異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

祭りに向けて

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 ヴィオラが自己超越の試練を終えた日から、最後の仕上げが始まった。

 目指すは十日後、名付けて、「創世神クラリアセレス大感謝祭」だ。


 前々から広報で少しずつ知らせてきたミカゲ財閥主催の感謝祭。

 世界中で二日間にかけて行われるこの祭りは、創世神へ感謝を捧げる催し。

 その開催日が確定し、世界中にどこかソワソワした雰囲気が漂い始めた。


 民たちがソワソワしているのは、祭りに内容が原因だ。

 期間中、ミカゲ財閥系列社での買い物や飲食が全てタダ。

 ただし、創世神への感謝を伝えるバッジを所持している必要がある。


 そのように告知されているのだから誰だってソワソワもする。

 男たちはこの機会に思いっきり飲み食いしようと企む。

 女性たちはこの機会に買い込みを行おうと計画を練っている。


 創世神について何も知らない人ばかりなので、そこの対策は打ってある。

 クラリスについて書かれた本や、人形などのグッズが無料配布されているのだ。


 本にはクラリスの罪と現在までにしてきた贖罪について書かれている。

 また、人々が目を通しやすいように、始めは別の事が写真付きで書かれている。


 例えば、S+ランク冒険者「紫剣」ヴィオラ、その人生について。

 例えば、S+ランク冒険者「水姫」アクア、その人生について。

 そして、彼女らが持つ瞳のことと、クラリスがどのように関わっているのか。

 クラリスがどのような思いで、どのようにして彼女たちを助けたのか。


 アクアやエメラ、ヴィオラといった者たちは大変人気者だ。

 今や世界中で愛されているといっても過言ではない。

 クロトの頼みで、暇さえあればあらゆる場所へ赴き、人助けをしてきたからだ。

 その彼女たちが助けられた存在となれば、親しみを覚えるのが自然のこと。


 本人はその他にも世界樹や地底樹などについても書かれている。

 興味深い内容ばかりで、噂が広まるとみんなこぞって本を求めた。

 二冊以上欲しがる者もいて、全人口分用意したのに足りなくなる始末だ。


 こうして創世神クラリアセレスは、人々にとって以前より身近な存在になった。










 クロトは隠密者を行使して、市場調査に出ていた。

 今歩いているのはシンクレア王国スカーレットの町。


「あのインフィア様がねぇ・・・。」

「魔王が責めてきた時にそんなことがあったのか・・・知らなかったぜ・・・。」

「俺は王女様を幼い頃を知ってるが、こんなに立派になって・・・!」

「おいっ、こんなところで泣くなよ!」

「インフィア様も良いけど、私はやっぱりエメラ様派かなぁ・・・。」


 町の至るところで配布された本「世界の秘密」について語り合う者の姿がある。

 とある喫茶店ではこんな会話が。


「それにしても創世神様は、どうしてこんなに健気なのかねぇ・・・?」

「何千年も前の話なのよね?思いつめられるとこっちも申し訳ないわ・・・。」

「つーか、そもそも創世神様はそこまで悪くないじゃねぇか?」

「そうね、責任はあるとしても、同僚の全能神とかいうのが悪いと思うわ。」


 皆、それぞれ意見はあるが、全員クラリスは許されてもいいという思いのようだ。


「今俺たちが平和に暮らしていられるのも、創世神様と深淵様のおかげだよな?」

「違ぇねぇ。創世神様が土台を作ってくれたから、御先祖様は生きてこられた。」

「「深淵」様のおかげで、この辺りも安全になった・・・。」

「今じゃガラの悪い奴なんて殆ど見かけないし。」

「まだ若い私の友達、援助のおかげで安心して子育て出来るって喜んでたわ。」


 などなど、思い思いのことを話しているうちに、皆に一つの感情が生まれた。


「感謝祭、表面や建前だけじゃなく、本気で感謝できそうな気がするぜ・・・。」

「恩恵に預かっておこうと思ってたけど、自然と感謝してしまいそうよね。」

「・・・当日になったら、みんなで飲みながら感謝してみねぇか?」

「あっ、それ賛成!私は参加で!」

「あ、私も参加するわ。」


 そう約束を交わし、別れる住人達。

 今や世界中のあらゆる場所で、似たような光景が広がっている。


 人間の町だけではなく、エルフやドワーフの里でも似たような状況だ。

 そちらはセーラとグレンが協力してくれた。


 普段は燻っている悪漢たちでさえ、その意識を変えつつあった。

 ボロボロの服も買い換えられるし、悪さをしなければ上手いものを沢山食える。

 祭りの日くらい、おとなしく誠実に過ごしてもいいのでは、と。


 世界中全ての人間たちの胸の中に創世神クラリアセレスへの感謝が根付いた。


 創世神クラリアセレス大感謝祭まで、あと五日。

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