異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

孤児院

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 真っ赤になって言い募るリオンの言い訳を、適当に聞き流したクロト。


「じゃあ、そろそろお暇するね。」

「待ってくれ!せめて僕の主張を理解してから帰ってくれないかなっ!?」


 あまりにもリオンがしつこいので、クロトはとどめを刺すことに。


「そういう本の存在を知っている段階で、興味があると言ってるも同然だよ?」

「・・・・・・あっ。」


 この世界、まだその手の本の普及が進んでいない。

 つまり、自分から深く調べなければ、知っているはずがないのである。

 それが次期国王ともなれば、なおさら。


「待って!?それには事情があるんだっ・・・!」


 すっかり言葉遣いが女に傾いたリオンを放置して、クロトは部屋から去った。











 ここは王都にある、クロトが経営する孤児院。


「はい、今日の勉強はここまで。昼食にするから手を洗っておいで?」

「「「「「はーい!」」」」」


 まだ幼い孤児たちは、一斉に返事をして駆けだす。

 教師のエリスは、こどもたちを微笑ましく見守る。


 中々責任の重い仕事ではあるが、今のエリスは、とても充実している。




 雇用の誘いを受けた時は、自分の経験が生かせるくらいにしか考えて居なかった。

 だが、今では、こどもたちに教えることが、楽しくて仕方が無い。

 ブルータル王国で教えていた頃とは大違いである。


(やはり、教える内容の違いですね・・・。)


 雇い主のクロトから教えるように指示された内容は、基本的なものが殆ど。


 だが、それらの重要性や、どう役に立つのかが、分かりやすく明確化されている。

 また、これからのこどもに必要な全てが網羅されている。


 その為、こどもたちも夢を持って一生懸命に学び、スポンジの如く吸収していく。

 明日を生きることで精一杯のはずの孤児たちが、だ。

 エリスは絶望では無く希望を宿した目を見て、とても教え甲斐を感じるように。


 現在は、どうすれば、より理解してもらえるのかを懸命に考え、実践する日々。

 初め、藍色の髪の女性から、授業内容にボツを喰らった時は泣きたくなった。

 だが、諦めずに試行錯誤した結果、今ではボツになることは、ほぼ無くなった。


 自分の考えた内容を、楽しそうに、かつ真剣に学んでくれるこどもたち。

 エリスは、毎日が楽しくて仕方が無い。



「ママー!洗って来たよ!」

「こら、アリシア。ここでは先生と呼びなさいと何度も言っているのに・・・。」
 

 笑顔で綺麗になった手を見せるアリシアを軽く諫める。


 東国で暮らしていた頃には、見られなかった愛する娘の笑顔。

 こちらへ来てから何度も見ているが、どれだけ見ても、愛おしくて仕方が無い。

 
(こうして娘と幸せに暮らせているのも、会長のおかげですね・・・。)


 エリスはそう思わざるを得ない。

 
 病気に効く薬を、雇われることを対価にしたとは言え、ポンと渡してくれた。

 娘も一緒に勉強していいと許可を貰ったこともある。

 だがそれ以上に、労働環境がとても良いのだ。


 一日に仕事をする時間は、それほど長くない。

 次の授業内容を練る時間を除いても、娘と過ごす時間を沢山取れる。


 その上に給料も、こんなに貰っても良いのか不安になるほどの金額。

 そのため、娘のアリシアに良い暮らしをさせてあげられている。


 教師の事と合わせて、エリスは日々幸せを噛み締めている。


 クロトへの感謝は、既に上限まで振り切ってしまった。

 亡き夫が居なければ、抱かれても良いと思うレベル。


 もっとも、クロトがそんなことを言い出すとは思っていないのだが。


「さ、アリシアも席について?」

「はーい!」


 アリシアが席について全員揃ったので、挨拶をした後、昼食にする。

 ちなみに挨拶は、いつの間にか院長のような立場になったエリスが行う。

 実務は無いので、殆ど名前だけであるが。


「それじゃあ、いただきます。」

「「「「「「「いただきます!」」」」」」」


 こどもたちは挨拶をして、美味しそうに食べ始める。


 ミカゲ財閥本部の厨房から運び込まれた食事は、とても美味しい。

 豪華とまでは言わないが、栄養の事を考慮された献立。

 量も多く、全員がお腹いっぱい食べられる。


 かつてはみんな、毎日のようにお腹を空かせていた。
 
 それだけに、食べ物の有難みが良く分かっている。

 米粒一つ残さずに完食。

 栄養状態も改善され、どの子も健康体だ。


 この世界、こどもにしっかり食べさせていくのは、簡単なようで難しい。

 自分もそうであったために、そのことを大変良く理解しているエリス。

 これだけの人数を涼しい顔で満腹に出来るクロトへ、尊敬の念を禁じ得ない。


「クロトさんは、凄い人です・・・。」

「そんなことは無いよ。出来る事を無理のない範囲でやってるだけだから、さ。」

「ですが、その無理のない範囲というのが・・・・・・えっ?」

「うん?」




 エリスが横を向くと、そこには雇用主であるクロトが居たのだった。

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