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【新しい生活の前に】
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唐突に、進学する学校が公立高校からお嬢様学校の桜女子へと変わり、家族になんて説明しようと思っていたが、そんな心配は無用だった。
家族は始めから桜女子に通う予定だったと記憶が改変されていたからだ。しかも、特待生で授業料と寮費はタダという待遇。
特待生を貰えるような一芸を灯は持っていないため、なにを評価しての特待生かは不明で合ったが、何も問題なく誰にも違和感を持たれることなく事が進んだ。
なにごとにも動じない灯でも、これには気味の悪さを覚えた。あの怪物は、俗世にも簡単に力を及ぼせるのだ。私なんて、SNSで友達登録を消せるくらいどうとでもできるのだと。
そんな灯であったが、今は桜女子が存在する市へと来ていた。進学する前に件の紫と顔合わせをするためだ。
待ち合わせ場所は弓永から紫の護衛を依頼された場所、市庁舎の前だ。春一番が吹き荒れ、散った梅の花を巻き上げる肌寒い曇り空の下、何の変哲もない街並みの一角で、あの世にも奇妙な出来事が起こったとは、とても考えられないほど現在は平穏である。
今は12時55分。紫との待ち合わせは午後1時だから、そろそろ来るころだろうと灯は待っていた。今日の服装はあの一件があったとき貰ったものに上着を羽織った格好だ。付添で瑕が来るので、知った格好のほうが見つけやすいだろうとの配慮である。
そして、丁度午後1時になった時、1台の黒く塗られた高級車が市庁の前に止まった。車から初めに出てきたのは瑕である。久々の再会であったが、綺麗なブロンドを束ねた姿は強烈な印象を残していて、灯の記憶から薄れることはなかった。
そんな瑕がこちらに一礼を入れた後、後部座席の扉に手をかけた。待ちに待った、お嬢様のご登場だ。ゆっくりとドアは開かれる。嫌でも注目させられ、ドアから一瞬たりとも目が離せない。そして少女は、まるで映画のワンシーンのように車から現れた。
絹のような黒髪が印象的だ。身長は160Cm後半程度、切れ長の双眸に女性らしさがよく出た体型、強い印象を与えるには十分な容姿だった。しかし、なぜだか今にも消えてしまいそうな儚さがあり、それが彼女をさらに引き立てている。
瑕から聞いた通り綺麗な少女だ。これまでで一番と言っても良いくらいに、――というのが灯の印象である。
「~灯様、こちらが護衛対象となる紫です」
ぼうとしていた灯は、瑕の話を聞いておらず、どうやら紫の紹介を受けたみたいだということに気付いた。
「初めまして、立花 灯さん。今後とも宜しくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく。紫さん」
挨拶と共に差し出された手は、ひんやりとしていて死人である灯より冷たく、今にも溶けて消えてしまいそうだった。
現在、庁舎近くの喫茶店に来ている。瑕さん御用達ということだけど、年期の入った木製のテーブルや、やけに座り心地の良い椅子など高級感のあるお店だ。
実際、メニューを見たところ相当に値段が高い。私なんかお呼びでない店なんだけど、今日は弓永 宗のおごりなので問題なしだ。
せっかくだし色々と注文してやろうと思っていたけど、気の置ける間柄(最近、気の置けないの意味を知った。)である紫と瑕さんが居るから、遠慮と見栄で安めのケーキとブラックのコーヒーを頼んでみた。
香ばしくて少し酸味を感じる臭いは問題無かったけど、味は苦くて失敗だ。紫の後ろに居る瑕は、私の様子に気付いているようで含み笑いを隠せていないのがムカつく。
「店員さん。ミルクと砂糖を彼女にお願い。あと、このケーキも貰えるかしら」
などと、紫は私が所望していた物を全て注文してくれた。
「あれ、私ってそんなに顔に出てた?ちょっと恥ずかしいな……」
あははとごまかしてみたけど、紫は呆れ顔で見ている。
「そんなわけ無いでしょ。今日はアマタから腕輪を借りて来ていたの。灯さんの思考が読める特別な腕輪を」
そう言って見せられた腕輪はとても綺麗だった。それにはコハクの様な宝石がついていて、中に虹色に輝く何かが入っている。おそらく『虫』じゃないかな。けど、今まで見せられた『虫』はオゾマシイ姿しかしていなかったので、これは意外だ。
しかし、脳内を覗かれて居たのが本当なら恥ずかしいなんてもんじゃない。
