無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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今後も無視でよろしい

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「ど~しよ~っ」
 女子寮の4階へと続く階段の前でアリスはウロウロオロオロしていた。アポ無し訪問はルール違反。クラリアが在室中かどうかも判らない。
 しかしどうしてもアーサーイベント?の相談がしたいアリスはアーサーからゴミの薔薇の花を受け取った後すぐにここに直行していた。
 インターホンが有れば良いのに。
 恨めしげにインターホンが付いていて欲しい辺りの壁を睨むアリス。しかし睨んでいてもどうにもならない。
 どうにか誰かに階段を下りて来て欲しい。
「…」
 奥の手を使うしかない。
 アリスは階段の上を覗き込むと、部屋の方へ向かって魔法の呪文を唱えた。
「アナベルのバーカ、セシルのアホ~」
 ……。
 何も起こらなかった。
 アリスはもう少し強力な呪文を唱えようと、
『何ですってえ~っ!』
 その時、怒声と共にバケツの水ほどの水の塊と濡れた雑巾が階段の上からアリス目掛けて一直線に飛んできた。
「うわっ?!」
 バッシャーンッ。
 その水の塊をまともに被ったアリスはその場で滑ってひっくり返る。尻餅をつき頭に雑巾をペチャッと載せたアリスの前に階段を駆け下りてきたのは眼尻を吊り上げたアナベル&セシルだった。二人はキッとアリスを睨み付けた。
「馬鹿犬にバカなんて言われたくないわ」
「駄目犬にアホなんて言う資格はないわ」
 呪文の効果はテキメンだけど副作用が酷いな。
 リアルに身の危険を感じるアリス。そこに、
「あらあら、二人共急に駆け出してどうしたの?」
 優しい微笑みを浮かべたクラリアが優雅に階段を下りてきた。クラリアは怒り心頭のアナベル&セシルと頭に雑巾載せたアリスに目が点になる。
『お姉様っ、アリスったらヒドイのよ!』
「クラリア様っ、ゲー、イベ、とにかくとにかくご意見を伺いたくっ」
 同時に口を開く三人にクラリアは溜め息をついた。
「取り敢えず、びしょ濡れになった服をどうにかしないと」
『でもアリスが悪いのよ、お姉様っ』
「お話しは後で聞きますから先ずは部屋に戻ってアリスの服や髪を乾かす準備をメイドに頼んで頂戴」
『…はい、お姉様』
 アリスの頭の雑巾を手渡され不服そうな顔だがアナベル&セシルは雑巾を手に階段をタラタラと戻り始めた。二人の舌打ちの音も聞こえなくなり、振り返るクラリアにアリスは関を切ったように喋り始めた。
「さっきアーサーから赤い薔薇の花のゴミを受け取ってしまいましたっ」
「は?」
「アーサーがしおしおの赤い薔薇の花を手に渡り廊下に立ってて、んでゴミ捨てを頼もーかなーって、でも薔薇の花だし断ろうとしたのに振りまわして、俺もこれで踊れたって、でも頭突きはわざとではないんです~っ」
「全く意味が解らない。最初から順に説明なさい」
「ハイッ」
 アリスはアーサーとの出来事を必死に説明した。話しを聞くほどにクラリアの眉間のシワは深くなっていき…。
「という訳なんです~。このゴミor赤い薔薇はどうしましょう~」
 アリスはヨレヨレの赤い薔薇を指先で摘んで揺らしながら叫ぶ。
 クラリアはこめかみを押さえた。
「兎に角そのゴミは捨てなさい」
「それで無かった事になりますか?」
「それをどう判断するのか悩む所ね。確かにアーサーがアリスに赤い薔薇を贈るのは好感度アップの証。だけどどう見てもゴミよね、それ。ゴミを捨てる体で渡したにしてもあまりにもゴミよね、それ。踏まれた跡のある花を女性に贈るとかマジで無礼にも程があるし」
「はい~」
 アリスは赤い薔薇の花ではあるもののヨレヨレのどこから見てもゴミに見える花を見た。
 ノーラにあげようと思わなければすぐにゴミ箱に放り込むレベルの萎れた赤い薔薇の花、棘もツンツンな悪役令嬢が踏み付けた後のような赤い薔薇の花。
「ゲームの中として考えるのならばアーサーが赤い薔薇を持って現れたのは好感度アップ、クリスマス舞踏会に誘われる可能性アップと考えるべきなのだろうけど、現実には王太子があれだけ大っぴらにコナをかけた女に、しかも即OKしているし他の男が手を上げるとは考えられないわ。ゲームの強制力があるとしても余程強力な力がないとムズいね」
 唸るクラリアにアリスは首を傾げた。
 …コナをかける?薄力粉?
