魔法で子猫になった第一王子の婚約者選び

三毛猫

文字の大きさ
7 / 9

グラント領

しおりを挟む
 ーー ルーベルト視点 ーー

クライス王国の七つに分かれた領土の一つグラント領を治めるグラント辺境伯と向かい合って座るリノラ。出されたミルクを私はペロペロと飲んでいた。


「ちょっとなんで罪人がうちにいるのよー!」

そしてもう一人、グラント辺境伯の令嬢ビビが父グラントに向かって、綺麗にカールした茶色の髪を揺らし、大きな目は鋭く眉間にシワを寄せて、片足を椅子に乗せてご令嬢らしからぬ態度で唸っていた。

(会食では大人しく可愛さもあったビビにこんなに気性が荒く男勝りで口調も強い一面があったとは。結婚しなくてよかった)

私は胸を撫で下ろし、引き続き乾いた喉にミルクを流し込んだ。


「落ち着きなさい」
冷や汗を額に浮かべグラントはビビを宥めた。

「王都から兵士が血眼になって平民出の小娘を探し回っているって噂よ!パパは知ってるの!ねぇ!?」

「知っているよ」
ビビの圧に押されているのか、グラントが元々物静かなのか領主として貧弱に思える。

「どうして館に入れたの?」

「ルーベルト殿下と私しか知らないことをリノラ令嬢は知っていたからだよ」

「殿下とパパしか知らないことってなに?」

「あれは殿下が七歳の時、パパは領主に成り立てで財政面で困っていた。そんなある日王都の社交界に招かれてね城に行った。城内は煌びやかで高価な物が多かったよ。つい魔が差して、城内の備品を懐に入れた所を殿下に見られた。しかし殿下は国王に報告するでもなく黙っていてくれた」

「パパはただの盗っ人じゃない!信じられないわ」
ビビはグラントの頭や肩をバシバシ叩いた。

「ビビ、やめなさい。殿下のお陰で今は真っ当に領主として勤めをしている。そしてその殿下はこちらに」

「どこよ」
ビビは周りを見渡す。

「ビビよ。この子猫こそ、殿下なのだ」

「でも婚約者候補を破棄された時にルーベルト殿下は元の姿に戻られて・・・」

「あれは偽物。こっちが本物」

リノラは紙と羽ペンを机に置いた。

「これでビビ様しか知らない内容を殿下に聞いて下さい」

「私と殿下が初めて会食した内容でもいいかしら?」

ビビの質問に私は羽ペンを掴んでスラスラと書いた。
会食で着たビビの特徴的な赤いドレスや、ビビが美味しいと言った料理、ビビの父グラントの面白い話、次に行く予定であった街の話など全ての質問を正確に書いた。
そしてビビはしばらく固まった後
「まぁ、器用な子猫だ事」と言って気絶して倒れた。




  ーー ビビ視点 ーー

頭がボーっとする。烈火の如くパパに怒りをぶつけた挙句、殿下に醜態を晒した。ふかふかのベッドまで誰かが運んで寝かせてくれたのね。

罪人の小娘匿えば家がお取り潰しになるかもしれない。パパを説得して追い払わないと。

私は目を開けて上半身を起こした。ベッドの向かいの椅子に黒猫が小さくなって寝ている。

「ひぃ!」思わず小さく悲鳴を上げると黒猫は軽々と椅子からベッドに飛び移り、私に近づいてきた。

「殿下は貴女のことを心配されていました」

「ひぃぃ!」
私の左側から突然声がして驚いた。

「貴女、いつから居たのよ」
ベッドの脇の椅子に座っていたのはリノラという小娘。

「倒れたビビ様をグラント様と私で運びました」

「ビビ、大丈夫かーい?」

「ひぃ!」
今度は右側からパパが突然声を発したから私は驚いた。

「突然発言するの禁止。殿下が猫だったことがまだ信じられなくてまだドキドキしているから、発言は挙手して」

リノラは私の言葉を紙に文字を書いて殿下に見せた。

「ミャー」
子猫は小さな手を挙げた。

「では殿下」

殿下はリノラから紙と羽ペンを貰い、スラスラ書き始めた。書いた紙を私は読み上げた。

「倒れて心配した。どうかリノラと私をここに置いてほしい」

殿下はともかく、小娘は。
小娘は私に頭を下げていた。
殿下も子猫なりに頭を下げ、パパも頭を下げている。

「なにこれ。私が悪女みたいじゃない」

私はそこまで悪い女ではないと思いたい。

「殿下、パパ頭を上げて。それにリ、リノラも頭を上げて。私が間違ってたわ。好きなだけ居ていいから。っていうかパパが領主だから私の許可なんて必要なの?」

パパはいつ振りだろう珍しく笑っていた。

「ビビ様ありがとうございます!」
「ミィ~!」

黒猫の殿下は小さな手を前に出した。
私はその小さな手にタッチすると猫なのに笑っているような顔に見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

追放された地味なメイドは和菓子職人の記憶に目覚める 〜王子たちの胃袋を『あんこ』で掴んだら、王宮で極甘に溺愛されています〜

あとりえむ
恋愛
「起きなさい、この穀潰し!」 冷たい紅茶を浴びせられ、無実の罪で男爵家を追放された地味なメイド、ミア。 泥濘の中で力尽きようとしたその時、彼女の脳裏に鮮やかな記憶が蘇る。 それは、炊きたての小豆の香りと、丁寧にあんこを練り上げる職人としての誇り…… 行き倒れたミアを救ったのは、冷徹と恐れられる第一王子ミハエルだった。 バターと生クリームの重いお菓子に胃を痛めていた王族たちの前に、ミアは前世の知恵を絞った未知のスイーツ『おはぎ』を差し出す。 「なんだ、この食感は……深く、そして優しい。ミア、お前は私の最高のパートナーだ」 小豆の魔法に魅了されたミハエルだけでなく、武闘派の第二王子やわがままな王女まで、気づけばミアを取り合う溺愛合戦が勃発! 一方で、有能なミアを失い、裏金のカラクリを解ける者がいなくなった男爵家は、自業自得の崩壊へと突き進んでいく。 泣いて謝っても、もう遅い。 彼らを待っていたのは、処刑よりも皮肉な「全土小豆畑の刑」だった…… これは、一粒の小豆から始まる、甘くて爽快な逆転シンデレラストーリー。 あなたの心も、あんこのように「まあるく」癒やしてみせます。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています

唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」 家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。 実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。 噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて―― 「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」 靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!? 磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...