13 / 51
CHAPTER 12
しおりを挟む
星岬技術研究所 東研究棟 第3実験室(開かずの間)
CHAPTER 7 からのつづき。
落ち込んだ気分で立ち尽くして、気付けば日付が変わってしまっているという始末。
気持ちを切り替えろ。やれることはまだあるはずだ。
邦哉は冷静さを取り戻し、覚えている限りの記憶を手繰り寄せて整理した。
星岬は高濃度のオゾンによって肺をやられた
星岬の全身には縫合痕があった
星岬は何者かによって連れ去られた
その何者かは三角形のシルエットをしている
そして、その三角形のシルエットの大きさは170cm前後あったという事だ。
換気のために開放した窓は“滑り出し窓”という種類の窓で、ヒトが出入りする用途の窓ではないし、その様な使用には不向きだ。故に三角形にはこれを利用して室内に侵入して、人ひとり連れ去るという事は現実的ではないであろう。
そうなると、窓から出入り出来ない以上、この部屋に出入り口は一ヶ所しかないことになる。
結論、彼らはまだ、この室内にいる。
いや、コレは間違っている。
機材が邪魔して見えないところもあるけれど、人が隠れられるだけのスペースが確保できるようには見えない。星岬は、あれで178cmとなかなかの長身。この室内ではどこに隠れても頭隠してなんとやら、だろう。
うっかり星岬が隠れているところを想像してしまい、首を左右に振って思考をリセットすると、邦哉は入室の際に使用したドアに背を向けた。
あの時、自分はこのドアを視界に捉えていた。そしてヤツは気付いた時にはすぐ傍にいた。つまりヤツは、三角形はこの視界の中に突然現れ、そして突然消えた。そう、見当たらないのだから居ないのだ。
どこかに隠し扉か何かがあるのだ!
室内をよく見る。
邦哉は壁伝いに歩きながら壁を軽く叩いて、確認して回った。
あった!
その壁は叩いただけでは分からない程他との差は感じなかったが、床面との隙間に風が吹き抜けているのだ。
どうやったら開閉できるのか?
邦哉は数歩下がってその壁をまじまじと見た。すると上の片隅にひとつ、直径2㎝程の孔が開いているのを発見した。
孔か・・・
少し考えて邦哉は手を伸ばして指を孔に突っ込んだ!
すると・・・すると・・・何も起こらない?
それより、問題が発生した。指が抜けない。・・・!
これは、かなり、ハズカシイ。
抜けろ! 思い切り引っ張った時に“カックン”と指に手ごたえを感じると、大きく手前に壁が開いた。なんと大胆な隠し扉だろう。これ、ほぼ壁一面開いたと言っていい。大きさは、今はいいや。こうなったら行くしかないだろう。それより、マジで指が・・・何かないかと辺りを見回すと、工具箱を見つけた。恐らく機器のメンテナンス用であろう。機械油があるはずだ。期待して足を延ばして引き寄せた。
星岬技術研究所 東研究棟 第3実験室(開かずの間)隠し扉の向こう側
幅1mもないと思われる狭い場所に、勾配のキツイ階段が設置されている。照明らしいものはというと、階段の一段一段が発電機を内蔵しているようで、踏まれることでエネルギーが発生してぼんやりと灯りが点るのだ。邦哉は、まるで足音をたてずにスイスイと階段を下っていく。体感で3フロア分は下った気がする。もう地下なんじゃないだろうか?そう思っていると、薄っすらと灯りが漏れているのに気が付いた。どうやら終点のようだ。
さて、この扉はどうやったら開くんだ?
考えていると、シューと小さな音をたてて扉が開いた。薄暗い室内の中央に、手術台があり星岬が横になっている。その傍らに三角形がいて、こちらを油断なく見て警戒している。
「遅いじゃないか、邦哉」
星岬が声を掛けてくる。
状況が把握できないが、とりあえず“見られたからには生きて帰れるなんて思うなよ”的な事にはならないで済みそうだ。
「星岬、大丈夫なのか?」
「邦哉、頼まれてくれないか」
何をだ?と邦哉が尋ねると星岬は、少しためらってから答えた。
「この身体はもうダメだ。私は別の身体に移る。」
「何を言っている? 別の身体とはどういう意味だ?」
言葉通りだと星岬が答え肘から先で合図をすると、三角形が床面に届いている太くて長い手を延ばして壁にあるスイッチを操作した。すると三角形の背後の壁が左右に開き、メタルフレームのスケルトンが現れた。
「コレはいったい・・・?」
「トランスルーセント、model no.000000(モデルオールゼロ)」
星岬は邦哉の疑問・質問に答えている訳でなく、自分の都合最優先で説明しているに過ぎない。
「私の心臓をオールゼロへ移植して欲しい」
「脳じゃないのか?星岬!」
入り口に突っ立ったままの邦哉は弱っている友の姿に動揺を隠しきれない。
「脳であれば、そこのメタルターニャでも可能だ。だが、心臓(移植)はレクチャーしていない。お前の技能が必要だ。」
「わかった。やろう! だが、なぜ心臓なんだ?」
星岬は、笑おうとして咳きこんだ。邦哉が入り口から一挙動で星岬の傍らに移動すると、メタルターニャと呼ばれた三角形は、対応しきれずひっくり返った。
星岬は見えていたらしく邦哉の眼を見て問いに答えた。
「本当の 想いは ハートに 宿るんだぜ」
「なにメチャメチャなこと言ってんだ、馬鹿野郎!」
ベタな三文芝居が続く中、メタルターニャが何かを察知して静かに退室した。