「渡された物が赤い薔薇の花とはいえほぼゴミ、本人もゴミと言ったし、アーサーはダンスのアドバイスしかしていない」
「はい、あの、ゴミとして受け取っても赤い薔薇は有効だったらどうしましょう?頭突きで無効になったでしょうか?」
「ゴミ同然の赤い薔薇の花を受け取ったけれど、そもそもアーサーは貴方をクリスマス舞踏会のパートナーに誘っていないわ」
「パの字も無かったです」
「アーサーがヒロインをクリスマス舞踏会に誘うスチルは、渡り廊下で手折った赤い薔薇の花を手にクリスマス舞踏会へ一緒に行こうと誘うのよね?」
 あやふやな記憶のクラリアにアリスはコクッと頷いた。
 アリスは前世でアーサー推しのオタ従姉にイヤというほどそのスチルを見せられていた。
「はい、夕闇迫る学舎の渡り廊下でクリスマス舞踏会の話題で盛り上がっているクラスメイト達とは対象的にゲームアリスは一人沈んでいるんです。何故かといいますとアリスはクリスマス舞踏会に行きたいけど誘ってくれる人もいないし着ていくドレスも無いわって。そこに颯爽と現れたアーサーが手近な赤い薔薇の花を手折り、」
『そんなに暗い顔をしていたら折角の可愛い顔が台無しだ。俺がお姫様を舞踏会でも守ってやるぜ』
「って言うんです~」
『でもドレスが…』
「と渋るゲームアリスにアーサーは」
『さっき学園に届いた荷物の中に君の宛名があったよ』
「って。言われたアリスが確認すると、母からの白いドレスが届いていてそこでゲームアリスが赤い薔薇の花びらが舞い散る中でアーサーに」
『戴いた赤い薔薇の花をこのドレスの胸に飾って宜しいですか?』
「って答えるんです~。でも当日にアーサーは赤い薔薇の生花ではなく赤い宝石で造られた薔薇の花のブローチをくれるんです。お金持ち~♪キラキラなお姫様とそれを守る騎士様という王道乙女ゲームスチル!オタ従姉一推しですーっ」
 スチルを思い返してウットリと浸るアリス。それをクラリアは冷徹な瞳で見ていた。
「見本がソレなら今回の下りはアーサーがヒロインをクリスマス舞踏会に誘うイベントではなかった可能性が高いわね。頭突きもお見舞いしたし。そうね、アランに貴方のダンスレベルを聞いてカイルの為に様子を覗いに来たという所かしらね」
 クラリアの言葉にアリスは手のヨレた赤い薔薇を見る。
「はい」
「たまたま渡されたゴミが赤い薔薇だったから紛らわしかった。ゲーム攻略に関するイベントでは無い。それでいいでしょう」
「て事は」
「アーサールートは今後も無視でよろしい」
「では無かったという事で」
「いえ、無かった事にはなってないけど」
「良かった~、取り返しがついた」
 アリスは万歳と両手を上げ、
 バッシャーン!
 そこに階段の上から綺麗なお湯がアリス目掛けて降ってきた。
「…」
 アリスは万歳のポーズのまま固まる。
 サササッ。
 バスタオルを手にメイドが数人階段を下りてくるとアリスをタオルでぐるぐる巻にしながら丸ごと拭いていく。途中からドライヤーのような魔道具を手にしたメイドも加わり、5分後、アリスはおフロに入った後の犬の様になっていた。
 1滴のお湯が掛かる事なくそれを眺めていたクラリアはやれやれと肩を竦めるとアリスの頭から爪先までをチェックして頷く。それを合図にメイドの一団はサーッと一糸乱れぬ動きで部屋へ戻って行った。
「…」
 そこに仏頂面のアナベル&セシルが階段の上から姿を現した。
「…」
 二人は無言でお菓子の箱をアリスにぶん投げて寄越す。
『お姉様考案のたこせんよ。せっかくだから食べるが良いわ』
「…」






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