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クラリアパパSP 修学旅行編 目指せ、キラキラマイスター!
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その時、
『お兄様ーっ♪』
の声と共にアナベル&セシルが現れた。ウェイン目掛けて爆速で駆け寄って来たアナベル&セシルはウェインの隣りに座っていたアリスを二人掛かりでベリッとベンチから引き剥がしポイッと捨てるとウェインの両脇に収まった。そしてウェインの腕を取るとアナベル&セシルは甘えた瞳でウェインを見上げた。
『お兄様、お帰りなさいませ♪』
「ピアノの練習を見て下さる約束よ、お兄様」
「ダンスの練習のお相手も務めて下さる約束よ、お兄様」
「ああ、私もとても楽しみにしているよ。ただ家に戻るのは数日後だ。今日は学園に戻らないと」
『ええ、そんなぁ』
ウェインの返事に口を尖らせて可愛く拗ねるアナベル&セシル。ウェインはその様子に目を細め、クラリアは微笑ましく見守っている。
いやいや、まずは私をポイ捨てした事を注意してよ。
捨て犬アリスはやっぱり言えず無言でよっこらしょと立ち上がった。そこにメイドの一人がアリスのポップコーンとジュースをスッと差し出してくる。メイド達は見事な連携プレーでアリスのポップコーン&ジュースとウェインのポップコーン3種をベンチから救出していた。
「ありがとうございます」
受け取ったアリスはジュースを飲み干すとポップコーンを一掴み口の中に放り込んでむしゃむしゃと頬張った。
うん、美味しい。無事に生還出来たみたい。良かった♪もう少しで棺に入って帰郷する事になる所だった。マジで危なかった。にしてもアナベル&セシルの二人はめっちゃナチュラルに攻略対象に絡んでいるな。流石は超美少女。堂々としたモンだ。
アリス自身も何気に美少女なのだが自覚0のアリスはもっしゃもっしゃとポップコーンを食べながらチラッとウェインのポップコーン3種を見た。
「ぐえっ」
そこにガシッと首根っこ掴まれたアリスはずいっと自分を見据えるクラリアに兎に角謝った。
「すみません。あの、食べたいなと思っただけなんです」
「は?それより説明しなさい。どういう事なの?」
「どうもこうも、ウェイン様がいきなり登場してポップコーン食べる?って。私が食べたいって言った訳ではなくてウェイン様が味見をって。物欲しそうな顔もしていない筈ですよ~。本当にです~」
「……」
そういう事が聞きたい訳ではない!
との言葉が喉元まで出掛けたクラリアはそれをグッと堪えた。
恐らくはこれ以上の情報をアリスから得るのは無理。何故兄が突然アリスに興味を持ったのか探る必要がある。今はウェインルートが発生する可能性が有る事を頭の隅に留めておこう。
考えをまとめたクラリアはスナックワゴン店員のお勧めポップコーン3種とは反対の方向に顔を向けつつ意識は100%ポップコーンに有るアリスを見た。
どうしてだろう。イベントが発生しそうな気配がほとんど感じられないわ。お兄様がすぐそこに居るのに。
自分のポップコーンをパクパクと食べきったアリスはクラリアの視線にニコっと笑い返し、
「たっぷりキャラメル味ポップコーン、とても美味しかったです」
「そう、…良かったわね」
「はいっ」
元気に答えるアリスだった。
そう、マジで美味♪クラリア様のお勧めはフードもアトラクションも全てが大当たり!まだお小遣いは残っているし帰りの馬車用オヤツにお勧めポップコーンを買おう。クラリア様にお勧め味を教えて貰おうっと。
そう思い付いたアリスはクラリアの心中など全く察っする事無く晴れ晴れとした表情でポイ捨てされるまで座っていたベンチのウェインとアナベル&セシルを眺めた。
「それにしてもウェイン様のキラキライケメンオーラ、半端ないですね~。生で至近距離の攻略対象は殺人級の衝撃でした。凄いっすわ」
ウェイン達3人を眺めるアリスの語尾に憧憬が含まれているのにクラリアは、クスッと笑った。
アリスもやっぱり女の子なのね。何だかんだ言ってもイケメンには弱いんだわ。アリスの最推しキャラのアレクと兄は真逆のタイプだけど、でも兄のウェインは内外共にパーフェクトな私が育成した最強の先輩キャラ。自慢の兄だから無理もないけど♪
しかしクラリアは次のアリスのセリフでコケた。
「あの超絶イケメンウェイン様と対等に渡り合って押し気味に会話を進めるアナベル&セシル双子姉妹には脱帽です。何年キラキラの滝行をしたら出来るようになるんだろう。あ、戻ってきたルミアが遠くからウェイン様を見ただけでポーッとなってる。あ、荷物を落とした。だよね~、私なんてあまりの目映さに呼吸困難になったもん。あー、生きてて良かった♪そうだ、クラリア様。たっぷりキャラメル味の他にお勧めポップコーンフレーバーってあ…」
バコッ!
