無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

文字の大きさ
20 / 88

アリスの休日 とある一日

しおりを挟む
 ヴァニタス家から沢山のお土産を戴いてアリスとルミアは帰郷した。家族や工房の人達と友達にご近所さん、領主のハーネット男爵家まで揃って盛大に出迎えられたアリスはそのままお帰りパーティに参加する、事は出来なかった。久しぶりの我が家に戻ったアリスは30分後に高熱を出してぶっ倒れていた。
 リアル乙女ゲームの高難度さに心身共にギリギリだったアリスは家に帰った事で緊張の糸が切れた。所謂、知恵熱を出したアリスは3日間熱が下がらずに寝込んでいた。
「キラキラが来るよう、怖いよう。オムツがぁ、オムツが無い~っ」
 等と意味不明なうわ言を繰り返すアリスに家族は震え上がったが4日目にアリスの熱はあっさりと下がった。
 何か寝たらスッキリした。
 のアリスだった。5日目にはご飯をモリモリ食べているアリスだった。6日目には土産のブラックビーストなりきりスーツ(非売品)を着てご機嫌の弟のリュオンとブラックビーストごっこをして遊ぶアリスだった。ので7日目からアリスは自分の部屋で母ミティアに猛勉強させられていた。
 先程ルミアとリュカが軟禁状態のアリスを、
 「一緒に教会の書蔵庫で勉強しよう」
 と誘い出そうとしてくれたのだがミティアに断らさせられてしまい、
 見たい画集があったのに~。
 アリスは未練タラタラで教科書を完全に上の空で眺めていた。そのアリスの背中にミティアは深い溜め息をついた。
 進学した位で性格が変わる訳が無いのは分かっていたけど、本当にそのままありのまま。この子の為にも出来る事は全てしてあげないといけないわ。
 決意を新たにする母の心、子知らずなアリス。
 コンコン、コンコン。
 そこに部屋のドアがノックされて父テオドールが顔を出した。
「勉強ははかどっているか?アリス」
「父さん」
 テオドールの姿にアリスの表情がパアッと明るくなる。
「うん、頑張ってるよ。今日は剣の稽古がしたいなぁ」
「今日は剣の稽古はしません」
 ミティアにきっぱりと言われ、ガックリと肩を落とすアリス。
 チッ。今日は丸一日座学か。つまんないなぁ。
 口を尖らせるアリスに気付かれない様にテオドールとミティアは目配せを交わす。テオドールはアリスの髪をクシャクシャッと撫でると笑い掛けた。
「アリス、今日は魔法の練習をしよう」
 テオドールの言葉にアリスは首を傾げる。
「魔法?」
「昨夜、俺が実は火の魔法を使える事は話しただろう」
「うん、その事を知っているのはハーネット男爵様とベルク子爵様。それと師匠のトマスじーちゃんだけなんでしょう?」
「ああ、……平民で魔法が使えると目立つから隠しているんだ」
「うん、そうだね」
 アリスは頷いた。両親はアリスに母ミティアを守る為に身分を隠している事をまだ秘密にしておくつもりのようだ。それならそれに乗っておこうと思うアリスだった。
 それよりも、父さんがマジカル学園の卒業生っぽいんですけど。しかも結構優秀だった感じ。
 アリスはミティアとボソボソと話しているテオドールをじーっと見て気付いた。
 あれ?父さんの服装がいつもと違う。重装備というか、まるで山にでも入る様な。
 アリスの視線に振り返ったテオドールはポンポンとアリスの頭を叩くと、
「下で待っているからな」
 と言い残し部屋を出ていった。首を傾げるアリスにミティアがスッと着替えを差し出す。上下重装備なまるで山に分け入るかのような用意の上下の服。
 …魔法の練習だよね。何故に山行きの支度?
 アリスは着替えと机の教科書を見比べた。アリスには机の上の教科書よりも母の手の上の着替え(お外)の方が光り輝いて見えた。後にこの判断をアリスは心の底から後悔する。

「父さ~ん、マジでやるの~っ!!」
 アリスの叫び声に振り返ったテオドールは笑顔で親指を立てるグッドサインを返した。
「大丈夫だっ。お前も早く来いっ」
「えええええ~」
 白装束のアリスは半べそで、ズンズンと白い半パンツ1枚で轟々と音を立てて流れ落ちる滝壺の中へ入っていく父の背中を見つめていた。
 母と弟に見送られ父と一緒に家を後にしたアリスはそのまま山へ連れてかれた。ガチ登山で向かった先は山奥の結構見応えのある滝だった。綺麗な滝を眺めて充足感と達成感と母のお弁当(空腹)を感じていたアリスにテオドールは白い浴衣の様な物を手渡した。そして現在に至っていた。
 滝壺の前でアリスは滝行を始める父の後に続く勇気が持てず立ち尽くしていた。
 いや、マジで滝行って有り?コレって魔法の練習になるの?マイナスイオンを浴びるだけで良くない?
「アリスッ、早く来なさいっ。俺の右隣が初心者向けの水量だっ」
 いや、絶対違うだろ。
 父の姿にそう確信するアリス。しかし…。
 アリスはおっかなびっくりで足を伸ばして滝壺の中に爪先を入れてみた。
「冷たっ」
 水の冷たさにアリスは慌てて爪先を引っ込める。滝に打たれる父を見ながらアリスはこの展開に全然納得出来なかった。
 乙女ゲームで滝行とか聞いてないっ。話が違い過ぎっ。パッケージに偽り有り過ぎだっ。JAROに訴えてやるーっ。
「ねえ、父さんっ。本当にこれが魔法の練習になるの~っ?!」
「勿論だっ。魔法を使う為に重要なのは集中力だっ。滝に打たれて心を空っぽにする。まずは無になるんだ、アリスッ」
「無って言われても~」
「滝に打たれて雑念を全て消し去るんだ、アリスッ。無になる、そうすれば邪な想いもあわわわわっ、とにかくスッキリだっ!いいから早く来いっ!!」
「はいっ!!」
 父の迫力に呑まれたアリスは反射的に滝壺に飛び込んだ。
「冷たーっ!!」
「滝に打たれている内に暖かくなるっ」
「絶対、嘘だーっ!」
 父の隣りは全く初心者向けではなかった。マジカル学園に戻る迄にアリスは3回滝行を行った。3回目には母ミティアと弟リュオンがピクニック気分で付いてきた。滝壺で楽しく水遊びするリュオンとミティア。それを滝に打たれてアリスは父の隣りでただ見ていた。
「リアル乙女ゲー、激ムズ~!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

悪役メイドだなんて言われましても困ります

ファンタジー
オファーロ公爵家にメイドとして孤児院から引き取られたフィーだったが、そこで物理的且つ衝撃的な出会いをした公爵令嬢が未来の悪役令嬢である事を思い出す。給料支払元である公爵家に何かあっては非常に困る。抗ってみると決めたフィーだったが、無事乗り切れるのだろうか? ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※他サイト(なろう様)にも掲載させて頂いています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

処理中です...