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国賓待遇
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三食飯つき、風呂完備、家事や身支度までメイドさんが完璧にしてくれます。最高かよ国賓待遇だって。笑いが止まらない!
シーニア領主に謁見し、数日後に国の首都で国王に会う時までシーニア城内で滞在の命が下った。
広い城内の応接室で俺と神村先輩、翔吾は共にテーブルを囲み食事をする。
「一度でいいから、お城で生活してみたかったのよ」
「神村先輩の夢、叶いましたね。はぁー、俺達まるで魔王を倒す勇者様一行みたいになって嫌だなぁぁ」
翔吾はジタバタと足を動かして駄々をこねた。
「魔王は倒すよ!そのために連司くんとトレーニングしてたの」
「神村先輩と連司先輩の交際が社内で噂になってた真相はトレーニングだったのかぁ」
「なんだその噂は!」
俺はテーブルを叩いた。
神村先輩は少し照れていた。
「元の世界に帰ったら会社の人には神村先輩と連司先輩はトレーニング仲間でお付き合いしてた訳じゃありませーんって言っておきますね。神村先輩ファンクラブあるぐらい人気だからなぁ」
「翔吾、目の前で言わなくても」
「へー、ファンクラブねー。ファンクラブの入会金・年会費徴収しますねー」
「金の亡者!」
「ところで真帆は?」
「真帆ちゃんなら領主のご子息の所じゃないかな?」
領主の息子は真帆に一目惚れしたらしい。真帆も最初は嫌がっていたが、猛アタックに押されて次第に心が通じ合った。
それから3日後、シーニアを発つ日。
「私はご子息様と結婚します!」
「俺達は異世界から来た異世界人でいつか元の世界に戻らないと。真帆は会社に連れ戻さないといけない」
俺と真帆は揉めていた。真帆はここ異世界に骨を埋める覚悟だ。俺には真帆を異世界転移に巻き込んで元の世界に返す責任がある。
「私の幸せは私が決めます」
「そうは言っても真帆を置いて元の世界に戻るとする。往復するだけでおよそ10年のこちらの世界は早く進む」
「そんなこと構いません。お願いします。私を置いて行ってください」
苦渋の決断だった。しかしシーニアの街を出る時、真帆の顔は会社でも見たことがないぐらい幸せな笑顔で俺たちを見送ってくれた。
馬車の中で神村先輩は「真帆ちゃんいいなー」と何度も呟いて俺をチラチラ見ていた。
10年前、ミクルテの町を魔王国軍が通過してギオランド皇国の首都が陥落。ギオランド皇国が滅亡し、勇者一行が他国から派遣され激戦の末に魔王国軍を追い返し、ギオランド皇国の後にリデニア国が建国された。その後、魔王国軍の激しい戦闘で負傷した勇者は死に、新たな勇者が現れるのを諸国は待っていた。
そこに現れたマジックブレイカーの俺。
リデニア国の随一の魔導士と並ぶ魔力量持ちの神村先輩。
変幻自在、ほぼ全てのジョブ適正がある翔吾が一気に見つかり、勇者再来とも噂が各地を巡った。
とある街を通った時は、俺たちが乗る馬車目掛けて花びらのシャワーを浴びせ歓迎され、まるでパレードだった。
馬車に揺られ、長旅は続く。
「神村先輩は実力があるけど、俺は本当にマジックブレイカーなのか。魔剣士になれるのか不安で」
「連司先輩って案外小心者ですね」
「翔吾に言われたくないな」
「連司くんはやる時はやるよ。私が大きな鎧に襲われた時は助けてくれたからね」
「連司先輩やりますねぇ。漢の中の漢!」
「うるせぇ!」
長閑な田舎町、一面の畑、川に架かるアーチ型の石橋、森の中、関所を通りリデニア国の首都に到着した。
シーニアの街をさらに3倍広くして、中央にある丘の上に10階建てぐらいある高さの城が聳えていた。
街の人々が馬車に集まる。
「大人気だぁぁ」
翔吾は手を振って犬の様にはしゃいでいた。
街中を通って城に入ると王の間に通された。王の間の天井は高く、兵士が1000人以上入る広さがあった。赤い絨毯が玉座まで真っ直ぐ敷かれ、天井には豪華なシャンデリアが垂れていた。赤い絨毯の両脇には兵士が並び、兵士の奥には国の役人や領主なども集められていた。
玉座にはリデニア国女帝リデニア。その隣に立つ宰相アーヒュウッドと玉座の右斜め前で直立不動の将軍ゲルバンがいた。
「ようこそ。長旅ご苦労様です」
リデニアは立ち上がり笑顔で迎えてくれた。国のトップはもっと怖いのかと想像していたが案外優しそうだ。
首都までの道のりで習っていた作法通り、片膝をついて女帝に頭を下げた。
「話は聞いています。貴方達は異世界からの来訪者。そしてマジックブレイカーの能力者と魔法使い、万能者。貴方達にお願いがあります。どうか魔王の手から国を救って下さい」
女帝が頭を下げると、王の間にいた兵士など全員が片膝をついて頭を深々と下げた。
「頭を上げて下さい。俺らも魔王は倒したい。前に一緒にいたシュミル・ザイアス・リネットという冒険者も探したい。やりたいことは沢山あるのに力がありません。力になれるかどうか」
「アーヒュウッド、ゲルバン。あの者達に稽古を」
「「はっ!」」
「貴方達は今からリデニア国の国賓であると同時に魔王討伐の勇者一行と認定します。勇者に選ばれたからには次の月までに試験を受けてもらいます。そこで不合格の場合は国外追放とします」