次の瞬間、アリスはクラリアに思い切り頭をどつかれていた。
「痛っ。な何をするんですか、クラリア様ぁ。自分で買いますよ~」
「貴方ね、攻略対象と世間話をするだけで呼吸困難になって、それでどうやってゲームを進めていくつもりなの?しっかりしなさい!」
「で、でもイケメンを前にどうしたら良いのか全く解りません」
「どうしたらって、別にクラスメイト男子と同じで良いのよ」
「熊やノッポと同じになんて無理です。キラキラの激流にその場で踏み留まるのが精一杯です。ゲームみたいに会話選択肢画面が出てこないんだもん。自分で考えるなんて手も足も何にも出ないです」
「ステータス画面が出てこない仕様なのにそんな物が出てくるかっ」
「リアル乙女ゲームマジ難い。どうやってイベントこなせばいいのか解らないっす。クリラブ1がこんっなに高難度とは思わなかった~」
「何を言ってるの。今の状態はゲーム攻略難度とかいう以前の問題よ。ここで躓いていたら何も始まらない、起こらない。いい事、アリス。地元にいた時に素敵だなと思う男子がいたでしょう?」
クラリアの言葉にアリスはう~んと5秒考えて、
「地元男子はじゃがいもばかりで。あ、劇団の興行が町に来た時にカッコイイ役者さんがいました。今思うとアレク様に似てたかも♪でもはわわ~ってなってたら父がいきなりブチギレて大騒ぎになっちゃつて…、大変でした」
「そう、何となく判ったわ。えーと、そうね、ウェインお兄様は推しじゃないでしょう?」
「あー、はい。優しい癒やし系キャラが好みです~。別にウェイン様が優しくないとかそういう事では」
「それは今はどうでもいい。攻略対象外のキャラ相手にこの有様で肝心の推しキャラ攻略はどうするつもり?」
「え、それは勿論攻略マニュアル通りにというかアレク様ルートは完全に頭に入っているので会話選択肢画面が出なくてもバッチリOKですっ」
自信たっぷりに胸を叩くアリスにクラリアは頭を押さえた。
駄目だわ。分かっていない。
「アリス、ここはゲームの世界であってゲームの中ではないのよ。それにゲームで描かれていたのはこの世界のほんの一部。このマジカルクリスタルランドは元々のゲームにはない。けど今は沢山の人が訪れているわ。つまり」
クラリアはスッと人混みを指差した。
「あ、そこにいるのはえーと、スチルから推測して3才位か、幼い時に母を事故で亡くして悲しみに沈む娘の気晴らしになればとテーマパークに連れてきた父親ではないかしら」
クラリアの示す指先にはモグラのペロペロキャンディを買って貰ってご機嫌な女の子とその娘を抱き上げる父親の姿があった。その親子にアレクとアナベル親子の姿が重なったアリスは、
「えっ?」
「はわわわわわっ、ぐえ」
姿を重ねた瞬間、アリスは細かく体を震わせながら涙目で無関係な親子を拝んでいた。ぎょっとしたクラリアは思わず身を引き、そして目にも止まらぬ速さでアリスはメイドの一人に取り押さえられていた。腕を後ろに捻り上げられ頭は膝で床に押さえ込まれたアリスは、
「おお親子愛が~、尊い~」
「重症だ、こりゃ」
頭を押さえたクラリアはメイドにアリスを開放するように伝えた。メイドはアリスを放すと立ち上がらせて顔を拭き鼻をかませてそしてまたスッと後ろに控えた。放心状態でアリスはその場に立ち尽くしていた。
アリスは自分の馬鹿さに今更ながらに気付いて茫然とするしかなかった。
クラリアの言う通り、ここは乙女ゲーム、マジカル学園クリスタルラブストーリー~恋と魔法にときめいて~の世界だけど選択肢が決められたゲームの中じゃない。自分の事は自分で決める世界だ。そんな当たり前な事なのに攻略マニュアル通りでOK!なんて、なんて馬鹿だったんだろう、私。頭の中のマニュアルの文字がどんどん消えていくわ、どうしよう。確かにヤバイ。私、ヤバイ!
アリスは震える手をジッと見つめて自分に慄いていた。
今、目の前にアレク様が本当に現れたら……。
「どうしよう…」
アリスの中の攻略マニュアルにその答えは載っていない。ページは白紙だ。
アリスは救いを求めてクラリアを見た。クラリアは眉間にシワを寄せて、
「もし知らない人からいきなり涙目で拝まれたら、」
「はい、キモいし怖いです」
「ええ、推しは恐怖を感じるでしょう」
「はうっ」
クラリアの激重パンチがノーガードアリスを腹パン。アリスは為す術もなくマットに沈んだ。
「でもでも、生推しの御姿を間近で拝んで冷静でいられる自信がありません、全く!」
「そうみたいね…」
「眼福が過ぎて粗相とかしたらどうしよう。その場で即死する自信があります。大人用オムツを用意した方が良いでしょうか?」
大真面目で言うアリスにクラリアは腰回りが妙にポッコリしているアリスを想像していまい目眩を覚えた。
推しとのイベントに備えてオムツをする乙女ゲームのヒロインがどこにいるのよ?!前世で乙女ゲームをヤリ込まなかった事が悔やまれるわ。一体どうなっているんだろう?乙女ゲーム創成期のクリラブ1はストーリーとしては王道少女漫画的ラブストーリーだった筈。プレーヤー自身を投影させる為に平凡を装いつつもスペシャルスキルを持ち、ちょっと天然と根性でゲームを進めるヒロインな筈なのに、何故にオムツ。
クラリアは憐憫の表情を浮かべて、オムツ取扱店はドコだ?!とテンパっているアリスの肩をポンポンと優しく叩いた。
「オムツは止めなさい、アリス」
「はははいっ。最後の手段にします。キラキラの滝行で特訓します」
「キラキラ?……それも止めた方がいいわ。私が責任を持って攻略対象別に想定問答集を作ってあげるからそれを丸暗記しなさい。攻略対象との接触はそれを使って一歩づつ慣らしていきましょう」
「はい。ありがとうございます、クラリア様」
「貴方は光の魔力を持っているの。必ずキラキラも乗りこなせる様になる。努力は裏切らない。素敵な女の子になって推しの前に登場よ。アリス、あなたはやれば出来る子よ」
「はい。頑張ります、クラリア様」
「貴方は初期装備のこん棒で一匹倒しているわ。自信を持ってっ」
「はい、精進しますっ。……一匹?」
アリスに心当たりは無い。
もしかしてアーサーの事かな?でもこん棒じゃなくて文字通り蹴り倒したんだけど。
クラリアに頭をいいこいいこされながら首を傾げるアリス。それを憤怒の瞳で睨み付けていたのはアナベル&セシル双子姉妹だった。ウェインに詩の添削の約束も取りつけた双子は上機嫌で姉に報告しようとして次の瞬間、修羅の世界に身を置いていた。
“私達がお兄様とお話しているその隙にお姉様にすり寄るなんて許せないっ”
“しかもいいこいいこ迄して貰うなんて、なんて図々しいのっ”
;この、ドロボー猫っ!!;
ヴァニタス家の人間には猫認定されたアリス。しかし本人は全く気付く事無く、自分とクラリアに向かって妖しい魅惑の微笑みを浮かべているウェインをどうにか直視しようと薄目で頑張っていた。
「うう、細めても眩しいっ」
「やめなさい」
『お兄様ーっ♪』
の声と共にアナベル&セシルが現れた。ウェイン目掛けて爆速で駆け寄って来たアナベル&セシルはウェインの隣りに座っていたアリスを二人掛かりでベリッとベンチから引き剥がしポイッと捨てるとウェインの両脇に収まった。そしてウェインの腕を取るとアナベル&セシルは甘えた瞳でウェインを見上げた。
『お兄様、お帰りなさいませ♪』
「ピアノの練習を見て下さる約束よ、お兄様」
「ダンスの練習のお相手も務めて下さる約束よ、お兄様」
「ああ、私もとても楽しみにしているよ。ただ家に戻るのは数日後だ。今日は学園に戻らないと」
『ええ、そんなぁ』
ウェインの返事に口を尖らせて可愛く拗ねるアナベル&セシル。ウェインはその様子に目を細め、クラリアは微笑ましく見守っている。
