遥かなる光の旅人

しょこら

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第三章

3.千里眼

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 翌日、エリスは初めて、陽の登らない朝を迎えた。
 どんよりと、闇はカイユを覆い、長い夜が続いている。ナナの張った結界がなければ、エリスにもこんな平穏な目覚めはなかっただろう。
 エリスは寝台から起き上がり、光玉を造ると、幾本かの蝋燭に光を灯していく。
 窓の外は、暗闇しかない。
 今、こうしている間もリヴァはどうしているのか。
 ここまで来ているのに、カイユに来ているのに、リヴァから何の反応も返ってこない。
「近くにいるはずなのに……」
 ずっと呼び掛けているのに確かな手ごたえはない。エリスには精神感応の力はなかったが、不思議とリヴァの存在だけは感応できた。それが、今はない。
「リヴァ」
 エリスは大きくため息を付いた。
 いつまでも部屋に閉じこもっているわけにもいかない。着替えを済ますと、食堂へ向かった。
 ナナはもう、起きているだろうか。
 料理の腕は、それほど誉められたものではないが、手伝いでもした方が、気が紛れそうだ。探しに行く前から、不安に溺れていては仕方がない。
 食堂ではナナがもうすでに支度をはじめていた。
「おや、おはようエリス」
「おはようございます、ナナ」
「眠れなかったのかい?」
 まぶたの赤いエリスを見て、ナナは顔を曇らせた。
「少し、考え事をしてて……」
「いけないねぇ。休めるときに休んでおかなきゃ、ここぞというときに、何も出来なくなるよ」
「はい」
 しゅんとして肩を落としたエリスにナナは豪快に肩をたたく。
「ま、いいさね。朝ごはんの準備を手伝っておくれ。働かざるもの食うべからず、だよ」
「は、はい!!」
 慌てて背筋を伸ばしたエリスの背後から、イアンとルーリックが両手に、肉やら野菜やらがたくさん詰め込まれた篭を抱え、入って来た。
「あ、姉ちゃん、おはよう」
「おはよう、エリス」
 ルーリックにすっきりした顔で挨拶されたエリスは、目を円くする。昨日まで寝込んでいたはずの青年が元気に家の手伝いをしている。
「ルーリック、もう起き上がって、大丈夫なの?」
「お陰様で」
 イアンと仲良く笑い合いながら、ルーリックは篭を円卓の上に置く。エリスは信じられないと言った顔で、ナナを振り返るが、とうに承知している様で、何も言わない。もう一度、ルーリックを見ると、青年は笑いながら言った。
「昨日も言ったけど、僕も手伝うよ。お兄さんを探すのを」
 青年の気持ちは有り難いが、その厚意を受ける訳には行かない。
「嬉しいけど、ルーリックはだめよ。光の民だもの」
 金髪に青い目をしている人を、アスファーダでは、光の民と呼ぶ。決して、差別用語ではない。二つに別れた国民の容姿を、区別するためのものである。
 ちなみに、イアンは闇の民だ。
 光の民にとって、夜の暗闇でない純然なエネルギーとしての闇の中では、体内の光を奪われ、消耗し、衰弱してしまうのだ。闇の民も同様に、光のエネルギーの中では、闇を奪われてしまう。
「大丈夫だよ。もう随分と回復したから」
「何を言ってるの?だめに決まってるでしょう!昨日意識まで失ってたの忘れたの?」