「ふふ、紫さん。種を明かすのが早いですよ。もうちょっと楽しみたかった気がします」
「楽しみたかったとか、瑕さんて、いい性格してたんだね」
「灯さんも覚えたての言葉を得意げに使ってみたり、おごりだからいっぱい頼んでみたかったり、子供らしいところがあって安心しましたよ♪」
これはヒドイ。穴に入りたいとかリアルで思ってしまった。死体だから、お墓になってしまいそうだけど。
「腕輪はもう外すわ。あと、灯さんも遠慮しなくて良いわよ。呼び捨ての方が言いやすいのなら、それで構わないし。私も灯って呼ぶことにするから」
「ついでに、瑕さんも外してもらえると嬉しいんだけど」
なんて言ってみたけど、瑕さんはほほ笑んだだけだ。ホントに良い性格してるよ。
ケーキを食べながらのおしゃべりで、ある程度お互いのことをつかめてきた。こっちのことは腕輪のせいでバレバレだったけど、紫は大人っぽい外見に違わず落ち着いた性格みたいだ。なんて考えていると、紫が話を振ってくる。
「今日は顔合わせの為に来てもらったのだけれど、何か聞きたいことは無いのかしら?」
「ある。誰も教えてくれなかったから、聞いて良いのか不安だったけど、やっぱり私は知っとくべきだと思うんだよね」
ずっと気になっていたことがあった。これは本来一番初めに知らされてないとおかしなことだ。
「紫は護衛が必要だという話だけど、襲われる理由を教えられていない。紫の特殊な生活環境は知っているけど、それだけが理由とは思えないんだよね」
弓永 宗は現実とは思えない力を持っている。そういう世の中から外れた力を持っている連中が他に存在していて、弓永と敵対しているのかもしれない。しかし、これまでの話から紫自身に狙われる理由があるように思えた。
「そうね。父は特殊な人だけれど、それが理由じゃないわ」
紫は紅茶を一口含み、間をおいた。さっきから思っていたことだけど、美人はこういう動作でも絵になるのがすごい。常に映画の中にいるようだ。
「灯さん」
なんてアホなことを考えていると、瑕さんが笑顔で呼びかけてきた。そういえば、瑕には思考がバレバレだった。そのせいで評価が下がっているのか、さっきから名前が『様』付けから『さん』に格下げされている。呼び捨てにされないように、この話は集中して聞かないといけないな。
「私には『呪い』のようなものがかけられているの。私を手に入れた者は、この世の支配者になれるというね」
『呪い』という言葉を発した瞬間、周りの音が全て消えたかのように感じた。発した紫自身は淡く今にも消えてしまいそうなほど弱弱しく映る。そう映るほど、不吉な響きがあった。
「『呪い』か。言われても実感湧かないな。『虫』みたいに見たわけじゃないし。それに『手に入れる』って表現も曖昧で掴み難い話だね」
「そうね。『呪い』については少し難しい話になるから、そのうち説明するわ。手に入れたらって言うのは、私を妻に迎えた男性が該当するはずよ」
紫が、金髪の侍女へ確認も含めてした発言に瑕は肯定の意を示していた。
この話からすると、紫を狙っている存在は男性になるだろう。この世の支配者というのも具体的なことはわからないが、それが本当なら欲する連中がいるのもわかる。それが、弓永 宗のような化け物を敵にまわす、愚行だとしても。
「桜女子に進学したのも男性が少ないから?」
「その通りよ。私を狙っている存在は男性が主だから、直接襲われないようにするためにね。それ以外にも、桜女子は父が理事長みたいなものだから、融通が利くという点もあるわ」
「へえ~、紫パパってやっぱり強い権力持ってるんだ」
紫パパ、こう表現するとあの弓永 宗も親しみが持てる気がする。
「とりあえず、襲ってくる男たちから紫を守ればいいってところかな」
これに対して、瑕が「そうとは限りません」と否定してきた。
「紫を狙うのは確かに男性ですが、襲撃者が男性とは限りません。こちらが警戒しているのは相手も分かっているのですから、その対策を敵側もしてきます。そして、その多くが女性を利用してきます」
言われてみれば納得のいく話だ。紫はその呪いから男性を避けている。よって、女性との方が接触は多く、攫う機会は増える。それに男性は全てライバルになる。自分で動く以外は女性を使うほかないのだ。
「けど、どっちでも狙われるのが変わらないのなら、わざわざ男性を避ける必要はない気がするけど」
「紫を狙う張本人は、『呪い』の存在を知っており、弓永 宗と敵対することが出来る実力者です。そんな者と戦うよりは、使われてくる女性を相手取ったほうがマシというものです。それに、人を攫うような技術を持つ女性を用意すること自体が難しいので、襲撃される頻度も減ります」
