転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第3章 ディラン王国へ

第36話 蜘蛛退治と大豆ゲットだぜ!

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 ビクビクと八本の足をカシャカシャしていた蜘蛛は、ゆっくりと力を失っていく。
 仰向けの死骸が、月の光を浴びて無残に腹を出して転がっていた。
 ただ、気味が悪かったのはこの後だ。
 気づいたアールが即座に指示を出す。

「エバ! 燃やせ!」
「あなたへの愛の炎を?」
「ふざけんな!」

 何が起こったのか、私は泡のようなモノが湧き出た蜘蛛の死骸を見た。
   気持ち悪い、気持ち悪い!

「うぁーっ、子蜘蛛だぁ!」

 割かれた腹からワラワラと子蜘蛛が這い出してきたが、エバの火が徹底的に燃やし尽くしてくれた。

「ごめんね。これも自然の摂理だから、成仏なさいね」
「おいエバ、軽くこの剣も炙ってくれ。変な汁がついていたらかなわん」

 軽く剣が炙られたあとに、アールはフイッと風を起こして剣を冷ました。
 なかなかの見ものだったが、最後のオチが良くないな。
 バトル物がホラーになってしまった。

 他に魔物がいない様子なので、改めて私たちは小屋を探す。
 ガサガサと、私は箱の奥に隠れていた袋を引っ張り出した。

「見つけたでしゅーっ!」

 小さな袋程度しか、大豆は残ってはいなかったが上等だ。
 中を見たが、良いのも悪いのも混ざっている感じはする。
 ともかくブツをゲットした。あとは帰還して急いで調理するのみ。

「帰るでしゅー!」
「おおーっ!」

 月夜の下を、また私たちは戻っていく。
 風と一つになって、今度は狼の背中に鳥も乗せた。

「ところで、どうしてアールは鳥しゃん嫌がるでしゅか?」
「子供にはわかんないかもね。愛を伝えすぎると、それが怖くなってしまうものなのよ」
「ストーカーしたんでしゅね、わかったでしゅ」

 ガウガウと、何か文句を言うアールは無視して会話は切り上げた。
 つまり、どうでもいい。

 勢いよく調理室に戻るなり、私たちはおろされた。
 すぐさま人型になったアールが、青筋をたてて訴える。

「こいつは本当にしつこいんだ! そもそも我が好きなのではなく、自分の炎が風によって強くなるから執着しているだけだ!」
「あら、素敵じゃない。二人が交わるとより強い愛の炎に変わるなんて」
「しかも、こいつの嫉妬心はヒドイなんてもんじゃないぞ! ただ女官と話をしただけで、お前怒り狂って火山を噴火させたよな?」
「ずいぶん昔の話よねえ、でもちゃんと無人島のにしたじゃない」
「次は人のいる山だって、脅してくる女なんぞ怖くてたまらん」

 他にも色々あるらしいが、聞いていても仕方ないので、とっとと大豆の準備をする。

「まゆまゆから始めた痴話喧嘩が発展してるけど、精霊様たちは放置でいいのかな?」
「いいよー」

 しゅーさんが用意してくれた踏み台を使ってスタンバイ。大きな器に水を入れてもらう。
 あとは何回かに分けて、大豆を水に投入した。

 水に入れた大豆のうち、プカプカ浮いてくるのを取り出して、隣のザルに入れていく。
 これを三度ほど、小さな手で繰り返す。

「これは何してるのかしら?」
「悪い豆をよけてるでしゅよ」

 そう、悪い豆は浮いてくる。食べられないわけではないが、味が落ちるのだ。
 こういう、小さなひと手間が料理を各段においしくする。

「悪い豆しゃんは乾かして、また鳥の餌にするといいでしゅ」
「きゃーん! お腹すいてても、私は食べないわぁ」
「鳥しゃんは、今から少し火を出して欲しいでしゅ」
「火?」
「こっちの大豆を軽く蒸したいでしゅ」
「あ、こうかしら?」

 カマドに火が灯ったのはいいのだが、激しい炎が柱となって立ち上がる。

「もっと弱火でしゅーっ!」
「エバ様! 抑えてくださいっ!」

 なんとか弱火になって、冷や汗を拭った。
 コントロールの効かない馬鹿鳥なんぞ、ただの放火魔だってば。

 蒸し用の鍋は重すぎて、無言になったアールが握って振ってくれた。

「いい感じでしゅ、どうして黙っているでしゅか?」
「しゃべると腹減る」

 さっきの移動と戦闘で、どうも限界突破をしたらしい。

「私も限界だけど、もう少しの我慢だと思って頑張るわね」
 
 言えないよ……この豆はあくまで調味材料の一つの仕込みだなんて……。
 まだメインの料理にすら、とりかかれていないのだ。
 これはヤバイ。

「ストップでしゅ! 豆を台に敷いた布の上に広げるでしゅ」

 アチチの豆は、香ばしい匂いをたてている。
 ホカホカと湯気をたてているのは放置して、今度は小麦をフライパンで炒めた。
 粒のままカラカラにしたのを、今度はみんなで小さな棒でガシガシと砕いた。

「楽しいわねー」
「お前、本当は弱ってないだろ」

 狼と鳥は放置して、出来上がった蒸した大豆と砕いた小麦を布で出来た袋に詰める。

「お塩しおしおーお塩しおー」

 パッパッと、塩も混ぜこんで、袋の中身は出来上がり。
 さて、問題はここからだ。

「まゆまゆ、お肉はこんな感じで串にさしておいたよ」

 ひたすら孤独に手伝ってくれたしゅーさんは、冷蔵庫のお肉を小型ナイフで一口大に切った後に、串に刺してくれていた。

「では、いきましゅよー!」

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