無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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迷子イベントと学生の本分

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 数日後の休日の昼過ぎ、アリスは寮の四階のクラリアの部屋に招かれていた。四階の上位貴族専用フロアには二部屋が用意され、一部屋をグレース、もう一部屋をクラリアとアナベル&セシルの3人で使用していた。難関のマジカル学園に上位貴族が一学年に4人も入学してくる事自体が珍しく部屋割が問題になったらしい。特例として王族用のペントハウスの使用も考えられたらしいが王族のカイルとアランが四階の部屋の使用を希望した為に今の部屋割に落ち着いたらしい。グレースが私が一人で使うのにクラリア達が三人でなんて申し訳ないと言うのをクラリアがお気になさらずと押し通したそうだが。
 けどさ~。
 アリスは真ん中に大きなテーブルとソファが置かれた広々としたリビングルームを見回した。
 3人でも充分過ぎる位じゃね?
 この部屋の他にもクラリアとアナベル&セシルの二人で使う寝室やダイニングルーム、クローゼットルームに専用バスルーム、専用キッチン、客間に専属メイド用控室等々、部屋数も多く広々としていて兎に角豪華。今アリスはプライベート用リビングに特別に通されソファにちょこんと座りメイドが用意したお茶とお菓子を頂いていた。
 向かい側のソファには中央に縁にレースをあしらったシックなワンピース姿のクラリア、両脇には色違いの振袖姿におかっぱ風ヘアのアナベル&セシルが座っている。対するアリスは寮内といえど部屋の外は街中と思えの規則をすり抜ける為の誤魔化しコートの下は上下スエット(母お手製オシャレ使用)。寮の自分の部屋の中なのに貴族はキチンとしていて大変だなぁと思うアリスだった。ただアナベル&セシルが着物を着ているのは仮縫いの夜会用ドレスをアリスに見せびらかしたいからだった。ついさっき迄、
「このお姉様がデザインした東国風のドレス、素敵でしょう」
 と散々自慢されたアリスだった。正直に言うと怪談によく出てくる日本人形みたいで恐ろしかったが言えなかった。その後は広い方の居間を二人の寝室にする為に特注したベッドを見せられた。
 狭い日本の住宅事情に合わせて考えられたロフトベッド&デスクセットがヨーロッパの高級家具で見事にゴージャスに再現されていた。二人は余程嬉しかったらしくアナベルは自分のベッドの上にアリスも上がらせて隣でドヤ顔。セシルは自分のデスクセットに腰掛けながらお姉様がデザインしてくれたこのベッドで過ごすのがいかに楽しいかを滔々と語った。二人の姉LOVE劇場から開放されてようやくお茶にありつけたアリス。
 キャッキャッと楽しそうな双子を優しい眼差しで見守るクラリアに注意してよーとは、やっぱり言えないアリスだった。メイドが常に部屋の隅で控えているのも落ち着かないし、貴族って大変だなーと本人以外には寛ぎまくっているようにしか見えないスエット上下アリス。対するクラリアは優雅な仕草でお茶を飲むとティカップを置いてアリスに訪ねた。
「で、そちらはどうでしたの?」
 先程までクラリアはAクラスでの姫警護の団体模擬戦のあらましを説明してくれていた。案の定アーサーはカイルとアランのチームにボロ負けしていた。モブ令嬢の一人を姫役に奮戦はしたらしいのだが最終的にグレースと入れ替わっていたエリンに討ち取られていた。
「姫役のグレース様が顔が隠れるベールのある衣装を選んだ時点で入れ替わりを疑うべきでしたのに恥ずかしいとの言葉を真に受けるとは愚かですわ」
「騎士にあるまじき行為の数々、本当に無様です事」
 とセシルに酷評、アナベルに鼻で笑われていた。
 エリンはそんなアーサーに同情しているのだろうか、そんな事より、
 アリスは頬張っていたフィナンシェをお茶で流し込むと身を乗り出した。
「聞いて下さい。こっちはメチャクチャ白熱して盛り上がって楽しかったんですーっ」
 Bクラスではアリスを警戒した相手チームが騎士科志望の中で一番細身の男子生徒を姫役にしてきた。アリスのチームはアリスを前面に押し出して囮&掻き回し役にしてその間にリカルドと熊君で姫役の男子生徒を倒すという作戦でいく事にした。目論見通りいきかけたのだが、姫役の男子生徒はコッチはマジで恥ずかしいからベールで顔を隠していたのだが熊君の剣の切っ先でベールを払い落とされた男子生徒が想定超えの可愛さだったのだ。ビックリした熊君が返り討ちに遭いそうになりリカルドが何とか倒すという波乱の展開に大いに盛り上がった。その事を身振り手振りを交えて話すアリスにクラリアやアナベル&セシルだけでなく控えているメイド達も笑っていた。
「でもあの熊、私には容赦無かったくせに男に手を止めるってどういう事?!ですよ~。まぁ勝てたから良かったけど」
 勝利の余韻に浸るニンマリアリスにクラリアは笑顔を返し、急に真顔になった。
「で、この前の小テストの事だけど」
 ギクッとなるアリス。クラリアの言い方は穏やかだが語気に怒気が含まれていた。
「あ、上がりましたよ。ちょっぴりだけど」
「そうね、でも安全圏にはまだまだね」
「すみません。でもルミアとの週末のお出掛けの約束をキャンセルして勉強時間に充てたりして頑張りました」
「課題が多くて今は諦めようとルミア嬢から連絡があったのよね」
「はい…、ルミアも奨学金を受けているので成績を落とせないからお互いに頑張ろうって。リュカが手紙で励ましてくれているみたいで。リュカは私にも手紙をくれたんだ、お前も頑張れって。ヤベ、返事を返してない」
「あのね、…二人の言う通りよ。今度のテストの成績で後期のクラス分けが決まるわ」
「はい、もっともっと頑張ります」
 だらんと垂れ下がった尻尾に倒れた耳。しおしおのアリス犬。確かに今の成績の順位は中の下寄り。このままだと下の頑張り如何によって下の上、Cクラスに転がり落ちる。元々国中のエリートが集まる学園だ。ちょっとやそっとでは結果に繋がらない。僅かな油断が命取り。アリスはソファの上で頭を抱えた。
 それは判っている。頑張っているんだ、精一杯に。これでも寝る間を惜しんで。……なんやかんや言っても楽しく学園生活を満喫しているからだろうか。もしこれ以上ゲーム展開がわちゃわちゃになったらどうなってしまうのか。
 攻略対象の一人に金蹴りを喰らわせバカ過ぎて途中で退学の主人公。どーゆーゲームだよって私でも思うわ。クリラブ2にどう繋げるんだ?な展開だ。転生パイセンの人生が掛かっているんだぞ。このままだとアレク様は遙か遠くに消え、憧れの魔法省の制服に袖を通す事も叶わずゲームクリアはクリラブ2の主人公カレンに後は丸投げになってしまう。
 クリラブ2のクリア経験者としてそれは良くない、国が壊滅状態になっても困る。駄目絶対!頑張らなきゃ、クラリア様が勉強のお供に夜食のラーメンを用意してくれてるのに~。
 アリスは頭を抱えたままう~っと唸る。そのアリスの様子を冷静な目でクラリアは見ていた。アリスが努力しているのは確か。しかし周りも努力している為に順位として結果に結びついていなかった。
 ご褒美がラーメンでは餌として弱いのだろうか。でもラーメンの幻想に謎のダンスを踊るアリスの気合は本物だったわ。
「……」
 クラリアはこめかみを押えた。
 やっぱりこの子は本能的に判っているんだわ。たとえ順位が大して上がらなくてもラーメンを食べさせて貰えるという事が。そう、成績がたとえ下がっていても、私きっと今回だけよって食べさせちゃうわ。だって無芸大食のワンコって可愛いんだもの。…もう、仕方がないわ。
 クラリアは手をスッとアリスの前に差し出した。
「お手」
「?」
 反射的にアリスはクラリアにお手をしていた。乗せられたアリスの手の上にクラリアはもう一方の手を重ねて優しく握り締めた。
「頑張ってね、アリス」
「はい、でも何を?」
 問い返すアリスに答えずクラリアはアナベル&セシルに、
「じゃあ後はお願いね」
 と声を掛けて立ち上がった。
『はい、お姉様』
 揃って返事をする二人にアリスは?メイドの一人が荷物を手にドアを開けてクラリアはそのままメイドと共に部屋を出て行った。ドアが閉まった瞬間、笑顔でクラリアを見送っていた双子の表情が消えた。
「王太子だからって気軽にお姉様を呼び付けないで頂きたいわ」
「本当ならお姉様と一緒に三人で調教する筈だったのに、あの馬鹿のせいで」
「……」
 アリスは二度瞬きをすると出口を見た。残っているメイドが全員でドアの前に立ちはだかっている。アリスにも警護役を兼ねた手練が含まれているのが判った。
「魔法学の実技と剣技を除く全教科、さっさと済ませてしまいましょう」
「ええ、お姉様の手を煩わせない様にとっとと詰め込んでしまいましょう」
『そうすればお姉様はきっと誉めて下さるわ』
 アリスは重厚感のある置物を見つけそれで窓を割りそこから飛び降りて逃げようと覚悟を決めて立ち上がった。が、既に二体の日本人形に挟み撃ちにされていた。
 がしっ。
『私達二人でテスト勉強のお手伝いをいたしますわ』
 アナベル&セシルに首根っこ捕まれたアリスはそのまま彼女達の部屋へ引きずって行かれる。
「怪談は間に合ってます!結構ですー」
『あら、どうぞ、遠慮なさらず~』

 そしてテストが終わった。再びアリスはクラリアの部屋に招かれ、リビングルームのソファに座っていた。眼の前のクラリアは満面の笑顔を浮かべている。
「凄いわ、アリス。あと少しでAクラスじゃないの。惜しいけどでも良く頑張ったわ。アナベル&セシルの二人もね」
『はい、お姉様』
クラリアの両脇でアナベル&セシルもニコニコ顔である。
「この成績をキープするのよ、アリス。そうすれば必ずやルートは開かれるわ。明るい未来(ゲームクリア)が待っているわ、アリス。ご両親も自慢の娘の帰りを心待ちにしているでしょう」
 ご機嫌なクラリアと対象的に、アリスは燃え尽きていた。
 …真っ白な灰になっちまったぜ、このままアレク様の所迄飛ばされて行きたい…。


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