なるほど、しかしそうなると紫は悲しい運命にある。普通の少女みたいに恋をすることが出来ない。それに、友人を作るにも敵じゃないか気にしなければいけない。本当に『呪い』というのは厄介な存在だ。
「灯?」
「なに?」
考え込んでいたせいで、紫から呼びかけられてしまった。
「灯が何を考えていたか分からないけど、これだけは言っておくわ。私はこれからの生活がとても楽しみよ」
「その心は?」
「別に頓智なんて利いてないわよ。ただ、『気の置けない』同世代の友人に守って貰えるのだから、これまでに比べれば雲泥の差ね」
紫とは今日知り合ったばかりだが、随分な信頼を寄せて貰えているようだ。心を読まれていたのだから、私の本心はバレバレだが、そんなに安心して貰えるほど素晴らしい考えは持ち合わせてないはずだけどね。
「それに今年から高校生。それだけで、輝かしい青春を過ごせると思わない?」
「自堕落で、平凡な中学時代を過ごしてきた私としては、高校生になったからといってたいしたことが起こるようにも思えないけどなあ」
そんな気の抜けた返事に、紫は少しだけ意地の悪い顔を作った。
「あら、現在進行形で奇妙奇天烈な体験をしているのに、どうしてそんなことが言えるのかしら?」
確かに平凡ではないな。一本取られたような感じだけど、それは輝かしい出来事でも、楽しい経験でもないじゃん。
「まあ、紫と過ごす学校生活だし、喜怒哀楽に満ちた生活が過ごせるかも」
私の拙い返答に、紫は儚げにほほ笑みを返してきた。
話が終わり喫茶店から出ると、空気が一変していた。寒さとは違った冷え冷えとした雰囲気が空間を支配しており、人っ子一人いない状況だ。明らかな異常。考えるまでもなく紫を狙った存在の仕業だろう。
「瑕さん。何かまずそうな雰囲気だけど」
「お察しの通り。現在、紫を狙っている者がいます。どうやらその本人はここに居ないみたいですね。襲ってきたとしても手下が出てくるだけで、たいしたことは無いと思われます」
瑕は平然としているし紫も同様だ。もう慣れに慣れた状況なのかもしれない。
「こういう場合は、いつもどうしていたんですかね?」
「いつもは、私かアマタが排除していたのですが……。今日は灯さんにお願いします」
「え~~?何言ってんの!いきなりなんて無理に決まってんじゃん!」
「これからはこんなことばかりですよ、灯さん。今回は私が付いていますから、予行練習と思ってください」
確かに今は瑕がいるから、私が失敗しても大丈夫かもしれない。しかし、いきなりやれと言われてもな。
「私どもから受けた指導を思い出してください。それで対応できるはずです」
指導かぁ……。
あの日から何度か瑕や弓永 宗に呼ばれたことがあった。その要件は護衛についての話がほとんどだ。
「護衛と言われても、どうすれば良いのか分からないんだけど」
これは初めに瑕へ言い放った泣き言だ。
「難しく考える必要はありません。襲撃してくる存在を排除するだけです」
「簡単に言ってくれるけど、私には敵の識別も排除する力も無いよ。この刀だってまともに振れる自信ないし」
貰った刀は意外と軽かったけど、振れば体ごと持って行かれる始末だ。ひと月足らずで操れるもんじゃない。
「筋は良いと思いますよ。半年も練習すればそれなりに扱えます」
「半年も鍛えている暇ないじゃん。その間はどうするんですか」
瑕は甘い甘いと微笑みながらも不出来な教え子に丁寧に語りかけてきた。
「刀は当面、便利グッズとでも思っていてください。現在の主力は『虫』です。今ここで出してください」
刀が便利グッズという意見は初めて聞いたよ。道でも尋ねれば教えてくれるのだろうか。まあ、それは良いとして『虫』はなぁ……。
「ええ~、アレを出すの?気持ち悪くて、ウジャウジャいるアレを」
「そうですよ。『虫』はアマタが一定数になるよう常に用意し、灯様の周りに潜み指示に従うようになっています。以前教えたように念じればすぐにでも姿を現します」
「前はそれでえらい目にあったと思うんだけど」
以前、『虫』を出したとき全く操ることが出来ず、自分の半径10メートルほどにぎっしりと詰まった状態で30分過ごしたことがあった。『虫』は世間一般で見られるような姿はしておらず、異形でおぞましく、触手を持ったモノや常に胞子状のものを噴出している種類などがいた。その独特な特徴全てが不快感や恐怖心を与える様相で、あの30分はまさに地獄だった。
「それは灯様が上手く『虫』に指示を与えられてない証拠です。正しく指示を出せれば、手足のように扱うことが可能となります。前回は『虫』に恐怖を強く抱いたせいで混乱させてしまったのが原因です」
しかし、指示と言っても思ったように動くものではなく、ある信号を出したら真っ直ぐ進み、別の信号だと右に曲がると言った感じで、実に難しい。
「アマタが用意したとはいえ、『虫』は本能によって行動する生き物です。灯様の思いが届く筈もなく、失敗をフォローしてくれたりはしませんよ」
まあ、確かにその通りかもしれない。しかし、もう少し抵抗をさせてもらおう。あの『虫』は操れたとしても見たくはないのだ。
「攻撃手段は分かった。だけど肝心の敵を判別する方法は?」
瑕はそれも簡単とまたもやほほ笑んだ。
「紫を狙う者の情報はこちらから渡しますが、急に襲われた場合は害意を認識して頂ければ反応できます。害意とはつまり紫を狙おうとする者が発する脳波のようなものです。それは通常では感じることが出来ないほど弱いものですが、灯さまの周りには『虫』が存在し、それらが教えてくれます」
「本音を言わせてもらえれば、『虫』にはあまり頼りたくないけどなぁ……」
「死人とは言え、灯様は人間と大差ありません。たった一人の人間に出来ることなどたかが知れています。いかなる時でも『虫』をお頼りください」
みたいな指導が、紫と会う今日までに何回もあった。その成果を今見せろということだろう。
「敵は、姿を見せていませんが今すぐに襲ってきてもおかしくありません。この様な場合、どうなさいますか?」
瑕からの問いだ。敵はどこにいるか分からないが、こちらが警戒していることは分かっているはずだ。とりあえず、敵が襲ってきたら直ぐに対処できる体制が必要だ。
「とりあえず、薄く広く『虫』の一部を張って、敵の意思を感じ取り易くする。大部分の『虫』は近くに集め、攻撃手段とする」
本当は索敵など他にもやりたいことがあるけど、私の能力じゃ無理だ。
「合格点といった所でしょうか。敵が襲ってきた場合を考え、直ぐに察知できるように対処する必要がありますが、それに多くの『虫』を費やすと攻撃手段が弱くなります。これは灯さんが出来る範囲での有効な戦術だと思いますよ」
これで正解らしい。あとは敵が襲ってくるのを待つばかりだが、これだけ警戒していると襲ってこない可能性もある。楽観的な考えだが、瑕の話から敵さんもそれほど本気ではないようだし、有り得なくはないだろう。というか、襲ってきて欲しくない、心臓は緊張でバクバクしている。
私がそれだけ不安になるんだ。狙われた張本人は大丈夫だろうかとチラッと視線を向けると、こんな事態には慣れっこなのか、冷静な瞳でこちらを見返してくる。それがなぜだか不吉な印象を与えてくる。その冷静な瞳は諦めからくるものじゃないかと。私は紫を背の後ろにしっかりと隠した。だれにも攫われないように。
その時だ!不意に真上から害意を感じた。『虫』たちの伝播から、敵が真上の上空からあらわれたこと、鳥のような姿かたちをしていることが見なくても分かった。
敵は複数居るかもしれない。半分で迎撃しようと、『虫』を上空の敵へと飛翔させた。双方は一瞬で交わり、『虫』たちが瞬く間に敵を処分してしまった。後には何も残っておらず。少しの静寂の後に、冷え冷えとしていた空間が、元通りになっていくのを感じた。
「お見事です。敵の排除に成功しました。思っていたより冷静に対処できていたのは評価できます」
ただし、と意地の悪そうな声を出しながら瑕は私の左手を見てきた。その手には紫の手が固く握られており、冷や汗でじとじとだ。
「襲われた恐怖や紫を守ろうとする意志など様々な感情の結果、咄嗟に手を握ったのはいけませんね。動きづらくなりますし、いざという時刀を振るえませんよ」
指摘された瞬間、パッと手を放した。恥ずかしさからか、顔が火照っているのが分かる。
「紫ごめん。痛くなかった?」
紫はクスクスと笑いながら、「問題ないわ」と返してきた。
「物怖じしない灯でも、動揺するのが分かって良かったわ。これからもこういうことがあると思うけど、がんばってね」
と言って手を差し出してきた。笑われたことに少しムッとしたけど、紫を見ると自然と怒りが消えて無くなる。それは彼女の人徳か、はたまたまとっている儚さのためだろうか。
どちらにしろ、彼女から差し出された手を払うようなマネはする気は起きなくて、そっと彼女の手を握った。
今日はこれでお終いかな。次、紫と会う時は入学式になるかもしれないが、そのときまでにもう少し鍛えておこうかなと思う程度には、彼女のことを気にいっていた。
家族は始めから桜女子に通う予定だったと記憶が改変されていたからだ。しかも、特待生で授業料と寮費はタダという待遇。
特待生を貰えるような一芸を灯は持っていないため、なにを評価しての特待生かは不明で合ったが、何も問題なく誰にも違和感を持たれることなく事が進んだ。
なにごとにも動じない灯でも、これには気味の悪さを覚えた。あの怪物は、俗世にも簡単に力を及ぼせるのだ。私なんて、SNSで友達登録を消せるくらいどうとでもできるのだと。
そんな灯であったが、今は桜女子が存在する市へと来ていた。進学する前に件の紫と顔合わせをするためだ。
待ち合わせ場所は弓永から紫の護衛を依頼された場所、市庁舎の前だ。春一番が吹き荒れ、散った梅の花を巻き上げる肌寒い曇り空の下、何の変哲もない街並みの一角で、あの世にも奇妙な出来事が起こったとは、とても考えられないほど現在は平穏である。
今は12時55分。紫との待ち合わせは午後1時だから、そろそろ来るころだろうと灯は待っていた。今日の服装はあの一件があったとき貰ったものに上着を羽織った格好だ。付添で瑕が来るので、知った格好のほうが見つけやすいだろうとの配慮である。
そして、丁度午後1時になった時、1台の黒く塗られた高級車が市庁の前に止まった。車から初めに出てきたのは瑕である。久々の再会であったが、綺麗なブロンドを束ねた姿は強烈な印象を残していて、灯の記憶から薄れることはなかった。
そんな瑕がこちらに一礼を入れた後、後部座席の扉に手をかけた。待ちに待った、お嬢様のご登場だ。ゆっくりとドアは開かれる。嫌でも注目させられ、ドアから一瞬たりとも目が離せない。そして少女は、まるで映画のワンシーンのように車から現れた。
絹のような黒髪が印象的だ。身長は160Cm後半程度、切れ長の双眸に女性らしさがよく出た体型、強い印象を与えるには十分な容姿だった。しかし、なぜだか今にも消えてしまいそうな儚さがあり、それが彼女をさらに引き立てている。
瑕から聞いた通り綺麗な少女だ。これまでで一番と言っても良いくらいに、――というのが灯の印象である。
「~灯様、こちらが護衛対象となる紫です」
ぼうとしていた灯は、瑕の話を聞いておらず、どうやら紫の紹介を受けたみたいだということに気付いた。
「初めまして、立花 灯さん。今後とも宜しくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく。紫さん」
挨拶と共に差し出された手は、ひんやりとしていて死人である灯より冷たく、今にも溶けて消えてしまいそうだった。
現在、庁舎近くの喫茶店に来ている。瑕さん御用達ということだけど、年期の入った木製のテーブルや、やけに座り心地の良い椅子など高級感のあるお店だ。
実際、メニューを見たところ相当に値段が高い。私なんかお呼びでない店なんだけど、今日は弓永 宗のおごりなので問題なしだ。
せっかくだし色々と注文してやろうと思っていたけど、気の置ける間柄(最近、気の置けないの意味を知った。)である紫と瑕さんが居るから、遠慮と見栄で安めのケーキとブラックのコーヒーを頼んでみた。
香ばしくて少し酸味を感じる臭いは問題無かったけど、味は苦くて失敗だ。紫の後ろに居る瑕は、私の様子に気付いているようで含み笑いを隠せていないのがムカつく。
「店員さん。ミルクと砂糖を彼女にお願い。あと、このケーキも貰えるかしら」
などと、紫は私が所望していた物を全て注文してくれた。
「あれ、私ってそんなに顔に出てた?ちょっと恥ずかしいな……」
あははとごまかしてみたけど、紫は呆れ顔で見ている。
「そんなわけ無いでしょ。今日はアマタから腕輪を借りて来ていたの。灯さんの思考が読める特別な腕輪を」
そう言って見せられた腕輪はとても綺麗だった。それにはコハクの様な宝石がついていて、中に虹色に輝く何かが入っている。おそらく『虫』じゃないかな。けど、今まで見せられた『虫』はオゾマシイ姿しかしていなかったので、これは意外だ。
しかし、脳内を覗かれて居たのが本当なら恥ずかしいなんてもんじゃない。
「ふふ、紫さん。種を明かすのが早いですよ。もうちょっと楽しみたかった気がします」
「楽しみたかったとか、瑕さんて、いい性格してたんだね」
「灯さんも覚えたての言葉を得意げに使ってみたり、おごりだからいっぱい頼んでみたかったり、子供らしいところがあって安心しましたよ♪」
これはヒドイ。穴に入りたいとかリアルで思ってしまった。死体だから、お墓になってしまいそうだけど。
「腕輪はもう外すわ。あと、灯さんも遠慮しなくて良いわよ。呼び捨ての方が言いやすいのなら、それで構わないし。私も灯って呼ぶことにするから」
「ついでに、瑕さんも外してもらえると嬉しいんだけど」
なんて言ってみたけど、瑕さんはほほ笑んだだけだ。ホントに良い性格してるよ。
ケーキを食べながらのおしゃべりで、ある程度お互いのことをつかめてきた。こっちのことは腕輪のせいでバレバレだったけど、紫は大人っぽい外見に違わず落ち着いた性格みたいだ。なんて考えていると、紫が話を振ってくる。
「今日は顔合わせの為に来てもらったのだけれど、何か聞きたいことは無いのかしら?」
「ある。誰も教えてくれなかったから、聞いて良いのか不安だったけど、やっぱり私は知っとくべきだと思うんだよね」
ずっと気になっていたことがあった。これは本来一番初めに知らされてないとおかしなことだ。
「紫は護衛が必要だという話だけど、襲われる理由を教えられていない。紫の特殊な生活環境は知っているけど、それだけが理由とは思えないんだよね」
弓永 宗は現実とは思えない力を持っている。そういう世の中から外れた力を持っている連中が他に存在していて、弓永と敵対しているのかもしれない。しかし、これまでの話から紫自身に狙われる理由があるように思えた。
「そうね。父は特殊な人だけれど、それが理由じゃないわ」
紫は紅茶を一口含み、間をおいた。さっきから思っていたことだけど、美人はこういう動作でも絵になるのがすごい。常に映画の中にいるようだ。
「灯さん」
なんてアホなことを考えていると、瑕さんが笑顔で呼びかけてきた。そういえば、瑕には思考がバレバレだった。そのせいで評価が下がっているのか、さっきから名前が『様』付けから『さん』に格下げされている。呼び捨てにされないように、この話は集中して聞かないといけないな。
「私には『呪い』のようなものがかけられているの。私を手に入れた者は、この世の支配者になれるというね」
『呪い』という言葉を発した瞬間、周りの音が全て消えたかのように感じた。発した紫自身は淡く今にも消えてしまいそうなほど弱弱しく映る。そう映るほど、不吉な響きがあった。
「『呪い』か。言われても実感湧かないな。『虫』みたいに見たわけじゃないし。それに『手に入れる』って表現も曖昧で掴み難い話だね」
「そうね。『呪い』については少し難しい話になるから、そのうち説明するわ。手に入れたらって言うのは、私を妻に迎えた男性が該当するはずよ」
紫が、金髪の侍女へ確認も含めてした発言に瑕は肯定の意を示していた。
この話からすると、紫を狙っている存在は男性になるだろう。この世の支配者というのも具体的なことはわからないが、それが本当なら欲する連中がいるのもわかる。それが、弓永 宗のような化け物を敵にまわす、愚行だとしても。
「桜女子に進学したのも男性が少ないから?」
「その通りよ。私を狙っている存在は男性が主だから、直接襲われないようにするためにね。それ以外にも、桜女子は父が理事長みたいなものだから、融通が利くという点もあるわ」
「へえ~、紫パパってやっぱり強い権力持ってるんだ」
紫パパ、こう表現するとあの弓永 宗も親しみが持てる気がする。
「とりあえず、襲ってくる男たちから紫を守ればいいってところかな」
これに対して、瑕が「そうとは限りません」と否定してきた。
「紫を狙うのは確かに男性ですが、襲撃者が男性とは限りません。こちらが警戒しているのは相手も分かっているのですから、その対策を敵側もしてきます。そして、その多くが女性を利用してきます」
言われてみれば納得のいく話だ。紫はその呪いから男性を避けている。よって、女性との方が接触は多く、攫う機会は増える。それに男性は全てライバルになる。自分で動く以外は女性を使うほかないのだ。
「けど、どっちでも狙われるのが変わらないのなら、わざわざ男性を避ける必要はない気がするけど」
「紫を狙う張本人は、『呪い』の存在を知っており、弓永 宗と敵対することが出来る実力者です。そんな者と戦うよりは、使われてくる女性を相手取ったほうがマシというものです。それに、人を攫うような技術を持つ女性を用意すること自体が難しいので、襲撃される頻度も減ります」
なるほど、しかしそうなると紫は悲しい運命にある。普通の少女みたいに恋をすることが出来ない。それに、友人を作るにも敵じゃないか気にしなければいけない。本当に『呪い』というのは厄介な存在だ。
「灯?」
「なに?」
考え込んでいたせいで、紫から呼びかけられてしまった。
「灯が何を考えていたか分からないけど、これだけは言っておくわ。私はこれからの生活がとても楽しみよ」
「その心は?」
「別に頓智なんて利いてないわよ。ただ、『気の置けない』同世代の友人に守って貰えるのだから、これまでに比べれば雲泥の差ね」
紫とは今日知り合ったばかりだが、随分な信頼を寄せて貰えているようだ。心を読まれていたのだから、私の本心はバレバレだが、そんなに安心して貰えるほど素晴らしい考えは持ち合わせてないはずだけどね。
「それに今年から高校生。それだけで、輝かしい青春を過ごせると思わない?」
「自堕落で、平凡な中学時代を過ごしてきた私としては、高校生になったからといってたいしたことが起こるようにも思えないけどなあ」
そんな気の抜けた返事に、紫は少しだけ意地の悪い顔を作った。
「あら、現在進行形で奇妙奇天烈な体験をしているのに、どうしてそんなことが言えるのかしら?」
確かに平凡ではないな。一本取られたような感じだけど、それは輝かしい出来事でも、楽しい経験でもないじゃん。
「まあ、紫と過ごす学校生活だし、喜怒哀楽に満ちた生活が過ごせるかも」
私の拙い返答に、紫は儚げにほほ笑みを返してきた。
話が終わり喫茶店から出ると、空気が一変していた。寒さとは違った冷え冷えとした雰囲気が空間を支配しており、人っ子一人いない状況だ。明らかな異常。考えるまでもなく紫を狙った存在の仕業だろう。
「瑕さん。何かまずそうな雰囲気だけど」
「お察しの通り。現在、紫を狙っている者がいます。どうやらその本人はここに居ないみたいですね。襲ってきたとしても手下が出てくるだけで、たいしたことは無いと思われます」
瑕は平然としているし紫も同様だ。もう慣れに慣れた状況なのかもしれない。
「こういう場合は、いつもどうしていたんですかね?」
「いつもは、私かアマタが排除していたのですが……。今日は灯さんにお願いします」
「え~~?何言ってんの!いきなりなんて無理に決まってんじゃん!」
「これからはこんなことばかりですよ、灯さん。今回は私が付いていますから、予行練習と思ってください」
確かに今は瑕がいるから、私が失敗しても大丈夫かもしれない。しかし、いきなりやれと言われてもな。
「私どもから受けた指導を思い出してください。それで対応できるはずです」
指導かぁ……。
あの日から何度か瑕や弓永 宗に呼ばれたことがあった。その要件は護衛についての話がほとんどだ。
「護衛と言われても、どうすれば良いのか分からないんだけど」
これは初めに瑕へ言い放った泣き言だ。
「難しく考える必要はありません。襲撃してくる存在を排除するだけです」
「簡単に言ってくれるけど、私には敵の識別も排除する力も無いよ。この刀だってまともに振れる自信ないし」
貰った刀は意外と軽かったけど、振れば体ごと持って行かれる始末だ。ひと月足らずで操れるもんじゃない。
「筋は良いと思いますよ。半年も練習すればそれなりに扱えます」
「半年も鍛えている暇ないじゃん。その間はどうするんですか」
瑕は甘い甘いと微笑みながらも不出来な教え子に丁寧に語りかけてきた。
「刀は当面、便利グッズとでも思っていてください。現在の主力は『虫』です。今ここで出してください」
刀が便利グッズという意見は初めて聞いたよ。道でも尋ねれば教えてくれるのだろうか。まあ、それは良いとして『虫』はなぁ……。
「ええ~、アレを出すの?気持ち悪くて、ウジャウジャいるアレを」
「そうですよ。『虫』はアマタが一定数になるよう常に用意し、灯様の周りに潜み指示に従うようになっています。以前教えたように念じればすぐにでも姿を現します」
「前はそれでえらい目にあったと思うんだけど」
以前、『虫』を出したとき全く操ることが出来ず、自分の半径10メートルほどにぎっしりと詰まった状態で30分過ごしたことがあった。『虫』は世間一般で見られるような姿はしておらず、異形でおぞましく、触手を持ったモノや常に胞子状のものを噴出している種類などがいた。その独特な特徴全てが不快感や恐怖心を与える様相で、あの30分はまさに地獄だった。
「それは灯様が上手く『虫』に指示を与えられてない証拠です。正しく指示を出せれば、手足のように扱うことが可能となります。前回は『虫』に恐怖を強く抱いたせいで混乱させてしまったのが原因です」
