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シーニアの町
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荷馬車で1日半移動して、山道を下る。木々の間からシーニアの街が一望できた。街の広さはミルクテの倍以上ある。石造りの城の周りには民家が広がり、石造りの壁が街を囲む。2本の川の中洲にあるシーニアの街は難攻不落で10年前の魔王国軍も素通りして行ったと行商人のダンは語っていた。
シーニアの街は、行商人の手引きですんなり入ることが出来た。
「顔馴染みの門兵がいましてね。君たちのことは冒険者と行商見習いだと言って通しておきましたよ。また何かあれば言ってください」
「ありがとうございます。しかし俺たちは金がありません。お返しできるものがなくて」
「お金は結構。また何処かで私のことを見かけたら商品でも買ってください。では私はこれで」
「なんて良い人なんだぁぁ」
翔吾は号泣して手を振っていた。
「泣くなよ」
貰い泣きして俺も泣きそうだ。
「さぁ!とりあえずギルド。それから、街の情報収集ね」
「泣いてないで神村先輩を見習え。男ども!」
ギルドで翔吾と真帆の冒険者登録を済ませた。ギルドで適正を計りたいと尋ねると、魔法通り四番地の角にある雑貨屋を訪ねるといいと教えてくれた。
人に尋ねながら雑貨屋に着いた。外観は石造りで窓から蝋燭の灯りが揺らぐ薄暗い店内が見えた。ドアを開けると埃と湿気の臭いが鼻を襲う。
「くっさ!」
翔吾が思わず鼻を摘む。
「失礼でしょ」
神村先輩が叱る。
店内は床から本が山積みになり、棚という棚には紙の箱とスクロールがぎっしり詰まって、テーブルには乾燥した花や葉っぱ、腐った色のキノコに何らかの生物の臓器が入ったガラスの瓶が置かれていた。
蝋燭の灯りがふと店内の奥にいた三角帽子の店員に俺は見覚えがあった。
「アイラさん!」
「知り合い?」
「誰?」
「アイラ?」
初めて異世界転移した日に傭兵リュードと
魔法使いアイラに助けられた。そのアイラがいた。
「覚えていますか?転移して4回目だから30年ぶりになるのか。あの日魔獣から追われた時にリュードさんと助けてくれた」
アイラは俺の顔を近くで見た。少女だったアイラはもう中年の女性になっているはずだったがエルフ族は歳をとらない。姿形もあまり変わらない。30年前と変わらない少女がそこにはいたのだ。
「あぁ、あの時の」
「リュードさんは、元気してますか?」
「リュードなら奥にいるよ。リュード!」
カーテンで仕切られた奥の部屋から杖で体を支えながら歩く年老いた御老体が俺の前に現れた。筋肉隆々、日焼けして逞しい姿は数十年の歳月で失われた。今や骨と皮。シワだらけになった顔を向けてニチャリと笑った。
「リュード、覚えてる?私達が助けた青年」
「むにゃむにゃ。さぁー、いつ助けたぁ?」
「遠い昔。私は覚えてるよ」
「そぁか。んなら、助けたぁ」
「リュードはもうお爺ちゃんになった。覚えてないみたいだね。エルフ族は長生きだから寿命は300年以上はある。昔の記憶も余り忘れることはない」
「俺は一言お礼が言いたくて。あの時はありがとうございました!」
リュード爺はニカッと笑って杖とは反対側の手を挙げた。
「リュードも嬉しそうだ。ところで君たちはこんな寂れた店に何か用?」
ギルドから紹介されたことを伝えるとアイラは大きな水晶玉を奥の部屋から持ってきて机に置いた。
「適正や能力が知りたいなら、この水晶玉に手を置いてほしい」
「では、私からいいですか!」
真帆が挙手して、水晶玉に手を置いた。
