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69 その身ひとつ - une partie de l'âme -
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屋敷の門をくぐった後も、イオネは上機嫌だった。
「なんでもない夜が特別な瞬間に変わるって、なんだか不思議な気持ちだわ」
アルヴィーゼは下馬してからイオネを抱いて鞍から下ろし、待ち構えていた馬丁に愛馬を預けた後、イオネの手を引いて、点々とランプが灯る石畳を屋敷へ向かって進んで行った。
「そうだな」
遅かれ早かれこうなっていたことは確実だが、今夜とはアルヴィーゼも考えていなかった。とは言え、まったく衝動的な行動だったわけではない。アルヴィーゼは既に共和国でもイオネを娶るための準備を終えていた。
元首にはそのうち結婚の立会人になってもらいたいという話をとうに通していたし、クレテ家の家長であるエリオスにもイオネを妻に迎えたい旨の親書――あくまでも許可を取るものではなく、必ず妻にするという前提の内容である――を送り、承諾の返事も得ていた。
「ねえ」
イオネがアルヴィーゼの手を引いて立ち止まった。
「屋敷には人が多いわ」
アルヴィーゼは振り返った。
「それが?」
わざわざ訊かなくても、アルヴィーゼにはその意図がわかっている。しかし、貴重な機会だ。酒に酔って素直になったイオネの口から耳に入れたい。
「…結婚初夜なんでしょう」
「そうだな。みなに報告しなければ」
「明日ではだめかしら」
「なぜ」
イオネの唇が言葉を躊躇してひくひくと動いている。
アルヴィーゼの胸に暗い愉悦がじわりと湧いた。神聖であるべき夜でさえ、イオネを前にすれば否応なしに獣性が牙を剥く。
「…も、もう少し二人でいたいの。だめ?」
「はっ」
と、アルヴィーゼは破顔した。
「ダメなはずがない」
イオネが機嫌よく笑うアルヴィーゼに向かって頬を膨らませた。「わかってて言わせたわね」と、その目が詰っている。
「拗ねるな。お前の口から聞きたい夫の気持ちを尊重してくれ」
「許すわ」
イオネはとろんとした顔に戻り、またしてもくすくすと笑い始めた。今なら何をしても受け入れそうだ。
アルヴィーゼはイオネを横向きに抱き上げ、額に口付けをして、誘惑するような笑みを向けた。
「さて、どこを所望だ?奥さま」
「夫には特別に妻のお気に入りの場所を教えてあげるわ」
イオネがアルヴィーゼを誘導して連れ込ませたのは、書庫だった。一階の書架の群れを抜けて窓際の螺旋階段を最上階へと上がって行くと、ガラス張りの窓が夜空を映すアーチの天井が間近に迫る。
「ここに寝転ぶと、星座がよく見えるの」
天窓の下に、天蓋のない寝台が置かれている。
「書庫に寝台を置かせた覚えはないが」
「ソニアが気を利かせてくれたのよ。わたしの仕事が捗るように」
事実は少し違う。アルヴィーゼが留守にしているときは仕事に没頭しすぎるイオネを止められる者がいなくなるから、せめて睡眠時間だけでも削らないようにとソニアがここへ寝台を運ばせたのだ。
アルヴィーゼには、ソニアの苦心が見える気がした。
「お前には無自覚に周囲の人間を振り回す才能があるな」
「あなたほどじゃないわ。今日だってこんなに突然婚姻の手続きを済ませてしまうなんて、前代未聞よ。しかも、元首閣下直々に立ち会いまでさせて」
アルヴィーゼはイオネを寝台に下ろし、ニヤリと意地の悪い顔で笑った。
「気に入らなかったのか?それにしては上機嫌に見えるが」
「だって…」
イオネは優しく目を細めて覆い被さってくるアルヴィーゼに向かって唇をむずむずさせ、溢れる嬉しさに耐えかねたように顔を両手で覆った。
「オルセオロ閣下がわたしのこと、エマンシュナにくれてやるには惜しい才物ですって!小さい頃に何度かお会いした他は時々学会で顔を見る程度だったのに、わたしのことをそんなふうに評価してくださっていたなんて、嬉しいわ」
「それが上機嫌の理由か」
アルヴィーゼはムッと眉間に皺を寄せた。立ち会い人の元首と言えど、イオネの心に入り込んでくるのは面白くない。
「それだけじゃないわ」
顔を覆っていた手がひらき、その下から花が咲いたような笑顔があらわれた。
「あなたのお嫁さんになっちゃった」
アルヴィーゼは一瞬、言葉をなくした。これは不可抗力だ。突然の嵐が森を濡らし薙ぎ倒していくようなものだった。
