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CHAPTER 24
しおりを挟むフランクスタイン邸
「黒猫さん、生きてる?」
聞こえてきた声の主は間違いなく“サディ”だ!
「はっはっはっ」
この抑揚のない笑い声は“ドクトル”だ!
一体どうしたんだ?
何があった?
私は・・・今、どこにいる!?
もう一度サディに、ドクトルに、会えたのは正直うれしい!
猛烈に、うれしい!!
だが、それは望んでも叶わないことなのだ。
何故なら、サディも、ドクトルも、あの日に亡くなってしまったのだから。
とすると、これは何だ?
私のこの手に収まりのよい大きさのこの・・・
「く・ろ・ね・こ・さぁん(-_-;)」
サディが私を見おろしている。
私の手がサディの腰を回り込んで尻を・・・尻を・・・尻?!
うつぶせ寝だった為、使われずに避けてあった枕で、ばんばん叩かれた私は大して痛くなかったにもかかわらず涙が溢れ出るのを止められなかった。
「あら嫌だ! 痛かった? 黒猫さん」
「痛くても痛くないよ。」
「ちょっと、本当に大丈夫? これ見て、何本? じゃ、これは?」
サディは指を立てて私の正気を確認した。
その後、私が落ち着くのを待って、事の経緯がサディから語られた。
内容は、こうだ。
それは今朝の事だった。
朝食の準備のためルニアを屋根裏部屋に残して厨房へ向かったサディは、玄関扉の所に正装で立っているルニアを見かけた。
今日はドクトルのお供でパーティーに“お呼ばれ”されていた日だっけ?
装い自体は特に気にしなかったが、さっきの今で、正装に着替えたというのか?
まして、たった今彼を部屋に残して降りてきたのだ、 すれ違わないはずがない。
2階廊下から階下を見おろしながら、ルニアに声を・・・
そう思った時、ルニアは膝から崩れるように倒れた。
タキシードの背中がビッショリ濡れているのが遠目にも解る。
サディは動転しそうになる気持ちを必死に抑えながら、大声でドクトルを呼び、ルニアの所へ急いだ。
近くで見ると、ルニアの背中には細い槍か何かで突かれた痕が10ヶ所あり、かなり出血したと思われた。
だが、そんな状態であるにも関わらず、ルニアは生きていた!
屋敷の奥からドクトルが走って来る。一体何事かと聞こうとしたドクトルだったが、状況を見てその場で処置を行うとサディに指示すると、サディが手術道具を持ってくる間に、ルニアの服を裂いて傷の具合を見た。直に診た傷は思いのほか小さかった。それに、血は出ているが、主要な臓器を傷つけてはいないようだ。運が良いのもココに究めり、とでも云おうか? 脊椎にはひとつも傷が無いのだ。
サディが手術道具を持ってくると、ドクトルは、まるでオーケストラの指揮者がタクトを振るかのように緩急を付けつつ迷いのない手際で、10ヶ所全てを速やかに処置すると、ベッドへの移動をサディと行い完了させ、後をサディに任せてドクトル自身は自室へ戻っていった。
そして今に至るという事だった。
ん?
ドクトルは、背中とはいえ施術できたという事??
考えていると、私は背中に激しい痒みを感じた。
「どうかした? 黒猫さん」
サディが私の変化に気付いて声を掛けてくれる。
「なんだか背中が痒くて・・・」
うつぶせ寝の私は背中に手を回しても埒が明かないので、寝台から転げ落ちると背中を床に擦り付けた。
「ちょっと黒猫さん!」
「痒くて・・・たまらん」
床に背中を擦りながら、私は考えていた。
この痒みは恐らく時空移動のすり合わせを意味している。
痒みが収まるとき、時空移動が完了する事だろう。
「黒猫さん、しっかりして!」
サディは私の上体を引き起こすと、血と床に擦れて汚れた包帯を交換しようと巻き取り始めた。
「・・・・・」
しばらくして、サディは手を止めては考え込むようになった。
「黒猫さん」
振り向くと、包帯を巻き取り終えたサディが、何やら神妙な顔で私を見ている。
背中の傷は、傷痕すら無く、負傷したことすら無かったことになってしまったようだ。
私はサディの言葉を待った。
「朝ごはん!」
「は?」
「もう、ナニ朝からヤル気だしちゃってるのよ!?」
サディは頬を赤らめながら、手にしていた包帯をくしゃくしゃにすると、肘で上半身裸の私をつついた。一体何を・・・あぁ、私が上半身裸でいるからか。
「朝ごはん、すぐ用意するから。その間に着替えてきて。」
「あ? あぁ・・・。」
結局、どういう事で落ち着いたのかと言うと、私とサディが結ばれた日の明朝に時空移動を果たし、私はその時間・その世界に定着した。
という事。
つまりこれから来る招待状に応じてフリダマウシュ城にのこのこ行くと、サディとドクトルはまた死んじゃうって事。
せっかくこれから起こる事を覚えているのだから、対策を講じておきたいところだが、どうしたものか。
先ずは招待状を隠してみた。
結末: 領主の招待を無視は有り得ない。 と、領主マスモルトが自らフランクスタイン邸までやって来てサディとドクトルを始末した。
私は、抵抗空しく重傷を負って独り、あの日の朝へ戻った。
次に招待状に不参加と記して返信した。
結末: 領主の招待に応じないなど有り得ない。と、マスモルト自身がフランクスタイン邸に乗り込んで来てサディとドクトルは始末された。
私は、抵抗空しく重傷を負って独り、あの日の朝へ戻った。
更に・・・
星岬技術研究所本部棟22階 研究所所長室(兼星岬開自室)
首の後ろから、背中から、およそ考えられる限りの配線が成されている状態の星岬が、壁一面に設置されたモニター画面(恐らく目視する必要はないと思われるが)に向かって思わず声を上げた。
「でかしたアーデ! こう何度もデータが取れるとは・・・。」
星岬がモニター画面に映るサーディアに対して口走ってしまう。
サーディアは邦哉を裏切ったのか?
