52 / 91
三章 水の怪異編
52 プロローグ2
しおりを挟む
ここは鳥居町から離れた場所にある、とある場所。
古都と呼ばれることも多い町の一角である。
「なあ、<鎌鼬>の奴が帰ってこねぇんだけど?」
「アイツの放浪癖は今に始まったことではないでしょう?放っておけばそのうち帰ってくるわよ」
軽薄そうな男と美人の女が、仲間の一人である、<鎌鼬>について話していた。
どうやら<鎌鼬>には放浪癖があるようで、その場に居た十数人の内、大多数は些事と思っているようだ。
だが、その中の一人が、あることに気づいて口を開く。
「・・・<鎌鼬>の妖力が、どこにも見当たらない」
「・・・それは誠か?」
「・・・はい。探してみましたが、どこにも反応がありません」
角を生やした男の問いに探知を行った女が、持っていた何も映っていない巻物を見せながら敬語で返答した。
角のある男は一段格上にあたるようだ。
「<文車妖妃>がそう言うのであれば間違いないか・・・<風神>もやってみよ」
「ういっす・・・・・・・・・・・・この国には居ないと思うっす」
「・・・ならば、死んだか」
男の言葉に、周囲にただならぬ空気が流れた。
「お言葉ですが<牛鬼>様、あの者はいけ好かない奴でしたが、実力は確かです。そう簡単に死ぬとは思えません」
「だが、それが事実だ。受け止めよ、<雪女>よ」
「・・・はっ。差し出がましいことを申しました」
雪女と呼ばれた女が、頭を下げて引き下がった。
「しかし、<鎌鼬>の奴、陰陽師か流れの妖怪にでも狩られたんでしょうかね?」
「分からん。だが、調査の必要性はあろう。封印の破壊があるゆえに人員はあまり割けんが・・・最後の報告にて、奴はどこにいた?」
「あやつの報告はいつも適当だから当てにならんぞい?」
「それでも、だ。手掛かりくらいにはなろう」
妖怪<牛鬼>と同格と思しき老人の妖怪がそう告げたが、それは<牛鬼>も分かっていることのようだ。
「確か・・・焼鳥町といったかのう? いや、鳥籠町じゃったか?」
「しっかりしてくださいませ<天狗>様。最近物忘れが酷いですよ?」
「ははは、すまんのう。大事でないことは直ぐに忘れてしまっての・・・」
妖怪<雪女>が呆れたように窘めるが、<天狗>は柳に風だ。
「じゃが、ここより東の方なのは間違いないぞい」
「それってこの国、日本の半分くらいではないですか・・・。こんな時にあの者が居ればすぐに分かるというのに・・・」
「あの者も含め、大多数の妖怪は方々へ散っている。無いものねだりだ」
妖怪<牛鬼>は少し考えた後で、こんな結論を出した。
「・・・<河童>よ。汝は東の地理に詳しかったな。丁度手も空いていることであるし、調査に出よ」
「はっ。かしこまりました。供の者を一人連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「手の空いている者を一人なら構わん。では、行け」
「ははっ!」
妖怪<河童>は<牛鬼>の命令を受け、その場から姿を消した。
「・・・ところで<牛鬼>様。各地にある小封印と大封印の破壊について、進捗はどうなのでしょうか?」
「小封印の方は幾つか解かれている。もっとも、封じられていた妖怪が必ずしも我々の味方になるとは限らぬが。その場合は放置している」
「大封印の方は?」
「大封印の破壊は芳しくない。一番緩んでいた一つは破壊できたが、破壊した者は消滅。封じられていた妖怪がどこへ消えたのかも不明だ」
「先は長いですね・・・ただでさえ<陰陽師>の邪魔が鬱陶しいというのに」
妖怪<雪女>は肩を落としてため息を吐くことしかできなかった。
その色気のある仕草は、人間の男であれば瞬く間に虜になっていただろう。
かくいう妖たちにも魅力的に映っているのだから。
「奴らに消された妖怪は、もはや数え切れぬ。私や<天狗>のような幹部格が出向けば対抗可能だが、正面から当たるのも得策ではない。今は・・・我慢の時だ」
△△△
私、影山若葉は、一週間ぶりに登校しました。
いつものように店を閉めての登校ですが、近日中にはそれをしなくてよくなるかもしれません。
昨夜訪れたお客さんが関係してくるのですが・・・。
そのことを考えると、自然と気分が浮かれてしまいます。
なにせ、営業時間が大幅に伸びるかもしれないのですから・・・!
そう、新しい店員さんの確保ができそうなのです・・・!
これで浮かれるなという方が無理です・・・!
