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第5章 いらっしゃい南国パナマナ
第52話 行ってきましゅ!
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旅立ちの日、私は沢山の人たちに見守られ、馬車の前に立つ。
「良いかア~ちゃん、絶対に危ない事はしちゃダメだ。あと危険だと思ったら逃げる事と、あとは……」
もう耳にタコな程に聞き飽きた父の言葉に、私は元気よく答えた。
「あいっ! バニャニャはおやつに入りまちぇん!」
うぁーっ! 可愛いっ! 周囲の者たちがどよめき、目の前の父も泣きべそをかく。
「こんなに可愛いから、やっぱりやめんか?」
「おいちぃを、一杯持って帰ってくるでしゅよ! あと料理長!」
ビシッと大勢の中に紛れていた、天使親衛隊隊長を呼び出した。
目元を赤くしながら、料理長が前に出る。
てか、お前も泣いてるんかいっ!
「レシピは置いていくでしゅ。ディランと文通して仲良く教えあいっこするでしゅよ」
「はい、もちろんです。今から旅ただれるのに、国を憂うとは、なんと健気な……」
再び、周囲から嗚咽が広がり、埒が明かないと思ったらしい兄が私を抱きあげた。
「皆の者、私もついている。心配は無用だ」
そうなのだ。兄は、何が何でもついて来ると言い張った為に、旅の見張り役となってしまった。トホホ。
「では、いざゆかん南の国へ」
「おおーっ!」
馬車には、私としゅーさんとエバが乗り、御者は兄とアールで交代だ。
片方は一匹の馬に乗り、片方は馬車を操る。
皆に見送られ、私たちは馬車に乗り込んだ。
兄がアールを見て言った。
「ともかく、アーリーだけは守ってやってくれ」
「……ついでだから、お前も守ってやるよ。私は王子の護衛ですからね」
ニヤリとニヒルに笑ったアールに、兄もつられて笑い返していた。
なんだかんだと仲良しなんだよなあ。
ちなみに、それを見ていたエバが言う。
「精霊に任せなさい。全て燃やしつくしちゃうわね」
「全部燃やしてはダメですエバ様」
慌てたしゅーさんが必死で懇願していた。
うちの子は優しいわーじゃねーよ馬鹿鳥め。
こうして馬車は南の国を目指して進む。
再び山を下りて、南に向かって道を進む。
草原ぬけて、何もない荒れた土地をひたすら進む。
村一つなく不思議に思っていると、しゅーさんが教えてくれた。
「ここは南の国パナマナの領土内だけど、加護がないから誰も住まない不毛地帯らしいよ」
「そんなに、ここの精霊は弱っているでしゅか?」
車内でウトウトしていたエバの膝によじ登り、ホッペをつついて聞いてみた。
「んぁ……加護? サウスは島に住んでいるから島だけ加護を集中してるみたいよ」
「そんなに弱っているでしゅか?」
「かもねえ、ついでに私も、お腹が減っちゃって弱ってるわ」
「ごはんにするでしゅよ」
何もない荒地で馬車を止めて、今夜はここでテントを張る。
馬車の荷台は小さめだが、荷物は沢山積めるように改造されていた。
