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港周辺はは前にもましてにぎわっていた。
「既存の堤防の内側にさらに新しく造設しているところもあるのね・・・。」ハンスに案内してもらいながら港周辺を歩くと、堤防以外にも新たに作られているものに気が付いた。
「あれは何?」船の接岸されている周りに色々な機材が運び込まれているのが見えた。
「領主様、色々と考えられておられるようですね」ハンスが感心したように説明してくれた。堤防造設だけでなく、船の大小にかかわらず接岸できる設備や外国人が増えたことによる治安の悪化がないような取り組みも始まっているという。
「貴女が領主の娘や貴族が通う淑女学園ではなく、平民が多く、看護師資格が取得できる高等学園に進学すると言い出した時は本当に心配しましたけれど・・・」歩きながらこちらを見て、ハンスは続ける。「よかったですね、思わぬ大物と縁を結ぶことができたんですから・・・」「淑女学園に通って、王都で縁を結んでいたら、こんな玉の輿に乗ることはできなかったでしょうからね」
「母様が高等学園に入学することを反対してたのは知ってたけど、ハンスも反対だったの?」今更な感じのことを言われて私が尋ねると、ため息をついてハンスが答えた。
「当たり前じゃないですか、看護師資格を取って、シマエーガに戻るということは、ほぼ結婚をあきらめるということですよ?奥様が反対されたのも当然です。」
「だって、王都で縁を結ぶなんて絶対無理だと思ったんだもの・・・母様は貧乏でも男爵家の娘だったけど、父様は多少豊とはいえ地方の代官よ?ほぼ平民じゃない。無理よ!爵位持ちや領主なんかと結婚するなんて・・・」私は少し不満げに話を続けた。「だったら無駄な淑女教育なんかより、役に立つ看護師資格の取得がいいと思ったのよね」
ハンスがジロッとこちらを見た。「爵位持ちの領主様と結婚したじゃないですか」
「え?リンデルは領主だけど、爵位は持ってないでしょ?」
「カナンの領主は辺境伯ですよ、シマエーガの港は冬は凍港でしたけど海の向こうは隣国です。西側も今は友好な同盟国とはいえ数百年前は敵国でしたからね、辺境伯は重責です。さかのぼれば王家につながるような名家ですよ。」
知らなかった・・・・
「貴女、そのカナンの最北、シマエーガの代官家の娘でしょ?」ハンスにあきれたように言われ、小さくなっていると「まぁ、良かったですよ、此れ以上の縁はないという所に嫁がれたんですから、亡くなられた旦那様も奥様も喜ばれているはずです。」と言われた。
その縁が実は契約で、3年で終わる可能性があるとは絶対にいえないなぁ・・・・
そうか・・・領主だけじゃなくて爵位もちだったのね、それじゃあ結婚をせかされても仕方がないかも・・・。
結局シマエーガには3日間だけ滞在して、私は州都に戻ってきた。リンデルはまだ王都から帰ってきていないようで、玄関を入ると、何故かアンジェラ様が領主館の女主人よろしく使用人の皆にあれこれと用事を言いつけているのが目に付いた。
「あら、貴女帰ってきたの?田舎に引っ込んでもう戻らないと思ったのに・・・」アンジェラ様がこちらに気が付いたようで、私を睨みつけバカにしたように続けた。「貴女、北の代官の娘なんですって?そんな女、リンデルにふさわしくないわ、なんでここにいるのよ。」
「一応ここは私の家になりますので・・・」私が淡々と答えると、気に入らなかったのかフン!と踵を返し、「もうすぐそうじゃなくなるわよ!」と言って出て行ってしまった。
??もうすぐそうじゃなくなる?どういうこと??
ロバートが慌ててこちらにやって来る。「おかえりなさいませ、奥様。申し訳ありません、お出迎えもせず。」
「ただいまロバート、いいのよ、別に。アンジェラ様は何をされていたの?」
「それが・・・奥様が不在の時は自分が領主婦人の仕事をするのが当然だとおっしゃいまして・・・」困ったようにため息をつくロバート。
「不在って・・・3日いなかっただけよね?」不思議そうに返すと
「そうなのですが・・・旦那様からも好きにさせるようにと言われておりまして、お止めするわけにもいかず、困っておりました。」
リンデルが好きにさせていいって言ったの?アンジェラ様に出て行ってもらうっていう方針は変えたのかしら?