「お姉さ・・・若葉さん、忘れものです! 扇を忘れていますっ・・・!」
「・・・あ。ありがとうございます・・・咲良さん」
店から追いかけてきた少女、東雲咲良さんに、扇を手渡されました。
どうやら、私は浮かれ過ぎていたようです。これはいけませんね。
はい。新しい店員さんとは、以前病院で盲目治療をした彼女。
すっかり元気になって退院した、東雲咲良さんなのです。
彼女・・・驚くことに、同い年だったのです。
古都と呼ばれることも多い町の一角である。
「なあ、<鎌鼬>の奴が帰ってこねぇんだけど?」
「アイツの放浪癖は今に始まったことではないでしょう?放っておけばそのうち帰ってくるわよ」
軽薄そうな男と美人の女が、仲間の一人である、<鎌鼬>について話していた。
どうやら<鎌鼬>には放浪癖があるようで、その場に居た十数人の内、大多数は些事と思っているようだ。
だが、その中の一人が、あることに気づいて口を開く。
「・・・<鎌鼬>の妖力が、どこにも見当たらない」
「・・・それは誠か?」
「・・・はい。探してみましたが、どこにも反応がありません」
角を生やした男の問いに探知を行った女が、持っていた何も映っていない巻物を見せながら敬語で返答した。
角のある男は一段格上にあたるようだ。
「<文車妖妃>がそう言うのであれば間違いないか・・・<風神>もやってみよ」
「ういっす・・・・・・・・・・・・この国には居ないと思うっす」
「・・・ならば、死んだか」
男の言葉に、周囲にただならぬ空気が流れた。
「お言葉ですが<牛鬼>様、あの者はいけ好かない奴でしたが、実力は確かです。そう簡単に死ぬとは思えません」
「だが、それが事実だ。受け止めよ、<雪女>よ」
「・・・はっ。差し出がましいことを申しました」
雪女と呼ばれた女が、頭を下げて引き下がった。
「しかし、<鎌鼬>の奴、陰陽師か流れの妖怪にでも狩られたんでしょうかね?」
「分からん。だが、調査の必要性はあろう。封印の破壊があるゆえに人員はあまり割けんが・・・最後の報告にて、奴はどこにいた?」
「あやつの報告はいつも適当だから当てにならんぞい?」
「それでも、だ。手掛かりくらいにはなろう」
妖怪<牛鬼>と同格と思しき老人の妖怪がそう告げたが、それは<牛鬼>も分かっていることのようだ。
「確か・・・焼鳥町といったかのう? いや、鳥籠町じゃったか?」
「しっかりしてくださいませ<天狗>様。最近物忘れが酷いですよ?」
「ははは、すまんのう。大事でないことは直ぐに忘れてしまっての・・・」
妖怪<雪女>が呆れたように窘めるが、<天狗>は柳に風だ。
「じゃが、ここより東の方なのは間違いないぞい」
「それってこの国、日本の半分くらいではないですか・・・。こんな時にあの者が居ればすぐに分かるというのに・・・」
「あの者も含め、大多数の妖怪は方々へ散っている。無いものねだりだ」
妖怪<牛鬼>は少し考えた後で、こんな結論を出した。
「・・・<河童>よ。汝は東の地理に詳しかったな。丁度手も空いていることであるし、調査に出よ」
「はっ。かしこまりました。供の者を一人連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「手の空いている者を一人なら構わん。では、行け」
「ははっ!」
妖怪<河童>は<牛鬼>の命令を受け、その場から姿を消した。
「・・・ところで<牛鬼>様。各地にある小封印と大封印の破壊について、進捗はどうなのでしょうか?」
「小封印の方は幾つか解かれている。もっとも、封じられていた妖怪が必ずしも我々の味方になるとは限らぬが。その場合は放置している」
「大封印の方は?」
「大封印の破壊は芳しくない。一番緩んでいた一つは破壊できたが、破壊した者は消滅。封じられていた妖怪がどこへ消えたのかも不明だ」
「先は長いですね・・・ただでさえ<陰陽師>の邪魔が鬱陶しいというのに」
妖怪<雪女>は肩を落としてため息を吐くことしかできなかった。
その色気のある仕草は、人間の男であれば瞬く間に虜になっていただろう。
かくいう妖たちにも魅力的に映っているのだから。
「奴らに消された妖怪は、もはや数え切れぬ。私や<天狗>のような幹部格が出向けば対抗可能だが、正面から当たるのも得策ではない。今は・・・我慢の時だ」
△△△
私、影山若葉は、一週間ぶりに登校しました。
いつものように店を閉めての登校ですが、近日中にはそれをしなくてよくなるかもしれません。
昨夜訪れたお客さんが関係してくるのですが・・・。
そのことを考えると、自然と気分が浮かれてしまいます。
なにせ、営業時間が大幅に伸びるかもしれないのですから・・・!
そう、新しい店員さんの確保ができそうなのです・・・!
これで浮かれるなという方が無理です・・・!
「お姉さ・・・若葉さん、忘れものです! 扇を忘れていますっ・・・!」
「・・・あ。ありがとうございます・・・咲良さん」
店から追いかけてきた少女、東雲咲良さんに、扇を手渡されました。
どうやら、私は浮かれ過ぎていたようです。これはいけませんね。
はい。新しい店員さんとは、以前病院で盲目治療をした彼女。
すっかり元気になって退院した、東雲咲良さんなのです。
彼女・・・驚くことに、同い年だったのです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる