5 / 18
4
しおりを挟む
「成程ね」
血腥い殺人事件の話をしながらも、血にも見えないことはないブルーベリーソースのかかったケーキに紅茶を飲みながらふむふむとホームズは頷いた。
「もう何十年も昔の話だ。かの額賀氏の悪食に関しても想像の域を出ない」
「しかし、ここの使用人は殆どが若い女性だったって言うじゃありませんか?」
3階の百日紅の間に泊まっているマープルがふくよかな身体を震わせ、寒気をアピールした。
「本人は断固否定していたというじゃありませんか。いくらなんでもねぇ」
さすがのフェルも食指を止めて眉間に皺を寄せる。そんな中けらけらと笑い出したのは3階の勿忘草(わすれなぐさ)の間に泊まっているファイロである。
「まぁ、狩猟民族の歴史の中には、人肉食の話があってもおかしかぁないですがね」
「うぇっ…」
「そりゃあお前の感覚じゃ考えらんないかもしれないがな。ねぇ、ポワロさん」
「どうだろうな。しかし死体が持ち去られていた事に何かの動機付けをするとすれば、カニバリズムを視野に入れる必要もあるかな」
ー概要はこうだ。
大富豪、額賀陽十郎。彼は大富豪であると同時に無類の悪食であったとされている。世界の珍品と呼べる珍品を食べ漁った彼は、兼ねてから興味がある食材があった。
それが、人肉だという。
めくるめく人肉食の世界に取り憑かれた彼は、使用人を数人雇い、一晩のうちに殺害、その肉を食したとされているが、当時の裁判ではそれを本人は否定していたという。しかし依然として、彼女らの行方はしれず、事件は額賀陽十郎の狂気の沙汰として幕を閉じたのだという。
「それが、いつの間にかこの館が人を喰うって話になっちゃったってか?」
ファイロはけらけらと笑った。
「そういえば、当のデュパンはどこにいるんだ?」
「あ、そうだよ。あいつの部屋は確か…」
ホームズは広間からロビーに向かう。そこには恭しく腰を折り礼をしてきた執事がいた。
「デュパンの部屋は…?」
「デュパン様は【竜舌蘭の間】であります」
ホームズは執事に鍵を借りると、エレベーターに乗った。続いて乗ったのはポワロ、マープル。ファイロとフェルはまだ広間に残って紅茶を飲んでいる。
「これしかないんだよな」
「エレベーターしかないのも、考えものですね」
ようやくのところで、3階の廊下に到着した。廊下は2階のそれと同じく、赤いカーペットが敷かれ、部屋の脇には小さなオレンジのランプがついている。ホームズは部屋の名前を確認する。
「ここだ」
「おぉい、デュパンよ」
ポワロは拳でドアを叩いた。返事は全くない。ホームズは執事から受け取った鍵を鍵穴に差し込んだ。かちゃりという音。施錠はされていたようだ。
「デュパン」
ホームズは扉を開く。間口からほどないテーブルと椅子には、一種異様なものが座っている。
「うっ」
「何で…!」
「デュパン!」
黒いジャケットを羽織った中肉中背のデュパンは、背筋を伸ばしてそこに座っていた。ただ、そこには
…首がなかったのである。
「うわぁっ!」
「どうして…」
ポワロとマープルは部屋を飛び出した。ホームズは呆然とそこに立ち尽くしていた。
「どうして、こんな事に…!」
血腥い殺人事件の話をしながらも、血にも見えないことはないブルーベリーソースのかかったケーキに紅茶を飲みながらふむふむとホームズは頷いた。
「もう何十年も昔の話だ。かの額賀氏の悪食に関しても想像の域を出ない」
「しかし、ここの使用人は殆どが若い女性だったって言うじゃありませんか?」
3階の百日紅の間に泊まっているマープルがふくよかな身体を震わせ、寒気をアピールした。
「本人は断固否定していたというじゃありませんか。いくらなんでもねぇ」
さすがのフェルも食指を止めて眉間に皺を寄せる。そんな中けらけらと笑い出したのは3階の勿忘草(わすれなぐさ)の間に泊まっているファイロである。
「まぁ、狩猟民族の歴史の中には、人肉食の話があってもおかしかぁないですがね」
「うぇっ…」
「そりゃあお前の感覚じゃ考えらんないかもしれないがな。ねぇ、ポワロさん」
「どうだろうな。しかし死体が持ち去られていた事に何かの動機付けをするとすれば、カニバリズムを視野に入れる必要もあるかな」
ー概要はこうだ。
大富豪、額賀陽十郎。彼は大富豪であると同時に無類の悪食であったとされている。世界の珍品と呼べる珍品を食べ漁った彼は、兼ねてから興味がある食材があった。
それが、人肉だという。
めくるめく人肉食の世界に取り憑かれた彼は、使用人を数人雇い、一晩のうちに殺害、その肉を食したとされているが、当時の裁判ではそれを本人は否定していたという。しかし依然として、彼女らの行方はしれず、事件は額賀陽十郎の狂気の沙汰として幕を閉じたのだという。
「それが、いつの間にかこの館が人を喰うって話になっちゃったってか?」
ファイロはけらけらと笑った。
「そういえば、当のデュパンはどこにいるんだ?」
「あ、そうだよ。あいつの部屋は確か…」
ホームズは広間からロビーに向かう。そこには恭しく腰を折り礼をしてきた執事がいた。
「デュパンの部屋は…?」
「デュパン様は【竜舌蘭の間】であります」
ホームズは執事に鍵を借りると、エレベーターに乗った。続いて乗ったのはポワロ、マープル。ファイロとフェルはまだ広間に残って紅茶を飲んでいる。
「これしかないんだよな」
「エレベーターしかないのも、考えものですね」
ようやくのところで、3階の廊下に到着した。廊下は2階のそれと同じく、赤いカーペットが敷かれ、部屋の脇には小さなオレンジのランプがついている。ホームズは部屋の名前を確認する。
「ここだ」
「おぉい、デュパンよ」
ポワロは拳でドアを叩いた。返事は全くない。ホームズは執事から受け取った鍵を鍵穴に差し込んだ。かちゃりという音。施錠はされていたようだ。
「デュパン」
ホームズは扉を開く。間口からほどないテーブルと椅子には、一種異様なものが座っている。
「うっ」
「何で…!」
「デュパン!」
黒いジャケットを羽織った中肉中背のデュパンは、背筋を伸ばしてそこに座っていた。ただ、そこには
…首がなかったのである。
「うわぁっ!」
「どうして…」
ポワロとマープルは部屋を飛び出した。ホームズは呆然とそこに立ち尽くしていた。
「どうして、こんな事に…!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる