ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき

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ポジティブ

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「祐、昨日はどうだった。」講義が終わって、エントランスで合流した祐樹に圭太は何げなく、昨日の首尾を聞いたつもりだったが、鋭い目つきで睨み返された。
どうやら、上手くいかなかったらしい。まさかとは思うが、男だってばれた?
「いや、ばらした。」
なんで、と聞こうとしたが、祐樹の目線による制止で圭太は黙った。聞いたら、蹴りを入れられそうだ。もはや何も聞くまい。
そこへ、祐樹の携帯電話が鳴った。
表示を見ると登録されていない番号のようで11桁の数字がそのまま表示されていた。祐樹はすかさず、切って着信拒否の設定をした。
「でなくてよかったのか?」圭太は普通に質問したつもりだったが、これも先ほどの質問同様睨み返された。
「どうしたんだよ。今日イラつきすぎじゃね?」
祐樹は珍しくため息をついて、圭太に事情を吐露した。もちろん、男だと知られた理由はぼかして。
「それで、着拒してもしても電話番号を変えて電話してくるってわけ?」先ほど着信拒否した電話は昌磨のもので、何度着信拒否しても新しい番号からかけてくるらしい。金持ちがすごいのか、その昌磨の執念がすごいのか判断が難しい。
祐樹は厄介なやつに関わってしまったと、内心深く後悔していた。いつ自分の家や学校に乗り込んできてもおかしくない勢いだ。何か対策を打たねばならない。とりあえず、しばらく圭太の家に泊めてもらおうか。祐樹がそう考えているまさにその時、突然背後から名前を呼ぶ声が聞こえた。誰だろうと振り返れば、祐樹が今一番会いたくない相手、西園寺昌磨が立っていた。祐樹の乗り込んでくるかもしれないという予想が、こんなに直ぐにあたってしまうとは。全身の血の気が引いていく。
「なんで、お前ここにいるんだよ。」はっきり言って、ストーカーだ。
「すみません。」昌磨は申し訳なさそうに謝る。
「てか、大学の敷地内に勝手に入るって不法侵入だよな。」
「この学校の理事長と父が知人の間柄で特別に許可を頂きました。その、昨日のことを兄に相談したら、兄の知人が祐樹さんを知っていたようで、この学校に通っていると教えていただきました。」
こいつは、兄弟に臆面もなく昨日のことを話したのか?どういう神経してるんだ。それよりも、ストーカーに被害者の情報を漏らした奴は誰だ。
「誰だよ、その知人。」もし、祐樹も知っている奴なら首を絞めてやる。
しかし、昌磨が口にしたのは全く身に覚えのない人物だった。祐樹は再度人物の詳細を聞くと昌磨はより詳しく話した。その祐樹の所属大学を明かした元凶は、誰もが知る芸能プロダクションの顧問という人物で、祐樹は芸能人のスカウト界隈では知られていないほどの美少女兼美少年として有名らしい。
ふざけるな!
祐樹は街でスカウトしてくる輩を思い出していた。女だと間違えられるだけでも腹が立つのに、余計なことをしやがって。そういえば、大学前で待ち伏せされてスカウトされたこともあった。
「祐樹さん、こんなことをされるのは不快だと分かっています。しかし、どうしてもお話がしたくって。」
目を俯かせて話す昌磨の後ろには、学校の事務員だろうか、歳から見るに上の役職だとわかる中年男性がニコニコしながら立っていた。昌磨に一言かけると軽く会釈をして立ち去った。なるほど、上流階級ともなれば、偉い人とは大体顔見知りで歓迎されるというわけだ。
祐樹の斜め後ろにいる圭太が、あれって学部長じゃね?と立ち去った中年男性の役職について情報をくれた。
祐樹は、立ち去る学部長の背中と、控えめに立っている昌磨の顔を交互に見ながら、これからどうするべきか考えた。困難という文字が祐樹の中で踊る。昌磨の執着というか、ボンボンゆえの世間知らずさというか、何とも言い表しがたい規格外の状況を次々と生み出す力に対策が全く浮かび上がらない。物理的な距離を置くのは不可能だ。こっちが逃げても、昌磨の財力とコネで全部追いつかれるだろう。だったら、ここは、はっきりとした態度で心を折に行くしかない。
「俺、どっかいった方がいいよね。」祐樹の険しい表情と、申し訳なさげに立っている男。二人から出ている只ならぬ雰囲気に圭太は空気を読んで立ち去ろうとしたが、祐樹に腕をつかまれて、いるように止められた。正直、野次馬根性が勝って立ち去りたくないと思っていたので、とめられてラッキーだと思った。
三人は、場所を変えて話をすることが決まった。意外にも昌磨が場所を提案して、3人は学部長の応接室で話し合うことになった。ここなら、どこにでも学生がいる大学敷地内と言っても話を聞かれることはない。学部長は快く場所を提供して三限の講義を行うために出て行った。
「祐樹さん。話し合っていただける機会をいただけてうれしいです。」
昌磨はさらに話そうとしたが、祐樹がその途中で遮った。
「長ったらしい話はいい。要件を言え。」
「その、映画館で申し上げた通り、やはり祐樹さんのことが好きです。どうか、友達からでも関係を始められないでしょうか?」
昌磨の行動力を考えるに、本当に友達だけで終われる気がしない。ダメだといっても、駄々っ子のように、しかし、後ろ盾をフルに活用して囲い込んで迫ってくる。そんな予感しかしない。
「いやだ。俺にだって、友達を選ぶ権利はある。お前とは友達にだってなりたくない。」
「では、なぜ駅構内で告白したときはっきりと断ってくれなかったのですか?」
そこを、突かれると弱かった。あそこでなぜはっきり断らなかったのかと言われれば、利用したかったからとは言えない。祐樹は言葉に詰まった。世間知らずに見えて、昌磨は簡単には封じ込めることができない。こんな、はっきり拒絶されたら心折れるものだが、流れを変えた。祐樹が言葉をさがしている間に、昌磨が再び口を開いた。
「もしかして、祐樹さんは本当は男性の方が、」
「違うって言っただろ!」祐樹は昌磨のいい終わる前に光の速さで、返した。昌磨のポジティブすぎる思考に考えが変わった。先ほどは本音を言うのはさすがに憚られたが、考えてみれば、今更遠慮する必要はなかった。
「金持ちのボンボンで大企業の社員だろ。だから利用できるかと思って、近づいたんだ。勘違いもいい加減にしろ。」
その言葉を聞いた昌磨は一瞬固まると下を向いて、何も言わなくなった。さすがに、ここまで言われれば、もう甘い考えなんて持つ余地もないだろう。祐樹は昌磨の落ち込む様子を見ると立ち上がって、学部長の応接室を出ようとした。圭太も祐樹についていこうとしたが、何も言わなくなった昌磨がかわいそうだった。何か声をかけたほうがいいだろうか。そう考えて、近寄ろうとした瞬間、昌磨は勢いよく立ち上がった。
「それでもいいです。僕の利用できるところは利用してください。あなたのためなら何でもします。だから、まずは、友達になってください。」
祐樹は、唖然とした。利用されると分かって、自分から進んでカモになるなんて本物の阿呆だ。祐樹はそれ以外の形容が思い当たらなかった。
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