妖符師少女の封印絵巻

リュース

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一章 妖符師誕生編

11 開店準備完了と巡回

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「凪沙さん、もう一度呼び捨てで呼んでほしいな」

「~~っ!?駄目なものは駄目!恥ずかしいから!」


 あれから何度も呼び捨てで呼んでほしいとお願いしているのですが、残念ながら頷いてはくれません。
 かくいう私も未だに呼び捨てではありませんが、その準備は出来ていますよ。


「それでは、一晩お世話になりました。お借りした服は後日洗濯してから返します」

「どういたしまして。またいつでも来てくださいね?凪沙の大切なお友達ですから」

「お母さんっ!!」


 言われずとも、駄目と言われない限りはまた訪れるつもりですよ。
 やはり、家族というのは良いものです。
 そういえば、春奈さんも仕事の話でない時は口調が砕けるようになりましたね。
 大変結構なことだと思います。

 そうして、沢渡さんのお宅を後にしました。




 途中で買い物をしてからあやかし屋に戻ってきたら、雑貨屋業務の再会準備。
 本日は沢渡製糸以外の契約先から荷が届きますので、その受け入れ準備から。
 それが終わったら、明日の開店に向けて最終調整ですね。

 あ、両親が亡くなったことで生じた細々とした問題は、代理の方がやってくださいました。
 父と母が選んだ人ですので、信用できると思います。

 まあ、それが分かっていたからこそ、呆然としていることが許されたのですが。
 そうでなければ、呆けている暇など無かったでしょうし。
 代理人の方には今度お会いした時にちゃんとお礼を言わなくては。

 遺産やら何やらの問題はそれでいいとして・・・・・・いえ、良くありません。
 昨日改めて確認した金額は、異常の一言でした。
 とてもしがない雑貨屋さんの残す額ではありません。

 具体的には・・・かなりお高い家を買えるくらいでしょうか。
 勿論、保険などを抜いて、です。
 これだけのものを残してくれたお父さんとお母さんに感謝を。


 受け入れ準備を終え、午後になったところで荷が次々と届きました。
 そういう契約とはいえ、届けて頂けるのは大変ありがたいことです。
 私は運転免許すら持っていませんし、受け取りにいくのは難しいので。

 荷を受け取り、予め決めてあった配置場所に商品を並べ、準備完了。

 ここでもう一度状況の整理です。
 高校が始まってから私の生活サイクルは・・・ 

 平日 朝:高校 昼:高校 夕:帰宅と開店 夜中:パトロール
 土曜 一日開店 夜中:パトロール
 日曜 休み 夜中:パトロール
 定休日 日曜日と祝日

 という感じになります。
 その内に人を雇わなければならないのが明らかなスケジュールですね。
 人を雇うことができれば、このスケジュールは大きく変わるでしょう。

 あやかし屋の裏業務、すなわち夜中のパトロールについては、二週間ほどかけて町の全域を巡回できるように計画を立てました。
 日曜日が休みなのは、それと関係があります。
 言うなれば、予備日のようなものでしょうか。

 色々と不味い部分はありますが、それは追い追い直していくということで。
 元より儲けることなど殆ど考えてませんので、これでいいのです。


 明日に向けた準備は全て完了。
 明日、四月二日~七日は高校が無いので朝から夜まで開店です。
 お客さん、来ますかね・・・?

 まあ、宣伝もまだしてませんし、来ないなら来ないで仕方がないことなので気楽にいきましょう。

 では、夜の町内巡回の時間になるまで家の中で扇の練習でもしましょうか。








「壱ノ舞・悠扇ゆうせん


 これは今まで使っていた、扇の通常攻撃ですね。
 あらゆる角度からあらゆる方向へ扇を振るう舞です。
 単純なように見えて奥が深く、扇術における全ての基礎となります。
 悠扇に始まって悠扇に終わると言っても過言ではないかと。

 他にも幾つか舞がありますが、そちらは要練習ということで。


<若葉、そろそろ時間だコン!>


 えっ・・・もうそんな時間に・・・!


「うん、そうだね。
 我求めるは、この世ならざるあやかしの力。
 我が求めに応じ、今現世うつしよに現れ出でよ。
 汝は狐となりしモノ・・・顕現召喚<多尾狐>『フォーン』!」


 詠唱を完了して、フォーンを顕現召喚した。
 ずっと扇のままだったし、この形態で召喚もしてあげないとね。
 ずっと扇のままだと窮屈らしいから。


「それじゃあ、巡回二日目。予定通りに第一地区に向かうよ」

「了解だコン。若葉、今日も頑張るコン!」

「ふふっ・・・ありがとう、フォーン」


 そして、お母さんの残した認識阻害用の服を着て、夜中の町へ出発。
 そろそろ認識阻害効果もちゃんと確認しないといけないけれど、効果が無かった時のことを考えると、自分から人前に出るのは恥ずかしいのでした。

 ・・・そのうち、自然に人と遭遇するのを待ちましょう。

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