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第2章 王子と私
第24話 ウスターソースとパスタと屑野菜でしゅ
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次は、調調味料の並ぶ棚に連れていって貰う。
高い戸棚なので、兄の背丈で正解だったかもしれない。
「んー、あれあれ」
「ん? これかいアーリー」
「それでしゅ、ありがとうでしゅ」
「あー可愛い、ずっとダッコしてたいなあ」
「嫌でしゅ」
ともかく手に入れたのは、作り置きのウスターソースもどきだ。
このソースは最近、ここのみんなと一緒に開発した自信作。
実はウスターソースも手作りできる。しかも、余り野菜で大丈夫だ。
色んな野菜と調味料を煮込んで、とろとろに溶けた具材を丁寧に潰す。
酢とか黒糖はあったんだけど、肝心の醤油がないんだよね。
そもそも、この国には大豆がないのだ。
あれがあれば、一気にレパートリーが広がるのに。
「大豆、欲しいなぁ」
「ああ、僕の国にあるよ?」
私に付き添っていたしゅーさんが、こともなげに言った言葉に食いついた。
「あ、あるの?」
「うん!」
そうか、他の国には色んな素材があるに違いない。
やはり、いつまでもこの国だけに留まるのはダメみたいだ。
もっといえば、私がここから動かずに、勝手に欲しいものが手に入るのがベスト。
そう、精霊が自分で材料持ってきたら、ここで作って食べさせる方式とかはダメだろうか?
「少しならともかく、基本的に私たちに管轄がある意味考えろよチビすけ」
「なんで、考えてることわかったんでしゅか!」
「口に出して言ってたからだ」
マジかー。いいアイデアだと思ったんだけどな。
「離れても守ってやれるほどに、力が残ってねーんだよ」
茶化すでもなく、真面目に答えられて、初めて私はゾッとした。
もしかして、思った以上に、この世界は危機なのかもしれない。
怯える私を、兄は優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫、お兄ちゃんがついてるからな」
「僕もついてるから」
「いや、君は国に帰れ」
「ちゃんと話し合いしてから決めましょう」
なんで子供王子と張り合ってるんだ? うちのデカ王子。
ちなみに、しゅーさんも引く気はないらしく、バチバチと火花を散らしている横で、助手君が、できましたあ、と情けない声をあげた。
じゃあ、さっきの茹でたパスタを、助手君の炒めた具材が入ったフライパンに投入して、絡めて炒めなおして貰う。
「ほう、新しいパスタですか」
「胡椒少々、胡椒しょーしょー」
「はい、胡椒しょーしょー」
歌いながら、助手君の炒めるパスタに料理長が胡椒をふりかける。
なぜ得意げなんだ料理長。フフンって顔すんな。
「次は、このウスターソースをかけて欲しいでしゅ」
「ほう、絡めるんですな。これは斬新な」
「では、とーにゅー!」
「はい、スプーンで入れていきます。ストップをかけてくださいね姫様。お前も頑張ってフライパンを振るんだぞ」
「は、はいぃぃっ!」
一杯、二杯、ドロドロのソースが綺麗に絡んで、白い麺が茶色に染まっていく。
焦げた香ばしい匂いが辺りに漂った。
「はいストップでしゅ」
「これは、何ていうパスタですかな?」
「これは焼きそばって名付けたでしゅ!」
出来上がったフライパンを見て、皆がゴクリと唾をのむ。
お昼前だし、みんな食欲を刺激されたんだろう。
「パンもできたでしゅか?」
「まだです。余熱がありましたので早く焼けると思ったのですが、火力が弱くなっていまして……」
「ふーん」
黙ってみていたアールが、兄から私を奪い取った。
「およよ?」
「おいアール、お前!」
「ちょいと借りますよ王子」
私は運び主がアールに変更となり、パンを焼くカマドに連行された。
二人して、カマドの中を覗き見たる
確かに、火がゴゥゴゥと音をたててはいるが、いつもより弱い気がする。
パンは鉄の受け皿に丁寧に並べられているが、色合いも茶色を薄くつけるばかりで、まだ焼ききれていないのが目で分かった。
これは困る。なんせ、このパンがないと始まらないのだ。
この形のパンでないと意味がない、だから焼けてくれアチチ・アチだ。
一緒に覗いて見てたアールがつぶやいた。
「風が抜けてるな。老朽化で隙間ができてるんだろう」
「よくわかるでしゅね」
「俺は風を司るからな。お前もわかると思うが? 集中してみろ」
何を言っているかわからないという顔をすると、アールが笑った。
「お前は我と契約したのだ。さあ、精霊の力を感じろ」
誰にも聞こえない、私にだけ聞こえる声で囁かれた。
言われるがままに、私は目をつぶって意識を集中した。
高い戸棚なので、兄の背丈で正解だったかもしれない。
「んー、あれあれ」
「ん? これかいアーリー」
「それでしゅ、ありがとうでしゅ」
「あー可愛い、ずっとダッコしてたいなあ」
「嫌でしゅ」
ともかく手に入れたのは、作り置きのウスターソースもどきだ。
このソースは最近、ここのみんなと一緒に開発した自信作。
実はウスターソースも手作りできる。しかも、余り野菜で大丈夫だ。
色んな野菜と調味料を煮込んで、とろとろに溶けた具材を丁寧に潰す。
酢とか黒糖はあったんだけど、肝心の醤油がないんだよね。
そもそも、この国には大豆がないのだ。
あれがあれば、一気にレパートリーが広がるのに。
「大豆、欲しいなぁ」
「ああ、僕の国にあるよ?」
私に付き添っていたしゅーさんが、こともなげに言った言葉に食いついた。
「あ、あるの?」
「うん!」
そうか、他の国には色んな素材があるに違いない。
やはり、いつまでもこの国だけに留まるのはダメみたいだ。
もっといえば、私がここから動かずに、勝手に欲しいものが手に入るのがベスト。
そう、精霊が自分で材料持ってきたら、ここで作って食べさせる方式とかはダメだろうか?
「少しならともかく、基本的に私たちに管轄がある意味考えろよチビすけ」
「なんで、考えてることわかったんでしゅか!」
「口に出して言ってたからだ」
マジかー。いいアイデアだと思ったんだけどな。
「離れても守ってやれるほどに、力が残ってねーんだよ」
茶化すでもなく、真面目に答えられて、初めて私はゾッとした。
もしかして、思った以上に、この世界は危機なのかもしれない。
怯える私を、兄は優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫、お兄ちゃんがついてるからな」
「僕もついてるから」
「いや、君は国に帰れ」
「ちゃんと話し合いしてから決めましょう」
なんで子供王子と張り合ってるんだ? うちのデカ王子。
ちなみに、しゅーさんも引く気はないらしく、バチバチと火花を散らしている横で、助手君が、できましたあ、と情けない声をあげた。
じゃあ、さっきの茹でたパスタを、助手君の炒めた具材が入ったフライパンに投入して、絡めて炒めなおして貰う。
「ほう、新しいパスタですか」
「胡椒少々、胡椒しょーしょー」
「はい、胡椒しょーしょー」
歌いながら、助手君の炒めるパスタに料理長が胡椒をふりかける。
なぜ得意げなんだ料理長。フフンって顔すんな。
「次は、このウスターソースをかけて欲しいでしゅ」
「ほう、絡めるんですな。これは斬新な」
「では、とーにゅー!」
「はい、スプーンで入れていきます。ストップをかけてくださいね姫様。お前も頑張ってフライパンを振るんだぞ」
「は、はいぃぃっ!」
一杯、二杯、ドロドロのソースが綺麗に絡んで、白い麺が茶色に染まっていく。
焦げた香ばしい匂いが辺りに漂った。
「はいストップでしゅ」
「これは、何ていうパスタですかな?」
「これは焼きそばって名付けたでしゅ!」
出来上がったフライパンを見て、皆がゴクリと唾をのむ。
お昼前だし、みんな食欲を刺激されたんだろう。
「パンもできたでしゅか?」
「まだです。余熱がありましたので早く焼けると思ったのですが、火力が弱くなっていまして……」
「ふーん」
黙ってみていたアールが、兄から私を奪い取った。
「およよ?」
「おいアール、お前!」
「ちょいと借りますよ王子」
私は運び主がアールに変更となり、パンを焼くカマドに連行された。
二人して、カマドの中を覗き見たる
確かに、火がゴゥゴゥと音をたててはいるが、いつもより弱い気がする。
パンは鉄の受け皿に丁寧に並べられているが、色合いも茶色を薄くつけるばかりで、まだ焼ききれていないのが目で分かった。
これは困る。なんせ、このパンがないと始まらないのだ。
この形のパンでないと意味がない、だから焼けてくれアチチ・アチだ。
一緒に覗いて見てたアールがつぶやいた。
「風が抜けてるな。老朽化で隙間ができてるんだろう」
「よくわかるでしゅね」
「俺は風を司るからな。お前もわかると思うが? 集中してみろ」
何を言っているかわからないという顔をすると、アールが笑った。
「お前は我と契約したのだ。さあ、精霊の力を感じろ」
誰にも聞こえない、私にだけ聞こえる声で囁かれた。
言われるがままに、私は目をつぶって意識を集中した。
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