんなクチじゃないが、蕎麦だな。と思ってたら、LINEが入った。見たら優歌さんだ。アイコンはでかでかと映ったガンつけたような表情のアルタイルだ。

【進捗はどない?】

 小杉と喋りながら、僕はメッセージを返す。

【まだ進展はありませんよ】
【りょ】

 無味乾燥。僕は思い付いたように返信する。

【ところで、僕今⚪︎⚪︎通りにいるんですが、この辺で美味しい冷やし中華のお店があるって聞いたんですけど、知りません?】
【デート?】
【相手はいますけど、オトコです】
【写真、キボンヌ】

 なんじゃそりゃ。いよいよ小杉が気にしてきた。お?先輩オンナすか?となってきたら面倒だ。ものすごく。しれっとどうかなっと言いながら横顔の小杉を撮り、優歌さんに送った。

【じゃがいも】
【www】
【それより、冷やし中華の店?あるで。夏が好きって名前の店や】

「あ~、そういや小杉さ」
「なんすか?先輩」
「その冷やし中華の店、【夏が好き】って名前?」
「そうそう!なんで知ってんスか!」
「いやぁ。確かそんなのができたような、なぁ」

 と言いながらスタンプを返そうとした矢先に帰ってきた返信が…

【すっごいマズいで】

――訊かなきゃよかった。



 と言いながら、僕と小杉は冷やし中華の誘惑に勝てず、【夏が好き】はマズいらしいのでやめ、一軒の町中華の店に入ることにした。やはりマズくても映えるらしい店に客を取られてしまっているのか、昔ながらの町中華のこの店はランチタイムでもぽつぽつ空席がある。奥さんらしき女性に指を2本立て、中に進んだその時。

「ん?」
「んぁっ」

 冷やし中華(ごまだれ)を食べているのは、僕の目に狂いがなければ、あの小さな輪郭、茶色のショートカット、猫系の瞳、色白……優歌さん?いや、あの占い師のローブではない、グレーのパンツスーツだ。優歌さん?はこっちに近付いてきた。

「あの、お昼休み中申し訳ありません」
「ん?」
「私、こういうものです」

 僕と小杉は優歌さん?が渡してきた名刺に目を落とす。フリーランスのライター?ただ肩書きはライター、名前は杉森優那すぎもりゆうな
――なんか、優歌さんとも、違うとも、どっちともとれそうなんだが、どっちなんだろうか。

「見たところ、刑事さんかと思いまして…」
「そうです、ですが…」
「私、フリーランスのライターでして、どこの編集社かというのには属しておりません。もし差し支えないようでしたら。幾らかご協力をお願い致したく…」
「俺は、構いませんけど、先輩どうスか?」

 小杉は、なんだか普段から垂れ目で開いていない目が更に開いていない。贔屓目に見ても目の前のライターさんもかなりの美人さん。こいつ、簡単な奴だな。

「ま、まぁ…」
「ありがとうございます。そちらの方が、先輩刑事さんですね?」
「そ、そうです」

 やばい、ナチュラルすぎて混乱してきた。しかもこの杉森さんってライターさんは、声こそ優歌さんそっくりなんだが、流暢な標準語。どっちだろう。双子?

「こちらだと、あまり積もるお話はできなさそうですね、どうでしょうか。この後、駅前のスタバで私、待ちますよ」
「ん…ですね。分かりました」
「じゃ、これ食べ終わったら行きますから」

 杉森さんは冷やし中華を片付けると、レジでお金を払って外に出て行く。丁度その頃、二人分の冷やし中華を僕は注文した。

「ねぇ、先輩」
「ん?」
「あのライターさん、凄いタイプなんスけど」
「…公私混同は、よしといてくれよ」

 ニヤつく小杉の向こう側、杉森さんはふいにこちらに向かって振り返る。手にはスマホを握り、画面をこちらに肩越しから向ける。
――アルタイル。
 そして首を小さく傾げ、笑いながらウインクした。

――やっぱ、そうだったんじゃん。

 
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