「そうなの・・じゃあ仕方ないわね。」
リンデルが王都から帰ってきたら聞いてみよう・・・。
そう思っていたのだが・・・その日の夜にアンドリューと二人、疲れたように帰宅したリンデルとは話すどころかまったく接触することができなかった。
アンジェラ様がまるでぶら下がるようにリンデルの腕を取って張り付き(ぶら下がるというよりは二人とも背が高いから添え木のように斜めにくっついている感じかも・・)あれこれと使用人達を振り回す指示をだすので、私は困っている彼らをサポートするような形になってしまっていた。食事の時も、私とリンデルは以前のように端と端に座ったのだが、アンジェラ様は私とリンデルの間(限りなくリンデルに近い方)に座り、時折こちらを見下すように勝ち誇った視線を向ける以外リンデルだけに話かけていた。
リンデルはアンジェラ様の話に適当に相槌を打ち、黙々と食事を続けていて、此方の方は全く見ようともしない。ただひたすら気まずい時間が過ぎて、私はムカムカした気持ちを抑えながら自室に戻ったのだった。
「既存の堤防の内側にさらに新しく造設しているところもあるのね・・・。」ハンスに案内してもらいながら港周辺を歩くと、堤防以外にも新たに作られているものに気が付いた。
「あれは何?」船の接岸されている周りに色々な機材が運び込まれているのが見えた。
「領主様、色々と考えられておられるようですね」ハンスが感心したように説明してくれた。堤防造設だけでなく、船の大小にかかわらず接岸できる設備や外国人が増えたことによる治安の悪化がないような取り組みも始まっているという。
「貴女が領主の娘や貴族が通う淑女学園ではなく、平民が多く、看護師資格が取得できる高等学園に進学すると言い出した時は本当に心配しましたけれど・・・」歩きながらこちらを見て、ハンスは続ける。「よかったですね、思わぬ大物と縁を結ぶことができたんですから・・・」「淑女学園に通って、王都で縁を結んでいたら、こんな玉の輿に乗ることはできなかったでしょうからね」
「母様が高等学園に入学することを反対してたのは知ってたけど、ハンスも反対だったの?」今更な感じのことを言われて私が尋ねると、ため息をついてハンスが答えた。
「当たり前じゃないですか、看護師資格を取って、シマエーガに戻るということは、ほぼ結婚をあきらめるということですよ?奥様が反対されたのも当然です。」
「だって、王都で縁を結ぶなんて絶対無理だと思ったんだもの・・・母様は貧乏でも男爵家の娘だったけど、父様は多少豊とはいえ地方の代官よ?ほぼ平民じゃない。無理よ!爵位持ちや領主なんかと結婚するなんて・・・」私は少し不満げに話を続けた。「だったら無駄な淑女教育なんかより、役に立つ看護師資格の取得がいいと思ったのよね」
ハンスがジロッとこちらを見た。「爵位持ちの領主様と結婚したじゃないですか」
「え?リンデルは領主だけど、爵位は持ってないでしょ?」
「カナンの領主は辺境伯ですよ、シマエーガの港は冬は凍港でしたけど海の向こうは隣国です。西側も今は友好な同盟国とはいえ数百年前は敵国でしたからね、辺境伯は重責です。さかのぼれば王家につながるような名家ですよ。」
知らなかった・・・・
「貴女、そのカナンの最北、シマエーガの代官家の娘でしょ?」ハンスにあきれたように言われ、小さくなっていると「まぁ、良かったですよ、此れ以上の縁はないという所に嫁がれたんですから、亡くなられた旦那様も奥様も喜ばれているはずです。」と言われた。
その縁が実は契約で、3年で終わる可能性があるとは絶対にいえないなぁ・・・・
そうか・・・領主だけじゃなくて爵位もちだったのね、それじゃあ結婚をせかされても仕方がないかも・・・。
結局シマエーガには3日間だけ滞在して、私は州都に戻ってきた。リンデルはまだ王都から帰ってきていないようで、玄関を入ると、何故かアンジェラ様が領主館の女主人よろしく使用人の皆にあれこれと用事を言いつけているのが目に付いた。
「あら、貴女帰ってきたの?田舎に引っ込んでもう戻らないと思ったのに・・・」アンジェラ様がこちらに気が付いたようで、私を睨みつけバカにしたように続けた。「貴女、北の代官の娘なんですって?そんな女、リンデルにふさわしくないわ、なんでここにいるのよ。」
「一応ここは私の家になりますので・・・」私が淡々と答えると、気に入らなかったのかフン!と踵を返し、「もうすぐそうじゃなくなるわよ!」と言って出て行ってしまった。
??もうすぐそうじゃなくなる?どういうこと??
ロバートが慌ててこちらにやって来る。「おかえりなさいませ、奥様。申し訳ありません、お出迎えもせず。」
「ただいまロバート、いいのよ、別に。アンジェラ様は何をされていたの?」
「それが・・・奥様が不在の時は自分が領主婦人の仕事をするのが当然だとおっしゃいまして・・・」困ったようにため息をつくロバート。
「不在って・・・3日いなかっただけよね?」不思議そうに返すと
「そうなのですが・・・旦那様からも好きにさせるようにと言われておりまして、お止めするわけにもいかず、困っておりました。」
リンデルが好きにさせていいって言ったの?アンジェラ様に出て行ってもらうっていう方針は変えたのかしら?
「そうなの・・じゃあ仕方ないわね。」
リンデルが王都から帰ってきたら聞いてみよう・・・。
そう思っていたのだが・・・その日の夜にアンドリューと二人、疲れたように帰宅したリンデルとは話すどころかまったく接触することができなかった。
アンジェラ様がまるでぶら下がるようにリンデルの腕を取って張り付き(ぶら下がるというよりは二人とも背が高いから添え木のように斜めにくっついている感じかも・・)あれこれと使用人達を振り回す指示をだすので、私は困っている彼らをサポートするような形になってしまっていた。食事の時も、私とリンデルは以前のように端と端に座ったのだが、アンジェラ様は私とリンデルの間(限りなくリンデルに近い方)に座り、時折こちらを見下すように勝ち誇った視線を向ける以外リンデルだけに話かけていた。
リンデルはアンジェラ様の話に適当に相槌を打ち、黙々と食事を続けていて、此方の方は全く見ようともしない。ただひたすら気まずい時間が過ぎて、私はムカムカした気持ちを抑えながら自室に戻ったのだった。
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