占い師さんは名探偵

回転焼き。

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「ホント、いいんですか?私なんか誘っていただいて…」

――焼肉食べたいなぁって言ったのは貴女じゃないのよって言葉を飲み込む。ちゃっかり、優歌さんの前には大ジョッキの生が置かれている。小杉が好きに頼んだカルビ、ハラミ、タン塩、ロースがテーブルにずらり。火のついたロースターの網の上で真っ赤なカルビがじゅうじゅう踊っている。

「いいんですって、こないだお世話になったんだから。なぁ小杉」
「ホントっスよ、それに野郎の中に女性って映えるっスからね!」
【どうも、杉森ちゃんです】
「ぶふっ!」
「先輩、なんか思い出し笑いっスか?思い出し笑いすんのって、ムッツリスケベらしいんスよ!」
「お前なぁ…」

 優歌さんは生大を傾けている。焼ける前にジョッキを空にしてしまいそうな勢いだ。小杉は言った。

「杉森さん、飲みっぷりが半端ねぇっスね」
「そんな、恥ずかしい…」
【飲兵衛や言いたいねやろ、このじゃがいもがww】
「……」

 僕が上目でちらりと優歌さんを見ると、目が合った。優歌さんはウインクをする。小杉だったら騙されちゃいそうだが、僕は騙されないからな…

「んで、刑事さん達の見解はどうなんでしょうか?」
「んぇ?仕事の話っスか?とりあえず肉食いましょうよ肉!」
「そ、そうですよ優……杉森さん」
【また優歌さん言おうとしたやろ】
「…すいません、僕烏龍茶ください」
「へ?先輩飲まないんスか?」
「じゃ、私また生頼んじゃおうかなぁ…」

 僕は軌道修正する為、無理やり焼けた肉をサーブする。

「ダメっすよ先輩!こっちはレモン絞るスペースなんスから!」
「んなもん知らないから!」
【何やねん、知らんの?】
「すいませんねぇホントに…」
「ん?杉森さん、何か言われたんですか?」
「いや、私は何もっ。ん~美味しいお肉!」

――2時間の刑事ドラマとかだと、こういったシーンで何かをひらめいたりとか、するかもしれないが、優歌さんも僕も、ましてや小杉なんかにはひらめく要素は見当たらない。

「とりあえず、東郷雛子と須藤あきらは不倫関係を否定しましたね。直接的な動機にはならなそうです」
「そうですか、まぁ否定するでしょうね?」
「オトコとオンナはそんなもんっスよ」
【じゃがいものクセに生意気やなぁ】
「……僕、ライス頼みます」
「あ、なんか誤魔化したぁ!」
「ちょ、いきなり何ですかっ!」

 やや酔いが回ったらしい優歌さんは、こちらに悪戯っぽい笑顔を見せる。今日初めて飲むが、この人、多分酔うとかなり面倒くさそう…

「それにしても、アリバイ工作だとしても色々と解せないところばっかりなんですよね…」
「えぇやんもう!」
「はぁっっ?」
「あれっ?えぇやんってまさか、杉森さん関西の方?」
「せや、あかん?」
「あかんくないっス!あかんくない!」
「ひひひひ…」

――何だそりゃ。僕のLINEに一言。

【それ、あたしが言うた事やし、ええやないの】

――まぁ、そりゃそうだ。

「そういや、あの渋谷ってネズミみたいな編集者の行ったもつ焼きの店、美味かったっスね!」
「何何?小杉ちゃん、そんな店内緒で行ってはるのぉ?」
「こっ、小杉ちゃんってちょっと!」
「えぇやんなぁ、小杉ちゃんで!」
「えぇですえぇです!橘川ちゃん!」
「誰が橘川ちゃんだ!」

――面倒くさいのが揃ってしまったな…

「このお店、結構美味しい和牛出してくれるんスって」
「そうなん?よー知ってはるやん小杉ちゃん!」
「でしょでしょ?杉森ちゃん!」
「誰が杉森ちゃんやねん!あんさんそんじゃじゃがいもって呼ぶで!」
「オイっ…小杉も調子に乗るなって…」
「いいんですいいんです!楽しきゃ!やはり日本人なら和牛っスよねやっぱ!」
「違いなんかわかんないくせに……」

 僕はそんな中、へべれけに酔っ払っている優歌さんの目線が、ほんの少し鋭くなった事に気付いた。それを見ていたら、優歌さんはまた、とろんとした瞳に変わった。

「自分っ、また生頼みます!」
「おぉっ!おいじゃがいも!調子乗るんやないで!」
「酔ってないっス!酔っては…」

――いや、ぐでんぐでんだろ。
そんな中、優歌さんが生大を空にして店員を呼んだ。

「すいませ~ん、半ライスと、コーラええですか?」

 ぐでんぐでんの小杉の斜め前から、こちらに勝ったかのような目線を優歌さんは向けてきた。
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