 あのとき見たリヴァの顔が、エリスの頭から離れない。リヴァ程のティアルーヴァでさえ、危うい状況にあるのに、ルーリックが無事で済むはずがない。
 涙を浮かべて怒るエリスに、ルーリックは黙り込んだ。
「姉ちゃん」
 イアンが心細い顔をして、エリスの服の裾にしがみつく。小さな手の温もりに気付き、エリスは我に返った。
「ごめんなさい。大きな声を出して」
 困り顔で俯くルーリックの肩をナナは優しく叩き宥める。
「あんたがエリスを助けてやりたい気持ちは分かるが、エリスの言うとおりだ。光の民がこんな闇の中に出ていくのは危険すぎる。ここはおとなしく一緒に留守番していようじゃないか」
 ルーリックは何か言いたげだったが、観念したのか頷いて、黙って席に着いた。
 彼は食事の間中、ずっと黙ったままだった。
 朝食を済ませたエリスとイアンが出掛けるころ、ルーリックは心配げな顔をして、近寄って来た。
「気を付けて」
 優しい笑顔で送り出され、エリスはもう一度謝る。
「さっきは、ごめんなさい。あの、怒鳴ったりして」
 ルーリックは首を振る。
「何かあったら必ず声をかけて」
 真剣なまなざしでルーリックはそう告げる。これから行く場所は闇の中だ。光の民であるルーリックができることなんてないと何度も言っているのに。なんて頑固なんだろう。だが、ルーリックのその思いは嫌ではなかった。
「ありがと。そうする」
 ルーリックの思いを無下にするのはできなかった。緑の塔で、黒髪の少年がくれた言葉をエリスは思い出す。
 なんてひどい言葉を自分は返してしまったのだろう。
 いまさらながらに後悔した。
 彼もカイユに来ているはずだ。どこかで会える。会えたら、ちゃんと謝ろうとエリスは誓った。
「じゃあ、行ってきます」
 奥にいたナナに声をかけると結界を解くために、小走りで駆け寄って来た。
「いいかい。気を付けてお行き。あんたは光の民でもある。両方使えるからと言って過信しないように。何が起こるかわからないからね」
「はい」
 ナナはエリスの青い瞳をじっと見据えて言った。エリスの中に二つの力がある。だからこそ、いま動けるが、この闇の中で光の民が危険なのは変わらないのだ。エリスにも何らかの影響が出ておかしくない。
 エリスは神妙に頷いた。
「よし、良い子だ。気をつけて行っておいで」
 ナナはぎゅっとエリスを抱きしめた。
 エリスは母親を知らない。両親はエリスが幼い頃に流行り病で亡くなっているし、リヴァが親代わりになって面倒をみてくれた。だから親の記憶はほとんど残っていなかった。
 これが母親のぬくもりなのかなとエリスは思った。
 口は悪いけど、優しくて温かい。すこしだけエリスは泣きそうになった。
「はい」
 ナナの手によって結界が解かれ、戸が開かれる。すりぬけるように、イアンが出て、その後をエリスが続いた。
 そして、もう一度結界が張られる。背後で扉が閉まると、エリスは深呼吸し、前方を見る。するりと、イアンの手が伸びて来て、エリスの手とつながれた。
「はぐれちゃまずいからな」
 はじめてあった時と同じことを言い、イアンが笑ったのが分かる。
「とりあえず、市長の家を覗いて見るか。もしかしたら、いるかも知んねえし」
「そうね、行ってみましょう」
 僅かな期待を抱いて、エリスはカイユの人々が避難しているという、市長の家に向かった。