いやいや、まずは私をポイ捨てした事を注意してよ。
捨て犬アリスはやっぱり言えず無言でよっこらしょと立ち上がった。そこにメイドの一人がアリスのポップコーンとジュースをスッと差し出してくる。メイド達は見事な連携プレーでアリスのポップコーン&ジュースとウェインのポップコーン3種をベンチから救出していた。
「ありがとうございます」
受け取ったアリスはジュースを飲み干すとポップコーンを一掴み口の中に放り込んでむしゃむしゃと頬張った。
うん、美味しい。無事に生還出来たみたい。良かった♪もう少しで棺に入って帰郷する事になる所だった。マジで危なかった。にしてもアナベル&セシルの二人はめっちゃナチュラルに攻略対象に絡んでいるな。流石は超美少女。堂々としたモンだ。
アリス自身も何気に美少女なのだが自覚0のアリスはもっしゃもっしゃとポップコーンを食べながらチラッとウェインのポップコーン3種を見た。
「ぐえっ」
そこにガシッと首根っこ掴まれたアリスはずいっと自分を見据えるクラリアに兎に角謝った。
「すみません。あの、食べたいなと思っただけなんです」
「は?それより説明しなさい。どういう事なの?」
「どうもこうも、ウェイン様がいきなり登場してポップコーン食べる?って。私が食べたいって言った訳ではなくてウェイン様が味見をって。物欲しそうな顔もしていない筈ですよ~。本当にです~」
「……」
そういう事が聞きたい訳ではない!
との言葉が喉元まで出掛けたクラリアはそれをグッと堪えた。
恐らくはこれ以上の情報をアリスから得るのは無理。何故兄が突然アリスに興味を持ったのか探る必要がある。今はウェインルートが発生する可能性が有る事を頭の隅に留めておこう。
考えをまとめたクラリアはスナックワゴン店員のお勧めポップコーン3種とは反対の方向に顔を向けつつ意識は100%ポップコーンに有るアリスを見た。
どうしてだろう。イベントが発生しそうな気配がほとんど感じられないわ。お兄様がすぐそこに居るのに。
自分のポップコーンをパクパクと食べきったアリスはクラリアの視線にニコっと笑い返し、
「たっぷりキャラメル味ポップコーン、とても美味しかったです」
「そう、…良かったわね」
「はいっ」
元気に答えるアリスだった。
そう、マジで美味♪クラリア様のお勧めはフードもアトラクションも全てが大当たり!まだお小遣いは残っているし帰りの馬車用オヤツにお勧めポップコーンを買おう。クラリア様にお勧め味を教えて貰おうっと。
そう思い付いたアリスはクラリアの心中など全く察っする事無く晴れ晴れとした表情でポイ捨てされるまで座っていたベンチのウェインとアナベル&セシルを眺めた。
「それにしてもウェイン様のキラキライケメンオーラ、半端ないですね~。生で至近距離の攻略対象は殺人級の衝撃でした。凄いっすわ」
ウェイン達3人を眺めるアリスの語尾に憧憬が含まれているのにクラリアは、クスッと笑った。
アリスもやっぱり女の子なのね。何だかんだ言ってもイケメンには弱いんだわ。アリスの最推しキャラのアレクと兄は真逆のタイプだけど、でも兄のウェインは内外共にパーフェクトな私が育成した最強の先輩キャラ。自慢の兄だから無理もないけど♪
しかしクラリアは次のアリスのセリフでコケた。
「あの超絶イケメンウェイン様と対等に渡り合って押し気味に会話を進めるアナベル&セシル双子姉妹には脱帽です。何年キラキラの滝行をしたら出来るようになるんだろう。あ、戻ってきたルミアが遠くからウェイン様を見ただけでポーッとなってる。あ、荷物を落とした。だよね~、私なんてあまりの目映さに呼吸困難になったもん。あー、生きてて良かった♪そうだ、クラリア様。たっぷりキャラメル味の他にお勧めポップコーンフレーバーってあ…」
バコッ!
次の瞬間、アリスはクラリアに思い切り頭をどつかれていた。
「痛っ。な何をするんですか、クラリア様ぁ。自分で買いますよ~」
「貴方ね、攻略対象と世間話をするだけで呼吸困難になって、それでどうやってゲームを進めていくつもりなの?しっかりしなさい!」
「で、でもイケメンを前にどうしたら良いのか全く解りません」
「どうしたらって、別にクラスメイト男子と同じで良いのよ」
「熊やノッポと同じになんて無理です。キラキラの激流にその場で踏み留まるのが精一杯です。ゲームみたいに会話選択肢画面が出てこないんだもん。自分で考えるなんて手も足も何にも出ないです」
「ステータス画面が出てこない仕様なのにそんな物が出てくるかっ」
「リアル乙女ゲームマジ難い。どうやってイベントこなせばいいのか解らないっす。クリラブ1がこんっなに高難度とは思わなかった~」
「何を言ってるの。今の状態はゲーム攻略難度とかいう以前の問題よ。ここで躓いていたら何も始まらない、起こらない。いい事、アリス。地元にいた時に素敵だなと思う男子がいたでしょう?」
クラリアの言葉にアリスはう~んと5秒考えて、
「地元男子はじゃがいもばかりで。あ、劇団の興行が町に来た時にカッコイイ役者さんがいました。今思うとアレク様に似てたかも♪でもはわわ~ってなってたら父がいきなりブチギレて大騒ぎになっちゃつて…、大変でした」
「そう、何となく判ったわ。えーと、そうね、ウェインお兄様は推しじゃないでしょう?」
「あー、はい。優しい癒やし系キャラが好みです~。別にウェイン様が優しくないとかそういう事では」
「それは今はどうでもいい。攻略対象外のキャラ相手にこの有様で肝心の推しキャラ攻略はどうするつもり?」
「え、それは勿論攻略マニュアル通りにというかアレク様ルートは完全に頭に入っているので会話選択肢画面が出なくてもバッチリOKですっ」
自信たっぷりに胸を叩くアリスにクラリアは頭を押さえた。
駄目だわ。分かっていない。
「アリス、ここはゲームの世界であってゲームの中ではないのよ。それにゲームで描かれていたのはこの世界のほんの一部。このマジカルクリスタルランドは元々のゲームにはない。けど今は沢山の人が訪れているわ。つまり」
クラリアはスッと人混みを指差した。
「あ、そこにいるのはえーと、スチルから推測して3才位か、幼い時に母を事故で亡くして悲しみに沈む娘の気晴らしになればとテーマパークに連れてきた父親ではないかしら」
クラリアの示す指先にはモグラのペロペロキャンディを買って貰ってご機嫌な女の子とその娘を抱き上げる父親の姿があった。その親子にアレクとアナベル親子の姿が重なったアリスは、
「えっ?」
「はわわわわわっ、ぐえ」
姿を重ねた瞬間、アリスは細かく体を震わせながら涙目で無関係な親子を拝んでいた。ぎょっとしたクラリアは思わず身を引き、そして目にも止まらぬ速さでアリスはメイドの一人に取り押さえられていた。腕を後ろに捻り上げられ頭は膝で床に押さえ込まれたアリスは、
「おお親子愛が~、尊い~」
「重症だ、こりゃ」
頭を押さえたクラリアはメイドにアリスを開放するように伝えた。メイドはアリスを放すと立ち上がらせて顔を拭き鼻をかませてそしてまたスッと後ろに控えた。放心状態でアリスはその場に立ち尽くしていた。
アリスは自分の馬鹿さに今更ながらに気付いて茫然とするしかなかった。
