転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜

文字の大きさ
43 / 54
7 愛しのアルファ

第一話

しおりを挟む



 聖利が学校に復学できたのは、意外なことに事件から十日も後だった。
 まず、聖利を襲った添川をはじめとした六人の男子学生は全員学園を去った。正確には主犯の添川が退学処分、他の五名は停学処分だったが全員自主退学していった。
 未成年ということもあり、聖利も学園側も訴えを起こすことはせず示談となった。來がこの件については最後まで刑事事件にすべきと怒り狂っていたので、おそらく今後も添川らは聖利に近づくことはおろか社会の表舞台にすら出られないだろう。本気になれば、その程度のことは簡単にできるバックボーンを來は持っている。
 学園側も、ヒートをコントロールしていた聖利には一切非がないと認め、オメガ性でアルファを誘惑したという誤解はされなかった。聖利はお咎めなしで復学できることとなった。

 しかし、黙っていなかったのは聖利の両親である。赴任先のイギリスから飛んできた父と母は、聖利が寮に戻るのを許さず、このままイギリスのインターナショナルスクールに転入させると言いだしたのだ。
 聖利を危険な目に遭わせられないと泣く母を無下にはできず、場合によっては学園の管理責任と問うと息巻く父をなだめ、ともかく聖利は話し合いに苦心した。両親に納得してもらうまで一週間。
 ようやく落ち着き、鉾を収めた両親を成田から見送って、聖利は学園に戻ってきたのだ。

 その日の到着はちょうど夕食時であった。食堂に顔を出すと、そこかしこから声がかかる。
 知樹と友人たちが手を振っている。彼らの顔を見ると、聖利もほっとした。

「楠見野、お帰り。本当に大変な目に遭わせてしまってすまない」

 高坂がいち早く立ち上がり声をかけてきた。

「いえ、寮長の責任ではないです」

 添川の暴走は予見できるものではなかっただろう。強いて言えば、自分自身にも責任の一端があると思っている。早い段階ではっきり拒絶をすべきだったし、オメガとして自衛意識をもっと持つべきだ。
 すると、生徒会長の三井寺も寄ってくる。

「楠見野は強くて偉いね。泰二、寮内でのことは本当に頼むよ。楠見野はうちの子なんだから」
「今後、楠見野にはしっかり護衛をつけるから。な? 海瀬」

 どきんとした。呼ばれて、端の席にいた來がのそっと立ち上がる。本当はずっと視界に入っていた。

「楠見野のこと頼むぞ。今日からまた同室なんだし」
「はぁ、善処します」

 ぶっきらぼうな返事。聖利はそわそわと來の顔を盗み見てしまう。学校に来られなかった期間、初めて來とスマホで連絡を取り合った。気遣う言葉はたくさんもらったが、声は聴いていない。
 病院で一瞬繋がった心が離れていないか不安になってしまう。
 來は聖利を一瞥すると、席に戻った。大丈夫だろうか。会わないでいるうちに、やはり違ったなどと思われていないだろうか。
 不安なまま、聖利は皆に挨拶を済ませ、ひと足先に五階の自室に戻った。
 二階の部屋から聖利の荷物はすべて運び込まれているようだ。ベッドに腰かけ、ドクドク鳴る心臓を抑えた。大丈夫、來はきっとまだ心変わりしていない。大丈夫だ。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら
BL
真面目(?)な生徒会長×流されやすめなツンデレ男子高校生。そこに友達も加わって、わちゃわちゃの高校生活を送る話。 ネクタイをつけてこないことを毎日真面目に注意してくる生徒会長・伊佐野のことを面白がっていた水沢だったが、実は手のひらの上で転がされていたのは自分の方だった? そこに悪友・秋山も加わってやいのやいのにぎやか(?)な高校生活を送る話。 楽しんでいただけますように。どうぞよろしくお願いします。

真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月
BL
☆ファッティ高校生男子<酒井俊>×几帳面しっかり者高校男子<風見凛太朗>のダイエットBL☆  晴青高校二年五組の風見凛太朗は、初めて任された学級委員の仕事を責任を持ってこなすために日々頑張っている。  そんなある日、ホームルームで「若者のメタボ」を注意喚起するプリントが配られた。するとクラス内に「これって酒井の事じゃん」と嘲笑が起きる。  クラスで一番のメタボ男子(ファッティ男子)である酒井俊は気にした風でもないが、これがイジメに発展するのではないかと心配する凛太朗は、彼のダイエットを手伝う決意をする。だが、どうやら酒井が太っているのには事情がありーー。 高校生活の貴重なひと時の中に、自分を変える出会いがある。輝く高校青春BL☆ 青春BLカップ参加作品です!ぜひお読みくださいませ(^^♪ お気に入り登録・感想・イイネ・投票(BETボタンをポチ)などの応援をいただけると大変嬉しいです。 9/7番外編完結しました☆  

人気者の幼馴染が俺の番

蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、 ※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

俺の“推し”が隣の席に引っ越してきた

雪兎
BL
僕の推しは、画面の向こうにいるはずだった。 地味で控えめなBLアイドルグループのメンバー・ユウト。彼の微笑みと、時折見せる照れた横顔に救われてきた僕の、たった一つの“秘密”だった。 それなのに、新学期。クラスに転校してきた男子を見て、僕は思わず息をのむ。 だって、推しが…僕の隣に座ったんだ。 「やっと気づいてくれた。長かった〜」 ――まさか、推しの方が“僕”を見ていたなんて。 推し×オタクの、すれ違いと奇跡が交差する、ひとくち青春BLショート。

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

処理中です...