妖符師少女の封印絵巻

リュース

文字の大きさ
55 / 91
三章 水の怪異編

55 初めての依頼人

しおりを挟む
 あやかし屋に帰ってくると、咲良さんが接客中でした。


「あ~すまんがあれをもらえんかのぅ。ほら、あれじゃよ、あれ」

「へっ?あれ、ですか?えっと、メモメモ・・・あ、これですね!」

「おお、それじゃよそれ」


 私の残したメモが役に立っているようで何よりです。
 必要になるだろうことは大抵書き記してありますので、咲良さんが困ることは早々無いでしょう。

 強いて言うなら、依頼関連ですかね。


「あっ、若葉お姉さん!お帰りなさい!」

「はい、只今帰りました、咲良さん。同い年なのですからお姉さんというのも変な感じなのですが・・・」

「すみません・・・どうしてもお姉さんと呼んでしまう癖が抜けず・・・」

「ああ、いえ。別に構いませんよ?嫌という訳でもありませんので」


 咲良さんに姉のような存在として慕われるのは嬉しいですからね。


「と、咲良さんはそろそろ上がってください。夜間の部が始まりますから」

「はい!こちらが今日の記録です!では、失礼します!」

「はい。お疲れ様でした」


 咲良さんは私に記録を渡すと、割り当てられた部屋へ向かいました。
 とてもウキウキして見えるのは気のせいではないでしょう。

 ・・・本当に楽しみにしていたのでしょうね。
 
 それで、今日の記録は・・・売り上げが多めですね。
 数日間、店を閉めていたのが理由でしょうか。
 臨時休業が多いことは周知の事実ですが、やはり申し訳なさはありますね。

 お守りの売り上げも上々。
 今日は『悪霊退散のお守り』二つ売れています。
 口コミで噂が広がっているようですね。

 そして・・・電話での依頼が一件ですか。
 これは初めてのことですね。

 咲良さんの対応は、今日この後にここでアポイントですか。
 伝えておいた通りにやってくれたみたいですね。

 仕事を覚えるのも早いですし、大変優秀で素晴らしいです。

 それで、依頼人の方のお名前は・・・・・・おや?









 その日の夜、咲良さんが高校へ向かった後、依頼人の方が店を訪れました。


「以前も名乗りましたが、私は白石海斗です。その節は先輩がご迷惑を・・・」

「いえ、白石さんに思うところはありませんから」


 今回の依頼人である彼、白石海斗さんは、警察官。
 以前、病院の窓ガラス破壊事件(仮称)の時にこの店を訪れた方です。

 一緒に訪れて無礼をはたらいた・・・何とかという警察官を止めてくれたのは記憶に新しいですね。警察署にて署長さんを呼んでくれた人でもあります。

 もう一人の名前は・・・忘れました。
 全くと言っていいほど思い出せませんが、どうでもいいですね、そんなことは。

 今回は柴田さんの紹介で『あやかし屋』を訪れたそうです。
 基本は紹介制ですからね。

 そして、依頼内容は・・・


「それで、ですね・・・こんな話、余所ではし辛いんですが、うちのアパートに、出るんです・・・幽霊が」

「なるほど・・・。詳しい話をお聞かせください」

「はい・・・。あれは確か・・・一週間前のことで―――」



 ▽▽▽



「はぁ~今日も疲れた。でも、あの先輩が居なくなったおかげで、肩が軽いな」


 俺、白石海斗は借りているアパートの一室に帰ってきた。
 いつもよりも少し遅い帰りなのには、少し事情がある。

 実は、コンビを組んで・・・組まされていた先輩警察官がクビになったのだ。
 気の毒な話だが、正直せいせいした。
 あの人は我が儘で傲慢、何故警察官なのか分からないような男なのだ。

 先日も、署長からの指示で丁重にお連れしようとした捜査協力者の女性に対して失礼千万な態度をとった。幾ら何でもあれはないだろう。
 けれど、自分は一応後輩なので、強くは言えなかった。
 あの女性には本当に申し訳ないことをしたな。

 もっとも、その時については何も心配など要らなかったのだが。
 あの男がその女性にひっくり返らされた時は、心底驚いた。
 

「ふぅ・・・風呂でも入ってさっさと寝ようか」


 先輩がクビになったことでドタバタして、少し忙しいのが今の状況。
 だが、以前より余程充実した日々だ。

 あの女性には感謝だな。

 でも、一体何者なのだろうか?
 署長も詳しくは話してくれなかったが、かなりの慌てようだったし。
 何処かのお偉いさんの娘さんなのかね?

 それに、ああ見えてまだ高校生になったばかりって・・・それを聞かされた時は顎が外れるかと思った。普通に大学生か、下手したら社会人かと思ってたし。

 俺は二十四歳だが、年の差は殆ど無いものと・・・。
 実際は八歳差だったけども。

 正直、かなり美人で、俺もあんな恋人がほしいと思ってしまった。
 まあ、彼女が恋人になったら間違いなく尻に敷かれるけどな!

 そんな邪な思考を頭から振り払い、風呂に入った。
 そして、あとはもう寝るだけという時にそれは起こった。


 カタカタカタカタカタカタ・・・。


「・・・ん?何の音だ?地震で食器でも揺れて――――」


 ガタガタガタガタガタッ!!


「うわあああっ!!な、な、な・・・!」


 地震が起きたわけでもないのに、突如部屋中の物が揺れだした!
 それも、ただ揺れているだけじゃない!微妙に浮いている・・・!

 こ、これ、ポルターガイストってやつか!?

 俺は転げるように家を飛び出して、同僚の家に泊めてもらった。
 警察官ではあるが、幽霊の類は専門外なんだっ!



 △△△



「それで、それから同じことが何日も続いて困り果てていたところ、署長が相談に乗ってくれまして・・・」

「・・・そして、このあやかし屋を訪れたということですね」


 お話は分かりました。

 ただ・・・どうしても話したくないこと以外、その時に思っていたことなども全て正直に話すように言っておいてなんですが、少々余計な情報が混じっていますね。

 特に、私に対する評価やら何やらは要りませんでした。

 とはいえ、依頼人の方に情報を取捨選択させるのは難しいですから・・・。

 この辺は経験不足ですね。
 精進あるのみです。

しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...