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第1章 天使降臨!!
第6話 ピーマンめ
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私の首にかかったまんまの、趣味の悪い首飾りに王は手を伸ばした。
「これは……わしがメリッサに贈った特注品だ」
この趣味の悪いのは、お前が元凶か。
前世じゃなんてなかったのに、子供の舌だと味覚が変わって、苦くて嫌いになったんだよピーマン。
そんなものを贈り物の象徴に選ぶとは、悪趣味め。
にらみつける私に、王は無表情のまま語り掛けた。
「ピーマンが好きでな、お前の母親は」
ゲーッ、まあ大人になれば、肉詰めとか美味しいし、あと肉炒めとか……。
でも、今の私はノーサンキューだ。
なので、心を込めて拒絶してやった。
「お前も好きか?」
「きらいでしゅ!」
王子と王の目が大きく見開いた。けれど私は引く気はないよ。
嫌なものは嫌といえる、それが私デス!
「恨んで……いるか?」
「恨むでしゅ!」
もっと、センスのいい物を贈りやがれ! 売り飛ばす時に困るだろうが!
フンスと私が仁王立ちしていると、ガバッと大きな体に抱きしめられた。
「すまんなアリアナ。お前に気づいてやれず、恨まれても仕方ない」
おいおい、おっさん。いきなり抱きつくなって、苦しい苦しい。
ギブギブと、背中に手……届かない。太い腕をポンポンと叩いて抗議する。
「メリッサが突然消えて、ずっと彼女を探してはいたのだ。まさか死んだあげくに、わしの子を産んでいたとは……」
いっそ噛んでやろうかと思ったが、私を抱きしめた体が震え、嗚咽をかみ殺している気配に黙って耐えた。
しゃーないな、とりあえず王様なんだから、しっかりしろよ。
王子や臣下が見守る中で、王様は気が済むまで私を抱きしめた。
やっと解放した時には、いかついおっさんに戻ってた。
そして、周囲はなぜか感動の嵐に包まれて、涙ぐむおっさん達に見守られていた。
うざい。
「とりあえず、疲れただろうアリアナ。まずは休んで、これからゆっくりと家族になろう」
あ、じゃあ王族確定って事ですかね? もう扶養して頂けるのが確定したなら、勝ち組入賞ですね。
ありがとうございます。
私は、再び王子にダッコされて、用意された私室に入った。
教会とは比べ物にならない部屋だ。
入ってすぐに寛げる居間があり、可愛いピンクとレースで彩られている。
好きに探検していいと言われたので、わ~い! とご満悦で私は駆け回った。
隣の部屋には寝室が……この部屋と居間だけで、教会の部屋全て合わせたより広いんですけど。
天蓋付きのベッドとか、プリンセスモードじゃん! 私は本当にプリンセスなんだ!
飛んでピョンピョンとベッドではねてみた。
勢いこんで転がったら、兄ちゃんが捕獲してくれた。
そのまま腕から飛び出して、別の扉を開ける。
「ドレスでしゅ」
「そうだね、もっと一杯揃えようね」
「ここにあるだけでも、多い位でしゅよ」
「うっ……天使っ、私の妹は本物の天使」
成長期は、安物で汚れていいやつで十分だよ。
無駄遣いするな。
何やら、勘違いした兄ちゃんが感涙してる。
ふむ、感動に打ち震えるといい。
私は別の扉を開ける。
もしかしたら、これが一番嬉しかったかも知れない。
「お風呂でしゅーっ!!」
そう、風呂だよ風呂。やっぱ風呂が欲しいんだよ!
教会じゃ、井戸から汲んだ水で湯を沸かして、体を拭くか、夏に池か川コースだったからね。
タイル張りの素敵な水場が寝室の隣にあるなんて、これは素晴らしい。
あとは大きめのタライでも用意して貰って、湯を張って貰えれば最高なんだが。
この体は小さいし、湯もちょっとで済むよ?
あっちは、こっちはと動き回る私の後ろを、兄ちゃんがついてくる。
大きな窓がついてるんだけど、外を見るには窓が高い。
外を見てみたいなぁ、小さな体がアダになるのは、こういう時だ。
しゃーないなと、私は後ろをくるりと振り返る。
「にーたん、ダッコ」
「おおおーっ! 喜んでアーリー!」
チョロ過ぎだろ、本当にこの国は……以下略。
抱き上げられて視点が変わる。
見えるのは、沈む夕日に赤く染まった城下町。
そして、遠くに森が広がる。
転生して一番良かったのは、視力が戻った事かも知れない。
見えるすべてが嬉しくて、私らしくなく感動なんかしてしまう。
――そういえば、前世の夫が告白してくれたのは、夕日の中の神社だったわね――
自由に生きる私の全てを、元夫は受け止めてくれた。
ただ気弱な人ではなく、あの人は心が広い人だった。
三人の息子に恵まれた。
彼は騙され借金を背負ったけれど、それでも私たちは割と幸せだったと思う。
必死で節約する私に、彼が苦労かけたと謝罪する度に、私は怒鳴りつけたものだ。
あなたと結婚した事を、後悔した事はないと。
感傷的になったのは、きっと彼らのせいだろう。
私は自分を抱きしめる王子の顔を、再度見つめた。
「似てるでしゅ」
「何がだい? アーリー」
「にーたんと、とーたんは似てるでしゅ」
「どこが似てるんだい?」
「顔」
あからさまに、嫌そうな顔するなぁ。
「……アーリーは、どこが似てるかな?」
おいおい、いい度胸してるな王子。
こうして、初日はつつがなく終了した。
「これは……わしがメリッサに贈った特注品だ」
この趣味の悪いのは、お前が元凶か。
前世じゃなんてなかったのに、子供の舌だと味覚が変わって、苦くて嫌いになったんだよピーマン。
そんなものを贈り物の象徴に選ぶとは、悪趣味め。
にらみつける私に、王は無表情のまま語り掛けた。
「ピーマンが好きでな、お前の母親は」
ゲーッ、まあ大人になれば、肉詰めとか美味しいし、あと肉炒めとか……。
でも、今の私はノーサンキューだ。
なので、心を込めて拒絶してやった。
「お前も好きか?」
「きらいでしゅ!」
王子と王の目が大きく見開いた。けれど私は引く気はないよ。
嫌なものは嫌といえる、それが私デス!
「恨んで……いるか?」
「恨むでしゅ!」
もっと、センスのいい物を贈りやがれ! 売り飛ばす時に困るだろうが!
フンスと私が仁王立ちしていると、ガバッと大きな体に抱きしめられた。
「すまんなアリアナ。お前に気づいてやれず、恨まれても仕方ない」
おいおい、おっさん。いきなり抱きつくなって、苦しい苦しい。
ギブギブと、背中に手……届かない。太い腕をポンポンと叩いて抗議する。
「メリッサが突然消えて、ずっと彼女を探してはいたのだ。まさか死んだあげくに、わしの子を産んでいたとは……」
いっそ噛んでやろうかと思ったが、私を抱きしめた体が震え、嗚咽をかみ殺している気配に黙って耐えた。
しゃーないな、とりあえず王様なんだから、しっかりしろよ。
王子や臣下が見守る中で、王様は気が済むまで私を抱きしめた。
やっと解放した時には、いかついおっさんに戻ってた。
そして、周囲はなぜか感動の嵐に包まれて、涙ぐむおっさん達に見守られていた。
うざい。
「とりあえず、疲れただろうアリアナ。まずは休んで、これからゆっくりと家族になろう」
あ、じゃあ王族確定って事ですかね? もう扶養して頂けるのが確定したなら、勝ち組入賞ですね。
ありがとうございます。
私は、再び王子にダッコされて、用意された私室に入った。
教会とは比べ物にならない部屋だ。
入ってすぐに寛げる居間があり、可愛いピンクとレースで彩られている。
好きに探検していいと言われたので、わ~い! とご満悦で私は駆け回った。
隣の部屋には寝室が……この部屋と居間だけで、教会の部屋全て合わせたより広いんですけど。
天蓋付きのベッドとか、プリンセスモードじゃん! 私は本当にプリンセスなんだ!
飛んでピョンピョンとベッドではねてみた。
勢いこんで転がったら、兄ちゃんが捕獲してくれた。
そのまま腕から飛び出して、別の扉を開ける。
「ドレスでしゅ」
「そうだね、もっと一杯揃えようね」
「ここにあるだけでも、多い位でしゅよ」
「うっ……天使っ、私の妹は本物の天使」
成長期は、安物で汚れていいやつで十分だよ。
無駄遣いするな。
何やら、勘違いした兄ちゃんが感涙してる。
ふむ、感動に打ち震えるといい。
私は別の扉を開ける。
もしかしたら、これが一番嬉しかったかも知れない。
「お風呂でしゅーっ!!」
そう、風呂だよ風呂。やっぱ風呂が欲しいんだよ!
教会じゃ、井戸から汲んだ水で湯を沸かして、体を拭くか、夏に池か川コースだったからね。
タイル張りの素敵な水場が寝室の隣にあるなんて、これは素晴らしい。
あとは大きめのタライでも用意して貰って、湯を張って貰えれば最高なんだが。
この体は小さいし、湯もちょっとで済むよ?
あっちは、こっちはと動き回る私の後ろを、兄ちゃんがついてくる。
大きな窓がついてるんだけど、外を見るには窓が高い。
外を見てみたいなぁ、小さな体がアダになるのは、こういう時だ。
しゃーないなと、私は後ろをくるりと振り返る。
「にーたん、ダッコ」
「おおおーっ! 喜んでアーリー!」
チョロ過ぎだろ、本当にこの国は……以下略。
抱き上げられて視点が変わる。
見えるのは、沈む夕日に赤く染まった城下町。
そして、遠くに森が広がる。
転生して一番良かったのは、視力が戻った事かも知れない。
見えるすべてが嬉しくて、私らしくなく感動なんかしてしまう。
――そういえば、前世の夫が告白してくれたのは、夕日の中の神社だったわね――
自由に生きる私の全てを、元夫は受け止めてくれた。
ただ気弱な人ではなく、あの人は心が広い人だった。
三人の息子に恵まれた。
彼は騙され借金を背負ったけれど、それでも私たちは割と幸せだったと思う。
必死で節約する私に、彼が苦労かけたと謝罪する度に、私は怒鳴りつけたものだ。
あなたと結婚した事を、後悔した事はないと。
感傷的になったのは、きっと彼らのせいだろう。
私は自分を抱きしめる王子の顔を、再度見つめた。
「似てるでしゅ」
「何がだい? アーリー」
「にーたんと、とーたんは似てるでしゅ」
「どこが似てるんだい?」
「顔」
あからさまに、嫌そうな顔するなぁ。
「……アーリーは、どこが似てるかな?」
おいおい、いい度胸してるな王子。
こうして、初日はつつがなく終了した。
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