心臓が痛いほどに跳ね上がり、童女のように無垢に笑うイオネを意地汚く犯すことしか考えられなくなった。
アルヴィーゼはイオネの身体の両脇に膝をつき、ベストを脱いで、シャツを頭から抜き取った。
天窓から差す月明かりがアルヴィーゼの肌の上に筋肉の隆起の影を描き、眼を妖しく光らせた。イオネは暫くその造形に見蕩れ、官能的な唇を薄く開いた。
「あなたは完璧な貴公子の顔もできるけど、そうやって獣じみた目をしている方があなたらしいわ」
「また挑発か」
「主観的な事実よ。わたしが夫に選んだのは、傲岸不遜で、執拗で、けだものみたいな男だってこと。でも、そういうひとを愛してしまったのだから、わたしもちょっと――おかしいのかも…」
笑う余裕もない。
アルヴィーゼは性急にイオネのドレスを剥ぎ取り、白絹のような肌に触れた。胸が痛くなるほどの高揚感のせいで、力加減を忘れてしまいそうだ。
イオネは熱い吐息を立ち昇らせ、重なってくるアルヴィーゼの肉体を腕に包み、広い肩の向こうの星空を見上げた。
静寂の中に、二人の熱だけが存在している。
「…背徳的だわ」
「夫婦の神聖な初夜だぞ」
「こんなふうに誰にも知られずに二人きりでいると、月の女神の目を盗んでいる気分になるわ。星が女神の目になってわたしたちを探しているみたい」
普段のイオネらしからぬ、空想的な抒情表現だ。酒と、特別な夜の空気に酔っているのかもしれない。
「その不届きな星はどいつだ?名を言うたびに忘れさせてやる」
アルヴィーゼがするすると肌の上を滑って腰へ下がってくるのがくすぐったくて、イオネは秘めやかな笑い声をあげた。
「カペラ――あっ…!」
脚の間にアルヴィーゼの唇が触れる。数時間前に開かれた身体の奥が激しく反応して、イオネの思考を乱した。
「んぅ、カストル、ポルックス…」
「続けろ」
「――っ、あ、アルゴル…んぁ、だめ…」
ぐり、とアルヴィーゼの舌が奥へ入り込み、乳房の中心と熟れた陰核を同時に撫でられた瞬間、イオネの身体が跳ねた。快楽が波のように全身を襲い、悲鳴のようにあがる恍惚とした声が、春の夜気に混じって甘く溶けてゆく。
「他は?」
「わ、わからない…ああ!」
アルヴィーゼはイオネの肉体が自分の指を熱く濡らして締め付けるのを感じながら、小さな勝利に酔いしれた。
イオネの潤んだ目が今度はアルヴィーゼだけを映して、じっと見つめてくる。魂をも奪われてしまいそうだ。
「俺をお前の半身にしてくれ、イオネ」
「…多分、もうなっているわ」
そうでなければ、こんなに渇望するはずがない。
月が満ち、海が満たされるように、二人の唇が重なり合った。
舌が絡み合うと同時に、アルヴィーゼがイオネの腰を強く掴んで自身をその中心に沈め、激しい衝動を抑えるように深く息を吐いた。
「あ…!」
身体の最も深いところにアルヴィーゼを迎え入れ、イオネは恍惚と喘いだ。
羞恥も忘れる程に激しい快楽が嵐のように心身を翻弄し、イオネの世界をアルヴィーゼ一色に染めてゆく。
肉体がぶつかり合うたびに熱が増し、二人の汗が肌の上で混ざり合い、欲望が高まり切ると、二人は炎を吹くように呼吸した。
「アルヴィーゼ・トリスタン・コルネール…あなたを愛しているわ。あなたがどんなに傲慢でも許してあげる。だから――」
この男に自分の人生の一切を捧げるのではない。二つの人生が融合するのだ。
それなら、今から口にする言葉は、例えアルヴィーゼに腹を立てている時であっても、きっと互いの揺るぎない行動指針になる。
「わたしをつかまえていて。どんな時も。わたしもそうするわ」
アルヴィーゼはイオネの上でとびきり優しい笑顔を見せ、イオネの胸をひどく苦しくさせてから、二人だけの世界の果てへ連れて行った。
魂まで融け合って、ふたつの存在がひとつになるという事象を、イオネは初めて発見した。
「…あの、わたし」
イオネは汗の浮いた肩を上下させ、星の光のように降り注ぐアルヴィーゼの口付けを身体中に受けて、小さく呟いた。
「持参金のための財産はもう全部研究のために使ってしまったのだけど、やっぱり格好がつかないかしら」
アルヴィーゼは思わず笑い出した。
甘美な初夜の空気に身を委ねていたというのに、突然現実的思考に戻るあたりがイオネらしい。
「そんなものなくても――」
アルヴィーゼはイオネの身体をきつく腕に抱いて、この女を再び二人だけの世界へ連れ戻そうと密かに決めた。
「その身ひとつで嫁に来い」
イオネははにかんだように笑み、アルヴィーゼの腕の中にその身をおさめた。
これからは、ここが帰るべき場所になる。それは未来永劫変わらないだろう。
「なんでもない夜が特別な瞬間に変わるって、なんだか不思議な気持ちだわ」
アルヴィーゼは下馬してからイオネを抱いて鞍から下ろし、待ち構えていた馬丁に愛馬を預けた後、イオネの手を引いて、点々とランプが灯る石畳を屋敷へ向かって進んで行った。
「そうだな」
遅かれ早かれこうなっていたことは確実だが、今夜とはアルヴィーゼも考えていなかった。とは言え、まったく衝動的な行動だったわけではない。アルヴィーゼは既に共和国でもイオネを娶るための準備を終えていた。
元首にはそのうち結婚の立会人になってもらいたいという話をとうに通していたし、クレテ家の家長であるエリオスにもイオネを妻に迎えたい旨の親書――あくまでも許可を取るものではなく、必ず妻にするという前提の内容である――を送り、承諾の返事も得ていた。
「ねえ」
イオネがアルヴィーゼの手を引いて立ち止まった。
「屋敷には人が多いわ」
アルヴィーゼは振り返った。
「それが?」
わざわざ訊かなくても、アルヴィーゼにはその意図がわかっている。しかし、貴重な機会だ。酒に酔って素直になったイオネの口から耳に入れたい。
「…結婚初夜なんでしょう」
「そうだな。みなに報告しなければ」
「明日ではだめかしら」
「なぜ」
イオネの唇が言葉を躊躇してひくひくと動いている。
アルヴィーゼの胸に暗い愉悦がじわりと湧いた。神聖であるべき夜でさえ、イオネを前にすれば否応なしに獣性が牙を剥く。
「…も、もう少し二人でいたいの。だめ?」
「はっ」
と、アルヴィーゼは破顔した。
「ダメなはずがない」
イオネが機嫌よく笑うアルヴィーゼに向かって頬を膨らませた。「わかってて言わせたわね」と、その目が詰っている。
「拗ねるな。お前の口から聞きたい夫の気持ちを尊重してくれ」
「許すわ」
イオネはとろんとした顔に戻り、またしてもくすくすと笑い始めた。今なら何をしても受け入れそうだ。
アルヴィーゼはイオネを横向きに抱き上げ、額に口付けをして、誘惑するような笑みを向けた。
「さて、どこを所望だ?奥さま」
「夫には特別に妻のお気に入りの場所を教えてあげるわ」
イオネがアルヴィーゼを誘導して連れ込ませたのは、書庫だった。一階の書架の群れを抜けて窓際の螺旋階段を最上階へと上がって行くと、ガラス張りの窓が夜空を映すアーチの天井が間近に迫る。
「ここに寝転ぶと、星座がよく見えるの」
天窓の下に、天蓋のない寝台が置かれている。
「書庫に寝台を置かせた覚えはないが」
「ソニアが気を利かせてくれたのよ。わたしの仕事が捗るように」
事実は少し違う。アルヴィーゼが留守にしているときは仕事に没頭しすぎるイオネを止められる者がいなくなるから、せめて睡眠時間だけでも削らないようにとソニアがここへ寝台を運ばせたのだ。
アルヴィーゼには、ソニアの苦心が見える気がした。
「お前には無自覚に周囲の人間を振り回す才能があるな」
「あなたほどじゃないわ。今日だってこんなに突然婚姻の手続きを済ませてしまうなんて、前代未聞よ。しかも、元首閣下直々に立ち会いまでさせて」
アルヴィーゼはイオネを寝台に下ろし、ニヤリと意地の悪い顔で笑った。
「気に入らなかったのか?それにしては上機嫌に見えるが」
「だって…」
イオネは優しく目を細めて覆い被さってくるアルヴィーゼに向かって唇をむずむずさせ、溢れる嬉しさに耐えかねたように顔を両手で覆った。
「オルセオロ閣下がわたしのこと、エマンシュナにくれてやるには惜しい才物ですって!小さい頃に何度かお会いした他は時々学会で顔を見る程度だったのに、わたしのことをそんなふうに評価してくださっていたなんて、嬉しいわ」
「それが上機嫌の理由か」
アルヴィーゼはムッと眉間に皺を寄せた。立ち会い人の元首と言えど、イオネの心に入り込んでくるのは面白くない。
「それだけじゃないわ」
顔を覆っていた手がひらき、その下から花が咲いたような笑顔があらわれた。
「あなたのお嫁さんになっちゃった」
アルヴィーゼは一瞬、言葉をなくした。これは不可抗力だ。突然の嵐が森を濡らし薙ぎ倒していくようなものだった。
心臓が痛いほどに跳ね上がり、童女のように無垢に笑うイオネを意地汚く犯すことしか考えられなくなった。
