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4章
252 二回戦・三回戦、そして準決勝
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通り抜けたばかりの紫門が、床に染み込むようにして閉じられた。
「代り映えしない……いや、テーブルの色が違うか」
目につくのは部屋中央に置かれた半月テーブルの盤上。紫の下地に、白字で大きく『Ⅱ』の文字が描かれていた。
同じ造りでも文句は出ないだろうに、中々に粋で芸が細かいことだ。
左端の椅子に腰かけて待っていると、すぐに残りの五人も次々と転移してくる。
最後にやって来たのは、僕と顔見知りでもあるプレイヤーだった。
「あーーーっ!! アンタっ、【瞬刻の戦神】じゃないッ!! 個人戦の予選ではよくもやってくれたわねっ! ここで会ったが百年目よッ!!」
「うわっ、なんだなんだっ」
現れるなり僕の顔をガン見したかと思えば、こちらを指差し、怒り心頭といった態度で詰め寄ってきた。
し、心臓に悪い……。こちとら、椅子に座っているから、体をのけぞらせるしかできないんだぞ……。
間近で鋭い目を向けられたまま、緑髪を背まで伸ばした彼女を解析してみる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 シルフィア
種族 人間 Lv25
第一職業 操嵐魔法士 Lv1
ーーーーーーーーーーーーーーー
記憶にある姿だと思っていたが、やっぱりそうか。
彼女、シルフィアは、ギルド《太陽の王国》のサブマスターだ。
個人戦の予選終盤にて、本選に出たライラ以外を纏めて倒したはず。
あの時は一切の情け容赦をしなかったし、恨まれてても致し方ない。
もっとも、今まで負かしてきた者を汚さないためにも、謝るつもりなど欠片もないのだが。
シルフィアは大きく息を吐いたのち、僕から目を逸らして腕を組む。
「ふんっ、まあいいわ。私たちが負けたのはアンタが強かったからだし、ひいては私たちが弱かったから。それが勝負の世界なんだし、今更うだうだ言わないわ」
「……たった今、『個人戦の予選ではよくもやってくれたわねっ!』とか何とか言わなかったか?」
「うっ、出会い頭で咄嗟に口に出しちゃったのよっ……! そのくらい多めに見てくれてもいいでしょっ!?」
顔を赤くして己の失態を恥じている様子のシルフィア。ちゃんと常識と良識を弁えているようでなにより。
リュウガみたいに性格の悪いプレイヤーじゃなくて一安心だ。
「――にしても、『ここで会ったが百年目!』とかいう表現、二十年生きてて初めて耳にしたなぁ……」
「う、うるさいわねっ!? ほっといてよっ!!」
「時間です。第三回戦を開始いたします。まず、皆さまのHPMPAPを全快に――」
▼▼▼
『二回戦・リザルト』
一位 マギナマギア 8ポイント ギルド《魔法士の館》 サブマスター
二位 アスト 5ポイント ギルド《ウェザリア》 メンバー
三位 シルフィア 0ポイント ギルド《太陽の王国》 サブマスター
四位・五位 脱落
▲▲▲
「……笑っていいか?」
「……」
声を出す元気さえないのか、シルフィアは僕の問いかけに沈黙を返す。
僕を後ろに置いてのorzの体勢なので、青系膝上スカートから太腿裏が顔を覗かせている。ネタに走るのはいいが、女を捨てるのはどうなのだろうか。
いや、多分それほどまでに、二回戦の結果にショック受けたのだろうけども。
「返事がない。ただの屍のようだ」
「……」
またしても無反応。
相当重傷だな、こりゃあ。
半分くらい自業自得の敗戦だと思うのだが……。
まだ三回戦まで時間があるし、このまま放っておくのも忍びない。
「ドヤ顔で第一ゲームを棄権しておきながら、以後ずっと平民以下。ねぇ、今どんな気持ち?」
「……っ」
「『ここで会ったが百年目』とか言いながら、全く僕に食い下がれず無得点。是非とも感想を聞かせて――」