しかし、指示と言っても思ったように動くものではなく、ある信号を出したら真っ直ぐ進み、別の信号だと右に曲がると言った感じで、実に難しい。
「アマタが用意したとはいえ、『虫』は本能によって行動する生き物です。灯様の思いが届く筈もなく、失敗をフォローしてくれたりはしませんよ」
まあ、確かにその通りかもしれない。しかし、もう少し抵抗をさせてもらおう。あの『虫』は操れたとしても見たくはないのだ。
「攻撃手段は分かった。だけど肝心の敵を判別する方法は?」
瑕はそれも簡単とまたもやほほ笑んだ。
「紫を狙う者の情報はこちらから渡しますが、急に襲われた場合は害意を認識して頂ければ反応できます。害意とはつまり紫を狙おうとする者が発する脳波のようなものです。それは通常では感じることが出来ないほど弱いものですが、灯さまの周りには『虫』が存在し、それらが教えてくれます」
「本音を言わせてもらえれば、『虫』にはあまり頼りたくないけどなぁ……」
「死人とは言え、灯様は人間と大差ありません。たった一人の人間に出来ることなどたかが知れています。いかなる時でも『虫』をお頼りください」
みたいな指導が、紫と会う今日までに何回もあった。その成果を今見せろということだろう。
「敵は、姿を見せていませんが今すぐに襲ってきてもおかしくありません。この様な場合、どうなさいますか?」
瑕からの問いだ。敵はどこにいるか分からないが、こちらが警戒していることは分かっているはずだ。とりあえず、敵が襲ってきたら直ぐに対処できる体制が必要だ。
「とりあえず、薄く広く『虫』の一部を張って、敵の意思を感じ取り易くする。大部分の『虫』は近くに集め、攻撃手段とする」
本当は索敵など他にもやりたいことがあるけど、私の能力じゃ無理だ。
「合格点といった所でしょうか。敵が襲ってきた場合を考え、直ぐに察知できるように対処する必要がありますが、それに多くの『虫』を費やすと攻撃手段が弱くなります。これは灯さんが出来る範囲での有効な戦術だと思いますよ」
これで正解らしい。あとは敵が襲ってくるのを待つばかりだが、これだけ警戒していると襲ってこない可能性もある。楽観的な考えだが、瑕の話から敵さんもそれほど本気ではないようだし、有り得なくはないだろう。というか、襲ってきて欲しくない、心臓は緊張でバクバクしている。
私がそれだけ不安になるんだ。狙われた張本人は大丈夫だろうかとチラッと視線を向けると、こんな事態には慣れっこなのか、冷静な瞳でこちらを見返してくる。それがなぜだか不吉な印象を与えてくる。その冷静な瞳は諦めからくるものじゃないかと。私は紫を背の後ろにしっかりと隠した。だれにも攫われないように。
その時だ!不意に真上から害意を感じた。『虫』たちの伝播から、敵が真上の上空からあらわれたこと、鳥のような姿かたちをしていることが見なくても分かった。
敵は複数居るかもしれない。半分で迎撃しようと、『虫』を上空の敵へと飛翔させた。双方は一瞬で交わり、『虫』たちが瞬く間に敵を処分してしまった。後には何も残っておらず。少しの静寂の後に、冷え冷えとしていた空間が、元通りになっていくのを感じた。
「お見事です。敵の排除に成功しました。思っていたより冷静に対処できていたのは評価できます」
ただし、と意地の悪そうな声を出しながら瑕は私の左手を見てきた。その手には紫の手が固く握られており、冷や汗でじとじとだ。
「襲われた恐怖や紫を守ろうとする意志など様々な感情の結果、咄嗟に手を握ったのはいけませんね。動きづらくなりますし、いざという時刀を振るえませんよ」
指摘された瞬間、パッと手を放した。恥ずかしさからか、顔が火照っているのが分かる。
「紫ごめん。痛くなかった?」
紫はクスクスと笑いながら、「問題ないわ」と返してきた。
「物怖じしない灯でも、動揺するのが分かって良かったわ。これからもこういうことがあると思うけど、がんばってね」
と言って手を差し出してきた。笑われたことに少しムッとしたけど、紫を見ると自然と怒りが消えて無くなる。それは彼女の人徳か、はたまたまとっている儚さのためだろうか。
どちらにしろ、彼女から差し出された手を払うようなマネはする気は起きなくて、そっと彼女の手を握った。
今日はこれでお終いかな。次、紫と会う時は入学式になるかもしれないが、そのときまでにもう少し鍛えておこうかなと思う程度には、彼女のことを気にいっていた。
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