無理です!!。乙女ゲームのヒロインからの正統派ライバル令嬢なんて務まりません! 残念JK残念令嬢に転生する

ひろくー

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王子様ドレスは素敵だけれど

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 アリスは良くなかった。お茶会終了後、メレンゲの焼き菓子を土産に喜んで部屋に戻ったアリスは早速リアル乙女ゲーム仕様のヒロインドレスを描こうとクロッキー帳を引っ張り出して描き散らかしまくって、やっと気付いた。
 あれ?腰回りがそういえばピッタリガッチリだったような…。
 アリスは慌ててクラリアに、
「やっぱり母ドレスが良いのですが~っ」
 と相談したが、当然
「駄目に決まってるでしょ。寝言言い続けるなら魔法省特別見学許可証申請を取り下げるわよ」
 とあっさり却下脅された。
 今はまだカイルからドレスを贈られた事は口外しないようにキツく申し渡されていた。打ち明けるのは友人達の仮縫いが全て終わった辺りで、限られた口の固い数人の友人とサーシャ本人に当日までの口止めを約束させた上で話すようにクラリアからアリスは厳命されていた。
 つまり誰にも話していない。
 ウエスト調整機能付き母ドレスへの未練を捨てきれないアリスははぁ~っと溜め息をついた。
「どうしたの?」
 浮かない顔のアリスをサーシャが不思議そうに覗き込む。
 ランチを取り終わった後の昼休み。アリス達は次の授業の教室へ早目に移動していた。
 お願い、母ドレスとカイルドレスを交換して!
 と喉元まで出かけた言葉をアリスはグッと何とか呑み込んで、
「え?何にもないよ」
 曖昧に笑い返すアリスにユリアンヌの目がキラリと光った。
「…最近のアリスってずーっと奥歯に物が挟まった様な顔をしているわね?」
「え?何も挟まってないよ」
 と惚けつつも目は泳ぐアリス。
『怪しい』
 ユリアンヌとサーシャとノーラの三人は階段へ続く手前の廊下の端でぐるりとアリスを取り囲んだ。
「正直にお話しなさいな、怒らないから」
「白状した方が楽になってよ?」
「私達、お友達でしょう?」
 …三人がいじわるモブ令嬢になってる。
 段々と狭まってくる包囲網にアリスはぐぬぬ~っと、
「こんにちは、アリス嬢」
 その時、後ろから声を掛けられた。
 助かった。
 アリスが振り返るとそこにはアリスが食堂でいじわるモブ先輩女子生徒に絡まれた時に助けてくれたカイルの取り巻きモブの先輩男子生徒が笑顔で立っていた。
 ああ、フクロウ先輩、何て良いタイミングでしょう。
 ホッとした顔のアリスにユリアンヌはチッという目に一瞬だけなるが直ぐに笑顔になりフクロウ先輩にスッと会釈をする。サーシャとノーラもそれに続いて会釈をし、アリスも慌ててそれに倣った。
「こんにちはっ」
 元気に挨拶するアリスにクスッと笑ったフクロウ先輩は皆に挨拶を返してからアリスを見た。
「君に少し聞きたい事があるのだか、少し時間を頂けるかな?」
「はい、どうぞ。何でしょ…」
 直ぐに質問を受けようとするアリスの背中をサーシャがきゅっと抓った。
「…」
 言葉が止まるアリスに変りユリアンヌが続けた。
「私達は先に教室に向かわせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。そう時間は掛からないから」
「はい、では御機嫌よう」
 フクロウ先輩に会釈をしたユリアンヌにサーシャとノーラもそれに倣い、そして三人はその場を後にした。
 サーシャに抓られた背中を擦っていたアリスはその背中を見送りながら首を傾げた。
 いつものダンスの調子を聞かれた後にクッキーを貰うだけじゃないの?
 アリスに貴族の僅かな機微を嗅ぎ分けて対処するというスキルの持合せは無い。
 マサカ踊ロウトカ。
 思わずファイティングポーズを取るアリスにプッとフクロウ先輩は吹き出した。
「ないない。ちょっとドレスの事を聞きたくてね」
「あ、そうなんですね」
 フクロウ先輩の言葉にアリスはホッと肩の力が抜けてヘヘッと頭を掻く。
「素敵なドレスです。クラリア様に言われた通り、誰にも話していません。でも実は私が用意していたドレスを代わりに着て欲しい友人がおりまして、その子と二人の友人に折りを見て打ち明けようと思ってます」
 何か言われる?とちょっと上目遣いで窺うようにフクロウ先輩を見上げるアリス。それにフクロウ先輩は優しい顔でうんうんと頷いた。
「それは良いね。君の心遣いをとても喜んでくれると思うよ」
「はい、喜んでくれると良いなって」
 サーシャの喜ぶ顔を想像しつつもキツキツドレス決定かぁ…が辛いなとフハッと笑うアリスにフクロウ先輩は笑顔で、そうそうという風に手にしていた袋からビスケットの入った小箱を取り出した。
 ハイッとアリスにその小箱を手渡したフクロウ先輩は小さな声で、
「ここから見てすぐ先の中庭の東屋で子ダヌキが日向ぼっこしているのをついさっき見たんだ」
「え?子ダヌキ?」
「ああ、ビスケットが好きそうな顔をしていたよ。まだいるだろうから見に行ってご覧」
 そう言いながら中庭の奥を指差すフクロウ先輩にアリスは、
 中庭の東屋で居眠りする子ダヌキ。
 ビスケットを美味しそうに食べる子ダヌキ。
 と癒やし映像を思い浮かべた。
「見たいなぁ、子ダヌキ。私からビスケットを食べてくれるかな」
「食べると思うよ。でも授業には遅れないようにね」
「はい、ありがとうございます」
 すっかり子ダヌキに会いに行く気のアリスにフクロウ先輩は頷いて、
「じゃあ、私はここで」
 と手を振ってそのまま階段を上がって行く。
 ペコリと頭を下げてそれを見送ったアリスは廊下の中庭へ続く出入口を見た。
「子ダヌキとビスケット食べよて慰めて貰おうっと♪」





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