真帆と対面する形でアイラが水晶玉に浮かぶ言葉を読む。そして真帆に告げた。
「魔力は殆どないに等しい。しかし身体能力はかなり高い」
「魔力なし!」
肩を落として落ち込む真帆を無視してアイラは続ける。
「身体能力はリュード以上にある。それに見切りや反射にも長けている。モンクや剣士の適正がある」
「モンク!拳で敵を貫く。魔法使いは諦めてモンクになります」
「次は翔吾。いってこい」
「はい!」
翔吾は水晶玉に手を置いた。
「魔力は並みにある。身体能力は並みにある。剣士、モンク、弓使い、魔法使い、シーフ、タンクなんでも器用にできるぐらい適正は高い」
次は神村先輩だ。
「魔力が私以上にある。国随一の魔導士並みの魔力量を持っている。間違いなく魔法使いを極めるべき逸材」
俺の番だ。水晶玉に手を置いてすぐアイラの顔つきが変わった。
「知ってたの?」
「何をですか?」
「君はマジックブレイカーだ」
「前にシュミルさんから聞いてました」
アイラは俺を少し睨んだように見えた。
「今まで何処にいた?マジックブレイカーは魔王、勇者、前国王しか持っていない特殊能力で前国王は崩御して、勇者は魔王に破れた。だから今は君と魔王しかマジックブレイカーは存在しない」
「そんな希少な能力でも俺には全く能力がない!」
「マジックブレイカーは決まって魔剣士だと知ってるかい?魔剣士は魔石やアイテムを体に吸収して、武器の強さによって能力が解放される。つまり、大量の魔石を吸収して良い武器で戦えば、相当な強さになる。だから魔王を倒す唯一の能力と言われている」
そういえば今までの戦闘はペティナイフとボロボロの剣で素振りしていた。武器が悪かったわけか。
「残念だけど、この水晶玉の情報は城の兵士と共有されているから、あと少しで兵士が来るよ」
「計ったのか!」
「違う。ようやく見つけた。みんなずっと待ち侘びてたのさ、魔王を倒せる逸材を」
アイラの言った通り、兵士がアイラの店の前に押し寄せ取り囲まれた。
仕方なくアイラの店を出て俺たちは兵士に連れられてシーニア城に連行された。
シーニアの街は、行商人の手引きですんなり入ることが出来た。
「顔馴染みの門兵がいましてね。君たちのことは冒険者と行商見習いだと言って通しておきましたよ。また何かあれば言ってください」
「ありがとうございます。しかし俺たちは金がありません。お返しできるものがなくて」
「お金は結構。また何処かで私のことを見かけたら商品でも買ってください。では私はこれで」
「なんて良い人なんだぁぁ」
翔吾は号泣して手を振っていた。
「泣くなよ」
貰い泣きして俺も泣きそうだ。
「さぁ!とりあえずギルド。それから、街の情報収集ね」
「泣いてないで神村先輩を見習え。男ども!」
ギルドで翔吾と真帆の冒険者登録を済ませた。ギルドで適正を計りたいと尋ねると、魔法通り四番地の角にある雑貨屋を訪ねるといいと教えてくれた。
人に尋ねながら雑貨屋に着いた。外観は石造りで窓から蝋燭の灯りが揺らぐ薄暗い店内が見えた。ドアを開けると埃と湿気の臭いが鼻を襲う。
「くっさ!」
翔吾が思わず鼻を摘む。
「失礼でしょ」
神村先輩が叱る。
店内は床から本が山積みになり、棚という棚には紙の箱とスクロールがぎっしり詰まって、テーブルには乾燥した花や葉っぱ、腐った色のキノコに何らかの生物の臓器が入ったガラスの瓶が置かれていた。
蝋燭の灯りがふと店内の奥にいた三角帽子の店員に俺は見覚えがあった。
「アイラさん!」
「知り合い?」
「誰?」
「アイラ?」
初めて異世界転移した日に傭兵リュードと
魔法使いアイラに助けられた。そのアイラがいた。
「覚えていますか?転移して4回目だから30年ぶりになるのか。あの日魔獣から追われた時にリュードさんと助けてくれた」
アイラは俺の顔を近くで見た。少女だったアイラはもう中年の女性になっているはずだったがエルフ族は歳をとらない。姿形もあまり変わらない。30年前と変わらない少女がそこにはいたのだ。
「あぁ、あの時の」
「リュードさんは、元気してますか?」
「リュードなら奥にいるよ。リュード!」
カーテンで仕切られた奥の部屋から杖で体を支えながら歩く年老いた御老体が俺の前に現れた。筋肉隆々、日焼けして逞しい姿は数十年の歳月で失われた。今や骨と皮。シワだらけになった顔を向けてニチャリと笑った。
「リュード、覚えてる?私達が助けた青年」
「むにゃむにゃ。さぁー、いつ助けたぁ?」
「遠い昔。私は覚えてるよ」
「そぁか。んなら、助けたぁ」
「リュードはもうお爺ちゃんになった。覚えてないみたいだね。エルフ族は長生きだから寿命は300年以上はある。昔の記憶も余り忘れることはない」
「俺は一言お礼が言いたくて。あの時はありがとうございました!」
リュード爺はニカッと笑って杖とは反対側の手を挙げた。
「リュードも嬉しそうだ。ところで君たちはこんな寂れた店に何か用?」
ギルドから紹介されたことを伝えるとアイラは大きな水晶玉を奥の部屋から持ってきて机に置いた。
「適正や能力が知りたいなら、この水晶玉に手を置いてほしい」
「では、私からいいですか!」
真帆が挙手して、水晶玉に手を置いた。
真帆と対面する形でアイラが水晶玉に浮かぶ言葉を読む。そして真帆に告げた。
「魔力は殆どないに等しい。しかし身体能力はかなり高い」
「魔力なし!」
肩を落として落ち込む真帆を無視してアイラは続ける。
「身体能力はリュード以上にある。それに見切りや反射にも長けている。モンクや剣士の適正がある」
「モンク!拳で敵を貫く。魔法使いは諦めてモンクになります」
「次は翔吾。いってこい」
「はい!」
翔吾は水晶玉に手を置いた。
「魔力は並みにある。身体能力は並みにある。剣士、モンク、弓使い、魔法使い、シーフ、タンクなんでも器用にできるぐらい適正は高い」
次は神村先輩だ。
「魔力が私以上にある。国随一の魔導士並みの魔力量を持っている。間違いなく魔法使いを極めるべき逸材」
俺の番だ。水晶玉に手を置いてすぐアイラの顔つきが変わった。
「知ってたの?」
「何をですか?」
「君はマジックブレイカーだ」
「前にシュミルさんから聞いてました」
アイラは俺を少し睨んだように見えた。
「今まで何処にいた?マジックブレイカーは魔王、勇者、前国王しか持っていない特殊能力で前国王は崩御して、勇者は魔王に破れた。だから今は君と魔王しかマジックブレイカーは存在しない」
「そんな希少な能力でも俺には全く能力がない!」
「マジックブレイカーは決まって魔剣士だと知ってるかい?魔剣士は魔石やアイテムを体に吸収して、武器の強さによって能力が解放される。つまり、大量の魔石を吸収して良い武器で戦えば、相当な強さになる。だから魔王を倒す唯一の能力と言われている」
そういえば今までの戦闘はペティナイフとボロボロの剣で素振りしていた。武器が悪かったわけか。
「残念だけど、この水晶玉の情報は城の兵士と共有されているから、あと少しで兵士が来るよ」
「計ったのか!」
「違う。ようやく見つけた。みんなずっと待ち侘びてたのさ、魔王を倒せる逸材を」
アイラの言った通り、兵士がアイラの店の前に押し寄せ取り囲まれた。
仕方なくアイラの店を出て俺たちは兵士に連れられてシーニア城に連行された。
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