異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

快挙と思惑

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 その後、ベッカー相手に説明をしていったクロト。


「・・・それは分かるのだ。だが、なぜこの連鎖という系統が・・・で・・・。」


 と、こんな感じで長々と語り合った。





「クロト君、これを公表しないのかね?」

「僕としてはどちらでも構いませんよ。ただ、面倒なので、公表は任せます。」


 なんと、世紀の大発見の公表を丸投げしてしまったクロト。


「私だって面倒なんだが・・・。」


 そんなことを言い出すベッカー。

 
 結局、国王に丸投げすることで解決した。

 ベッカーは名誉に興味が無い研究者のようだ。


 後日、この事実は、魔法陣学者の間で広まり、阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


 そして、そんな状態を生み出したクロトはというと・・・


(このまま研究していけば、アレが作れるようになるかもね・・・。)


 全剣帝との戦いを振り返りながら、そう思ったのだった。







 その翌日、クロトは実習訓練の講義に出席していた。


 実習訓練の講義となれば、流石に人数が多いようだ。

 周囲には100を優に超えた人数が居る。


 そんな中からリオンを見つけ、声を掛ける。


「リオン、久しぶりかな?」

「うわっ!?急に現れないでもらえないかな・・・!?」

 
 心臓の辺りに手を当てて、荒い呼吸をするリオン。

 クロトは軽く謝った後、今更なことを尋ねた。


「ところで、どうしてリオンはこの講義を?」

「・・・国を背負う者として、現場のことは知っておきたいからな。」


 結構な覚悟がこもった発言だ。

 だがクロトは、無情な返答をする。


「国を背負う者だと友達が居なくてもいいの?」

「それは言わないでくれ!」


 それはそれとして、講義が始まった。

 クロトは付き添いしかしないつもりだが、説明はちゃんと聞いておく。



 説明は、おおよそリオンに聞いていた通りだったので、特筆することはない。

 ただ、クロトが本気でやったら、すぐに終わってしまうことが分かった。


「リオン、試験はいつ受ける?早速受けている人もいるみたいだよ?」


 いきなり試験を受けようとしているのは、約半分くらいと意外に多い。


「そうだな・・・時間制限はあるが、待っていても得るものは少ない・・・。」


 リオンは悩んだ後、すぐに試験を受けることにした。


 試験の内容を決めるのはクジ引き。

 箱の中に、お題の書かれた紙が入っていて、引いたお題をクリアできれば合格。

 期限は、クジを引いてから二か月。

 
 クジを待つ列へ並び、順番が来たリオンはクジを引いた。


「ふむ・・・闇絶結晶の入手。・・・え?」

「ええ・・・?」


 何という無理難題。

 闇絶結晶は、闇絶魔法を使う魔物からしか手に入らないのだ。

 他の課題と難易度が違い過ぎる。


「すまないが、これは難易度を間違えていないか?」


 リオンが第一王子モードでクジ係の人に問いかけた。


「どれですか?・・・ああ、偶にあるんですよ。はずれの課題が。」


 どうやら、ごく少数紛れ込んでいる高難易度の課題みたいだ。

 十中八九、引かれずに終わるのだが、リオンはそれを引き当ててしまったと。


「どうしよう、クロト君・・・?」


 リオンモードになったリオンは、涙目でクロトに尋ねて来た。

 クロトはもう一度説明を読み直してから、あるものを手渡した。

 
「これは・・・?」

「闇絶結晶だよ?」

「えっ・・・!?」


 リオンの課題は、他の課題と違い、入手法についての規定がなかったのだ。

 一種の救済措置だろう。

 リオンのためにならないので、この手は使いたくなかった。

 だが、どう考えても自力入手は無理な難易度なので、致し方ない。

 
「ありがとう、クロト君・・・!」

「貸し1つだからね?」

「僕の感動を返して欲しいなっ!でもありがとう!」


 無償の善意など、クロトに求めるのは間違いなのだろう。


 当然、試験は合格で、評価は最高値。

 クロトはいきなり、10単位獲得した。


 ちなみに、魔法陣学の試験はまだだが、10単位は確定している。


 講師のベッカー曰く、

「未発見の基礎構成要素を導き出した人間を、他にどう評価すると言うのかね?」

 とのことだ。


 言われてみれば、全くもってその通りだ。




 この日は神話学の講義もあったので出席したが、退屈な授業となった。

 次回からは、魔法存在でも出席させようかと目論むクロトであった。


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