朧月楼の殺人

回転焼き。

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 楠木伸之は悪夢に魘されていた。気のせいだろうか。物音がしたような気がして楠木は飛び上がるように起き上がった。べったりと掌には汗が滲み、心臓の鼓動は出鱈目なビートを刻んでいる。
 起き上がり、部屋の鍵を開いた。なんだか部屋にはいたくない気分であった。楠木は昨夜あまり飲み慣れなかった酒を一人呷ったせいか、頭がふらついている。できれば外の空気を吸いたかったが、外は雨が強く打ち付けている。

「あっ、楠木さん…」

 謙也が楠木の前にやって来た。楠木は挨拶のように手を挙げて応えた。

「寝れなくてな」
「部長も、そんな事があるんですね」
「ふふっ、僕を超人みたいに思ってもらっちゃ困るよ」

 楠木は謙也を見た。なかなか端正な顔立ちをした青年だ。主役をやるにはまだ演技が下手くそだが、光るものがある。あの御厨すらそう言っていた。

「あの、部長…」
「僕はね、翔子とはおしまいにしたいんだ」
「え?」
「彼女と僕は釣り合わないよ」
「そんな事…それに翔子ちゃんは…」
「大丈夫。彼女はそんなに馬鹿じゃないよ」

 そんな中、耳を劈くような悲鳴が聞こえた。楠木と謙也は顔を見合わせ、廊下を駆けた。直感的に神戸の部屋に向かう楠木と謙也の目には…

「翔子ちゃん?」
「楠木さん、謙也くん…?」
「何か悲鳴が聞こえたよな?」
「うん…」
「神戸はいるか?」

 3人は神戸の部屋のドアを叩いた。神戸は出てこない。嫌な予感がする。怒られることを覚悟した3人は神戸の部屋のドアに体当たりをした。

「どうしたんだ?凄い声が…」
「沢井さん!手伝って!」
「あ、あぁ」

 沢井も加わり、神戸の部屋である満天星の間のドアを破った。

「神戸…」
「れ?」

 神戸はどこにもいなかった。部屋はしんとした空気に包まれている。

「おい、神戸どこだ!」
「神戸くん?」
「ここにはいなそうだな。ならあいつはどこに?」
「探そう!」

 全員が神戸を捜した。2階にはいない。なら一階だろうか?沢井は1階に向かうエレベーターのボタンを押した。

「あ、くそっ…」

 エレベーターはゆっくりゆっくりと降りる。楠木は沢井に訊いた。

「そっちからも聞こえたのか?」
「俺は1人で1階で呑んでたからね。こっちは吹き抜けで声はよく響く」

 1階を捜す一同。広間にもどこにも神戸はいない。となれば…

「3階?」
「え?」
「謙也くん、神戸くんはいなかった?」
「いや…僕は見ていない…よ」

 3階に上がる。エレベーターはようやく3分ちかくかけて3階に着いた。

「あ…」

 エレベーターのドアが開く。開いた先の廊下には、頭を割られた神戸がそこに人形のように座り込んでいた。
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