これは城の職人が、私可愛さに大改造したらしく、荷物も侍女や調理室のみんな、果ては財務大臣まで、これでもかと吟味して大量に持たせてくれた。
ちなみに父は、護衛兵士を一部隊と荷物用の馬車をもう十台は必要とか寝言を言っていたが、無視をした。
そーそー、女神の説得の後だけど、あの女神は本当に現れただけで、別に何をするでもなく去っていった。
「ごめんねぇ、やっぱり女神の力を使うと、世界のバランスが狂っちゃうのよ。既にあなた達二人に手出ししたせいで、精霊の弱体化が進んでしまったし」
「人のせいにするなでしゅ!」
「でも、応援の言葉くらいならかけられるから、何かあったら教会で祈ってね」
「何か予言とか祝福とかあるでしゅか?」
「がんばれーって応援するね」
「とっとと帰れでしゅ!」
―― 思い出したら、怒りで頭痛がしてきた。
兄がかき混ぜてくれた、雑穀米の雑炊に、持ってきた醤油の小瓶からタラリと三滴ほど投下した。
そして、携帯用の食材の中に、まだ青みのかかったハゼルの実を発見。
これは放置しておくと熟成されて、黄色味がついたら栗みたいな柔らかい具材になる。
栄養満点で、そのままでも食べられるコレを、雑炊のメインの具にしたい。
小皿に入れたハゼルの実に、私は手をかざす。
「爆ぜちゃえばいいでしゅ! おいちくなぁーれ!」
心置きなくスキルを使用した。
薄暗くなってきた大地に、私の光がピカリと煌めいた。
ポンと音を立てて、ハゼルは爆ぜた。破れた皮から、黄色い実がのぞき見える。
「では、手下どもよ、剥くがいいでしゅ! てか、アール食うな! 実だけ食うな!」
つまみ食いしてんじゃねーよ。
兄は無言で私のスキルを見つめつつ、鍋をぐるぐるかき回していた。
エバとしゅーさんが剥いてくれたツヤツヤの実を、鍋にドポーンだ。
「料理が好きだったのかい? アーリーは」
ふと、小さな声で兄に尋ねられた。
好きだった? それは前世の事を聞いてるのだろうか?
私は兄の腰にしがみついた。
「おいちぃと、みんなが幸せになるでしゅよ」
「アーリーも幸せになるのかい?」
「あいでしゅ!」
即答で力を込めて返事してやった。
あたぼうよ、うまいもの食べて寝て、遊んで暮らして人生パラダイスだよ!
レシピを国に置いてきたのも、ディランと交友しろと伝えたのも、後々の私のバラ色人生計画の一つなのだよ、ふふふふふっ。
つい未来を想像して笑うと、兄も何か安心した顔で笑った。
「良いかア~ちゃん、絶対に危ない事はしちゃダメだ。あと危険だと思ったら逃げる事と、あとは……」
もう耳にタコな程に聞き飽きた父の言葉に、私は元気よく答えた。
「あいっ! バニャニャはおやつに入りまちぇん!」
うぁーっ! 可愛いっ! 周囲の者たちがどよめき、目の前の父も泣きべそをかく。
「こんなに可愛いから、やっぱりやめんか?」
「おいちぃを、一杯持って帰ってくるでしゅよ! あと料理長!」
ビシッと大勢の中に紛れていた、天使親衛隊隊長を呼び出した。
目元を赤くしながら、料理長が前に出る。
てか、お前も泣いてるんかいっ!