CHAPTER 7 からのつづき。
落ち込んだ気分で立ち尽くして、気付けば日付が変わってしまっているという始末。
気持ちを切り替えろ。やれることはまだあるはずだ。
邦哉は冷静さを取り戻し、覚えている限りの記憶を手繰り寄せて整理した。
星岬は高濃度のオゾンによって肺をやられた
星岬の全身には縫合痕があった
星岬は何者かによって連れ去られた
その何者かは三角形のシルエットをしている
そして、その三角形のシルエットの大きさは170cm前後あったという事だ。
換気のために開放した窓は“滑り出し窓”という種類の窓で、ヒトが出入りする用途の窓ではないし、その様な使用には不向きだ。故に三角形にはこれを利用して室内に侵入して、人ひとり連れ去るという事は現実的ではないであろう。
そうなると、窓から出入り出来ない以上、この部屋に出入り口は一ヶ所しかないことになる。
結論、彼らはまだ、この室内にいる。
いや、コレは間違っている。
機材が邪魔して見えないところもあるけれど、人が隠れられるだけのスペースが確保できるようには見えない。星岬は、あれで178cmとなかなかの長身。この室内ではどこに隠れても頭隠してなんとやら、だろう。
うっかり星岬が隠れているところを想像してしまい、首を左右に振って思考をリセットすると、邦哉は入室の際に使用したドアに背を向けた。
あの時、自分はこのドアを視界に捉えていた。そしてヤツは気付いた時にはすぐ傍にいた。つまりヤツは、三角形はこの視界の中に突然現れ、そして突然消えた。そう、見当たらないのだから居ないのだ。
どこかに隠し扉か何かがあるのだ!
室内をよく見る。
邦哉は壁伝いに歩きながら壁を軽く叩いて、確認して回った。
あった!
その壁は叩いただけでは分からない程他との差は感じなかったが、床面との隙間に風が吹き抜けているのだ。
どうやったら開閉できるのか?
邦哉は数歩下がってその壁をまじまじと見た。すると上の片隅にひとつ、直径2㎝程の孔が開いているのを発見した。
孔か・・・
少し考えて邦哉は手を伸ばして指を孔に突っ込んだ!
すると・・・すると・・・何も起こらない?
それより、問題が発生した。指が抜けない。・・・!
これは、かなり、ハズカシイ。
抜けろ! 思い切り引っ張った時に“カックン”と指に手ごたえを感じると、大きく手前に壁が開いた。なんと大胆な隠し扉だろう。これ、ほぼ壁一面開いたと言っていい。大きさは、今はいいや。こうなったら行くしかないだろう。それより、マジで指が・・・何かないかと辺りを見回すと、工具箱を見つけた。恐らく機器のメンテナンス用であろう。機械油があるはずだ。期待して足を延ばして引き寄せた。
星岬技術研究所 東研究棟 第3実験室(開かずの間)隠し扉の向こう側
幅1mもないと思われる狭い場所に、勾配のキツイ階段が設置されている。照明らしいものはというと、階段の一段一段が発電機を内蔵しているようで、踏まれることでエネルギーが発生してぼんやりと灯りが点るのだ。邦哉は、まるで足音をたてずにスイスイと階段を下っていく。体感で3フロア分は下った気がする。もう地下なんじゃないだろうか?そう思っていると、薄っすらと灯りが漏れているのに気が付いた。どうやら終点のようだ。
さて、この扉はどうやったら開くんだ?
考えていると、シューと小さな音をたてて扉が開いた。薄暗い室内の中央に、手術台があり星岬が横になっている。その傍らに三角形がいて、こちらを油断なく見て警戒している。
「遅いじゃないか、邦哉」
星岬が声を掛けてくる。
状況が把握できないが、とりあえず“見られたからには生きて帰れるなんて思うなよ”的な事にはならないで済みそうだ。
「星岬、大丈夫なのか?」
「邦哉、頼まれてくれないか」
何をだ?と邦哉が尋ねると星岬は、少しためらってから答えた。
「この身体はもうダメだ。私は別の身体に移る。」
「何を言っている? 別の身体とはどういう意味だ?」
言葉通りだと星岬が答え肘から先で合図をすると、三角形が床面に届いている太くて長い手を延ばして壁にあるスイッチを操作した。すると三角形の背後の壁が左右に開き、メタルフレームのスケルトンが現れた。
「コレはいったい・・・?」
「トランスルーセント、model no.000000(モデルオールゼロ)」
星岬は邦哉の疑問・質問に答えている訳でなく、自分の都合最優先で説明しているに過ぎない。
「私の心臓をオールゼロへ移植して欲しい」
「脳じゃないのか?星岬!」
入り口に突っ立ったままの邦哉は弱っている友の姿に動揺を隠しきれない。
「脳であれば、そこのメタルターニャでも可能だ。だが、心臓(移植)はレクチャーしていない。お前の技能が必要だ。」
「わかった。やろう! だが、なぜ心臓なんだ?」
星岬は、笑おうとして咳きこんだ。邦哉が入り口から一挙動で星岬の傍らに移動すると、メタルターニャと呼ばれた三角形は、対応しきれずひっくり返った。
星岬は見えていたらしく邦哉の眼を見て問いに答えた。
「本当の 想いは ハートに 宿るんだぜ」
「なにメチャメチャなこと言ってんだ、馬鹿野郎!」
ベタな三文芝居が続く中、メタルターニャが何かを察知して静かに退室した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる