占い師さんは名探偵

回転焼き。

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 焼肉から2日が過ぎた昼間。1日の休みを挟んだ出勤日。あれから鱈腹飲み食いした小杉はもはや千鳥足、呂律すら回らないくらいに酔っ払っていた。僕は小杉を寮に連れて行こうとしていた。そんな中、店から出てきた優歌さんがこちらを向いて言った。どちらかと言うと、優歌さんもややおかしい。千鳥足ではないが、やや呂律があやしく、ひひひひと笑っている。

「橘川くん、ご馳走様な」
「ホント、ヒヤヒヤしましたから…」
「うぇ~次ぃ~」
「じゃがいも、ちゃんと歩ける?」
「大丈夫、僕が連れて帰りますから」
「やさしい~橘川くん、ひひひひ…」
「そりゃどうも、って優歌さんも酔ってますねぇ」
「あかん?」
「いや、あかんくないですけど…」
「おもんないなぁ橘川くん、真面目や!たまにはハメ外さなあかんで!ひひひひひ」

――なるほど、優歌さんは酔ったら、ひひひと笑うのか。普通はふふふって笑うのに。ってそんな事はいいとして…

「明日、休みやろ?」
「まぁ、そうですね」
「うち、来る?」
「え?優歌さんの家?」
「いやん、何考えてんの~」
「違いますからっ!」
「それがおもんないねんて!まぁええわ。真面目なのが橘川くんのええトコやって思うから、ひひひ…」
「勘弁してくださいよぉ」
「ほな、明日いつでもええから、待ってるで」
「…掃除、しといてくださいね」
「何言ってはんの?占いコーナーに決まってるやん」

――それは、素なんだ…



 そのまた翌日になる今、取調室には容疑者と思しき1人の人物、小杉、そして僕がいる。小杉は記録をしている。僕はその容疑者と向き合い、目をじっと見る。

「お忙しい中申し訳ない」
「ホントですよ。こんな所に…」
「ここに来ていただいたのは他でもありません。六車慶勝氏の事件の件です」
「事件?なんで?」
「あれは偽装自殺ですよ。周到に用意された」
「は?」

僕は続けた。

「遺書は犯人が書いていました。それを準備して六車さんのお宅を訪れた犯人は、六車さんを絞殺した。その時に軽く揉み合ったんでしょうね?つい身体が金魚のエアポンプのスイッチに触れ、スイッチを切ってしまった。犯人は事切れた六車さんを、シーリングファンに吊るし、あたかもスツールを蹴飛ばして首を吊ったかのように仕向けた」
「ほう…」
「我々は疑問があったんです。自殺をするというなら、エアポンプを切っても関係ない。でも、これから自殺をする人間が、エアポンプを切って気付かなくても、しっかり金魚に餌を与えている」
「ふぅん」
「さて、ここからです」



「犯人は現場をそのままにした状態で、六車の家のキーを盗んだんや。しっかり施錠してな」
「ん?施錠ですか?」
「また、現場に戻るつもりやってんな」
「何をしにですか?」
「偽装工作や」

 優歌さんは、水晶玉ごしに言った。みゃあとアルタイルが鳴いた。頭を撫でる優歌さんに、うっとりしたようにアルタイルがじゃれている。

「そんな中で誰かが入ってきたりしたらコトや。犯人は一度帰った。ほんでまた六車の家に戻る。ほんでやったのが、エアコンを切って、ラジオのタイマーをかける事。あと、やる事があるとしたら、ハガキを出す事」
「ハガキ?」
「せや、ハガキの回収が翌日になる時間帯やないとあかん。犯人はあらかじめトドロキ名義のハガキをポストに投函すんねん。勿論、六車の家の近くや」
「優歌さん、それはわかりました。でも、もし死亡推定時刻を0時過ぎに偽装したいなら、わざわざエアコンを切るのは逆効果じゃ?」
「そこやねん」

 優歌さんは膝にアルタイルを乗せて言った。

「逆に部屋をあっつくして、死亡推定時刻を早めたんや。そりゃそうやろ。この暑さや。何でも腐りやすくなんねんで?あっつい部屋に踏み込んで、六車が死んではる。ってなったら皆思うやろ。死亡推定時刻、あてにならへんって」

――なるほど、周到に計算されている。みゃあと啼くアルタイルがこちらをじろりと見た。

「犯人はあのあっつい部屋に、六車のバスローブを羽織り、我慢して【石井由梨亜のてっぺんGROOVE】を聴いてた。音量は大きめ、勿論、隣人にアピールする為や。犯人は、隣人の事も知ってたんやろ。近眼が進んどった事も、なかなか頑固なこともやな」
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