転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第2章 王子と私

第23話 コネコネでしゅよ

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「白パンの生地が残っているでしゅか?」
「はい、先ほど朝にまとめて焼いた残り生地がございます」
「どうするつもりだったでしゅか?」
「ヨーグルトに浸して食べる予定だったのです」
「惜しい……アイデアがいいのに、実に惜しい」

 皆の昼食分の生地を目の前にドンと置いてもらった。

「お手々でしゅ」

 手術のドクターのメス! の掛け声の様に両手を出すと、濡れ布巾でサッと拭かれる。
 よい補助だ。もう彼等とは阿吽の呼吸だな。

 綺麗になった手で、まず生地をズボズボと拳で穴をあけていく。
 小さなサイズの穴が無数にできて、ボコボコになる。

「まゆまゆ、懐かしいね」
「え、こいつ前からこういう雑な事してんの?」
「黙れアール!」

 つい素を出してしまい、周囲が一瞬凍り付いた。やばい。

「さあ、このヨーグルトの種を穴に入れるでしゅ!」

 せっせと私がお椀を手に持ち、生地に注ごうとしたのだが、手が小さすぎて危なっかしい。
 見かねたしゅーさんが、私の手を添えてくれた。

「手伝うよ。この穴に入れて混ぜるんだよね」
「そうでしゅ」
「あはっ、わかったよ」

 しゅ-さんは慣れた様子で穴に入れた後に、全身を使って生地をこねてくれた。
 勿論、ちゃんと手は拭いてからだ。

「ほう、この小僧手慣れているな」
「家でも手伝いとかしてるのか? もしかして姫様と一緒で苦労してたとか?」
「俺たち大人が頑張らないと、子供たちが健気に頑張る事になるんだ!」

 うおおーんと何人かが泣き始めた。うざい。
 しゅーさんは、何十年も私と連れ添って手伝ってくれたのだ。
 仕事が休みの度に、一度たりとも嫌な顔せず私の節約や手料理の仕込みを手伝ってくれた。
 だから、思春期の息子たちも文句を言いつつ、いつしか協力してくれたのは父親である彼の影響が大きいのだ。
 男女平等で、むしろ男が料理できないとモテない時代に、うちの息子たちは手料理で嫁さんを捕まえてきたのだから、何事も苦労はするものだ。

「こんな感じかな?」
「じゃ、時間もないし、もっかいでしゅ」
 
 本当なら生地を寝かせて発酵させるのを三回は繰り返すのだが、我慢のきかない腹ペコ精霊が足をダンダンしているので、とっとと進めることにする。

「パンよパン、パパパパン! おいちくなーれっ!」

 今日は短いとはいえ連続だなぁ。

 これを細長いコッペパンの形にして、皆にも作ってもらう。
 ふわふわの生地で、イースト菌がわりのバナナ酵母が効いている。
 出来上がった生地を急ピッチで焼いて貰った。
 まだ先ほどのパン焼きの余熱が残っていて助かった。

 そして二回もスキルを発動すると、スキルホイホイの兄が現れた。

「アーリー! またここにいたのか!」
「あ、にーたん」
「王子うーっす」
「初めまして、こんにちは」

 兄は私たちを見て硬直した。

「まてまて、情報量が多い!」

 とりあえず私たちは相手にせず、次の作業にとりかかる。

「ごはんの前のおやつでしゅから、アール以外はそんなに必要ないでしゅね」
「はい姫様、俺たちもちゃんと別に用意してあります。ところで、次はどうします?」
「お昼ごはんは何だったでしゅか?」
「こんな感じです。パンとスープと、あとオムレツと干し肉の煮込みが少し、以上が準備できています。」

 私は、よっこいしょと台座から降りようとすると、しゅーさんが私をダッコしようとしてくれた。
 だが、兄はそれを許さなかった。

「いやいや、君は国賓だ。妹は私が面倒みるから心配しなくていい」
「でも、僕と結婚するんです」
「まだ先の話だ。さあ私のアーリー、どうすればいい?」

 とりあえずアッチの野菜室と、捨て専用の樽にむかえと指示を出す。
 野菜はともかく、ゴミとして捨てる用の樽の確認に、調理場の皆がビクリと怯えだした。

 そう、私は勿体ないオバケなのだ。無駄は嫌いだし、使えるものを捨てるのはもっと許せない。

「アーリー、これは汚いよ」

 人参の屑と、あとは乾いたパスタ?

「これはどうして捨てたでしゅか?」

 袋に梱包されたままのパスタもどきを、私は指さした。

「すいません。戸棚の奥にあったもので、いつのものかわからなかったので」
「乾きものだし、中を見たらカビもないでしゅ。つまり食べれるでしゅ」

 とりあえず、塩水だけで茹でて水切りしておくように指示を出す。
 流石はプロだ。手際よく彼らは動き始めた。

「あと、あー助手君でしゅ。君はこの人参の皮は細切りにして油で炒めるでしゅ」
「皮をですか?」
「良く洗って、水気を拭いてから細切りにするでしゅ。あと、キャベツの芯も捨ててあったから、あれも同じ細切りにして一緒に炒めるでしゅ」
「わ、わかりました!」

 うむうむ、頑張って働けよ新入りよ。
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