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アリスは震える手をジッと見つめて自分に慄いていた。
今、目の前にアレク様が本当に現れたら……。
「どうしよう…」
アリスの中の攻略マニュアルにその答えは載っていない。ページは白紙だ。
アリスは救いを求めてクラリアを見た。クラリアは眉間にシワを寄せて、
「もし知らない人からいきなり涙目で拝まれたら、」
「はい、キモいし怖いです」
「ええ、推しは恐怖を感じるでしょう」
「はうっ」
クラリアの激重パンチがノーガードアリスを腹パン。アリスは為す術もなくマットに沈んだ。
「でもでも、生推しの御姿を間近で拝んで冷静でいられる自信がありません、全く!」
「そうみたいね…」
「眼福が過ぎて粗相とかしたらどうしよう。その場で即死する自信があります。大人用オムツを用意した方が良いでしょうか?」
大真面目で言うアリスにクラリアは腰回りが妙にポッコリしているアリスを想像していまい目眩を覚えた。
推しとのイベントに備えてオムツをする乙女ゲームのヒロインがどこにいるのよ?!前世で乙女ゲームをヤリ込まなかった事が悔やまれるわ。一体どうなっているんだろう?乙女ゲーム創成期のクリラブ1はストーリーとしては王道少女漫画的ラブストーリーだった筈。プレーヤー自身を投影させる為に平凡を装いつつもスペシャルスキルを持ち、ちょっと天然と根性でゲームを進めるヒロインな筈なのに、何故にオムツ。
クラリアは憐憫の表情を浮かべて、オムツ取扱店はドコだ?!とテンパっているアリスの肩をポンポンと優しく叩いた。
「オムツは止めなさい、アリス」
「はははいっ。最後の手段にします。キラキラの滝行で特訓します」
「キラキラ?……それも止めた方がいいわ。私が責任を持って攻略対象別に想定問答集を作ってあげるからそれを丸暗記しなさい。攻略対象との接触はそれを使って一歩づつ慣らしていきましょう」
「はい。ありがとうございます、クラリア様」
「貴方は光の魔力を持っているの。必ずキラキラも乗りこなせる様になる。努力は裏切らない。素敵な女の子になって推しの前に登場よ。アリス、あなたはやれば出来る子よ」
「はい。頑張ります、クラリア様」
「貴方は初期装備のこん棒で一匹倒しているわ。自信を持ってっ」
「はい、精進しますっ。……一匹?」
アリスに心当たりは無い。
もしかしてアーサーの事かな?でもこん棒じゃなくて文字通り蹴り倒したんだけど。
クラリアに頭をいいこいいこされながら首を傾げるアリス。それを憤怒の瞳で睨み付けていたのはアナベル&セシル双子姉妹だった。ウェインに詩の添削の約束も取りつけた双子は上機嫌で姉に報告しようとして次の瞬間、修羅の世界に身を置いていた。
“私達がお兄様とお話しているその隙にお姉様にすり寄るなんて許せないっ”
“しかもいいこいいこ迄して貰うなんて、なんて図々しいのっ”
;この、ドロボー猫っ!!;
ヴァニタス家の人間には猫認定されたアリス。しかし本人は全く気付く事無く、自分とクラリアに向かって妖しい魅惑の微笑みを浮かべているウェインをどうにか直視しようと薄目で頑張っていた。
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