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CHAPTER 4
しおりを挟む自殺は願望であり、生存は本能である。
彼女は興味を失っていた。
彼女は手足を失い、同時に生きるための活力を失ったのだ。
彼女は全てを投げ出した。
彼女は自分が生きているのか死んでしまったのかという事でさえ分からなくなっていた。
そんな時である、自分によく似た種類の何かに触れられたのは…。
それは何とも心地よく、絶対に手放したくないと思わせた。
俺は… 一体どうしたんだ?
朝靄がかかったように混濁した意識の中、俺は目覚めたらしい。
「ハァイ、すとれんじゃー。ユーウェルカム」
誰かの呑気そうな声が聞こえた気がした。
星岬技術研究所 東研究棟 第三実験室(通称「開かずの間」)
「ナンバー11、気分はどうですか?」
「・・・吐き気がする・・・」
見上げる程もある大きな機械の表面には、スライドスイッチとパイロットランプが所狭しと並んでいる。スピーカーを通して声が聞こえる。
「安心して下さい。今のあなたには吐く行為も内包物も何もないのだから。」
スピ-カーからハウリングのようなキーンという音がする。
「元気があって、大変結構!
では、そろそろ始めたいと思います。」
「待ってくれ! 聞いておきたい事がある!」
早く実験に入りたい星岬は、やや不機嫌な声色で応じた。
「何でしょう?」
「今、思い返せばゴリラの筋力は人間の数十倍はある。それを取り押さえるのにPASでは説明不充分になるのではないかと・・・」
星岬は少しだけ話を聞いて、すぐに実験に入るつもりだったが、話の着地点に興味を持ち始めていた。
「加えて言うならあのゴリラはロボットだった。
PASは負荷には耐えるだろうがいわゆる格闘戦向きではない。
君の悠々とした動きについ考察を誤り失念していた事項があった。
握力についてだ。
動物だろうとロボットだろうと、人間がその動きを抑え込めるとは考え難いのだ。」
いいところをついて来るではないか。と、星岬は感心していた。
「再考した私の診立てでは、キミはサイボーグだ。」
ポンと手を打ち鳴らしたが、星岬は正否を明かさず機材の調整に入った。
「猿に耐えられた実験です。人間であるあなたには易し過ぎるかもしれません。 実験プラン1277、ヒューマノイド・デバイス遠隔操作に関する考証その109、
操作実験比較対象:同考証その1」
「星岬くん、君はいつから用意していたのかね?」
星岬は、その問いには答えなかった。
「私はこの実験が終わったら元の身体に戻して貰えるのだろうか?」
「無理です。」
そんなご無体な・・・と、ナンバー11の悲痛な思いが聞こえてくるかのような静けさが実験室を満たした。
星岬は淡々と説明を始めた。
「脳というものはアシが速くて、頭蓋から取り出すと数分の内に劣化が始まりすぐに使い物で無くなる臓器です。ですから、私はまずあなたの脳内データを複製しました。」
「脳内データを複製? そんなことが・・・」
ナンバー11の声に希望を感じる明るさが感じられる。
星岬は説明を続けた。
「そして脳のようなものにダウンロードしてあなたの身体に戻した。
よってあなたはこの世に存在しない存在になった。」
ナンバー11は、その身に起こった事の本当の意味をまさに今、理解して悲鳴を上げた。
星岬は実験を開始した。
ナンバー11の色々な悲鳴が実験室に響き渡った。
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