異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

獄界の穴1

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「穴、だね・・・。」

「穴、ですわね・・・。」


 クロトとマリア、二人の目の前。

 地面に穴が開いていた。

 大きさは2メートルくらいで、闇のような黒い穴である。

 
「ここに入るんですの・・・?」

「うん。けど、1つ問題があるんだよね。」

「その問題とは何ですの?」

「・・・この中に入ろうとしたら、それだけで死にそうなこと、かな?」


 クロトの目の前の穴、切断領域の様なものが、網のように張り巡らされている。


「それは、入ったら間違いなく死にますわよね?」

「まあね。・・・じゃあ、行こうか。」

「えっ?きゃぁぁぁぁ!?」


 クロトはマリアを抱き抱え、穴の中に飛び込んだ!







「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


 マリアはクロトにギュッと抱き着いて、悲鳴を上げている。

 だがそれも、入れば死亡確定の穴に飛び込まされているのだから、致し方ない。




 やがて、地面?と思しき場所に到達。

 クロトは羽を消して着地する。


「ふぅ。マリア、着いたよ。」

「うっ・・・ぐすっ。わたくし、生きて、ますの・・・?」


 マリアは涙声で説明を求めた。

 クロトは、漆黒石が防護幕の役割を果たしたのだと説明した。

 
「だったら!それを先に説明してくださいましっ!」


 いつになく本気の声色だ。


「え?じゃあ、行こうか?って言ったよね?」

「それのどこが説明なんですのっ!」


 マリアは暫くの間、涙目で、クロトをポカポカと叩き続けたのだった。









 十数分後、ようやく怒りの収まったマリアと共に、探索を始めていた。


 天の瞳のマップによると、それほど広くは無い。

 ただ、いくつか小部屋のようなものがあり、大部屋も1つある。

 辺りは常闇状態で、暗視がなければ歩くこともできない。


「小部屋っぽい洞窟は3つ。大部屋っぽい洞窟は1つ、か・・・。」

「ど、どうしますの・・・?」

「・・・マリア、怖いの?」

「ち、違いますわ!」


 微妙に震えていることを見破られて、慌てるマリア。

 だが、普通はこうなる。

 なぜなら・・・


「・・・まあ、魔物でもない霊が、こんなにたくさん居れば、仕方ないか。」


 そう、辺りには大量の幽霊が。

 そしてそれらは、魔物ではなく、本物の幽霊。

 倒すことは不可能なのだ。


 クロトは当然のように平気だが、マリアはそうもいかない。

 マリアも、霊体系の魔物なら平気なのだが、幽霊は別らしい。

 初見であるということも、1つの原因か。


 このままでは戦闘どころではないので、マリアをなぐさめにかかるクロト。


「マリア、大丈夫。むこうもマリアには何もできないから。」

「ううぅ・・・。クロト・・・。」

「よしよし。何かあっても、僕が守るからね。」

「ぅ・・・・・・。」


 クロトは、マリアを抱き締めて撫でながら、こう思った。


(これは、アクアに報告が必要だよね・・・。流石にアウトだし・・・。)





 数分後、マリアは普段通りに戻っていた。


「もう、大丈夫ですの・・・。」

「そう?じゃあ、先に行こうか。」

「あっ・・・。」


 クロトが離れて、少しだけ不安そうな声を出すも、すぐに平気になった。


 そして二人は、本格的な探索を始めたのだった。



 これは後日の話。


「あの時のマリアは可愛かったね。」

「あああああっ!?早く忘れてくださいましっ!?」

「ごめん、そう簡単には忘れないタイプだから。」

「何故こんなのばっかりなんですのっ!?」


 という会話があったとかなんとか。




 クロトとマリアは、小部屋状の小さな洞窟(洞穴?)の前に来ていた。


 ここまで、魔物の類は一切なし。

 居たのは、大量の幽霊のみ。

 これだけ魔物が居ないというのも、珍しい。


「結局、魔物すら出ないまま、ここにきてしまいましたわね?」

「ああ。そして、この中に何があるか、なんだけど・・・。」


 クロトは天眼を使用し、内部を覗いてみた・・・のだが。


「・・・天眼や天の瞳で何も見えない。明らかに異常だね。」

「天眼でも・・・。どうしますの?」


 マリアに尋ねられて、クロトも迷う。

 危険そうなのは間違いない。

 だが、ゲイザーの居た謎の遺跡よりは、危険ではない。

 そんな気がするのだ。


 クロトはアイテムボックスの中身を確認して、結論を出した。


「・・・よし。中に入ろう。マリアもそれでいいかな?」


 クロトはマリアに尋ねた。

 ここまで、半ば強制的に連れてきたが、流石にこの先は強制できない。

 
「あなたが行くのであれば、わたくしも行きますわよ。」


 マリアがそう言ってくれたので、ありがたく同行してもらう。



 洞窟の中は一本道で、それほど広くは無い。





 そして、辿り着いた広間には・・・・・・。




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