転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第1章 天使降臨!!

第10話 薔薇パンおいしいでしゅ

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「あー焦げるでしゅ!」
「ああっ、取り出せ取り出せ!」

 騎士を無視して、私の本気の叫びにおっちゃん達が動き出す。
 アホ共はかまってられん、ともかくパンが大事だ。

 おっちゃんが取り出してくれたパンを、みんなで覗き込む。
 小さな六個の薔薇パンは、キラキラと黄金色に薄くコゲをつけて輝いていた。

「ふぉお―――――っ!」

 大成功だ。危ないギリギリの焼き加減で取り出せた。
 私とおっちゃん達はテンションマックスで、踊るように喜んだ。

「見た目はともかく、味が大事だ」
「自信ありでしゅ!」
「よし、みんなで食うぞ? いいなチビ姫様」
「いいでしゅ!」

 無礼講だ、どんといけ!
 ケーキナイフでザックリと切られ、ホワリと湯気が立ちのぼる。
 ヨダレが……これはたまらん。

 はよはよと私が机をダンダン叩くと、私をダッコしたまま椅子に座る兄ちゃんが頭を撫でてくる。
 いや、落ち着かんよ? 何気に楽しんでるな? 
 てかアールまで、何でいそいそと座って待ってるんだ? 騎士なら控えろよ、むしろ廊下で立ってろ。

 みんなで大きなテーブルを囲んで、小さく分けられたパンが並べられた。
 元々が小さいから、人数分が多い分取り分も減らされている。
 ただ、忘れてはいけない。これは本来は捨てられる素材を生かした物なのだ。
 タダの物には私は気前がいいよ? だってタダだもの。

「アチチだから、気をつけようねアーリー」
「はぐっ、はぐはぐっ!」
「ほら、パン屑が散ってる」

 お前は私の母親なのか?

「おいしいでしゅ!」
「本当だ、この薔薇のリンゴがサクサクして甘みが出てる」
「シナモンが、またいい仕事をしているな」
「これは、砂糖をかけてコーティングしてもいいかもしれん」
「これ位の大きさの方が、女性向けかも」

 いやいや、大事なのはリンゴの皮を侮るなだよ?
 目の前のアールは一口で食べてしまい、指をなめている。
 目が合うとニコリと笑われたのだが、私はお前が嫌いだ。

「しかし、姫様だったとは、ご無礼を致しました」

 コック長が帽子を脱いで、私に頭を下げてくれた。

「いや、アーリーのこの格好でわかるわけもない。まだ一部の者たちとしか、接した事もなかったのでな」
「先ほどの王家の奇跡については、我々の誇りをかけて他言しないと誓います」
「まあ、念のため宜しく頼む」

 兄がくっちゃべっている隙に、兄の分のパンはアールにサラッと食べられていた。
 いや、だから笑って誤魔化すなよ、護衛騎士じゃないだろお前。

 しょっぱい顔をして横目でアールを睨んでいたら、いつの間にか、おっちゃん達が膝をついていた。

「姫様に永遠の忠誠を」
「よち、許しゅ!」

 やったぜ、料理人たちをゲットだぜ。
 胃袋を掴むのは大事なことだ。
 すなわち、この城全ての命を握ったも同然!

「これからも遊びにくるから、美味しいもの一杯作るでしゅ」

 私の言葉に彼らは立ち上がり、大きな歓声をあげた。

「うぉぉーっ! 可愛い、可愛すぎる!」
「俺たちの姫様は、なんて天使なんだ!」
「ファンクラブ作ります、俺たちの仕事を応援してくれるなんて」
「だから、玉ねぎ以外では涙したくないんだって……くっ」

 うむ、苦しゅうない。

「アーリーは、一応は王女なんだから、あまりみんなの仕事の邪魔をしては……」
「いいじゃないですか、料理好きみたいだし。何よりチビの適正を考えたら、適材適所かと」
「誰がチビでしゅか~」
「お前だ~」

 押すな、ツムジを押すな! だから押すなと手でブンブンと抗議しても、手の長さのリーチが違って届かない。
 周囲は、なぜか微笑ましい空気感になっているが、違う助けろ下僕どもめ。

「ともかく、王子。この子の力を生かすなら、自由にさせてやるべきです。ですよね?」
「う……っ、わかった」

 おい、なんで王子なのに立場弱いんだよ。本当に頼りなさすぎだろ兄ちゃん。
 こいつは敵だって目で睨みつけている私の口に、アールは何か押し込んできた。

「むぎゃ」
「うん、美味しいもの貰ったご褒美ね。これからも宜しくチビ姫ちゃん」
「むーむーむ? んー」

 なんだ飴玉か。甘い~っ、美味しい。
 幸せな顔で食べている私と、なぜか青ざめた顔の兄が抗議する。

「おいアール! これは」
「あーチビ姫、別に毒とか入ってないから。絞めるときはちゃんと手で軽くヒネってやるよ、あははは」

 何言ってんだと、私はポカポカとアールの足を蹴ってやった。
 何が楽しいのか、アールは上機嫌だ。

「じゃ、私は休んできまーす、お疲れ王子。久しぶりにお腹が幸せだ」
「わかった。私はともかく、父上に報告に行く」

 アールは手をヒラヒラさせて、とっとと、どこかへ行った。
 私はおっちゃん達に、またおいでと見送られつつ、兄ちゃんに抱えられて調理室を去ったのだった。
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