転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第3章 ディラン王国へ

第35話 探すぜ! 大豆!

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「ずっと、空の上からついてきてたのに、気づいてくれないなんてぇ、いけずな狼さんね」
「おまっ、気配消してっ」
「あらやだ、あなた力が弱って気づかなかったのね。私も、もういつ消えるか不安な中で、あなたが来てくれて嬉しいわ」
「くんなくんな」

 抱き着かれたアールが必死で抵抗していて、笑えるね。

「会いたかったのよ! 愛してるわアールシャンテス!」
「お前、小屋から出ないんじゃないのか!」
「あなた会いたさに、必死で来ちゃった!」
「やめろ! 子供が見てるだろうが!」

 こちらをダシに使おうとしたので、丁寧に答えてやった。

「あ、気にしないで大丈夫でしゅ」

 面白いから、もっとやれ。焦るアールが愉快でたまらない。
 私の笑い顔を見て、アールが怒鳴った。

「おい、いいのかチビ! お前らまもなく晩飯の時間なんだぞ? その時にいないとなったら騒ぎになって、特にチビ! お前はシリウスに怒られろ! そして以後は監視されろ!」
「それは困るでしゅ」
「エバ様、一旦落ち着いて下さい。懐かしい逢瀬はあと程で、まずは目的を果たせて下さい」
「こんな小屋に何の用なの?」
「大豆が欲しいでしゅ」
「あんな硬い豆、どうするの?」
「色々でしゅ」

 エバの明かりを頼りに中に入る。
 部屋は一つだけのシンプルな造りで、沢山の木箱や道具、麻袋が置かれて物置みたいだ。

「ほれワンコ、大豆見つけてこいでしゅ」
「嗅いだ事ねーし、そういう使い方すんな」
「まゆまゆ、一応精霊様なんだよ?」
「使えない犬でしゅ」
「あははっ、この子本当に面白いわね」

 私たちはガサガサと物置を探すが、なかなか見つからない。
 なにせ物が多すぎるのだ。
 時間がないと急いでいると、ふいにアールとエバの動きが停止した。

「やだっ、こんな所まで」
「おい、お前ちゃんと仕事しろよ」

 何の話かと私としゅーさんが立ち尽くす二人を見ていたら、二人の背後の窓から見えてしまった。

「ぎょえええ――――っ!!」
「うわぁーっ、どうして城内に魔物が!」
「場所云々じゃなくって、弱ったエバの内から魔界の魔素が漏れたからだろうよ」
「スキルに魅かれてやってきたのよ、ある意味私たちがいる今で良かったわよ」

 全身でブルブルと震える私は、しゅーさんにしがみつく。
 熊でも蜂でもない。もっと醜悪な魔物が、窓からこちらを伺うようにこっばりついていた。

 黄色と赤のシマシマの、子豚程度の大きさの……蜘蛛だ。
 ガチガチと飛び出たキバの音が、暗闇に響き渡る。
 ダメだ、見た目がダメすぎる。

「蜘蛛の巣スプレーとか……」
「ないよまゆまゆ。大丈夫、精霊様が二人もいるから」

 しゅーさんの言葉に反応したアールが、腰にぶら下げていた剣を引き抜いた。

「とっとと仕留めてくるから、大豆探しとけよ。ったく、あんなの食材にすらなりゃしない」
「きゃーカッコイイ! 頑張ってアールシャンテス」
「お前もくるんだよエバ!」
「あら、デートのお誘いね」

 二人は扉の前に立って、私たちにここにいろと指示を出して出ていった。
 窓に張り付いていた蜘蛛は、即座に外に出た二人を獲物として認識した様子で移動した。

「心配ないよ、精霊様たちだから」

 急いで窓に向かって外を見ようとした私にしゅーさんが言う。

「しゅーさん早く早く、特等席だよここ。ダッコして外見せて」
「……もしかして楽しんでる?」
「うん!」

 祭りだよ! 狼と鳥が戦うよ! 見逃すはずがないっすわ!
 なんだか呆れた様子ながらも、しゅーさんは私をダッコして、外を見せてくれた。

「まゆまゆのお陰で、恐怖とか緊張が吹き飛びました」
「良かったね」
「昔も、野球のテレビ見ていて、乱闘が一番楽しいって言ってたもんね」
「うんうん」

 懐かしいね。だって野球のルールわかんないもん。
 息子が見たいって言うから、仕方なく見てただけだし?

 窓の外では、剣でガンガン蜘蛛を攻撃しているアールがいた。
 近くで手を叩いて喜んでる女がいるぞ?
 地区長さん家の田中さんじゃなくって、祭り大好き火の鳥エバさんとは、気が合いそうだ。

「くそっ、腹減ってるし、蜘蛛硬くて貫通しねぇし」
「がんばれー私のアールシャンテス。風で切り裂いちゃえっ!」
「お前のせいでこうなってんだろーが」

 ガキンと飛び掛かった蜘蛛を、力任せに弾き返した。
 手に汗握るバトルに、私は窓にしがみついて必死に観戦だ。

「エバ様だけのせいじゃないよ。僕たちのスキルが弱すぎて、結局は精霊様の力の源になれなかったんだから。だから、ああやって、精霊様の体内に封印している魔素があふれて、魔物化してしまったんだ」
「この国は本当に、切羽詰まってるね」
「いつもは、城内に魔物なんて出ないし、いたとしても隠れて出てこないんだけどね。僕というより、まゆまゆに反応した気がするよ」
「びょえっ! 嫌だ嫌だ!」
「君の魔力は、精霊様に気に入られるほどの物だから、きっと魔物からしても魅力的なんだろうね」
「やめてやめて、オチッコちびる」

 ちびっ子相手に、怖がらせるのはやめてくれ。
 窓の外では、アールが意外にも苦戦していた。

 蜘蛛が口から吐き出す糸が、剣に絡みつく。

「ったく、自分の敷地なら簡単なのに、おい燃やせ!」
「はぁい!」

 エバの返事と共に、蜘蛛の糸が燃やされる。
 炎は糸を伝って蜘蛛の全身に広がった。
 金属音がこすれるような悲鳴をあげて、蜘蛛がもがくが、足で蹴って腹を上向けたアールが、腹の継ぎ目の間に剣を力任せに刺しこんだ。

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