「レシピは置いていくでしゅ。ディランと文通して仲良く教えあいっこするでしゅよ」
「はい、もちろんです。今から旅ただれるのに、国を憂うとは、なんと健気な……」
再び、周囲から嗚咽が広がり、埒が明かないと思ったらしい兄が私を抱きあげた。
「皆の者、私もついている。心配は無用だ」
そうなのだ。兄は、何が何でもついて来ると言い張った為に、旅の見張り役となってしまった。トホホ。
「では、いざゆかん南の国へ」
「おおーっ!」
馬車には、私としゅーさんとエバが乗り、御者は兄とアールで交代だ。
片方は一匹の馬に乗り、片方は馬車を操る。
皆に見送られ、私たちは馬車に乗り込んだ。
兄がアールを見て言った。
「ともかく、アーリーだけは守ってやってくれ」
「……ついでだから、お前も守ってやるよ。私は王子の護衛ですからね」
ニヤリとニヒルに笑ったアールに、兄もつられて笑い返していた。
なんだかんだと仲良しなんだよなあ。
ちなみに、それを見ていたエバが言う。
「精霊に任せなさい。全て燃やしつくしちゃうわね」
「全部燃やしてはダメですエバ様」
慌てたしゅーさんが必死で懇願していた。
うちの子は優しいわーじゃねーよ馬鹿鳥め。
こうして馬車は南の国を目指して進む。
再び山を下りて、南に向かって道を進む。
草原ぬけて、何もない荒れた土地をひたすら進む。
村一つなく不思議に思っていると、しゅーさんが教えてくれた。
「ここは南の国パナマナの領土内だけど、加護がないから誰も住まない不毛地帯らしいよ」
「そんなに、ここの精霊は弱っているでしゅか?」
車内でウトウトしていたエバの膝によじ登り、ホッペをつついて聞いてみた。
「んぁ……加護? サウスは島に住んでいるから島だけ加護を集中してるみたいよ」
「そんなに弱っているでしゅか?」
「かもねえ、ついでに私も、お腹が減っちゃって弱ってるわ」
「ごはんにするでしゅよ」
何もない荒地で馬車を止めて、今夜はここでテントを張る。
馬車の荷台は小さめだが、荷物は沢山積めるように改造されていた。
これは城の職人が、私可愛さに大改造したらしく、荷物も侍女や調理室のみんな、果ては財務大臣まで、これでもかと吟味して大量に持たせてくれた。
ちなみに父は、護衛兵士を一部隊と荷物用の馬車をもう十台は必要とか寝言を言っていたが、無視をした。
そーそー、女神の説得の後だけど、あの女神は本当に現れただけで、別に何をするでもなく去っていった。
「ごめんねぇ、やっぱり女神の力を使うと、世界のバランスが狂っちゃうのよ。既にあなた達二人に手出ししたせいで、精霊の弱体化が進んでしまったし」
「人のせいにするなでしゅ!」
「でも、応援の言葉くらいならかけられるから、何かあったら教会で祈ってね」
「何か予言とか祝福とかあるでしゅか?」
「がんばれーって応援するね」
「とっとと帰れでしゅ!」
―― 思い出したら、怒りで頭痛がしてきた。
兄がかき混ぜてくれた、雑穀米の雑炊に、持ってきた醤油の小瓶からタラリと三滴ほど投下した。
そして、携帯用の食材の中に、まだ青みのかかったハゼルの実を発見。
これは放置しておくと熟成されて、黄色味がついたら栗みたいな柔らかい具材になる。
栄養満点で、そのままでも食べられるコレを、雑炊のメインの具にしたい。
小皿に入れたハゼルの実に、私は手をかざす。
「爆ぜちゃえばいいでしゅ! おいちくなぁーれ!」
心置きなくスキルを使用した。
薄暗くなってきた大地に、私の光がピカリと煌めいた。
ポンと音を立てて、ハゼルは爆ぜた。破れた皮から、黄色い実がのぞき見える。
「では、手下どもよ、剥くがいいでしゅ! てか、アール食うな! 実だけ食うな!」
つまみ食いしてんじゃねーよ。
兄は無言で私のスキルを見つめつつ、鍋をぐるぐるかき回していた。
エバとしゅーさんが剥いてくれたツヤツヤの実を、鍋にドポーンだ。
「料理が好きだったのかい? アーリーは」
ふと、小さな声で兄に尋ねられた。
好きだった? それは前世の事を聞いてるのだろうか?
私は兄の腰にしがみついた。
「おいちぃと、みんなが幸せになるでしゅよ」
「アーリーも幸せになるのかい?」
「あいでしゅ!」
即答で力を込めて返事してやった。
あたぼうよ、うまいもの食べて寝て、遊んで暮らして人生パラダイスだよ!
レシピを国に置いてきたのも、ディランと交友しろと伝えたのも、後々の私のバラ色人生計画の一つなのだよ、ふふふふふっ。
つい未来を想像して笑うと、兄も何か安心した顔で笑った。
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