「あああああああああっ!!」
跳ね起きたシルフィアが、もう何も聞きたくないとばかりに大声で叫ぶ。
まるで、「いやいや」と駄々をこねる子供のようだ。
元気が出たようで何より。
「ま、HPが全損しなかっただけ良かったんじゃないか? 生き残りを重視したのなら、悪くない作戦だったと思うぞ」
「っ、そ、そうなのよ。私はもとからそのつもりだったわ。アンタ、よくわかってるじゃないっ。次に会った時こそ、みんなと力を合わせて勝ってみせるんだからっ」
真っ赤な顔で涙目のシルフィアは、そんな捨て台詞を残して白い帰還ゲートに飛び込んだ。
やれやれ、世話の焼けるツンデレだったな。
「くくくっ……! 其方は実に面白い。さすがは時を統べし神の末裔」
「えっと……マギナマギア、だよな?」
「いかにも。我こそは機械仕掛けの魔神、マギナマギアなり。時の落胤よ、偽りの黄昏にて其方の戦場を用意して待とうではないか」
「は? いや、何言って……おいっ!」
怪しい魔法士風の出で立ちをしたマギナマギアは、言いたいことだけ言うと、引き留める間もなくさっさと橙色のゲートへ入っていった。
「……システマ。運営に伝えておいてくれ。翻訳システムが故障してる! って」
「あの……あれは、翻訳云々の問題ではないかと存じますが……」
ですよねー。
○○○
その後、僕は三回戦に勝って、黄色の転移ゲートをくぐった。
ふと思ったのだが、マギナマギアの言っていた黄昏って、三回戦で使った橙色のゲーム盤のことか? だとしたら……わかりにくっ!?
次は準決勝。
ここまで来ると誰しもが強敵。
純粋な大富豪の実力では僕が一歩劣るかもしれないレベルだ。
第二番テーブルへ集められたプレイヤーは、僕を含めて四人。
椅子に座って寛ぐ壮年の白髪男性。
壁に寄り掛かり、静かに目を閉じている若く美形な黒髪男性。
ちょうど転移ゲートから現れた、伊達眼鏡の似合う赤髪の女性。
ここまで己が頭脳で勝ち抜いてきた自負があるからか、敵となる三人ともが不思議な風格を醸し出しているような……。
「って、クレアか?」
「へっ? あ、アストさん!? 陣取り合戦に参加してたんですねっ」
もしやと思って声をかけたが、人違いではなかったようだ。
以前はなかったギルドマークのせいで、すぐには分からなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 クレア・フランベル
種族 人間 Lv23
第一職業 火炎魔法士 Lv17
第二職業 土石魔法士 Lv17
第三職業 水流魔法士 Lv17
ーーーーーーーーーーーーーーー
相変わらず、器用貧乏っぽい職業レベルだ。
「ああ、まあな。そういうクレアは、どこかのギルドに入ったのか? 見たことのないギルドマークだが……」
「あっ……これは、ですね。どうしてもギルド戦に参加したくて、自分で立ち上げちゃいました……。お恥ずかしい……」
「そうなのか。でも、よく一日でメンバーが集まったな」
我らがギルド《ウェザリア》なんて、サービス当初から熱心に勧誘しても、たった六人しか集まらなかったのに。
「はい。私も無理だと思ってたんですが、サブマスターを引き受けてくれた闇鍋御膳さんが、伝手を使って方々に声をかけてくれて。大会期間限定という条件付きですが、なんとか六人、無所属のプレイヤーを集めることができました」
「闇鍋御膳が? あいつ、何だかんだで面倒見がいいからなぁ……」
彼との絡みは、クレアと同じで主に掲示板。
普段の口調と態度が偉そうなので、俺様系と誤解されがちだが、本当は面倒なスキル検証を進んで引き受けてくれる、非常にありがたい人材である。
「私、今までずっと、意地悪な人だと誤解してたんですけど……正直、とても頼りになる人でした。今までの私の態度、謝ったら許してくれるでしょうか……?」
「僕に相談する理由が分からないが、謝罪ってのは相手の許しがほしくてやることじゃない。それさえ頭に入れておけば、多分大丈夫だろう」
「っ、はい! アドバイスありがとうございますっ」
クレアはハッとした顔で瞳を揺らすと、僕に感謝を告げてピシッと敬礼した。
「代り映えしない……いや、テーブルの色が違うか」
目につくのは部屋中央に置かれた半月テーブルの盤上。紫の下地に、白字で大きく『Ⅱ』の文字が描かれていた。
同じ造りでも文句は出ないだろうに、中々に粋で芸が細かいことだ。
左端の椅子に腰かけて待っていると、すぐに残りの五人も次々と転移してくる。
最後にやって来たのは、僕と顔見知りでもあるプレイヤーだった。
「あーーーっ!! アンタっ、【瞬刻の戦神】じゃないッ!! 個人戦の予選ではよくもやってくれたわねっ! ここで会ったが百年目よッ!!」
「うわっ、なんだなんだっ」
現れるなり僕の顔をガン見したかと思えば、こちらを指差し、怒り心頭といった態度で詰め寄ってきた。
し、心臓に悪い……。こちとら、椅子に座っているから、体をのけぞらせるしかできないんだぞ……。
間近で鋭い目を向けられたまま、緑髪を背まで伸ばした彼女を解析してみる。
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名前 シルフィア
種族 人間 Lv25
第一職業 操嵐魔法士 Lv1
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記憶にある姿だと思っていたが、やっぱりそうか。
彼女、シルフィアは、ギルド《太陽の王国》のサブマスターだ。
個人戦の予選終盤にて、本選に出たライラ以外を纏めて倒したはず。
あの時は一切の情け容赦をしなかったし、恨まれてても致し方ない。
もっとも、今まで負かしてきた者を汚さないためにも、謝るつもりなど欠片もないのだが。
シルフィアは大きく息を吐いたのち、僕から目を逸らして腕を組む。
「ふんっ、まあいいわ。私たちが負けたのはアンタが強かったからだし、ひいては私たちが弱かったから。それが勝負の世界なんだし、今更うだうだ言わないわ」
「……たった今、『個人戦の予選ではよくもやってくれたわねっ!』とか何とか言わなかったか?」
「うっ、出会い頭で咄嗟に口に出しちゃったのよっ……! そのくらい多めに見てくれてもいいでしょっ!?」
顔を赤くして己の失態を恥じている様子のシルフィア。ちゃんと常識と良識を弁えているようでなにより。
リュウガみたいに性格の悪いプレイヤーじゃなくて一安心だ。
「――にしても、『ここで会ったが百年目!』とかいう表現、二十年生きてて初めて耳にしたなぁ……」
「う、うるさいわねっ!? ほっといてよっ!!」
「時間です。第三回戦を開始いたします。まず、皆さまのHPMPAPを全快に――」
▼▼▼
『二回戦・リザルト』
一位 マギナマギア 8ポイント ギルド《魔法士の館》 サブマスター
二位 アスト 5ポイント ギルド《ウェザリア》 メンバー
三位 シルフィア 0ポイント ギルド《太陽の王国》 サブマスター
四位・五位 脱落
▲▲▲
「……笑っていいか?」
「……」
声を出す元気さえないのか、シルフィアは僕の問いかけに沈黙を返す。
僕を後ろに置いてのorzの体勢なので、青系膝上スカートから太腿裏が顔を覗かせている。ネタに走るのはいいが、女を捨てるのはどうなのだろうか。
いや、多分それほどまでに、二回戦の結果にショック受けたのだろうけども。
「返事がない。ただの屍のようだ」
「……」
またしても無反応。
相当重傷だな、こりゃあ。
半分くらい自業自得の敗戦だと思うのだが……。
まだ三回戦まで時間があるし、このまま放っておくのも忍びない。
「ドヤ顔で第一ゲームを棄権しておきながら、以後ずっと平民以下。ねぇ、今どんな気持ち?」
「……っ」
「『ここで会ったが百年目』とか言いながら、全く僕に食い下がれず無得点。是非とも感想を聞かせて――」
「あああああああああっ!!」
跳ね起きたシルフィアが、もう何も聞きたくないとばかりに大声で叫ぶ。
まるで、「いやいや」と駄々をこねる子供のようだ。
元気が出たようで何より。
「ま、HPが全損しなかっただけ良かったんじゃないか? 生き残りを重視したのなら、悪くない作戦だったと思うぞ」
「っ、そ、そうなのよ。私はもとからそのつもりだったわ。アンタ、よくわかってるじゃないっ。次に会った時こそ、みんなと力を合わせて勝ってみせるんだからっ」
真っ赤な顔で涙目のシルフィアは、そんな捨て台詞を残して白い帰還ゲートに飛び込んだ。
やれやれ、世話の焼けるツンデレだったな。
「くくくっ……! 其方は実に面白い。さすがは時を統べし神の末裔」
「えっと……マギナマギア、だよな?」
「いかにも。我こそは機械仕掛けの魔神、マギナマギアなり。時の落胤よ、偽りの黄昏にて其方の戦場を用意して待とうではないか」
「は? いや、何言って……おいっ!」
怪しい魔法士風の出で立ちをしたマギナマギアは、言いたいことだけ言うと、引き留める間もなくさっさと橙色のゲートへ入っていった。
「……システマ。運営に伝えておいてくれ。翻訳システムが故障してる! って」
「あの……あれは、翻訳云々の問題ではないかと存じますが……」
ですよねー。
○○○
その後、僕は三回戦に勝って、黄色の転移ゲートをくぐった。
ふと思ったのだが、マギナマギアの言っていた黄昏って、三回戦で使った橙色のゲーム盤のことか? だとしたら……わかりにくっ!?
次は準決勝。
ここまで来ると誰しもが強敵。
純粋な大富豪の実力では僕が一歩劣るかもしれないレベルだ。
第二番テーブルへ集められたプレイヤーは、僕を含めて四人。
椅子に座って寛ぐ壮年の白髪男性。
壁に寄り掛かり、静かに目を閉じている若く美形な黒髪男性。
ちょうど転移ゲートから現れた、伊達眼鏡の似合う赤髪の女性。
ここまで己が頭脳で勝ち抜いてきた自負があるからか、敵となる三人ともが不思議な風格を醸し出しているような……。
「って、クレアか?」
「へっ? あ、アストさん!? 陣取り合戦に参加してたんですねっ」
もしやと思って声をかけたが、人違いではなかったようだ。
以前はなかったギルドマークのせいで、すぐには分からなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 クレア・フランベル
種族 人間 Lv23
第一職業 火炎魔法士 Lv17
第二職業 土石魔法士 Lv17
第三職業 水流魔法士 Lv17
ーーーーーーーーーーーーーーー
相変わらず、器用貧乏っぽい職業レベルだ。
「ああ、まあな。そういうクレアは、どこかのギルドに入ったのか? 見たことのないギルドマークだが……」
「あっ……これは、ですね。どうしてもギルド戦に参加したくて、自分で立ち上げちゃいました……。お恥ずかしい……」
「そうなのか。でも、よく一日でメンバーが集まったな」
我らがギルド《ウェザリア》なんて、サービス当初から熱心に勧誘しても、たった六人しか集まらなかったのに。
「はい。私も無理だと思ってたんですが、サブマスターを引き受けてくれた闇鍋御膳さんが、伝手を使って方々に声をかけてくれて。大会期間限定という条件付きですが、なんとか六人、無所属のプレイヤーを集めることができました」
「闇鍋御膳が? あいつ、何だかんだで面倒見がいいからなぁ……」
彼との絡みは、クレアと同じで主に掲示板。
普段の口調と態度が偉そうなので、俺様系と誤解されがちだが、本当は面倒なスキル検証を進んで引き受けてくれる、非常にありがたい人材である。
「私、今までずっと、意地悪な人だと誤解してたんですけど……正直、とても頼りになる人でした。今までの私の態度、謝ったら許してくれるでしょうか……?」
「僕に相談する理由が分からないが、謝罪ってのは相手の許しがほしくてやることじゃない。それさえ頭に入れておけば、多分大丈夫だろう」
「っ、はい! アドバイスありがとうございますっ」
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