 カイユまであと少しと言うところまで近付いていたリョウラたちの一行は、カイユとグラールの境に近い場所で休憩を取っていた。もうカイユを覆う闇は目の前に見えている。
「グラールに到達するのも時間の問題か」
「これだけの闇がカイユにとどまっていることも不思議です。一夜にして覆われたというのも、カイユだけ。この土地に闇を呼び込む何かがあるのでしょうか」
 リョウラは岩場に立ちカイユを覆う闇を見下ろす。その背後にはリョウラの副官である、岩の称号を戴く光使いのザカエが腰に手をやり、同じようにカイユを見つめていた。ほっそりとして貴公子然としているリョウラとはまったく正反対の、筋肉質で背も高いザカエは強面の外見だが意外と繊細で細かいところに目が届く参謀として有能な男だった。
 ただ闇に覆われただけなら【浄化】は有効だが、カイユを覆う闇はゆっくり渦を巻き、その密度を上げているようにみえた。
 エリスとはぐれて一日が過ぎてしまった。リョウラの力でもエリスの声は聞こえてこない。どこか遠くに飛ばされたか。カイユの闇の中で意識がなくしているか。
 カイユを目指す隊列の中で、エリスには気を配っていたはずだった。
 一番下っ端の新人で、一番無茶をしやすい。リョウラだけでなくリューイも、ほかの隊員にも留意するように内密に指示してあった。それなのに、闇が彼女を目の前で攫っていくとは思わなかった。
 エリス本人も気付いていないだろう。
 闇に覆われた自分が知らず隊から引き離されたことなど。
 リョウラは不思議な動きをする闇に誰かの意図があるような気がしていた。
 標的はエリスだ。
 エリス自身をカイユに呼び寄せたかったのだろう。
 あの予言通りに。
 だが、それだけに固執するのは危険すぎる。ほかの可能性ももちろん考えておかなくてはならない。
 リューイがエリスの居場所を見つけてくれたら助かるのだが、まだ何も言わないところを見るとリューイの方でも反応はないのだろうと思った。
 隊に戻ってきてもリョウラはあさっての方向を見たまま、腕を組んで沈黙を守っている。ほかの隊員たちは慣れているのか、じっとリョウラの指示を待っている。
 リューイはリューイで、隊の責任者であり先輩としても慕うリョウラが黙ったままなので、どうすることも出来ず、俯いている。
「……あの、……エリスは」
 沈黙に耐え切れず、リューイが口を開くと、リョウラはぎょっとして振り返る。
 余りの反応の仕方に、リューイはたじろぎ、言葉を飲み込んだ。
「エリスの姿はお前でも見えないか」
「えっ?」
 『千里眼』の力を持つ少年は、何を期待されていたのか初めて気が付いて、自分の間抜けさに赤面した。
「済みません。気が付きませんでした」
 やってみますとの言葉を、リョウラたちは目を見張りながら聞いた。
「出来るのか?」
 ひどく真剣な声で尋ねてきたのはザカエだった。小柄なリューイと並ぶと大人と子供くらいの対格差がある。
「分かりませんが、やってみます」
 リューイは大きく深呼吸をすると、意識を集中し、遠くカイユへ飛ばした。
 頭の中に、映像が浮かび上がって来る。いつもは、自分の目で見ているかのように鮮明なそれは、今は黒いもやがかかって、あまり良く見えない。止まっている訳でもない闇はゆったりとうごめき、リューイの視界を曇らす。かなり強い闇の瘴気である。
 エリスは大丈夫だろうかと心配になった。
「余計なことは考えるな」
 ふいに氷の光使いの声が聞こえて、リューイは思考を閉じる。
 考えれば考えるだけ、悪い方向に向かってしまうことを青年は知っているのだ。
 再び、意識をカイユへ向ける。
 こうして、自らの意思で『千里眼』の力を使うのは初めてだった。いつも襲われる精神的な圧迫感は、全く感じられない。それこそが、リューイにとって、驚くべきことであった。
 出来れば見えなくなって欲しいと、ずっと願っていた。
 でも今までとは違う。
 知りたい、見たいと強く願う自分がいる。
 こんなに熱中して、術に没頭することは、今までになかったことだ。
 いつも突然に映像が浮かぶのは、決して気持ちの良いことではない。それが、見たくないものであればある分だけ、嫌悪感がひどい。出来る限り力の抑制になればと、目を閉じていたのだ。
 だが今は、そんな自分を恥じた。
 リューイは意識を集中させ、暗闇の向う側を覗き込んだ。
 朧げに人影。
 長い黒髪、細い肢体。
 そばに子どもの影。
 子どもは誰だか想像が付かないが、その人影はエリスだと確信した。
「エリス!」
 見つけた!
 喜びに声を上げたそのとき、エリスたちの映像にかぶさって、闇の中に巨大な金色の双眸が現れた。
 巨大な二つの目が、ギラギラと輝きながらリューイを捕えている。とてつもなく大きな力が、少年を弾き返す。確かな敵意を込めて怒りをぶつけられた少年は、なすすべもなく昏倒した。
「リューイ?」
 じっと様子を見守っていたリョウラたちの目の前で、リューイは突然崩れ落ちた。ザカエが急いで抱き起こす。
 少年は気を失っていた。
「おい、大丈夫か?リューイ!」
「う…は、はい。大丈夫です」
 うっすらと目を開けて、呻いた後、リューイはすぐ意識を戻した。
 リョウラは周りの闇使いたちを見遣る。彼らもみな一様に目を見開き、体を硬直させて立ち尽くしている。
 動揺しているのがはっきりとわかる。
「何か見えたのか?」
 リョウラを始めとする光使いたちだけが訳が分からずにいる。
 前にエリスがいたときとは違って、リューイの見た映像をリョウラが見ることは出来なかった。エリスという媒体があって初めて、見えるものらしい。
「いったい、なにを見たんだ」
 辛抱強く、リョウラは促す。
 しばらくして、ようやくリューイは口を開いた。口が渇き切ったのか、かさかさに乾いた声だったが、しっかりしていた。
「エリスを見つけました。でも、そこに…金色の目が…」
 リューイはぶるっと体を震わせる。
 リョウラの眉が訝しげに歪む。
「……闇の神でした」
「どういうことだ?」
「カイユはエルナーダに選ばれた、と……」
 リューイの言葉が静かに響く。
 沈黙が、その場を満たした。

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