再び邦哉の夢(?)
更に、招待を受けてドクトルが独りで懇親会に参加した。
結末: 当時の医学界では、体にメスを入れることを良しとしない教えがまだまだ根強く、異端扱いされたドクトルは急遽異端審問に掛けられて火炙りに。
その弟子として私とサディまでも火炙りに処された。
私は絶命の直前になってあの日の朝に戻った。
そして、すっかり(抵抗を諦めて)抜け殻のようになった私に、とにかく気晴らしにでもなればというつもりでドクトルとサディが参加を決めた有識者懇親会。
やはりマスモルトが一方的な理由で暴力を揮ってきた。
我慢の限界を超え、怒りが臨界点に達した私は自分でも驚く程の身体能力を発現させてサディとドクトルを守った! その強さたるや熊の如し。
マスモルトの排撃に成功した!
だが、人間離れした力を持っていた私を恐れた有識者懇親会参加者たちは、私のみならず、ドクトルとサディまでも裁判にかけて火炙りにしてしまった。
そして、もう何度目だろう? 私はあの日の朝に戻って来た。
朝食の準備のためルニアを屋根裏部屋に残して厨房へ向かったサディは、玄関扉の所に突如立ち昇る炎を視界の隅に捉えて跳び上がる程驚いた。
とにかく消火せねばと玄関へ急ぐと、炎の中に正装で立っているルニアを見た。
ルニアは膝から崩れるように倒れた。
タキシード姿の彼がメラメラと燃えているのが解る。
サディは動転しそうになる気持ちを必死に抑えながら、大声でドクトルを呼び、ルニアの消火を急いだ。
サディは床に視線を落とすと、異国の織物らしい絨毯に目を留めた。
端を持つと一気にめくりあげてルニアに被せて、自分もその上から覆いかぶさった。
絨毯とルニアの間に隙間が無くなるようにギュウっと力を込めた。
屋敷の奥からドクトルが走って来る音が聞こえる。
あまり長時間ギュウっとしてると、窒息させてしまう恐れもあるので慎重に絨毯をめくって鎮火を確認する。
ゆっくり、風を起こさぬよう慎重に、絨毯をめくる。
大きな身体があちこち焦げてボロボロで、見るに耐えない。
だが、そんな状態であるにも関わらず、ルニアは生きていた!
一体何事かと聞こうとしたドクトルだったが、状況を見てその場で処置を行うとサディに指示すると、サディが手術道具を持ってくる間に、ルニアの服を裂いて傷の具合を見た。直に診た傷は思いのほか軽傷だった。
運が良いのもココに究めり、とでも云おうか?
サディが手術道具を持ってくると、ドクトルは迷いのない手際で、裂傷のみを速やかに処置した。
ベッドへの移動をサディと行い完了させ、後をサディに任せてドクトル自身は自室へ戻っていった。
そして今に至るという事だった。
「
・
・
・
・
・
・
・
・
え?
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!
ちょっとマテ?
何だこれは⁉
私の、・・・私の記憶か? これは・・・
これは、違う!!!
何のために!?
私にこんな茶番を見せるのか!?
これは、私の・・・
これは私の願望だ!
この時、私は、
この時私は・・・何もできなかったんだ・・・
何も、できなかったんだ。
サディも!
ドクトルも!
あの時死んだ!!
私が、私が・・・守れなかった・・・
私が! ・・・守れなかった!
守れなかった・・・・・
・
・
・
私はヒトの“死”というのを全く分かっていなかった。
ヒトは一度死んだらそれっきり。
二度目(リトライ)はない。
サディも、ドクトルも、二人が死んだという現実を、私の能力、私の都合で、無かった事にしてしまってはならない!
この時の自分の甘さ、悔しさ、やるせなさを経ているから今の私がある!
なのに、これは何だ?
バカみたいに何度も何度も!
ヒトが死ぬっていうのは数値解析して理解した気になっていいものじゃない!!!
この茶番は何だ!?
ヒトを何だと思っている?
バカにするな!
安い芝居はいい加減にしろ!
わかっているぞ。
モニターしてるんだろう?
姿を現せ、星岬!
ほぉしぃみぃさぁきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
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