「えぇぇぇ!」
翔吾が叫んだ。
「静かに!」
神村先輩が叱る。
「受けます!必ず強くなります!」
俺は意気込みを伝えた。
シーニア領主に謁見し、数日後に国の首都で国王に会う時までシーニア城内で滞在の命が下った。
広い城内の応接室で俺と神村先輩、翔吾は共にテーブルを囲み食事をする。
「一度でいいから、お城で生活してみたかったのよ」
「神村先輩の夢、叶いましたね。はぁー、俺達まるで魔王を倒す勇者様一行みたいになって嫌だなぁぁ」
翔吾はジタバタと足を動かして駄々をこねた。
「魔王は倒すよ!そのために連司くんとトレーニングしてたの」
「神村先輩と連司先輩の交際が社内で噂になってた真相はトレーニングだったのかぁ」
「なんだその噂は!」
俺はテーブルを叩いた。
神村先輩は少し照れていた。
「元の世界に帰ったら会社の人には神村先輩と連司先輩はトレーニング仲間でお付き合いしてた訳じゃありませーんって言っておきますね。神村先輩ファンクラブあるぐらい人気だからなぁ」
「翔吾、目の前で言わなくても」
「へー、ファンクラブねー。ファンクラブの入会金・年会費徴収しますねー」
「金の亡者!」
「ところで真帆は?」
「真帆ちゃんなら領主のご子息の所じゃないかな?」
領主の息子は真帆に一目惚れしたらしい。真帆も最初は嫌がっていたが、猛アタックに押されて次第に心が通じ合った。
それから3日後、シーニアを発つ日。
「私はご子息様と結婚します!」
「俺達は異世界から来た異世界人でいつか元の世界に戻らないと。真帆は会社に連れ戻さないといけない」
俺と真帆は揉めていた。真帆はここ異世界に骨を埋める覚悟だ。俺には真帆を異世界転移に巻き込んで元の世界に返す責任がある。
「私の幸せは私が決めます」
「そうは言っても真帆を置いて元の世界に戻るとする。往復するだけでおよそ10年のこちらの世界は早く進む」
「そんなこと構いません。お願いします。私を置いて行ってください」
苦渋の決断だった。しかしシーニアの街を出る時、真帆の顔は会社でも見たことがないぐらい幸せな笑顔で俺たちを見送ってくれた。
馬車の中で神村先輩は「真帆ちゃんいいなー」と何度も呟いて俺をチラチラ見ていた。
10年前、ミクルテの町を魔王国軍が通過してギオランド皇国の首都が陥落。ギオランド皇国が滅亡し、勇者一行が他国から派遣され激戦の末に魔王国軍を追い返し、ギオランド皇国の後にリデニア国が建国された。その後、魔王国軍の激しい戦闘で負傷した勇者は死に、新たな勇者が現れるのを諸国は待っていた。
そこに現れたマジックブレイカーの俺。
リデニア国の随一の魔導士と並ぶ魔力量持ちの神村先輩。
変幻自在、ほぼ全てのジョブ適正がある翔吾が一気に見つかり、勇者再来とも噂が各地を巡った。
とある街を通った時は、俺たちが乗る馬車目掛けて花びらのシャワーを浴びせ歓迎され、まるでパレードだった。
馬車に揺られ、長旅は続く。
「神村先輩は実力があるけど、俺は本当にマジックブレイカーなのか。魔剣士になれるのか不安で」
「連司先輩って案外小心者ですね」
「翔吾に言われたくないな」
「連司くんはやる時はやるよ。私が大きな鎧に襲われた時は助けてくれたからね」
「連司先輩やりますねぇ。漢の中の漢!」
「うるせぇ!」
長閑な田舎町、一面の畑、川に架かるアーチ型の石橋、森の中、関所を通りリデニア国の首都に到着した。
シーニアの街をさらに3倍広くして、中央にある丘の上に10階建てぐらいある高さの城が聳えていた。
街の人々が馬車に集まる。
「大人気だぁぁ」
翔吾は手を振って犬の様にはしゃいでいた。
街中を通って城に入ると王の間に通された。王の間の天井は高く、兵士が1000人以上入る広さがあった。赤い絨毯が玉座まで真っ直ぐ敷かれ、天井には豪華なシャンデリアが垂れていた。赤い絨毯の両脇には兵士が並び、兵士の奥には国の役人や領主なども集められていた。
玉座にはリデニア国女帝リデニア。その隣に立つ宰相アーヒュウッドと玉座の右斜め前で直立不動の将軍ゲルバンがいた。
「ようこそ。長旅ご苦労様です」
リデニアは立ち上がり笑顔で迎えてくれた。国のトップはもっと怖いのかと想像していたが案外優しそうだ。
首都までの道のりで習っていた作法通り、片膝をついて女帝に頭を下げた。
「話は聞いています。貴方達は異世界からの来訪者。そしてマジックブレイカーの能力者と魔法使い、万能者。貴方達にお願いがあります。どうか魔王の手から国を救って下さい」
女帝が頭を下げると、王の間にいた兵士など全員が片膝をついて頭を深々と下げた。
「頭を上げて下さい。俺らも魔王は倒したい。前に一緒にいたシュミル・ザイアス・リネットという冒険者も探したい。やりたいことは沢山あるのに力がありません。力になれるかどうか」
「アーヒュウッド、ゲルバン。あの者達に稽古を」
「「はっ!」」
「貴方達は今からリデニア国の国賓であると同時に魔王討伐の勇者一行と認定します。勇者に選ばれたからには次の月までに試験を受けてもらいます。そこで不合格の場合は国外追放とします」
「えぇぇぇ!」
翔吾が叫んだ。
「静かに!」
神村先輩が叱る。
「受けます!必ず強くなります!」
俺は意気込みを伝えた。
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