アルヴィーゼはイオネの身体の両脇に膝をつき、ベストを脱いで、シャツを頭から抜き取った。
天窓から差す月明かりがアルヴィーゼの肌の上に筋肉の隆起の影を描き、眼を妖しく光らせた。イオネは暫くその造形に見蕩れ、官能的な唇を薄く開いた。
「あなたは完璧な貴公子の顔もできるけど、そうやって獣じみた目をしている方があなたらしいわ」
「また挑発か」
「主観的な事実よ。わたしが夫に選んだのは、傲岸不遜で、執拗で、けだものみたいな男だってこと。でも、そういうひとを愛してしまったのだから、わたしもちょっと――おかしいのかも…」
笑う余裕もない。
アルヴィーゼは性急にイオネのドレスを剥ぎ取り、白絹のような肌に触れた。胸が痛くなるほどの高揚感のせいで、力加減を忘れてしまいそうだ。
イオネは熱い吐息を立ち昇らせ、重なってくるアルヴィーゼの肉体を腕に包み、広い肩の向こうの星空を見上げた。
静寂の中に、二人の熱だけが存在している。
「…背徳的だわ」
「夫婦の神聖な初夜だぞ」
「こんなふうに誰にも知られずに二人きりでいると、月の女神の目を盗んでいる気分になるわ。星が女神の目になってわたしたちを探しているみたい」
普段のイオネらしからぬ、空想的な抒情表現だ。酒と、特別な夜の空気に酔っているのかもしれない。
「その不届きな星はどいつだ?名を言うたびに忘れさせてやる」
アルヴィーゼがするすると肌の上を滑って腰へ下がってくるのがくすぐったくて、イオネは秘めやかな笑い声をあげた。
「カペラ――あっ…!」
脚の間にアルヴィーゼの唇が触れる。数時間前に開かれた身体の奥が激しく反応して、イオネの思考を乱した。
「んぅ、カストル、ポルックス…」
「続けろ」
「――っ、あ、アルゴル…んぁ、だめ…」
ぐり、とアルヴィーゼの舌が奥へ入り込み、乳房の中心と熟れた陰核を同時に撫でられた瞬間、イオネの身体が跳ねた。快楽が波のように全身を襲い、悲鳴のようにあがる恍惚とした声が、春の夜気に混じって甘く溶けてゆく。
「他は?」
「わ、わからない…ああ!」
アルヴィーゼはイオネの肉体が自分の指を熱く濡らして締め付けるのを感じながら、小さな勝利に酔いしれた。
イオネの潤んだ目が今度はアルヴィーゼだけを映して、じっと見つめてくる。魂をも奪われてしまいそうだ。
「俺をお前の半身にしてくれ、イオネ」
「…多分、もうなっているわ」
そうでなければ、こんなに渇望するはずがない。
月が満ち、海が満たされるように、二人の唇が重なり合った。
舌が絡み合うと同時に、アルヴィーゼがイオネの腰を強く掴んで自身をその中心に沈め、激しい衝動を抑えるように深く息を吐いた。
「あ…!」
身体の最も深いところにアルヴィーゼを迎え入れ、イオネは恍惚と喘いだ。
羞恥も忘れる程に激しい快楽が嵐のように心身を翻弄し、イオネの世界をアルヴィーゼ一色に染めてゆく。
肉体がぶつかり合うたびに熱が増し、二人の汗が肌の上で混ざり合い、欲望が高まり切ると、二人は炎を吹くように呼吸した。
「アルヴィーゼ・トリスタン・コルネール…あなたを愛しているわ。あなたがどんなに傲慢でも許してあげる。だから――」
この男に自分の人生の一切を捧げるのではない。二つの人生が融合するのだ。
それなら、今から口にする言葉は、例えアルヴィーゼに腹を立てている時であっても、きっと互いの揺るぎない行動指針になる。
「わたしをつかまえていて。どんな時も。わたしもそうするわ」
アルヴィーゼはイオネの上でとびきり優しい笑顔を見せ、イオネの胸をひどく苦しくさせてから、二人だけの世界の果てへ連れて行った。
魂まで融け合って、ふたつの存在がひとつになるという事象を、イオネは初めて発見した。
「…あの、わたし」
イオネは汗の浮いた肩を上下させ、星の光のように降り注ぐアルヴィーゼの口付けを身体中に受けて、小さく呟いた。
「持参金のための財産はもう全部研究のために使ってしまったのだけど、やっぱり格好がつかないかしら」
アルヴィーゼは思わず笑い出した。
甘美な初夜の空気に身を委ねていたというのに、突然現実的思考に戻るあたりがイオネらしい。
「そんなものなくても――」
アルヴィーゼはイオネの身体をきつく腕に抱いて、この女を再び二人だけの世界へ連れ戻そうと密かに決めた。
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